2018年8月12日日曜日

リアルタイムというのはある種の呪縛であること


新聞を読んでいると、あれ?とおもうことがあります。

そこに書かれている話題を、すでに知っているのです。

ことによるともうだいぶ前から知っていて、そういやそんなことあったなあ、としまいかけた記憶を引っぱり出すくらい遠ざかってしまっている場合もあります。遅いなとおもう。まあ、そういう時代です。スピードだけならネットで流しそうめんのように流れてくる一口サイズの情報をすくいあげるほうがよっぽど早い。

それでも僕が新聞を読んでいるのは、自分にとって守備範囲外の情報を雑多に取りこむことができるからです。ネットが流しそうめんなら、新聞は幕の内弁当みたいなものですね。べつに好きなおかずでもなかったけど食べてみたら意外と美味かった、みたいなことが往々にしてあるし、その経験がまた別の知識に結びつくこともあります。この「べつに気にしてなかったおかず」的な情報は言ってみればノイズみたいなものなんだけど、経験上、ノイズは多ければ多いほど自分のなかにあって気づかずにいた点と点が線になりやすいのです。線は交わっていずれ網となり、より多くのものが引っかかるようになります。

だからまあスピード感はそんなに重要ではないとおもうんだけど、考えてみればこんなエクスキューズみたいな物言い自体、スピードに一定の重きを置いていることの裏返しではないのかという気もします。

ひょっとしたらじぶんで考えているよりも情報のスピードに囚われているのではないのか?そりゃ早いにこしたことはないとおもうけど、早いからなんだというのか?世間に遅れずにすむだけじゃないのか?遅れたらなんだっていうんだ?遅れたことで後ろ指をさされるというのなら、これまでの人生だってずっとそうだったじゃないか?

リアルタイムの呪縛です。そうでないからといって困ることなど何ひとつないのに、そうあるにこしたことはないと考えてしまうのなら、それが呪縛でなくて何でしょう。ここは声を大にして言わなくてはなりますまい。実体のない空虚な呪縛など、むき終えたバナナの皮といっしょに捨ててしまうがいい、と。

とまあそんな次第でリアルタイムとかそんなものはまるっと蹴り飛ばし、ちょうどぴったり30日前の話を昨日あったことのようにしますけれども、椎名純平、タケウチカズタケご両人のご相伴に与り、平生めったに人前に出ようとしないKBDGがどういうわけか短期間で数年分のライブをこなす驚異(当社比)のSolo Solo Solo TOUR 2018、5日目となるPOWERS2@元住吉はたいへんな盛況のうちに幕を閉じました。おいでくださった多くのみなさま、どうもありがとう!



当日はあまりの熱気で頭がまっ白になっていたのか、それとも今この時点で単純に1ヶ月すぎているせいなのか、あんまりよく思い出せませんがとにかくわーっとなってドカンとくる失神不可避のハッピーな惨事だったことだけはたしかです。僕は僕で案の定やらかす安定のポンコツぶり、ツアー限定のアルバム「3」にいたってはなぜか来場者数よりも多くの枚数が売れるという、そう聞いて思わず聞き返してしまったささやかな奇跡もありつつ、ツアーの折り返しとしてじつに申し分のない、むしろ身に余るすてきな夜であったと申せましょう。そんなこと言ってホントにおぼえてんのかよとか、そんな野暮を言ってはいけない。


POWERS2にはこれまでにも何度か足を運んでいて、雰囲気が良いばかりかゴハンがめちゃめちゃ美味い、もう1回言いますけどゴハンがめちゃめちゃ美味い、なのでイヤでもみんな好きにならずにいられないあの空間で自分がステージに立つ日がくるなんて、しみじみ感無量です。あの場所で観てもらえて本当によかった。ありがとうありがとう!

とまあ、そんな話を今ごろになってしているのは、ともすると当人たちもうっすら忘れかけているSolo Solo Solo TOUR 2018 のクライマックスが、2週間後に迫っているからです。

ツアー最後の3日間は豊橋、名古屋、敦賀の計3箇所を巡ります。


8/24(金)@豊橋 輪 -RiN-
LIVE: 椎名純平、タケウチカズタケ、小林大吾
Opening Act:  cheat Jam Direction
Open19:30 LIVE Strat20:00
2,500円+1d500円
ご予約、お問合先:FreeStyle BAR? 輪-RiN-
〒441-8012 愛知県 豊橋市愛知県豊橋市羽田町86
080-8264-4558

8/25(土)@名古屋 千種 喫茶モノコト
Open18:30 LIVE Strat19:30
ADV. 3,000+1Dオーダー(¥500)/ DOOR 3,500+1Dオーダー(¥500)
ご予約、お問合先:喫茶モノコト 070-6411-7531
名古屋市千種区内山3-28-1ちくさ正文館2F
monokotoakichi@gmail.com

