2020年12月31日木曜日

エンドロールのクレジットのみで紡ぐここだけの物語

気候の大きな変動と生態系の絶え間ない破壊と消失、目に見えない最凶の厄災に見舞われたすべての人類を除けば、今年も地球はおおむね健康、もしくはせいぜいちょっと体調を崩したくらいであったと申せましょう。太陽なんか体調どころか、何があろうと常に同じ顔で「おっすおっす」と毎朝のんきに昇ります。われわれはまったく、じつに小さい。

今年、個人的に最も大きな教訓として心に留めておきたい自分の変化は、黒いマスクを抵抗なく着けるようになったことです。かつては街中で見かけるたびにギクリとさせられるところがあったので、そのころの自分にどれだけ言葉を尽くして説得しても絶対に信じますまい。

こうあるべきと日々疑いなく信じていることは、じぶんがおもうほど強固なものではないかもしれないばかりか、驚くほど簡単にひっくり返るものかもしれない。頭が硬化しがちな中年にはとりわけ大きな教訓です。

それは拡張すれば、「正しい側にいると考えるわたしたちは、果たして本当に正しい側にいるんだろうか?」と自らの日々を根底から問い直すことにもつながります。そして僕らは日頃、びっくりするほど本当にそれを疑いません。「そうあって当然」という視点は、イエスとノーのどちらであっても同じくらい心細い。

少なくとも何度となく立ち止まって、そうだよな、ちがうかもしれないよな、と受け止める機会の多い年であったことは確かです。

常にがらんとしてとくに語ることがない僕の日々からすると、今年はよりがらんとしてすっからかんになってもよさそうなものですけれども、というようなことを数十年繰り返しているある種のプロフェッショナルなわけですけれども、そういえばそれでもふたつみっつはお知らせもありました。

純平さん、カズタケさんとの solo solo solo TOUR から生まれたアルバム「the 3」のサブスク解禁、タカツキをフィーチャーした「化野/ADASHINO of the dead」の公開、それから小林大吾のアルバム4枚が満を持してすべてサブスク解禁になったことです。さすがに今年はライブのない年になるとおもったら、アフター6ジャンクションスタジオライブもやらせてもらいました。あらためて振り返るとかろうじてそれっぽいことをした気がする一方、現時点でできそうなことは全部やってしまったのであとはもう何も出ないという、さよなら感が募ります。
しかしまあ、僕の人生には常にエンドロールが流れているので、いつも通りと言えばいつも通りです。本編を観た記憶がないけど、いったいいつどこで上映していたのか、責任者出てこいと言いたい。

きっとまた来年も、同じエンドロールが流れています。そしてそこに記されているクレジットには、あなたの名前も含まれています。いつ途切れてもおかしくないのになぜか細々とせせらぎのように今も流れつづけているのは、そのおかげです。静かで目立たないけどあなたがいてくれるから今も終わらない、エンドロールで紡ぐひとつのささやかな物語がここにあります。出演してくれてありがとう。

あ、そうだインスタも始めたんだった。それはニュースだ。

来年は、そうですねえ、お目にかかる機会がまた巡ってくればとおそるおそるおもいます。せめて来年末も今観ているのと同じエンドロールが変わらず流れていますようにと他人事のように願うばかりです。あとそうだ、面倒なことこの上ないので、ブログへのアクセス不可をどうにかしたい。

それはまあそれとして、よいお年をという感じでもないし、どのみち数日たてば新年なのでまたすぐお目にかかりましょう。

よし、解散!風呂入れよ!そしてゆめゆめ油断召されるな!


2020年12月26日土曜日

2枚のタイルは慰安旅行の夢を見るか?

ソーシャルディスタンスの図

2020年はなんというかまあ、人類史上稀に見るレベルでいろいろあった、まさしくそのためにどこもかしこもいろいろなかったというか地球規模でぜんぶ丸ごと水泡に帰した1年であり、それどころか今なおその渦中で解決の糸口がまったくと言っていいほど見えていないわけですけれども、それでもしいて言えば安田タイル工業的にはひとつ、わりと大きなニュースがありました。

去年の秋ごろ完成した安田タイル工業待望の支社ビルに先月だかいつだったか、弊社専務がとうとう視察にやってきたのです。 




 遅えよ。できたの去年だぞ。
 
世界に向けて遠吠えを! 

