2008年3月30日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その39


毎年決まって夜に花見をする場所があります。花見と言っても川沿いをてくてく歩くだけなんだけど、ここは真夜中に足を運ぶところとなんとなく決まっているのです。


 *


K.D.Japonに足を運んでくれたダブルスコップ(通称ダブスコ)さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)垂直に穴を掘るときにつかう、柄が2本長く伸びた土木用のスコップですね。ごぞんじですか?



Q: 「身も蓋もない」の「身」と「蓋」って、「何の身」と「何の蓋」でしょうか?



身も蓋もないというのは、あからさますぎて含むところが何もないことをさす日本固有の言い回しであり、ある特定の身や蓋を引き合いに出しているわけではありません。

というのが身も蓋もない答えです。

ポテトが食べたいと言われて、土のついたじゃがいもを手渡すようなものですね。こういう手合いには顔に一度じゃがいもを投げつけてやるべきだと僕はおもいます。「このじゃがいも野郎!」と言い添えてもいいでしょう。ほぼまちがいなくケンカになりますが、ここは決して引くことなく、この際多少卑怯な手段をつかってでも勝利をもぎとってください。何しろこんな身も蓋もない輩を野放しにしていては、「アラ、麗子さんどちらへ?」「ええ、ちょっと雉撃ちに」という会話がいずれ「アラ、麗子さんどちらへ?」「ええ、ちょっとうんこに」というアグレッシブな会話にとって替わられるかもしれない危険性をいつまでたっても排除できないのです。そんな会話があるものかともおもうけど、下手をしたら百年の恋も腐ります。負けるな!

ただまあ、個人的にはアグレッシブなほうが刺激的で好きです。



君はまた一体先刻から何を言っているのだ。(室生犀星)



泣けるほど不毛な向こうのケンカはさておき、この句の意味するところから察するに、身にしても蓋にしても、「あったらよかったのに」と惜しまれていることはまちがいありません。惜しまれるということは望まれるということであり、望まれるということは好ましいということです。そして、好ましいというからにはあくまで十分条件であって、必要条件ではありません。言い換えると、「あったらうれしいけど、なくてもそんなに困らないもの」です。だいぶ道筋がはっきりしてきましたね。一見するとゆるやかな条件にも思えますが、これを満たす身とフタと言ったら、ひとつしかありません。



A: しじみの身と、お椀のふた



なんだ、しじみの味噌汁じゃないか。


 *


おや、もうひとつありますね。



Q: コーヒーの大好きな大吾さん、喫茶店も好きですか?お気に入りの喫茶店はありますか?



喫茶店も好きです。好きですが、外でコーヒーをのみたいというきもちはびっくりするほどありません。なぜか?一杯の量が少なくてさみしいのと、自分で焙煎している以上コーヒーに対する欲求は常に100%満たされているからです。

だから僕が喫茶店に求めるのはコーヒーそのものよりもむしろ、単純に安らぎやお店の雰囲気だと言えるでしょう。極端な話、コーヒーがまずいのに好き、という場合もあります。たとえば年末に古川Pと足を運んだ新宿の「西武」という喫茶店は、時代遅れなかんじですごく好きです。古き良き、ではなくてもっとこう、取り残されてるのに気づいてないというか、一歩まちがえばファミレスになりかねないギリギリの安っぽさに親しみをおぼえました。道をはさんで対面にある「らんぶる」より好き。

町田の高ヶ坂に、今もあるのかな、ある日いきなりレストランに格上げされてすっかり足が遠のいた、「マリポーザ」という喫茶店があって、ここはわりとしょっちゅう通ってました。ドリップポットに湯を移し替える前のやかんがすごく大きくて、それがうらやましかったのですよね。女性が両手で持ち上げるくらいの大きさで、銅でできてて、その側面には今にも喋り出しそうな顔が彫ってありました。昔のディズニーに出てきそうなかんじです。未だにあんなやかんを他で見たことはありません。どこに行けばあるんだろうと今でもときどきおもいます。

コーヒーにうるさいところは苦手です。僕にとってはほうじ茶みたいなものだから、こっちの付き合いかたがフランクすぎるのかもしれないですけど。

あと、カフェよりはやっぱり、喫茶店がいいですよね。そんなことない?


 *


ダブルスコップ(通称ダブスコ)さんは「三角バミューダの大脱走」に1票を投じてくれました。ひさしぶりに進展がみられてうれしいです。どうもありがとう!


ボート 8
蝸牛 7
バミューダ 7
話咲く 6
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 2



 *



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その40につづく!

2008年3月29日土曜日

ミス・スパンコール謹製「手漕ぎボート」PV


誕生日プレゼントに、PV(!)をもらいました。ひとりでこつこつこしらえたという野趣あふれる逸品です。びっくりした!








何にいちばん驚いたといって、ミス・スパンコールはそもそも、絵心というものをろくに持ち合わせていないのです。ためしにペンギンを描かせたら、クマみたいな耳をつける(!)ありさまだし、上手いとか下手とかそういうレベルの話ですらない。ペンギンにそんな耳はついてないんだよ!そんな人が何をどうするとこんなものをつくれるようになるんだ、いったい?

どうりで最近ちまちま紙を切り貼りしてるとおもった。

2008年3月27日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その38


髪をチョキりに行ったら、すっきりさっぱりした後に、首すじから肩にかけてとてもやさしく、しかも念入りに撫でられたので何かとおもったらマッサージだと言うのです。そんなふわふわした生クリームみたいなマッサージがあるか!と抗議の声を上げるつもりで鏡をみたら、やせっぽちの僕よりもはるかに細い(!)男性が今にも消え入りそうな様子で立っていて、何も言えなくなりました。僕よりも細いとなると、残るは骨ばかりのはずなのに、ああ驚いた。


 *


質問箱 その25で登場してくれた百万枚の皿(ロシア製)さんから、ふたつめの質問です。



Q: ムール貝博士やアンジェリカたち以外に、まだ私たちの前に現れていないひとたちはいるのでしょうか?