8/26(日)@敦賀 tree cafe
Open18:00 LIVE Strat19:30
Charge 3,000
ご予約、お問合先:tree cafe 0770-21-3033
〒914-0056 福井県敦賀市津内町1丁目3−5


日ごろ穴ぐらで息をひそめている僕としては永遠にも感じられた8日間も、これが最後です。ふだんは帽子なので気づかれませんが、すでに前半の5日間で「うわっなんだこの白髪!」とおもわず声を上げてしまったほど、髪が白くなっています。

したがってこの次がある保証は、といってもそんなものがあったためしはかつて一度もないのですが、まったくありません。冥土の土産においでませ!

2018年7月11日水曜日

Solo Solo Solo TOUR 2018 を終わってないのに振り返る話


言語に絶する未曾有の雨をおもえば西への旅を無邪気に振り返るのもいささかためらわれるものがあるのだけれど、それでも夢を見ていたようなあの4日間を忘れることはできないし、いただいた多くのきもちに心からの感謝をこめて少しばかり記しておこうとおもいます。

椎名純平、タケウチカズタケご両人のご相伴に与り、平生めったに人前に出ようとしないKBDGがどういうわけか短期間で数年分のライブをこなす驚異(当社比)のSolo Solo Solo TOUR 2018、6月末から7月頭にかけての4日間はその前編として神戸三宮、大阪南船場、広島福山、兵庫加古川に行ってまいりました。おいでくださった多くのみなさま、どうもありがとう!



初日となる金曜の夜、三宮Chelsea de Rumbaはサイズ感といい雰囲気といい、とにかくラブリーな空間だったことと、お客さんがすごく楽しんでくれたことだけは鮮烈に覚えているのだけれど、なにしろ初日でいきなりHPを使い果たしてしまったこともあって記憶に霞がかかっています。写真もリハのときしか撮ってませんでした。でもたくさんお話できてよかった!そしてTRINCHTシャツを着てくれてると一目で味方とわかるのでとても助かります。ありがとう!

あとお店の隅で売られていた雑多なレコードのなかに寺尾聡の "Reflections" をみつけて、買って帰るか迷いました。



2日目は大阪、去年もお世話になった南船場のTHE GOOD THING、通称グッシンです。ここもホントに大好きで、去年もお見かけしたお顔とまた再会できたりするとさすがに僕でも帰ってきたようなきもちになりました。今回もっとも多くの土地から集まってくれたのがこの日です。北は秋田から、富山、金沢、長野、三重、翌日広島なのになぜか愛媛、大分の人も来てくれて感無量というほかありません。あと、興味ないだろうとおもって誘いもしなかった古い友人がしれっと来ていて呆気にとられました。いいやつだ。


ちなみにこの日もらった最高の感想は、小学生男子が僕をみて発したらしい「これは国語や!」という一言です。




3日目の広島、とりわけ個人的に印象深かったのが福山SO-S DINERです。具体的にどうというのはちょっと言葉にしづらいのだけれど、多くの人にというよりは本当に必要とする人が手にしてくれたらいいと昔も今もおもっていて、それがたしかに届いたことを心から実感したのがこの夜だったのかもしれません。初めての土地ということもあるにせよ、行ってよかったとしみじみおもいます。声をかけてくれてありがとう。

マンションの最上階に引っ越してきたミュージシャンの図


SO-S DINERも夜景が映える秘密基地みたいな雰囲気で最高だったし、ライブ中はボルテージもえらいことになってうっかり火を点けたら全焼しそうでした。


純平さんとカズタケさんがホテルに戻ったのは翌朝7時だったそうですが、そそくさと解放してもらっていた僕はとっとと起床してホテルの朝食をひとりモグモグ食ってました。



そして最終日の加古川、花茶茶花は以前からカズタケさんに絶対好きだからと言われていて、いざ降り立ってみたら案に違わぬ極上の空間で、どこを切り取っても絵になるもんだから、帰って確認したら花茶茶花の写真だけで十数枚ありました。例によって肝心なときの写真は皆無ですが、せめてそのキュートすぎる雰囲気をお楽しみください。





特筆すべきことがあるとすれば、出番が終わったらぜったいにマイクのスイッチを切るようにと固く言いつけられていたにもかかわらずすっかり忘れて引っ込んでしまい、カズタケさんのライブ中にハウりまくって渾身のパフォーマンスを台無しにするという、いま思い出しても申し訳なさで胃がキリキリと痛むちょっと大きめの失態がありましたが、それをのぞけばこの日も本当に素敵な夜でした。

さらにはこんな途方もないサプライズまで……!美しすぎる!



