2010年6月29日火曜日

死にかけのiBookとやわらかアイス枕



10日もブログを放置していたのには3つの理由があります。


1. そもそもが筆無精です。


あれだけの文量を書いて筆無精はねえだろうとお思いかもしれませんが、書き始めるとどうしてもいつもあれくらいの量になってしまうので、いったん間を置くと逆に書く気がキレイサッパリ消え失せてしまうのです。いえ、本当に。かといって今日のできごとをただずらずらと羅列するのも気が引けるから、ときどきこうして放置されることになります。多くの人はホントに更新がマメでいつも感心してしまう。ことばに対して敏感なわりには「書かずにいられない」という欲求が決定的に欠落しているのです。なぜだろう?twitterに手を出さないのもそれが理由です。


2. iBookが死にかけています。


デスクトップPCが歯医者みたいな音をたてて息絶えたあの日から(1枚目のアルバムデータはこのためにすべて消失しています)、サブで使ってたiBookをしぶしぶメイン機に昇格させたのだけれど、これも今やひとつひとつの処理がまるで太極拳のようにのろのろとして、まともに作業ができなくなりつつあります。加えてここ数日の暑さです。本体のある部分だけやたらと熱を持つから起動するにもなんだか気を遣うし、しかたがないからふだんは飲まないビールを片手にワールドカップをぜんぶ観たりしています。チリ-ブラジル戦は2点入ったところでぐうぐう寝てしまったけれど。

たぶんこのiBook、夏をのりきれないんじゃないかとおもう。


3. アートワークをアップデートしています。


そんな瀕死のiBookに、冷凍庫でキンキンに冷やした「やわらかアイス枕」を当てながら、どうにかこうにかだましだましつづけている作業がこれです。

やれそうことはだいたい自分でまかなう僕の場合、写真家やイラストレーターにジャケットのアートワークを依頼したり、さらにそのアートディレクションとこまごました情報整理をデザイナーに託したりする必要がない、ということはつまり対外的なコストがゼロなので、追加で入稿するたびに好きなだけデータをいじりまくれるというとても大きな利点があります。「詩人の刻印」の初回プレスとそれ以降とでアートワークががらりと変わっているのもそのためです。「自分への賛辞」をみずからデータ配置する(ステッカーとか帯のことです)といういたたまれない状況もあるにはあるんだけど、それを差し引いてもこの「遊びの部分」は個人的にすごく大きい。こんなことしてよろこぶのは僕だけだとしても!

それでまあ、ここのところずっとこつこつこしらえていたのです。


ジャケットを除いたアルバム2枚分の装丁をまるまる差し替え!じぶんの思い描くアートワークの領域に、ちかごろようやく手が届くようになってきました。並べると雑誌の特集記事みたいでたのしい。


 *



いうわけで話の順序が逆になってしまったけれど、「オーディオビジュアル」と「詩人の刻印」がさりげなく再プレス決定です。とくに「オーディオビジュアル」は「詩人の刻印」の初回プレスとくらべて3倍(当社比)の数を用意していたのだけれど、おかげさまでもうちょっとだけプレスできることになりました。本当にどうもありがとう!

これによって裏ジャケに記された「著作権法上の奇妙な注意」も5パターンにふえました。帯で隠れないように配置してあるので(←買わなくても読めるように毎回いちおう気を遣っているのです)、お店で見かけたら確認してみよう!店頭に並ぶのははやくてもたぶん8月とかですけれども。