何年たってもスタートアップなルームランナー的足踏み先進企業、安田タイル工業がパーッと派手にあれこれやってやった気になる季節が今年も巡ってきた!2019年12月以来となる今回も、専務と社員、総勢2名の大所帯で

 繰り出せるはずもありません。 

世界各地で移動を制限される大禍の、今がまさにど真ん中です。謹慎という単語が辞書にない安田タイル工業でさえこの状況下における「いいからパーッとやろうぜ」な姿勢が不謹慎きわまりないことくらいさすがにわかります。鼻歌まじりで慰安旅行など、常識的に考えてとてもできるわけがありません。 

※これまでの年末興行については以下をご参照ください。
2010年
2011年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
2018年 前編
2018年 後編
2019年

実際のところ弊社の慰安旅行は観光地どころか人類との接触を極力避ける傾向があるし、会食に見えて専務と主任がふたりとくに話すこともないまま黙々と箸を口に運ぶだけだし、旅行というよりむしろ唯一にして無二と言えなくもないくらい全集中の呼吸、じゃなかった全事業中のウェイトをほぼこれだけで占めるほど重要かつ空虚な業務です。だいたい思い返してみればハッピーだったためしもついぞありません。

 しかしそれでもやはり躊躇われるものがあります。また良識ある大人としてもそうあるべきです。何と言ってもわれわれは世界中のタイルを導くための規範、ロールモデルであらねばならないという、忽せにできない重い責務を負っているのです。

急かずともそう遠くない未来にはまた大手を振って旅することになるでしょう。明日も必ず日は昇ります。われわれはただ目を閉じて、その日が来るのを夢見ていればよいのです。

旅する夢を見ています

焼きスパムの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

まだ焼いています
(注:写真はイメージです)

ちょっと燃えすぎた夢を見ています
(注:写真はイメージです)

レアな交通系ICカードの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

不可視トイレの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

用が足せるバイクの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

自転車の夢を見ています
(注:写真はイメージです)

モテそうな夢を見ています
(注:写真はイメージです)

鮮烈な夕焼けの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

全社員が集結する夢を見ています
(注:写真はイメージです)

ソーシャルディスタンス

ソーシャルディスタンス

海峡の夢を見ています
(注:写真はイメージです)

電話する夢を見ています
(注:写真はイメージです)

海中トンネルの夢を見ています
(注:写真はイメージです)

ある県境の夢を見ています
(注:写真はイメージです)

乗客がわれわれしかいない船に乗る夢を見ています
(注:写真はイメージです)

星の王子様になる夢を見ています



日本海の夢を見ています
(注:写真はイメージです)

雪が融け残る夢を見ています
(注:写真はイメージです)




♪パ〜パラララ〜(エンディングテーマ)


飽くなき探究心と情熱を胸に、安田タイル工業は今後も逆風に向かって力強く邁進してまいります。ご期待ください。

安田タイル工業プレゼンツ「慰安旅行に行ったような気になる話、もしくは夢」 終わり

2020年12月25日金曜日

下劣な思いつきを新鮮に見せる低温殺菌アプローチ


それにつけても本当にしみじみとありがたいのは、今もフォロワーがそばにいてくれることです。数えるまでもないくらいほんのわずかであっても、たとえそのうち半分が案山子やマネキンであっても、あるいはモグラやカエルであっても、何なら草とか苔であっても、これに勝るものはありません。どう考えてもあるとおもうけど、ここでないと言いきることこそ……何があって何がないのか今ちょっと忘れてしまいましたが、とにかくこの広い宇宙に対していろいろどうもありがとうということです。

そう、こうして実際ほとんど何もしていないのにさも忙しそうに活動しているかのように受け止めてくれるからこそ、僕もさも連日忙しそうに活動しまくっているかのような顔をして流れてもいない額の汗を拭いつつ「体がふたつあればなあ!」とか言ったりして体ひとつでもむしろ余る現実を忘れていられるのです。はい、そこのカエル、気ままに飛び跳ねない。ほらカラスも案山子をつつくのをやめる。おとなしく人の話を聞きなさい。もしくは人を連れてきなさい!

さればこそ僕もその気持ちに応えなくてはなりません。そんなわけで始まった、わけではなかった気もするけど気づいたらだいたいそういうことになっていた、当ブログにおける転売屋殺到の超絶大ヒット御礼企画でもないことを錯覚でスマートにカバーする恒例の年賀状キャンペーンを、冷える夜更けの街道沿いにぽつりと明かりを灯す屋台的な立ち位置で今年もお送りいたします。


ご希望のかたは例によって例のごとく、件名に「牛にやさしいハッピー牛乳」と記入し、

1. 氏名
2. 住所
3. わりとどうでもいい質問をひとつ

上記の3点をもれなくお書き添えの上、dr.moule*gmail.com(*を@に替えてね)までメールでご応募ください。

締め切りは12月29日の火曜日です。

応募多数の場合は抽選となります。ただし、みんながおもうほど多数だったことはありません。「みんながおもうほど」というのは「周りに知ってる人もいないし、仮にいたとしてもブログまで見てる人はさすがにごく一部だろうからなあ……でも、ちょっとはいるかな?くらいのことであり、ありていに言ってそれよりも多くはないという意味です。ふるってご応募くださいませ。

今年もありがとうー!