加えてこの日はワールドカップにおける運命の一戦だったため、言うまでもなくお二人はお酒を手に朝まで鑑賞コースです。いいかげんぶっ倒れる寸前でまっすぐカプセルホテルにインした僕をのぞく全日本人が固唾をのんだ試合の驚くべき顛末を知ったのは翌日の夕方でした。


とまあこんな次第でとにもかくにも希有な数日間、何度も重ねてしまうようだけれど、本当に本当にありがとう!

まだ半分のこっているかとおもうと気を失いそうになりますが、5日目となる次回は今週13日の金曜、@元住吉POWERS2です。すでに満員御礼が確定している(!)というたいへんありがたい知らせを受け取りつつ、まだ若干名はいけるとかいけないとかな感じなので、よろしければおいでませ!


2018年7月6日金曜日

椎名純平+タケウチカズタケ+小林大吾= The 3 によるオリジナル曲2編(歌詞)



track 03. 36th stratagem


脳裏をよぎる
走馬灯のよう
どうもこうもない
脇目もふらずに
Let's go……

包囲網の
向こうに行こう
もう二度とない
たぶん空前絶後

寄り添うように歩みをそろえて
日々はめぐりやがて立ち返る
誰が気にするだろう?
今ここにあるより前の季節を

包囲網をスルーする走為上
不条理の向こうに行こう
Let's go……

寄り添うように歩みをそろえて
日々はめぐりやがて立ち返る
誰が気にするだろう?
今ここにあるより前の季節を

脳裏をよぎる
走馬灯のよう
どうもこうもない
脇目もふらずに
Let's go……

包囲網の
向こうに行こう
もう二度とない
たぶん空前絶後


包囲網をスルーする走為上
不条理の向こうに行こう
Let's go……



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track 05. 時巫女ノ森/the woods


夜よりも黒い森
人さらいの巣食う深い闇
足下でひそひそとまたたく
こなごなにくだけた光

かけらをひとつ拾い上げる
手からこぼれる(try again)
忘れられたいつかの祈り
あるいは星くず
(whichever you like)

I'll find you time after time……

タン、タタンと刻むように
乾いた音で踵を鳴らす
時の踊り子、この森の巫女
余韻に揺れるささめきの向こう

誰も待たずに
何も追わずに
ひらひらとゆらめいてここで
タン、タタンと
今も昔も、これからも

I'll find you time after time……

知らぬ間に塗られた色に
倣う理由なんてないのに
今はいとおしい、そんなアイロニー
ゆっくりと顔を上げて前を見る

夜よりも黒い森……

足下でひそひそとまたたく
かけらをひとつ拾い上げる
手からこぼれる(try again)
忘れられたいつかの祈り
あるいは星くず
(whichever you like)

I'll find you time after time……

知らぬ間に塗られた色に
倣う理由なんてないのに
今はいとおしい、そんなアイロニー
ゆっくりと顔を上げて前を見る

知らぬ間に塗られた色に
倣う理由なんてないのに
今はいとおしい、そんなアイロニー
ゆっくりと顔を上げて前を見る

タン、タタンと刻むように
乾いた音で踵を鳴らす
時の踊り子、この森の巫女
余韻に揺れるささめきの向こう

誰も待たずに
何も追わずに
ひらひらとゆらめいてここで
タン、タタンと
今も昔も、これからも

I'll find you time after time……



2018年6月11日月曜日

TRINCHセール夏だよTシャツ編2018のお知らせ



例によって例のごとく、といつもなら冷や汗とともに始めるところですがさにあらず、実際こんなに首尾よく告知できたことが果たして今まであったかどうか、今年はたまたま前夜に気づいたので胸を張って堂々と鼻息も荒くお知らせです。

KBDGグラフィックの総本山、TRINCHのTシャツが明日から月曜までの7日間、全品1,000円OFFになります。キャッホー!


TRINCH

対象期間:6月12日(火)12:00 〜 6月18日(月)18:00
割引額:Tシャツ1点につき1,000円OFF

そんなわけでそれでなくとも30種類ちかくあるTシャツをさらに5点、追加しています。個人的なイチオシは「2人暮らし専用マンション『パートナーズ』の間取り図」です。ワニの頭をした小娘もかわいい。





しかしTRINCHって何だっけ?と眉間にしわをお寄せになるのもムリはありません。小林大吾は周囲に人が見当たらないというたいへん切実な理由からグラフィックまで手がけざるを得なくなった詩人ですが、このグラフィックの側面のみをまるごと切り抜いて独立させたのがつまり、TRINCHです。基本的にはKBDGのことなどご存じなくとも楽しめるように配慮しつつ、アルバムをお持ちの方ならそのスピンオフとしてより一層お楽しみいただけます。せっかくなのでとりあえずズッキュン(商品画像の右上にあるハートマーク)だけでも100回くらい押しておいてください。