 *


ああ、雨がふってきた。降りかたが夏っぽいな。

2010年6月19日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱リターンズ4



前回までのあらすじ:ムール貝博士と助手のピス田はいつもの場所でいつものように、激しい議論をくりひろげていた。



「聞き捨てならん!」
「本当なんですよ、博士」
「おお…」
「新聞くらいお読みになったらどうです?」
「ピス田…」
「ええ」
「かついでるわけじゃあるまいな」
「わたしがからかわれてるのかとおもったくらいです」
「本当なんだな」
「本当です」
「にわかには信じられん話じゃないか」
「そうですか?」
ワールドカップがおっぱいの祭典ではないなんて!
「その認識のほうがよほど信じがたいですよ」
「世界一のおっぱいを決めているわけではない?」
「そのとおりです」
「Aカップからはじまってその頂点がワールドカップでは…」
「ないんです」
「なんてことだ」
「だいたい男性ばっかりじゃないですか」
「200年くらいずっと誤解していた」
「そんなに歴史ないですよ」
「おっぱいにはある」
「たしかにおっぱいの歴史は古そうですけど…」
「なぜもっと早く言わないんだ!」
「だいたい博士べつにおっぱいに興味ないでしょう」
「おっぱいよりは尻だな」
こんにちはー
「おや、ダイゴくん」
「またやぶからぼうに!」
今日は質問をもってきました
「そのまま持ち帰りなさい」
「ダイゴくんせりふが太字だよ」
気が利いてるでしょ
「気が利いてるとは言わないんじゃない?」
では質問です



Q: 浮世絵とレコードをこよなく愛するムール貝博士には、その2つを組み合わせた新しいマーシャルアーツを生み出せる可能性が眠っていると思います。では、ダイゴさんにはどのような可能性が眠っていますか?



「マーシャルアーツってなんだ」
格闘技のことらしいですよ
「ふーん」
突っ込まないんですか?
「何に?」
だって格闘技ですよ
「それはさっき聞いた」
浮世絵とレコードで格闘技ですよ
「だいたいこれ明らかに君宛じゃないか」
そうなんですけど、でも答えづらいじゃないですか
「なんで?」
眠ってる可能性があるならむしろ僕が知りたいです
「そりゃいっぱい眠ってるだろうともさ」
ホントですか?たとえばどんな?
「ありとあらゆる可能性だよ!たとえば…たとえば女装とか」
ああ…
「うらやましいよ」
なんかもっとこう、他にないですか
「他って…あのな、たとえばの話だよ!訊いたのは君だぞ」
そうですけど、でも何か…
「ありとあらゆる可能性が眠っていると言ったろう」
でも女装じゃなくてもいいですよ
「その気になれば空のお星さまにだってなれる」
それ、死んでないですか?
「ありとあらゆる可能性のなかには劇的な死もふくまれるんだよ」
それじゃ元も子もないですよ
「イカだってイメチェンすればタコになれるんだから」
あれは別種の生きものです
「ペシミスティックな男だな。いいか、ここに一羽のインコがいるとする」
インコ?
「そのインコがPCのキーボードの上を歩くとする」
はァ
「キーがランダムに踏まれて、ディスプレイには意味のない文字がずらずらと並ぶ」
そうですね
「無意味なはずの文字列がたまたまコナン・ドイルの『パスカーヴィル家の犬』を著している確率は…」
そんなことあるわけないじゃないですか!
「ところがゼロじゃないんだよ!」
かぎりなくゼロにちかいですよ!
「…とScientific American誌に書いてあった」
受け売りじゃないですか
「かぎりなくゼロにちかいこととゼロでは天と地ほども差があるよ」
そりゃそうですけど…
「イカとタコくらいちがう」
模範的とは言いがたい例えのような気がしますけど
「別種の生きものだと君が言ったんだ」
だって相違より類似のほうが目立ちますよ
「だからこそだよ!むしろ適切な例だと言ってほしいね」
何の話でしたっけ?
「ありとあらゆる可能性が眠っているという話だよ」
そうだ…そうでした!だから僕にも…
「呼んでも起きないけどな」
熟睡しすぎです!
「だからまァ、なんとかして起こせということさ」
いまちょっとやる気が戻りかけてたのに…
「せめて二度寝は阻止したいね」
怠惰にもほどがありますよ
「そうとも、可能性それ自体は怠惰だよ、いつだって」



A: ありとあらゆる可能性がいびきをかいて寝ています。



 *



つづく!


dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)

2010年6月16日水曜日

オパキャラマ子さん、結婚のご予定は?