もちろんです。と言ってもぴんとこないとおもうので、一例をあげると、「アイスノン」という名のにわとりがいます。本来は食用でありながら、生まれつき体がひんやりとして冷たい特異体質のために誰も肉としてさばく気になれず、今日まで生き延びた強運の持ち主です。夏場は抱くときもちがいいので重宝がられます。冬場の猫みたいなものですね。人じゃない!とおもうかもしれませんが、そういうのって黙っていれば案外わからないものです。

ちなみに、今回チョイ役としてしか顔を出さなかった、酩酊する蛙や風呂場のシーラカンスといった地味な存在にも、きちんと名前がついているのです。アンジェリカが助けようとするちいさな女の子(甘鯛のポワレ教授の娘ですね)には、「スワロフスキ」というへんてこな(あるいはキラキラした)名前がついています。だからどうしたと言われるとすごく困るんだけど。

スワロフスキに関してはちょっとした童話を書きたいとおもっていて、実際いちど手をつけてはいるのだけれど、そういえばぼんやりした日々にまぎれて、ちっとも進んでいません。いまこうして書きながらおもいだしたので、また手をつけたいです。でも発表の機会、なさそうだな。



A: もちろんです。ひとりひとりご紹介できないのが残念でなりません。



なんというかこう、あとからあとからわいて出てくる感じですね。


 *


今回も詩人の刻印(ほぼ)全曲レース、順位はいぜん変わらずです。

ボート 8

蝸牛 7

バミューダ 6

話咲く 6

紙屑 3

ユリイカ 3

アンジェリカ 2

腐草為蛍 2



 *



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その38につづく!

2008年3月25日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その37


ありがたいことにFNSR感謝祭@渋谷Flying Books、のこりわずか数席だそうです。もしどうしようかな…と悩んでいる人がいたら、急いで!SUIKAに関しては本当に、他のどこでやるライブよりもまずここでの体験をおすすめします。

ちなみに、僕はレーベルメイトだからという理由だけで無条件に賞賛できるほど、大人ではありません。もうちょっと太ってたらとか、眼鏡をかけてなかったらSUIKAに入れてもらえたんだろうかと、さめざめ泣く夜が今もあります。

でもまあこれはきっとフラインスピンクルーのなかで、僕が最年少だからだな。大人になったら入れてもらおう。小林大吾は、ちびっこです。



 *



打ち返した雲呑さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)以前、質問箱 その28に登場した投げられた餃子さんのパートナーだそうです。すてきなおふたり、どうもありがとう!



Q: シャツはお好きですか?



いろんな質問がきたけれど、飲んでいたお茶をおもわず吹き出したのがこれです。いくら僕でもそんな大雑把な質問されるとさすがにびっくりします。でもせっかくだしこんな機会でもないと一生向き合うこともなさそうなので、いろんな角度から考えてみましょう。




まず、腕を入れたり肩を通したりするふたつの穴ですが、これはスースーするのでそれほど好きではありません。スースーしなかったらいいとおもうけど、そうすると腕のやり場に困るから、たぶんどうにもならないとおもいます。でも首を出したり引っこめたりするあのまるい穴はわりと好きです。いざとなったら隠れることもできるし、首かとおもったら足でしたというようなフェイントにも効果的な気がします。

袖があり、かつその袖口にボタンがあったら留めますが、なかったら気にも留めません。ただ留める際のアクションは至近距離でゆっくり観察するとかなり色っぽい雰囲気をかもしだすことがあるので、子どもにはないしょにしておいてください。

それから、自己主張がつよいわりにいざその理由を突き止めようとするとちっとも意味の分からない襟には、わりと親近感を持っています。それでけっきょく君は何なのだという当然の疑問を歯牙にもかけず、ついには栄光というか市民権を勝ち取ったという意味では、ネクタイと並んでガウディの建築物に比するものがあるのではありますまいか。そのふてぶてしさには恐れ入るし、なかなかのやりてだとおもいます。襟、その不思議なるもの…ピンと立てれば見た目の積極性が増すのでおすすめです。

それにくらべるとあきらかに影のうすい胸ポケットは、馬に乗ったちいさなおじさんのマークを縫いつけたり、蕎麦をすするときにネクタイをつっこんでおく以外にはそれほど使い道がないので、あんまりいい印象をもっていません。ただ恋人がちっちゃくなったりした場合はそこに入れていっしょに外出できるから、そうなったらそうなったでまたそのとき考えましょう。

最後に、着用する際は必ずそこをくぐらなければならない胴体部分のおおきな穴ですが、ここは全体の丈が大きいとスカートとしても代用できるので、他とは比べものにならないポテンシャルを秘めているとおもいます。少なくともこれほど無防備で僕らの視線を惹きつける夢のようなスカートを、僕はほかに知りません。自分のサイズがたとえSであっても、LサイズのTシャツはこのためにこそ必ず1枚は常備しておかなければならないと、わたくしはつよく主張するものであります。




さて、全体ではなく部位ひとつひとつをここでは検証してみましたが、こうしてみるとシャツに対するきもちがだいぶ整理されてきた気がします。いろいろ考えてみるものですね。したがって答えは



A: だいぶ好きです。



これからはもうちょっと愛情をもって接したいとおもいます。


 *



前回、今回ととくにその記載がなかったので、詩人の刻印(ほぼ)全曲レース、順位はいぜん変わらずです。


ボート 8
蝸牛 7
バミューダ 6
話咲く 6
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 2



 *



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その38につづく!

2008年3月23日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その36


ふと見ると向こうがわいわい賑わっていて、何かとおもったらサイン会をひらいているのです。取り巻く人はそれほど多くもないのだけれど、そのほぼ全員がケータイを取り出してパシャパシャやっている。どなたかしらと思って首を伸ばしてみたら



加藤鷹だ…



 *



質問箱 その12で登場いただいた靴下がぜんぶ片方しかない…さんから追加の質問というか、半小説家・古川Pに関するちょっとした確認がきているのでお答えしましょう。



三角バミューダの中で古川さんが活躍してるというのは「でももう逃げる気しないしお断りします」って台詞を言ってるとか!ですか??教えてください!



おっしゃるとおりです。わざとなのか僕にもよくわからないのだけれど、地声よりもだいぶ湿った高い声が出ています。レコーディング風景、映像にのこしておけばよかったな。ちなみに古川Pの出番は、あと1箇所あります。でももうたぶん、おわかりですよね?


 *


K.D. Japon のライブにも来てくれた、ベーキングパンダさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)現役パン職人だそうですよ。どうもありがとう!小麦粉100gに対してパンダ3匹が目安です。



Q: お気に入りの粉モノはなんですか?