2020年12月18日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その306


ブログにアクセスできない問題がいまだに放置のままなので、今回も共通の知人に間を取り持ってもらうような形でこれを書いています。いいかげんどうにかしたいのですが、人生において随時更新されるいいかげんどうにかしたいことリストの最下部にあるのでどうにもなりません。このいいかげんどうにかしたいリスト自体、いいかげんどうにかしたい。

あたためマスカットさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)


Q. 私は思い込みかもしれないけれど確かめる術もない前世の記憶があります。ダイゴさんには前世の記憶みたいなもの、おありですか?もしあれば、その記憶とどう付き合っておられますか。私はその記憶に時々話しかけています。


ふむふむなるほど、これはなかなか興味深い質問です。そして肝心の、前世の記憶については何も記されていないと……なるほど……。

いやいやいやいや、そこじゃないですか!一番気になって知りたいのはそこですよ!

たとえばですね、「わたし脱いだらすごいんです」って言われたらそりゃもうどれどれちょっとそこで脱いでごらんなさいって話になるじゃないですか?そんで実際に確かめてみて、ワーオってなるわけじゃないですか?そうでないならそれ以上踏み込みようがないし「ほう……」としか言いようがないわけですよ!バーでたまたま隣り合わせて、どちらからとなく会話を交わしたりして、そこからワンナイトアフェア的なめくるめくアレへと歩みを進めるためにはやはりどうしたってもうひとふんばり必要であると、カウンターを拳でドンと叩きながらひとり取り残されたわたしは言いたい。

いや、待てよ……これはつまり「気になる?じゃこの続きはわたしの部屋で……」みたいなことなのか?それならそれで、うむ、なるほど、そうですな、ふふふ……わるくない。たしかに全然、わるくない。

これが質問箱でなければの話ですけども。

あと僕下戸なのでバーとか行かないですけど。

前世の記憶については、そうですね、そういうこともあるだろう、とわりとストレートに受け止めているほうです。物心がつく前にそういう、かつて存在した当人しか知らないような話をして周囲を不思議がらせながらも、成長するにつれて次第にその記憶を失っていく子どもたちがいると聞いたことがあります。とすれば大人になっても忘れずにいる人がいても全然おかしくはない。ただまあ、前世というとどうしてもスピリチュアルな響きを伴ってしまうので、個人的には「生まれる前にいた自分」くらいの受け止め方ですね。あっていいし、むしろあってほしいとさえおもっているところがあります。

僕自身は、たとえば目にした情景を伴うような、そういう記憶はありません。ただ、前世の名残と言われれば納得してしまうような、不可解な習性なら今もあります。

昔から誰に話しても意味がわからないという顔をされますが、40℃から41℃の風呂に異常な不安を抱く、というものです。それくらいの温度の湯につかると、恐怖に近い不安を抱いて目が泳ぎ始めます。なぜと言われてもまったくわからないし、矯正できるものならそうしたい。でも未だに変わらずです。

具体的には「このまま素っ裸で外に出なくちゃいけなくなったらどうしよう」という不安です。何言ってんだと僕自身もおもいますが、なぜか必ずそう苛まれます。昔は温泉とか銭湯をそれが理由で避けていたくらいです(今はだいぶ平常心で入れるようになりました)。

とにかく解せないのでかつて実験してみた結果、42℃を超えると不安が消えることはわかっています。それはただ熱いだけで、怖くはない。もしかしたらもっと絞れるかもしれないけど、不安をもたらすのがかなり限られた範囲の温度であることは確かです。すくなくとも何者かの手で煮えたぎる湯にぶち込まれた経験からくる防衛反応ではないとおもわれます。

もちろん、物心つく前の何らかの記憶が歪んだ形でこびりついている可能性もあります。でも、なんだろう、冬場に濡れたまま体も拭けず裸で外にいて震えるイメージなんですよね。

なのでたぶん、生まれる前に火事かなんかで風呂屋から逃げたとか、もしくはそれで命を落としたとか、そんなとこかもしれないな、とひとまず結論づけています。

前世っぽいでしょ?

どちらかというとフィジカルな記憶なので付き合い方と言ったらなるべく避けるくらいしかできないですが、話しかけられる記憶はちょっといいですね。背中を撫でるようなかんじでね。

というかまじで何が何だかさっぱりわからない上に気になって夜もいつも通りしか眠れないので、僕がときどき店番をしている古書店アルスクモノイでコーヒーなんか飲みつつぜんぶ洗いざらい話しに来てください。


A. つかると恐怖に苛まれる風呂の温度があります。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その307につづく!