じっさい、交際の事実をみとめた有名人に投げかける「結婚のご予定は?」という一言ほど短絡的で愚かしい質問はありません。ないったらないのです。ですよね?決まりきった生ぬるい定型句にうんざりしすぎて洟がたれます。


チーン(洟をかんでいます)


大体お付き合いと結婚がどうしてその始まりから頑丈なイコールで結ばれていなければならないのか?もちろんそういう人だってたくさんいるとおもうけど、リポーターというリポーターがみなことごとくそういう考えの持ち主だというのはあまりにも不自然だし、そもそもあるベクトルを前提にコメントを求めること自体、ずいぶん乱暴な話です。大挙して押しかけながら口を揃えて機械的な発言しかできないのも忌々しい。もっと他に聞くことないわけ?


とついこないだまでは人並みにそうおもっていたのです。


でもブログの更新さえ滞る綿密な考察の結果、それは大きなまちがいであったと、わたくしは自戒をこめて告白せねばなりません


じぶんの浅はかすぎる理解について、あるいはバッカじゃねェのと毎回プリプリしていたことについて、サーセンした!と全力で土下座どころか勢い余ってそのままクルンと見事な開脚前転を披露せねばなりません。(何を言ってるんだ?)


前置きを180度ひっくり返してたいへん恐縮ですが、よいですか、「結婚のご予定は?」という簡潔な一言以上に、強力で非の打ちどころのない完璧な質問は他にないのです。それはなぜか?


話題の中心が有名人なら、知りたいことはいろいろあります。相手も同じくらいの知名度を持っているならなおさらです。きっかけは何だったとか、なぜ他の人ではなく彼(あるいは彼女)でなければならなかったのかとか、詮索好きなら経緯を聞きたい。


でも本人からするとそれは余計なお世話以外の何物でもないので、よほどの知己でないかぎりそんなことをゆっくり根掘り葉掘り聞くことはできません。仕事と仕事の合間に、あるいは何かのついでにむりやりマイクを向けるとしたら、使える時間もごくわずかだし、だとしたらゴシップだろうが何だろうがニュースになると判断された以上は、せめてこの話題に関するリアクションだけでもほしい、と考えるのはごくごく自然な流れです。


となるとできるのは必然的に「ポンと投げてポンと返せる」シンプルな質問に限られてきます。究極的には「イエスかノーか」で返せるような、コールアンドレスポンス的やりとりになるということです。ここに至るとコメントを求めるという当初のピントが若干ずれて、回答よりもリアクションそのものに焦点が当てられます。そうなると質問はもはや単なる「アクション」でしかなく、内容はおろか意味さえほとんど失うという本末転倒の様相を呈することになるのです。


(すごーく当たり前のことを言ってるようだけれど、こうしてひとつひとつ整理してみるとそれまでの景色がだいぶちがって見えてきます)


「ポンと投げる」こと自体はそれほどむずかしくありません。問題は「ポンと返せるかどうか」です。ポンと返せる質問ってどれくらいあるだろうとおもって考えてみたんだけど、「幸せですか?」とか「その髪型は彼に合わせて?」とか本当にびっくりするくらいどうでもいいような(ことによると失礼な)質問しか浮かびませんでした。それこそまさしく僕が不快感を露にしてきたところのものであるにもかかわらず!


そこで、「結婚のご予定は?」です。まず聞き間違えることもない、じつに簡潔で明瞭なフレーズといえましょう。返す答えも「あります」「ないです」「まだです」とじつに明快です。でもこれだけならただの「返しやすくて良い質問」にすぎません。


ではなぜこれが「完璧な質問」なのか?