粉モノに関しては基本的に、着飾らないものであればどれも分けへだてなく愛しているけれど、手軽でかつ奥の深さが底なしという意味ではホットケーキに尽きるとおもいます、やはり。中華料理における炒飯みたいなものですね。ことこれに関しては他人のレシピを拝借するのがシャクなので、毎回こまめに分量を調整しながら、いまだにフラワーズならではの基準(Flours Quatlity)を模索しつづけています。ふわふわで舌ざわりもなめらかというだけでなく、粉の味わいをこそ心ゆくまで堪能したい。というと聞こえはいいけど、実際はいちいち計るのがめんどくさいだけです。でもたまにびっくりするくらい美味しい1枚が焼けたりするので、決まりきったレシピに従うよりもずっと緊張と驚きに富んで楽しいですよ。失敗するとタマゴパンみたいになっちゃうけど、そうなったらそうなったで、もともとそのつもりだったことにしてしまえば問題ありません。きのう焼いた1枚はすごく上手に仕上がったので写真に撮って記録しておきたかったのだけれど、例によって食べ終わってから気がついたので後の祭りでした。僕はそうしていつもいろんな機を逸している気がする。

パンも大好きです、もちろん。10代のころは昼食に食パンを1斤買ってバターもつけず、もさもさとウサギみたいな食べかたをしていたくらいだから、一途というかストイックというか、今と同じかたぶんそれよりもちょっとだけ馬鹿でした。現在へとつながる半ば狂信的なフラワーズスピリットの萌芽が、このころすでに見られたわけですね。タイムマシンができたらそのころに戻って、「たまには他のパンも食べなよ」と言ってあげたい。でも、ほっといてくれって言われそうだな。何しろ相手が僕だからその気持ちは誰よりもわかる。

先に「基本的に着飾らないもの」と書いたけれど、要はプレーンが好きなんですよね。フルーツとかフィリングによる味の変化ってじつはそんなに重要じゃありません。ドーナツならオールドファッションだし、クレープなら足してもカスタードと生クリームだし、パンはたいていフィリングのないものを先に選びます。ひとりで宅配ピザを頼むとき(月に一度、給料日とかにそういうことをしてました)必ず1枚はトッピングなしのチーズピザを注文していたし(食べるのはだいたいMサイズ2枚です)、「トッピングはよろしいですか?」っていつも確認されるからしまいには「おうちでのせるんです」と先に弁解するくせがつきました。さすがに今はそういうことをしなくなったけど、だからやっぱりちょっと、馬鹿だったんでしょうね。そういえば近所のカレー屋さんでナンだけ買ってくることもときどきあります。それでカレーを用意しないんだから、何をか言わんやという感じです。

こうしてあらためて書き起こしてみると、じぶんがいかにプレーン好きであるかをまざまざと見せつけられるようで、憮然としてしまうな。こうでないとやだ!という拘泥ではなくて、5つ選んでいいよと言われたらそのうち3つをプレーンにする、この割合が大事なのですが、しかしあんまりこういうことを一所懸命話していると良識ある人々から人格を疑われかねないので、そろそろ打ち切りにしましょう。というわけなので答えは



A: プレーンです。



とんちんかんな受け答えをしているように見えるかもしれないけれど、でも僕にはこれ以上答えようがないのです。



 *



朝起きたらベランダ前の桜に花がついていました。そうして昼ごろもう一度みたら、もう花が増えているのです。「ウフフ」という感じでつぼみがひとつひとつあらわに花ひらいていくさまは、艶かしくて目をうばわれます。妖艶な満開まできっとすぐだな。



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その37につづく!

2008年3月22日土曜日

幅100mの川を手ぶらで泳がずに渡るには


DVDを借りにいくつもりが、お店に設置されたゲームのデモムービーに釘づけになり、その前で10分くらい行ったり来たりをくりかえしたあげく、うっかりソフトに手を伸ばしてそのままレジへと向かうわたくし。


お店を出てからも「いったいどうしちゃったんだ?」と自問しないではいられなくて、予想外の事態にうろたえながらヨタヨタと夜の家路についたのでありました。だってただでさえろくにゲームなんかしないのに、あまつさえそれを定価で買うなんて、あきらかにどうかしていると自分でもおもう。最後に買ったゲームはたしか "Loco Roco" だった気がするけれど、そうだとしたらもう1年以上前の話じゃないか。そういえばゲームなんて全然してなかった。


でも、エッシャーの世界の住人になれると知ってしまったら、素通りなんてできない!



無限回廊 (PSP)



文字どおり視点をほんのすこしひねりさえすれば、不可能なことなんて何もないと思わせてくれるシュールなパズルです。柔軟にしてタフな思考回路ってまさしくこういうものだとおもうし、僕がつねづねこうありたいと思っているところのありかたを、鮮やかに描き出してくれていて、じつに爽快です。きもちいい!何より、真っ白な静けさのなかでコツコツとひびく靴音にしびれました。こんなことしてる場合じゃない気もするんだけど。



たとえばこんな問いがあったとするでしょう?

Q: 目の前に横たわる幅100mの川を手ぶらで泳がずに渡るにはどうしたらいいか?



それに対するエッシャー的模範解答は、こう。


A: ヒョイとまたぐ



知らないうちに刷りこまれた暗黙の前提なんて、生ゴミといっしょに燃やしてしまいたい。そうでもしないと種々の謎にみちた世界の全貌をつかむことなんて、千年たっても叶いっこないのだ。


いま思い出したけれど、「象を冷蔵庫にしまうための3つの手順」も、この手のロジックとしてはよく知られた好例のひとつですね。3つの手順、わかりますか?

2008年3月21日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その35


ではずいぶんとひさしぶりの質問箱ですが、再開しましょう。コロンブスの卵かけごはんさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)鶏卵をテーブルに立ててみんなをびっくりさせたあとは、ごはんにかけて食べるのがよろしい。



Q: 「団結した刑務所から犯罪撲滅キャンペーン」ってどんなキャンペーンだったんですか?