それはこの質問が「次の大きなニュースへとつなげる可能性」を秘めているからです。付き合い始めた2人について次に大きなニュースがあるとすればそれはもちろん「結婚」であり(妊娠もありうるけどそれを先に公表することはたぶんない)、リアクションさえとれればそれでいいという最低限の姿勢で臨んでいるにもかかわらず、もし結婚をほのめかすような発言をとることができたとしたらもう、これ以上の収穫はありません。ですよね?


つまりそれは短絡的で愚かしいどころか、うまくいけば「最小の労力」で「最大の利益」を得ることのできる質問なのです。リアクションさえとれれば元は取れるのだから、これ以上効率のいい働きかけは他にないでしょう?


それまで抱いていた印象からはほど遠い、というかむしろ真逆の着地点です。驚きというほかありますまい。


<結論>
あれはプロフェッショナルの手によって研ぎ澄まされた最強の質問です。(Q.E.D.)


 *


そんなことをうだうだと書き連ねるためにこのブログはあるのか?


そのとおりだ!もんくあるか!


小林大吾の3枚目のアルバム、「オーディオビジュアル」絶賛発売中です!(あやふやな本分を思い出すための備忘録的アナウンス)

2010年6月13日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱リターンズ3



SUIKAのMC、ATOMさんがウチの近所でソロライブをやるというので(彼のソロはとても珍しいのです)、真夜中にサンダル履きでぺたぺたと歩いて観に行きました。ATOMさんはそのイベントにおける最年長で、キュートなヘッズから神様みたいに崇められていた。

そしてATOMさんを除けばそこにいる全員が年下であるばかりか、ヘタしたら干支が同じかそれ以上であることにクラクラするわたくし。


 *


(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


二等辺三色パンさんからの質問です。

Q: 爪先が冷えて眠れない夜、小さな音で流すのにぴったりな音楽を教えてください。

A: ふだんからわりとガツンとビートの打った音楽ばかり聴いているので、あんまり役に立てそうもないのですが Hysear Don Walker の "Compelete Expressions" なんかはビートに耳をかたむけても満足できるし、なんとなく流していてもきもちのいいレコードだとおもいます。CDだったら Yusef Lateef の "Eastern Sounds" なんてどうですか?


 *


なつざかりほのじぐみさんからの質問です。

Q: 何鍋が好きですか?(キムチ、豆乳、カレーなどいろいろある中でお気に入りを教えてください。)

A: モツ鍋好きです。でも鍋といえばモツ、とまで思い詰めてはいないです。ああ、そういえば好きだな…くらいのボンヤリした好みです。あと、鍋と呼べるものなのか自信ないけど、湯豆腐好きです。というか豆腐が好きです。最後の晩餐には極上の豆腐を一丁と昔から決めているくらいです。


 *


セミダブルスタンダードさんからの質問です。

Q: 他の方が書いた詩(歌詞でも)の中で、音読すると面白さが分かるものがあったら教えてください。

A: これはむずかしい質問です。音読するとおもしろい、というのはつきつめると言葉遊びに行き着いてしまうので、僕自身はむしろあまりそこに焦点を当てないようにしているところがあります。ただ僕の経験からいうと、じぶんがふだん使わないことばを声に出して読むのはそれだけでかなり刺激的な体験です。だから「音読するとおもしろさがわかる」というよりも、音読それ自体がおもしろいと言っていいのかもしれません。1ページに句点がひとつしかないような横光利一の「機械」を息継ぎなしでどこまで読めるかとか、ちょっとたのしそうじゃないですか?

あともうひとつ付け加えるなら、文章家と呼ばれる人の文章はまちがいなく音読の価値があります。よい文章とはつまるところ「リズム」だからです。


 *


夢で生えたらさんからの質問です。

Q: ダイゴさんの、お正月の過ごし方はどんなものですか?

A: 甘栗を2キロくらい買いこんで日がな一日モグモグ食べてます。皮をむくのもだいじなので正月は手がまっくろです。なんか虫みたいだな。


 *


シャネルの5番アイアンさんからの質問です。

Q: 印象に残ってるアルバイトとかお仕事があったら教えてください。

A: いろいろやった気がするけれど、去年の年末になりゆきとはいえ松屋銀座で10年ぶりにスーツを着て接客したことほどアメイジングな経験はこの先二度とないでしょうね。生来のハッタリ気質が遺憾なく発揮された仕事のひとつです。85年の歴史をもつ老舗デパートの社員食堂で昼食なんて、望んで叶う話でもないし、いい思い出になりました。


 *


まだつづく!

2010年6月11日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱リターンズ2



(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


ビルマのたけのこさんからの質問です。

Q: 海の水を全部ぬいたら 一番底にはなにがあるんですか。教えて下さい。あと、助手のピス田さんについて教えてほしいです、色とか。

A: 幼少のころ流された僕のサンダルがそこにあるはずです。それから、恋に破れて投げこまれた幾千ものアクセサリーがザラザラ出てきます。世界中の人々が海に沈んだ海賊たちの宝をもとめて殺到するなか、僕はひとり裏に名前の彫られた大量の指輪とかペンダントとかアンクレットで大もうけというわけです。

ピス田さんについては、2年以上前にいちどだけその姿を紹介したことがあります。そのときの写真がこれです。

「もともとはとある諜報機関から遣わされた腕利きのスパイだったのですが、そのへんの経緯はまたお話しする機会があるかもしれません。」(そのときの投稿をサンプリングしています)


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てりふり傘さんからの質問です。

Q: Flying Booksを除いて、好きな本屋はどこですか?

A: さいきんの話でいうと、大泉学園にある「ポラン書房」という古書店です。A.W.ポラードの「書物の余白」(生田耕作訳)をみつけてたいそうアガった、というのがその直接的な理由ですが、福武文庫がいっぱい置いてあるだけでも僕としてはじゅうぶん唾液腺を刺激されます。

あと、ジュンク堂の新宿店がどうやら好きらしいということにこないだ気づきました。紀伊国屋では買う気にならなかった本を、ジュンクで見かけるとどういうわけか欲しくなって買ってしまうことがあるのです。品揃えなら池袋本店のほうが圧倒的に豊富だし、家から歩いていけるからよっぽどラクなんだけど、新宿店のほうがなんかいろいろちょうどいいみたいです。


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ふくろのはりねずみさんからの質問です。

Q: 好きな人と好きな人が繋がると嬉しいものですが、そういった経験はありますか?

A: いただいたおたよりにはその例として「斉藤和義さんに伊坂幸太郎さんが詞を提供されたこと」を挙げられていますが、そういう意味でいうと僕は「ジム・ジャームッシュとWu-Tang ClanのRZA」でしょうね。とくにジム・ジャームッシュはニール・ヤングとかトム・ウェイツとかロックの印象がつよかったからなおさらです。「コーヒー・アンド・シガレッツ」ではさらにそこにビル・マーレーまで加わってちょっとした騒ぎになりました(脳内が)。

それから、もう10年以上前にNewsweek誌の書評で「Flying Leap」という短編集を紹介していて、それがもうあらすじからしてすごくおもしろそうで、はやく翻訳されないかなーとわくわくしながら待ってたのに何年たっても出やしなくて、いいかげん記憶から遠ざかっていた3年前になって突然邦訳が出たとおもったら、訳者が以前から大好きだった岸本佐知子さんで、二度びっくりした記憶があります。それもこの話の範疇に入りますか?ちなみに原著者は Judy Budnitz、邦題は「空中スキップ」です。


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2階から目つぶしさんからの質問です。

Q: 好きな寝方ってありますか?理想の寝方でもいいですけど。ちなみに僕は閉所安心症なんで、四方をガッチリ固めて寝てます。

A: 肉体労働をしていたころは炎天下でもアスファルトに横たわってぐうぐう昼寝していたくらい、どこでも眠れるたちなので、寝方はあんまり気にしたことがないです。ただ、気がつくと左を向いて寝ている、というのはあります。僕が好きというより、僕の体がその姿勢を好むようです。ときどき抵抗したくなってわざと右を向いて寝てみたりするんだけど、目がさめて視界に入ってくるのはいつも左側の景色です。