あるコミュニティにおける、いちばん手っ取り早い平和への近道が共通の敵をつくることである以上、利害が完全に一致した彼らの団結力は計り知れないものがあります。何しろ自分たちの快適な暮らしが脅かされているわけですから、その危機感たるや相当なものです。全囚人が奇跡的に意見の一致をみたとき、ペリカン内は過去最高のボルテージに達したことでしょう。こうなると彼らの勢いを止めるのはたとえDIOのザ・ワールドと言えども不可能です。しかしまあ、何が何でも既得権益を死守しようとする役人連中と基本的に考えかたはまったく同じなので、とくべつ不思議なことではありません。僕だってとなりの家に生る枇杷をこっそりとって食べる5月のささやかな権利を失ったら、ほっかむりのうえ高枝切りばさみを駆使するなりして強硬手段にうったえることは大いにありうる。

それはともかく、犯罪を撲滅する上で、脅迫ともとれるアピールだけは絶対に避けたいというのが彼らの最初に掲げたモットーでした。大事なのは説得力と大衆を惹きつける意外性であり、そのためには勝手知ったる脅しの手口よりも、不器用ながらも一所懸命にとりくむ姿を見せたほうが得策であろうと判断したのですね。聞いたところでは、映画の本編前に流れる海賊版撲滅キャンペーンCMの存在も、その判断に少なからず寄与するものがあったようです。海賊版の撲滅より先に不快感で観客を減らしてしまっては元も子もないのだ。

発信地が監獄だからこそ心に響く、真摯にしてストレートなメッセージはもちろんのこと、やるからには世界中の視線を釘付けにしたい。高い経験値に裏打ちされた含蓄としなやかなユーモアに富み、かつ心の底から楽しめる娯楽性を兼ね備えた、革新的なキャンペーンでありたい。そうしてさんざん考えたあげく、彼らが辿り着いた結論がこれです。



A: ミュージカル「僕のお父さん」



内容はご想像におまかせしますが、涙なしには観られません。



参考資料は、国土交通省の道路特定財源ミュージカル「みちぶしん」です。しかし現実のほうがおもしろすぎて勝てる気がしないな。


 *


コロンブスの卵かけごはんさんが選んでくれた1曲は、「話咲く種をまく男」です。どうもありがとう!

ボート 8
蝸牛 7
バミューダ 6
話咲く 6
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 2



 *



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その36につづく!

2008年3月20日木曜日

詩人の刻印(ほぼ)全曲レース 続報その2


わりと長いこと、布団の中でかんかんとした熱を発しつづけていたので、ひょっとして羽化でもするのではあるまいかとどきどきしていたら、案の定ひげが伸びただけでした。まあ、羽根が生えても困るんだけれど。


ともあれ、ようやく回復です。ご心配をおかけしてすみません。温かいおたよりまでいただいて、ぼかァ幸せ者です。ありがとう。ありがとう。


質問箱 その32で登場いただいたラジオ体操交響曲さんが、詩人の刻印(ほぼ)全曲レースに忘れていた1票を投じてくれたので、さっそく加算させてもらいますね。よかった、うれしいです。


ボート 8
蝸牛 7
バミューダ 6
話咲く 5
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 2



 *


それからラジオ体操交響曲さんからは、質問はひとり何回までできるのであるかという、質問のための質問、いわゆるメタ質問がきているのでここでお答えしましょう。

何回でもお好きなだけ、というのがその答えです。なんとなれば、ここを訪れてくれている読者の数にもかぎりがあり、1回だけと規定すればその合計数から反響の少なさとうら寂しさをほんのりと伺い知ることができてしまうからであります。いまさらそんな見栄をはらなくたっていいようなものだけれど、じっさい2つ以上の質問にお答えした例も幾度かあるので、あんまり気にしないでお送りください。

おひとりさま3点限りといった特売的ルールもとくにありません。質問が50個くらいたまったらそんなお願いをすることもあるかもしれないけれど、たぶんそんなことにはならないので大丈夫です。なったらすみません。でも大丈夫だとおもうな。


 *


というわけなので、毒にも薬にもならないことで評判のパンドラ的質問箱、次回からめでたく再開です。いつの間にかブログの生命線みたいになってるのが気になるけど、気にしてもしかたないので忘れましょう。



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その35につづく!

2008年3月17日月曜日

インストアその後とフラインスピン感謝祭のお知らせ


数日間の空白などまるでなかったかのように、土曜日のお話をいたしましょう。


新宿タワレコ、インストアでライブにきてくださった皆々さま、本当にありがとうございました!おもっていたよりもずっと多くの人に囲まれて、関係者一同仰天しつつも感激しきりでありました。何と言っても、タケウチカズタケの「UNDER THE WILLOW -PANDA-」は、当日だけで40枚、というか店頭に並んでいた分ほとんどすべて売り切ってしまうというとんでもない偉業をなしとげたらしく、イベント担当者の度肝を抜いて僕らも鼻高々です。売れすぎだよ!その後に催されたサイン会では、握手を求める人の列がとおく離れた店外の階段までずらずらと50人ちかくも並んでいたというのだから、その熱気たるやおそるべしというか、すごいなあ。タケウチカズタケのソロライブはピアノ弾きとはおもえないハイテンション、サンプラーとカオスパッドを同時に駆使する超絶技巧、ヒップなサウンドと美しいメロディが相俟った、希有にしてドープな音楽体験だと確信している僕も、見ていてじつに痛快な光景でありました。一度目にすればトリコにならないわけがないんだ。僕もちょこちょこいっしょにサインをさせてもらったりして、まるで人気者になったかのような気分も味わうことができました(このさい錯覚でもいい)。人前に立つことはもちろん、パフォーマンスを至上のよろこびとしてきた男ではまったくないので、いまだにステージ上で「これはいったいどういうことなんだ?」とふしぎな思いにとらわれることしばしばなのだけれど、そんな複雑な胸中もひっくるめて歩みを進めようとしみじみ感じた春先の土曜日です。たのしかった。

いつもそんなこと言ってる気がしますね。でもいいんだ。

質問箱にメールをくれた人も幾人か来てくれていて、うれしかったです。どうもありがとう!ちょくせつお会いできるよろこびって、やっぱり格別のものがあります。ライブがすくなくてすみません。



 *


次のライブは4月です。深夜番組的な立ち位置ながらもじわじわと視聴率を上げつつあるはみ出し音楽レーベル FLY N' SPIN RECORDS が、総力を挙げてお送りする感謝祭@渋谷Flying Books!フラインスピンの稼ぎ頭であるSUIKA、2年半ぶりのアルバム「カッコいい」のリリースを記念して行われるこのイベントに、僕もしれっと参加します。アットホームどころかもはやアットマイルームな雰囲気のなかでわいわいがやがやとファットな時間を味わえる貴重な機会です。まだイベント時のフライングブックスにいらしたことのないかたは、どいつもこいつもお誘い合わせの上、ふるってご予約くださいませ。チケットと引き換えに発売前のSUIKA新譜がもれなくついてくる、おトクなお祭りです。

なんといってもSUIKAのライブを観て、笑顔で帰らなかった人を僕は知りません。タケウチカズタケのソロライブを観てぶったまげた人ならわかるとおもうけれど、要は彼が5人いるようなものだからその破壊力は推して知るべしと言えましょう。「カッコいい」というミもフタもないアルバムタイトルがいかに的を射ているか、その目でぜひぜひ確かめてみてください。

ただ、ハコが古本屋さんなので席数があんまり多くありません。予約限定50名であるばかりか、当日券はないみたいなので、早めの予約をおすすめします。来たらぜったい、元気になれるから!