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トリニダード・トバゴの四面ソカさんからの質問です。

Q: おにぎりの具といえば絶対コレ! というお気に入りはありますか?(混ぜ系も含めて)

A: たらこです。明太子でもかまいません。ひとり暮らしにはちょっとぜいたくで毎週欠かさず買うにはためらわれるものがあったから、いくぶん憧れが含まれています。(僕の嗜好にはかつての欠乏からくる執着がすごく多いです)そういえば先輩がお昼に持ってきたおむすびにイクラが入っていてびっくりしたことがあるな。


 *


次回につづく!(先は長そうだ…)


気長にお待ちいただけるのであれば質問も大歓迎です。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


2010年6月8日火曜日

ないと思われていたたのしい話が



ありました。そうでした。


まだ下がってなかった!


まさかの3週連続チャートイン…。どうもこう、無人島根性みたいのが焼きついていて、ピカピカした話に当惑してしまうんだけど、でもこれはたしかにスゴい話です。投票してくれてありがとう!


こうなると「小林大吾」も、僕個人というよりはむしろみんなのユニット名にみえてきます。「ザ・フルキャンズ」みたいな、もっと集団ぽいかんじの気の利いたステージネームをつけておけばよかった。


いや、ダメだ。それはダメだ。


しかしめちゃめちゃカッコいい NAZ & DAMIAN MARLEY "As We Enter" の上にいるというのはさすがにちょっと自慢していい気がする。


みんなに幸あれ!

2010年6月6日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱リターンズ



FKPD(古川プロデューサー)からこんな写真が送られてきました。


それはそうと、立ったまま小さい紙にちまちまとメモするミス・スパンコールをみて「なんか取材してるみたいにみえるよ」と声をかけたら、急に記者みたいな顔つきになって質問を投げかけてきたのです。


「ダイゴさん、今回のアルバムでシェービングクリームはどれくらい使ったのですか


そんな質問するインタビュアー他にいないよ!

僕の無精髭と3枚目のアルバムの因果関係についてかくのごとく追求されたってそれはさすがに困ります。(注:本当にこう聞かれたのです)


ああびっくりした。


あっ(何かに気がつく)


とまあそういう流れでふと、だいぶ前に(それはもう、だいぶ前です)質問を募集してそういえばそのままだったことを唐突におもいだしたのです。ひとつひとつ、わりとガッツリ回答していたからたぶん体力が尽きちゃったんだけど(自業自得です)、今のところとくにお話できるようなたのしい出来事もないし、いい機会だから以前よりはもうすこしサクサクと軽い歯ざわりでお答えするといたしましょう。じつに2年越しという呆れ果てた空白期間については大らかなきもちでウィンクするように目をつぶってください。

ちなみに質問箱は87回目で途切れていたようです。質問いただいたみなさま、本当にどうもありがとう!まだここを訪れてくれてるんだろうか?


 *


(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


アスタキサンチン(美肌成分)さんからの質問です。

Q: 大吾さんの詩は、匂いや味、温度や湿度がたくさん入っていますが、五感のなかで、いちばん頼りにしている、もしくはいちばんぐっとくるのと直結しているのはどの感覚ですか?

A: 触覚です。ひとつひとつ思い返してみると、これがいちばんしっくりきました。ただ五感というのはスパイスといっしょで「配分」がすごくだいじだし、その配分をたのしむものでもあるので、ひとつだけ切り離すのはちょっと勇気がいりますよね、やっぱり。カレーにおけるクミンみたいなものです。


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ハルカリ合戦さんからの質問です。

Q: 次の作品では古川Pはラップしますか?

A: ここで言う「次の作品」とは「オーディオビジュアル」ですが、古川Pは一箇所だけつるっと登場しています。ラップはしていませんが、緊張感にあふれた美声をおたのしみいただけます。


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タヌキモ(狸藻)さんからの質問です。

Q: 絵からビート、言葉選びまで天才だと思いました。どういう子どもだったのですか?

A: こないだ同級生と15年ぶりに再会して知ったのですが、とくべつどうという子どもでもなかったようです。残念ながら。


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カチューシャ違反さんからの質問です。

Q: (前作「詩人の刻印」から)アンジェリカの使用人「イゴール」ですが、彼は給料を貰っているのでしょうか?もし、金銭的なものをアンジェリカ(様)から頂いているのなら、彼の雇用形態などを教えて下さい。

A: もちろんイゴールは給料を受けとっています。が、それはじつはアンジェリカからではありません。その雇用契約は彼女の実家との間にむすばれたものです。アンジェリカに気に入られてほとんど付きっきりなので、いわゆる執事(上級使用人;butler)みたいなことになっていますが、じっさいには家事使用人(footman)待遇と考えてよいでしょう。


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西武池袋線直通小手指行十両編成さんからの質問です。

Q: 僕の名前どう思います?

A: お名前をここに出してよいのかちょっとわからないので僕の印象だけ書くと、「虎」と「妃」が同居した名前なんてちょっと他にありません。美女と野獣がそのまま名前になるなんて、かっこよすぎです。


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牛田モーミンさんからの質問です。

Q: 次のアルバムはいつ頃になりそうですか?

A: おそくなってすみません。こないだ出ました。ポロッと。


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月とスッピンさんからの質問です。

Q: どうしたら早起きができるでしょうか?

A: 夕方くらいに寝たらイヤでも早起きになるとおもいますが、それができないからこその質問であることをふまえるなら、次善策は「朝を好きになること」です。わくわくして自然と目がさめます。ただこれ、「どうしたら彼を好きになれますか」というのと同じで、どうしようもないんですよね。どうしようもないです。


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排水の陣さんからの質問です。

Q: 突然訪ねてきた渡辺篤史に褒めてもらいたいのは住まいのどの辺りですか?

A: 重い上にデカすぎる煙草屋の古いショーケースです。

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ずわい蟹さんからの質問です。

Q: ところで大吾さんはめがねをいくつもっているのですか?

A: 以前はふたつ持っていましたが、あるとき床に落ちたのを踏んづけてひとつになりました。僕の足の裏には今でもあのときのイヤな感触がなんとなくのこっています。


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ギザギザハートのこうもり傘さんからの質問です。

Q: 詩はいつもどんな場所で考えているのですか?

A: ぶらぶら歩いてるときか、でなければ布団の上です。でも1年に10編も書かないからな…。詩人を自称しながら筆無精って矛盾していて良くないことにさいきんようやく気づき始めました。


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ピリカラ先輩さんからの質問です。

Q: で、結局「桜井小塚」なる人物は、一体どこの誰なのですか?

A: 「桜井小塚」というのは僕の敬愛する詩人のひとりです。たぶん、望まれているのはそういう答えではないとおもうんだけど、でも僕だって「小林大吾ってのはどこの誰なんだ」と言われても「ここにいる僕」としか答えようがないですよ。


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ルビーの首輪さんからの質問です。

Q: 「猫舌ですか?」 さきほどスタバにてチャイラテを買ったのですが、あの口付き蓋でヤケドしました。あのアーバンなタンブラーでコーヒーをクイクイ飲みながら街を練り歩きたいのですが…私には無理です。あ、猫舌でもあのオシャレタンブラーで様子よく飲める方法も教えてください。

A: 猫舌…ではないとおもいます。ただどういうわけかいつも味噌汁で唇の内側をやけどします。「猫のくちびる」という言い方があるのかどうか知らないけれど、それはもうしょっちゅうです。猫舌でもあのタンブラーでコーヒーを颯爽と飲む方法ですが、それはもう、冷めるのを待つのがいちばんです。でなければアイスコーヒーにあのフタをつけてもらいましょう。


 *


次回につづく!(ちなみにあと40問くらいありました)


そして突然おもいだしたようにポツンと表示される、ご意見・ご要望のためのアドレスはこちら!
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2010年6月3日木曜日

誤解を解きそこねた居心地のわるさとは



火曜日の昼はSHIBUYA FMの "Village Voice" という番組でちょっとだけおしゃべりしてきたのです。ULEEさんどうもありがとう!