 *


おまけ その1
タケウチカズタケの横でなぜか自分の著作にサインしている古川P




おまけ その2
お尻から2本の何かを発射しようとするタケウチカズタケ



 *


数日間の空白にいったい何があったのか?




じつは高熱を出して今も寝こんでいるのです。

2008年3月14日金曜日

凶器としての海産物、およびインストアライブ


なんだかちくちくするとおもったら、指の腹に乾燥わかめが棘みたいにぷすっと刺さっててびっくりしました。乾燥しているのだから当然とはいえ、わかめが指に刺さるというのはひどく奇妙な事実におもえます。だって、棘だとおもったらわかめなんだよ。この原理を応用すれば凶器になりうるばかりか、犯行後は味噌汁にしておいしくいただけるわけだから、これはたいへんなことを知ってしまった。

何かあったらわかめを疑え!


近況おわり。


10本の指がくちびるの代わりにラップする、「タケウチカズタケと鍵盤の異種格闘技インストアライブ(おまけ付き)」はいよいよ明日です。そのおまけの中には小林大吾のちびライブも入ってます。ぜんぶ合わせて40分くらいのものなので、僕ができるのは2曲くらい。プラスα?お買い物やらんちき騒ぎのついでにふらりとお立ち寄りくださるとうれしいです。

雨、やむとよいですね。

でもこんな雨もひさしぶりなので、やんでしまうのは惜しい気もする。

僕が春をかんじるのはむしろこういうぼんやりした雨です。


わかめか…

2008年3月13日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その34と1/2


「わすれてた!すみません博士」
「博士は留守だよ」
「いるじゃないですか」
「かなり留守だよ」
「使い方まちがってます」
「せめて気持ちくらいは、という意味だ」
「ピス田さんは?」
「四国でさぬきうどん食ってるらしい」
「そりゃけっこうですね」
「今日はなんだ?」
「博士の2007年ベストも聞かれてたんです」
「ベスト?」
「何でもいいみたいだけど、音楽がいいんじゃないですか」
「チョッキじゃないのか」
「チョッキじゃないですね」
「音楽か…」
「なんかありました?」
「じゃあ、これ」




「ミス・スパンコールがくれた名古屋のお土産じゃないですか」
「あの娘はいつもろくな土産を持ってこないな」
「まあ、そういう人ですから」
「これでいい。これが2007年のベストアルバムだ」
「これ、シングルですよ」
「2曲入りアルバムだよ」
「それをシングルと呼ぶんです」
「ダブルのまちがいじゃないのか?」
「聴きました?」
「聴いたよ」
「どんなかんじですか」
「金のしゃちほこピッカピカーっていう歌だ」
「…」
「なんだその顔は」
「…」
「無言で帰ろうとするな。おい!」






みんなで踊ろう






 *


dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その35につづく!

2008年3月11日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その34


フルーチェを食わず飲みこむ伊豆の踊り子、略してフルリコさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)芭蕉のパクリですが、字余りです。



Q: ボクにとって2007年ベストアルバムは詩人某の「詩人の刻印」というアルバムなのですが、大吾さんのベストアルバムはなんでしたか?アルバムじゃなくてもいいです。あ、いや、音楽じゃなくてもいいです。



「詩人の刻印」が年間のベストというのは、スゴいですね。どうもありがとう!生きているといろんなことがあるものだなあ。

質問ですが、するとこれは森羅万象まるごとひっくるめた「2007年のベスト」ということでよいでしょうか。こんな大まかな話もないとおもうけど、切り口としてはかなり意外だしおもしろいのでいくつか並べてみましょう。

1. ×××の肉
2. キンコンではなくコンキンと鳴る振り子時計
3. J-WAVE
4. 富士山と月食
5. Jerline & Friends "Best Of Friends"
6. 灯台守の話
7. 落下するトイレの照明(危険)
8. とあるメジャーアーティストのオフィシャルウェブサイト

思い出しながら書き上げてみたけれど、だいたい順位どおりです。アルバムも1枚入ってますね。では8位からちょっとずつ解説していきましょう。8位ってまた中途半端だな。

(8)は、僕がトップページを手がけたwebデザインのお仕事です。とある事情からフラインスピンの面々や古川Pにさえそのアーティスト名を明かしていない極秘ミッションであります。べつに戒厳令が敷かれているのではなくて、単に僕が話したがらないだけなんだけど、何しろフリーとはいえ野外ライブに2万人を動員したそうだから、その名を明かさないほうがよっぽどもったいないくらい有名な人です、おそらく。この先こんなお仕事は二度とないんじゃないかという気がします。忘れたいような、忘れてしまうのは惜しいような。でも言えない。

(7)は、トイレの天井が雨漏りで腐って照明が配線ごと落ちてきた、というだけの話です。直すとなると改修に近い大工事になるらしいので、今もぶら下がっています。どう考えても危険なんだけど、もう慣れました。

(6)は、待ちに待ったジャネット・ウィンターソンの新刊ですね。訳者の岸本佐知子さんも、僕にとってはその名があるだけで信頼できる翻訳家のひとりです。

(5)は、あ、これアルバムですね。そっか、じゃこれベストアルバムになるんだろうか。でもリイシューというか、お蔵入りになっていた音源の復刻なんですよね。シカゴの大物プロデューサー、Clarence Johnson(大好き)と長きにわたって手を組んでいたJerline Shelton というソングライターが70年代後半に手がけた唯一のリーダー作です。

去年発売されたアルバムでよく聴いていたのは、Ledisi の "Lost And Found" です。あとPercee P の "Perseverance" もよかった…けどそういえばそういう話、聞かないな。

(4)、富士登山はフラインスピンレコーズ無茶部による部活動のひとつです。富士山の中腹で見た月食の一部始終は、人生観を変えかねない衝撃的なビジュアル体験でした。もう二度とこんなシチュエーションで見ることはないかもしれないと思うと、なおさらです。

(3)のJ-WAVEは…言わずもがなですね。

(2)は、去年もっとも大笑いした事件です。あれほど笑った記憶って近年ほとんどありません。どのみちその可笑しさを文章でなんて再現できないのであきらめますが、シチュエーションからタイミング、そしてその結末まで、すべてが完璧に揃った奇跡的な事件でした。現実世界で頭に金だらいが落ちてくるのと同じくらいのインパクトです。この思い出は、大事にしたい。ウチの時計の話ではありません。

問題は(1)ですが、これはとある水生ほ乳類の肉です。文字にすると「キャー!」というかんじになるのであえて表記を避けました。茨城の港で切り身としてふつうに並んでいた事実がまず信じがたい。市場のおじさんに調理法を教わってわりとおいしくいただいたけれど、これもこの先、一生口にすることはないでしょう。クジラのほうがおいしいし、それ以上にどうもチリチリとした疑念が未だにぬぐえません。分厚い体皮を記念にとってありますが、すっかりひからびてプラスチックみたいになりました。良し悪しではなく、これはもう100%、衝撃度に限った話です。


というわけで2007年のベストは



A: ×××の肉です。



核心にふれてないことばかりで何だかすみません。そもそも聞きたかったのはそんなことではないとお叱りもうけそうですが、いつものことと言えばいつものことなのであんまり気にしないでください。

そんなフルリコさんが選んでくれた1曲は、「腐草為蛍」です。どうもありがとう!まさかここにきて1票が入るとおもいませんでした。うれしいです、すごく。

ボート 7
蝸牛 7
バミューダ 6
話咲く 5
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 2


 *


質問もそろそろ尽きるので、質問以外でいただいたメールにぽちぽちと返信していこうとおもっています。なかなかお返事できなくてごめんなさい。ぜんぶ大事にとってあります、もちろん。


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その35につづく!

2008年3月9日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その33


昨夜はタカツキせんぱいとおいしい餃子を食べるべく、いい年こいて池袋駅構内を全力で疾走しました。ラストオーダー10分前だったのです。ぶじ店にすべりこんだときの達成感といったら、じぶんが誇らしくさえありました。いくつになっても、餃子のために力いっぱい走る大人でありたい。


 *


鉛筆とキン消しさんからのしつもんです。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)字なんか消えたためしないですけどね。



Q: 唐辛子の辛さは、英語で”hot”ですが、ワサビの辛さは、英語で何と言いますか?



額面どおりにお答えするなら、ワサビも唐辛子と同じく"hot"ですが、ここではそんな教育テレビ的模範解答などはなから望まれていないことくらい僕もじゅうじゅう承知しています。だいたい、あの粘膜にムチ打つような刺激と困惑を "hot" の3文字なんかで言い表そうとするからムリが生じるし、みんな首をかしげることになるのです。

したがって僕はワサビの辛さに「hot」ではなく、むしろ「emergency」を対訳として当てることを提案します。


「My nose is an emergency. (わたしの鼻が緊急事態です)」
「医者を呼びますか?」
「はい、医者を呼んでください」


というかんじで使いましょう。打って変わって緊迫した雰囲気が伝わってきますね。ワサビをワサビたらしめているのは、まさしくこの緊迫感なのです。東洋の神秘ここに極まれりと言えましょう。



A: My nose is an emergency. (わたしの鼻が緊急事態です)



この際、正しさは問題ではありません。


 *


鉛筆とキン消しさんが1票を投じてくれた曲は「蝸牛の憂鬱」です。どうもありがとう!さいごのさいごで再び混戦模様ですね。

ボート 7
蝸牛 7
バミューダ 6
話咲く 5
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 1


 *


フライングブックスで古本の上げ下ろしを手伝って全身が筋肉痛です。まさか6時間ぶっ通しとは…。



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その34につづく!

2008年3月7日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その32


3月15日(土)のインストアライブ@新宿タワレコに来ると、かなり豪快なばらまきが行われるという、聞き捨てならない情報が入ってきました。ちょっと手順がややこしいのが玉にキズですけど。

えーとすくなくとも、

1. ライブがタダで観られる。

それからこれは先着何名と限定されるようですが、

2. 早く行けばSUIKAの新譜「カッコいい」のMIX SAMPLER CD-Rがもらえる。

さらに、

3. 当日までに新宿店で「UNDER THE WILLOW」を買うとついてくる整理券があれば、さらにアウトテイク集「オマケ WILLOW -panda-」がもらえる。


けっきょく何がもらえて何がもらえないのか僕もいまいちよくわからないのだけど、なんだかいろいろおトクっぽいという感じだけはひしひしと伝わってきます。大盤振る舞いというか、銀盤振る舞いというか、これだけあればむしろ小林大吾のライブいらなくね?


 *


ラジオ体操交響曲さんからのしつもんです。(今回は博士ではなくご本人によるペンネームです)どうもありがとう!



Q: 夜が終わると本当に朝が来るのか?と毎日疑問に思うのですが、結果、例外なく朝は来ます。これ、例外ってありますか?




残念ながらと言うべきかそれとも、心配無用と言うべきか、例外はいっさいありません。遅刻してきたり、三歩進んで二歩下がるといった不審な挙動が見られることはあっても、(契約上)朝はかならず来ることになっているのです。急病かなにかで定時に昇れない場合には、代理の太陽が駆けつけるよう手筈もきちんと整っています。その点ぬかりはありません。僕も太陽系に就職したことがないからなんとも言えないけれど、数十億年ものあいだ毎日欠かさず昇っているのだとすれば、勤務形態はおそらくシフト制です。4週8休残業アリ、かどうかはともかく3人しかいないように見えるBlue Man Groupが実際には40人くらいいるのと同じです。さらにもう一歩、世界のしくみに踏みこんで言うならば、太陽とて、沈めば家でちびちびと晩酌をたしなみ、酔えば女房のくちびるに見とれる、しがないいち勤め人にすぎないのです。古事記を読みながら天岩戸のくだりで苦笑いする夜もあるだろうし、定年になったら銀河の外へ旅に出ようと、夫婦で第二の人生を思い描いているかもしれません。げに美しきはめおとの愛かな、というかなんというか、そんなまとめかたも質問に対してアレですけども。



A: たゆまざる不断の努力によって、昇る朝日に例外はありません。



一度だけ、このまま朝が来なければいいのにとおもったことがあります。もう10年以上前のちょっとせつない話です。そのときも朝はいつものように満面の笑みを浮かべてやってきたし、いつだってニコニコと燃えさかる朝日に繊細な気遣いをのぞむほうが馬鹿げているとつくづくおもったことでした。だからもしこの先、スポンサーがおりたとかチケットが売れ残ったとか他のどんなにのっぴきならない事情であれ、朝が来ないなんて日が一日でもあれば、O.J.シンプソンの弁護士をやとってでも訴えます。甘酸っぱい青春の1ページをとりもどすべく、最高裁までとことん争うつもりです。




 *


だんだん自分でも何を書いているのか、わからなくなってきている気がします。



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その33につづく!