右がDJのULEEさんで、左が…


まちがえた。(撮影:古川耕)



 *


(とてもだいじな本編はここから)
過日のポッドキャストをお聴きくださったリスナーの方からたいへん心温まるおたよりをいただいたのですけれど、じつはそのなかに思いもよらない一言があって、今なおその衝撃から立ち直れずにいるのです。


「わたしもダイゴさんの言う"ちょろい大人"のひとりなんでしょうか…」


(椅子から派手に転げ落ちる)


ええー!



お待ちなさい!


僕が今なお「ちょろい大人」に向けて詩を書いている、とおもわれている…。


ちがいます。そうではないのです。それはかつて僕が小中高と授業で書かされた非常にあざとい(大人の気に沿うように書いた)詩を「素敵だわァ」と手放しにほめる「大人」のことを言っていたのであって、

そこから詩というフォーマットに好奇心をもって自ら一歩踏みこんだ今現在、アルバムに耳をかたむけてくれる人に対してそんなふうに考えたことは(あたりまえだけど)一度もありません。あるわけないじゃないか!と泣いて訴えたい。…というかそんなよこしまな思いで「ジャグリング」なんて書けるわけがないですよ!


つまり僕は、自分がそもそも詩に対してひどく懐疑的だったスタートラインの話をしたかったのです。詩が好きだなんてちっともおもっていなかったし、今だってふかく愛しているとはお世辞にも言いがたいし、だからこそ今の視点やスタイルがあるのかもしれない、という話をしたかったのです。


よくわからないけど、つまりいま僕は一部(あるいは大多数)の人々の間でものすごーくイヤなやつとして記憶されているわけですね?極度の緊張からくるふてぶてしさと足りなさすぎた言葉のために?


しかもすでに取り返しのつかないかたちで保存されているわけですね?


本意どころか意図のベクトルがまるで逆になるなんて、どこまで話下手なんだ僕は?


(布団にもぐりこむ)


 *


(ふと思い立って布団から出てくる)


もうすこし踏みこんだ例を引き合いに出してみましょう。

大人の「ちょろさ」というのはたとえば、民主党が谷亮子を擁立するという一見すると愚にもつかない行為にさえ如実にあらわれているのです。

みんな民主党とか谷亮子に対してブーブー言うけれど、多数の人が投票すると思われているからこそこんなことになっているのだし、そうして実際多数の人が投票したりするわけですよね、おそらく?(でなければ絶対こんな戦略は立てられない)

だとすれば僕らが怒るべきは民主党や谷亮子ではなくて、むしろ盲目的に投票する人に対してです。何でだれもそのことを言わないんだろうとおもう。ひとりひとりが隣の人の盲目的投票をやめさせればいいだけの話じゃないか!

僕の言う「大人」とはつまり、「有名人というだけで盲目的に投票するような人」のことを指しているのです。そんな大人たちの気に沿うことがいかに簡単な話かも、なんとなくわかるでしょう?

そうして、そういう「ちょろさ」はあらんかぎりの言葉を尽くして取り除くべきだと僕はつよくおもっているのです。


 *


よくしゃべるわりに話下手な僕がこれまで幾度となく背負ってきた「誤解を解きそこねた居心地のわるさ」をこんなかたちで検証することになるなんて、因果なことです、われながら。


誤解させてゴメンね。そんなつもりじゃなかったのです。


もぞもぞ


(布団にもどる)