2008年3月6日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その31


春がちかづいていますね。生まれてこのかたツクシを見たことがない(!)というミス・スパンコールは今年も紙に奇妙なツクシの想像図を描きながら、ああでもないこうでもないと頭をひねっています。


 *


フランダースの犬将軍さんからのしつもんです。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ハイカラな5代目ですね。



Q: なんで人間には、お腹の中にいたときの記憶がある人がいるんでしょう?



「という質問です、博士」
「ダイゴくんはおぼえてるの?」
「僕はおぼえてないです」
「ああ、じゃ書類にサインしたんだね」
「書類?書類って何ですか」
「出生手続きだよ。胎児という胎児はすべからくこれを経て体外に出る」
「手続きって…生まれるのに許可がいるんですか」
「国外に出るのだって出国審査があるだろう」
「それとこれとは別の話ですよ」
「同じだよ」
「ちがいます」
「おぼえてないくせに困ったやつだな」
「常識と非常識の区別くらい僕にもわかります」
「ほ乳類はみな胎内で手厚すぎるほどのサポートを受けてるんだ」
「それはまあ、そうですね」
「それが体外に出ると一切受けられなくなる」
「当然そうなりますね」
「われわれはそれに同意しなくてはならんわけさ」
「でも母親がいるじゃないですか」
「そう。ようするに胎内から母親へ業務を引き継ぐための手続きだね」
「胎内だって母親の一部じゃないですか」
「管轄がちがうんだ」
「同じです」
「母親が胎内のすべてを把握しているなら超音波で様子をうかがうなんてことはしなくていいはずだ」
「おなかの中なんだからあたりまえでしょう」
「だって君もサインしてるんだよ」
「サインなんかしたおぼえないけど…」
「おぼえてたら意味ないからね」
「何の書類でしたっけ?」
「胎内において知り得た機密の一切を口外しないという、言わば同意書だな」
「機密…」
「サインをすると、そのあとにトンカチが待ってる」
「トンカチ?」
「記憶をあやふやにするためのあやふやした処理をそう呼ぶんだ」
「漠然としすぎて気味がわるい」
「それがすごく痛いんだよ」
「痛い?」
「すごく痛い」
「どれくらいですか」
「母体に影響を及ぼすくらい」
「ひょっとしてそれが陣痛なの?」
「そのとおり」
「なまなましくて泣けてくるなあ…」
「それだけ痛い目に遭うということは、それを逃れる輩も当然出てくるわけだ」
「事前に知ってたら僕も逃げたい」
「監理官のなかには話のわかるやつもいる」
「でも渡せる賄賂とか何もないじゃないですか」
「すっぱだかだしな」
「どう話をつけるんです?」
「それこそ機密レベルの話さ、ダイゴくん」
「何をいまさら!」
「しいて言うならお互いさまってとこだね。監理官には監理官の思惑があるし、人生のかけひきはそこから始まってるんだ」
「気になる…」
「天寿をまっとうすればいずれわかることさ」
「博士はどうしてたんですか」
「どうしてたって…そうだな、じゃ毛氈苔に電話してみるか」
「モーセン?」
「監理官のひとりだよ」

ピ、ポ、ピ、プ
プルリルリ
カチャリ

「あ、モーちゃん?ムーちゃんだけど」
「ムーちゃん?」
「あのね、ちょっと話をしてやってほしいんだ。うん、まあ…似たようなものだな。たのむよ。うん。だいじょうぶ。ああ、そうだね。じゃあ用意しとくよ。へいきへいき。バカだから」
「なんかすごく失敬なことを話してる気がするな」
「ホラ」
「あ、え?ちょっと、えーともしもし…。ハイ。イエとんでもないです。はぁ。…そうなんです。ハイ。ええ。でもその…えええ?そうなんですか。いや、博士らしいというか、でも…ハイ、はぁ。なるほど…わかりました。ハイ。ありがとうございます。ハイ、それでは」
「なっとくしたかね?」
「ええまあ…イヤびっくりした」
「そりゃよかった」
「その注射器なんですか」
「刺すんだよ、こう」

プスリ

「痛ッ。なに?なんの注射?」
「献血みたいなものだよ」
「いやいや逆でしょ!注入してたらればるてのぷ」

ガクリ

「おやすみ」



A: 分娩の際、胎内で同意書にサインをしたか否かです。



 *


2月のBen's Cafeにも来てくれていた、フランダースの犬将軍さんの1曲は「手漕ぎボート」です。どうもありがとう!そして詩人の刻印(ほぼ)全曲レース、とうとうバミューダが首位から転落です。

ボート 7
バミューダ 6
蝸牛 6
話咲く 5
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 1


 *



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その32につづく!

2008年3月4日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その30


とうとう30回目です!おめでとう。ありがとう。


 *


さかさまつげの哀しみさんからのしつもんです。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)



Q: 淡々とした日々にはどんな刺激を与えるのがいいでしょうか?



デザインの勉強をされてるんですね。「学期末(約1ヶ月半)はひたすら作業に打ち込まなければなりません。追われながらやる作品作りは拷問です。しかも毎日同じような作業の繰り返し。(徹夜→作品提出→徹夜→作品提出→・・・・∞)」という無限のループからどうにかしてエスケイプしたいということですけれど、残念ながら僕がおもうに、いずれデザインを生業とした場合、おそらく学期末どころか年がら年中こんな感じだとおもいます。

なんとなれば、SUIKAのデザインすべてを丸投げされている僕が今まさに、こういう状況に陥っているからです。

だから、さかさまつげの哀しみさんの苦しみ(ややこしいな)は他の誰よりもよくわかります。いつまでたっても終わる気がしない!ということですよね?僕もそうです。もうホント、まったくもってそのとおりです。コンマ何ミリの微調整を延々とくりかえす不毛さといったら、ひっくり返すちゃぶ台がいくつあっても足りやしません。ほとんど賽の河原みたいなものですね。その結果が目に見える形でドーンと表れてくれればいいけれど、そうでないことのほうが断然多いし、完成して真っ先に浮かぶのはいつも、「終わった!」という清々しいきもちではなくてむしろ、「これでいいよな?」という奇妙な疑問形です。これが拷問でなくていったい何なんだ!

というようなことを、そういえばずいぶん昔からくり返してきている気がするな…。おかしい。そんなはずはないのに。

しかしよく考えてみたら、「拷問」という言い回しはそれ自体がすでに大きな刺激であることを示唆している気がします。何事もなくおだやかで静かな日々を、決してそうは呼びません。あらためてこれまでの歩みを顧みるにひょっとするとモノづくりというのは、拷問の先にあるあくまでマゾヒスティックな快楽によって突き動かされるものなんじゃないだろうか?だとすれば女王様にムチ打たれ、低温ローソクにのたうつ日々を「淡々」と表現するばかりか、さらなる刺激を欲するのだからこれは僕も含めてかなりの末期症状であると言えましょう。我ながら知りたくない事実を知ってしまったようでショックです。

こうなると果たしてどれくらい破壊的であればそれを刺激と呼びうるのか、同じ穴の狢である僕には皆目見当もつきません。おそろしくて想像もできないし、部屋のすみっこでぶるぶるうち震えながら、この先天寿をまっとうできることをただひたすら天に祈るばかりです。いつの間にか電気椅子がマッサージチェアくらいにしか意味をなさないカラダになってしまっていたなんて!



A: これ以上の刺激は命にかかわります。



とりあえず、AVでも観て忘れましょう。忘却はいつだって次への扉を開いてくれるものです。


それにしてもパンドラ的質問箱とはよく言ったものだ。


 *


そんなさかさまつげの哀しみさんの1曲は、「蝸牛の憂鬱」です。「群を抜いて」と一筆添えてありました。どうもありがとう!首位争いが激化してきました。


バミューダ 6
ボート 6
蝸牛 6
話咲く 5
紙屑 3
ユリイカ 3
アンジェリカ 2
腐草為蛍 1


 *




dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その31につづく!

2008年3月3日月曜日

シロノワール嬢の行方を追え! その3


僕はそれをすごく前向きな最大限の賛美として、「100%のB級感」と言ったのです。決してA級にはなり得ないし、またなろうという気もさらさらない、そしてだからこそ仄かな影のさす美がそこに花ひらくと思っていたし、今でもそういうモノの見方は揺らぐことなく僕のなかにはあるのだけれど、ことこの件に関してはパウル・クレーの絵を「このヘタウマ感がいいよね!」としたり顔でうなずくのに近い物言いであることに気がついて、絶望にも似た後悔の念にとらわれました。

失礼じゃないか、シロノワールに!あやまれ!床に額をすりつけてあやまれ!すみません。

何しろ





1/3を口いっぱいにほおばり終えてから、「あ、写真」と思い出してあわててカメラを取り出す動転ぶりです。

舌の上で優雅に舞う天使たちの、高らかなラッパの音色とともに享受する至福の味を、あなたはこれまでに一度でも経験したことがあるだろうか?

プリア・サヴァラン言うところの「美食家判定器」のように広く万人の舌を測るものではないにしろ、これが「フラワーズ判定器」としてほぼ絶対的に有効な一皿であることはまちがいありません。この皿を前にしてマタタビにまみれた猫のごとく恍惚の表情を浮かべることがないならば、フラワーズの一員になること未来永劫決して能わずとここにわたくしは断言し、うやうやしく宣言するばかりか、あまつさえ広言するものであります。

シロノワール、おまえは美しい。




おまけ

ミニシロノワールを余裕しゃくしゃくで味わうフラインスピンレコーズの重役たち




 *


そして前後がすっかり逆になってしまったけれど、この旅2番目にだいじなライブ@名古屋鶴舞K.D Japon "Flying Books Night (あるいは山路和広ショー)" はぶじ終了しました。来てくれた人、どうもありがとう!


思っていた以上に小林大吾を知ってくれている人がいてビックリしました。それもこれも、呼んでくれた cesta の山守さん、YEBISU ART LABO の岩上さん&黒田くん のおかげです。名古屋における小林大吾の認知度ってほとんどこの2店の店内BGMによるものだとおもいます。すごいですね。どちらも渋谷Flying Books と同じにおいのするドープ&キュートな古書店なので、覚王山や丸の内近辺に足をお運びの際はぜひお立ち寄りください。

それから、わざわざ東京から足を運んでくれた人もいて、感激しきりでした。だって2週間後には新宿でインストアがあるのに!ほんとうにうれしかったです。ありがとう。



でも、なんていうか、これまでは「ちゃんとやらなくちゃ」という気持ちでいっぱいいっぱいだったのが(何せライブというものに縁のない男です)、この夜は初めてライブを心の底から楽しめたような気がします。K.D Japon というハコの特異な温かさがすごく大きいとは思うけれど、こんなふうに思えたことって全然なかったから、僕にとってはこの先いつまでも胸にのこるとてもだいじな夜になりました。

また名古屋行きたいです。行けるといいな。


ちなみに、ウーリッツァとサンプラーとカオスパッドを同時に駆使するタケウチカズタケの超絶ソロライブはぶっとぶくらい峻烈な、SUIKAとはまたずいぶん異質のカッチョ良さなので、機会があればぜひ足を運ぶことをおすすめします。いやホントに、目を疑うから。

タカツキさんには陶酔する女子が全国各地にわんさかいるので、ここでどうこう言わなくてもいいや。彼らが心を通わせながら同じ月をみているとき、わるいけどこっちもひとりでその月をみてるんだよ!

K.D Japon に備えつけてあるウーリッツァのピアノ(エレピではない、年代不明のヴィンテージピアノ!)をバックに、シンプルなベースラインで弾き語る「同じ月をみている」のうつくしさといったら、ずるいよな、あんなの。