※前回同様、セール時のテキストをまるっとサンプリングしています


2018年6月8日金曜日

ツアー限定アルバム「the 3」のこと、ならびにツアーってなんだよ先に言え的なSolo Solo Solo TOUR 2018のお知らせ


こまめに発信していれば3つか4つに分けられたのに、例によって忘れていた分を全部まとめたためテキストがちょっとやそっとではとても読み切れない嫌がらせレベルの膨大な量にふくらんでいることを先にお詫びいたします。


イベント会場で手に取るグッズというのは、何であれ心浮き立つ特別なものです。

かく言う僕も先日、中野ブロードウェイで開催されていた「マカロニほうれん荘」の原画展にいそいそと足を運んだ際、これたぶんじぶんでもつくれるなとか身もふたもないことを考えていたにもかかわらず、「うるさい!今いるここで買うから意味があるんじゃ!」と脳内でひそひそささやく理性陣を蹴り飛ばしつつ、かろうじて残っていたマグネットとか缶バッジなんかをわりといい値段でばしばし買ってきたものです。


だいたい後日秋田書店のホームページでも通販されるとわかっていてこのありさまなのだから、ましてや会場限定のグッズともなれば何をかいわんやと申せましょう。その特別感は何物にも代え難い。

それでおもいだしましたが、ここ数年アートワークを手がけさせてもらっている椎名純平さんの、これまたライブ会場限定となるアルバムが今年も先月の後半あたりから、純平さんの出没するそこかしこでお目見えしています。


これはまだ現物が手元にないため、数日前TBSラジオ「アフターシックスジャンクション」通称アトロクのスタジオライブに純平さんが出演された際、数少ないコネクションを乱用して撮ってもらった回りくどい1枚ですが、それはさておきこの「Life I Live」は前2作とはまたすこし趣が異なる極上の作品に仕上がっているのでぜひライブ会場で髪をひっつかんだり足をふんづけたりしながら他のお客さんたちと奪い合ってください。

それでまあ話を戻すと、というか戻るも何もまだ話を始めてすらいない気もしますが、そんなこんなで今月末からカズタケさんと純平さんにご一緒させてもらう Solo Solo Solo TOUR (注1)でもせっかくだから何かこう、ちょっとしたものを用意したらどうだろうという話になったのです。

注1:そういえば告知していなかったことにここで気づきました

ちょっとしたものというのはたとえばライブ音源であるとか、既発曲の別テイクであるとか、あるいは未発表曲であるとか、そんなようなことですが、カズタケさんや純平さんとちがって僕にはそんな気の利いたものは一切手元にないし、何ができますかねえ、とあれこれ相談しながらこつこつかき集めてみたところ、おもっていたよりも良いものになりそうな気配が漂いだし、こうなるとCD-Rではなくきちんとプレスしたほうがいいような気がし始め、待ってくださいプレスするならパッケージもきちんとデザインしたほうがよくないですかと僕が言い出し、とはいえ時間もないのでサクッとばりばり仕上げた結果、こうなりました。


01 the 3's intro
02 注射器とカセットテープと公魚釣り (Kaztake RMX)
03 36 stratagems
04 真珠貝亭の潜水夫たち (rebuilt)
05 時巫女ノ森/the woods
06 Hot Water Pressure Washer (the 3 version)
07 処方箋 (rebuilt)
08 the 3's outro

ここは声を大にして言わなくてはなりますまい。純平さん、カズタケさんのファンは言うに及ばず、全国に30人くらいはまだいてくれてるはずのKBDGファンにとってもこれは、問答無用で必携の1枚です。

理由その1:
カズタケさんのビート、KBDGのリーディング、純平さんのコーラスという構成で去年のツアー時に披露され、タイトルも決まっていなかった新曲が「時巫女ノ森/the woods」と新たにタイトルを冠して収録されています。イメージがくるくるとループする、かなりステキな一編です。

理由その2:
KBDGが書いた詩(日本語)を純平さんが歌う、という初めての試みが今年の新曲として収録されています。3曲目の「36 stratagems」がそれです。カズタケさん渾身のビートだけでも相当カッコいいのに、純平さんの歌が入ったことで「めちゃ化けた」、まちがいなく本盤のハイライトです。

個人的には聞き流すと外国語のようにも聴こえる、というか歌うとあまり日本語に聴こえないような音ばかり集めて構成した詩にも注目していただきたい。

理由その3:
リリースから8年たった今、新たに録り直したことで最終到達点とも言うべきバージョンに仕上がった「処方箋/sounds like a love song」が収められています。当時このクオリティで読むことができていればあんな恥ずかしい思いをしないで済んだのに!と地団駄を踏まずにはいられない完成度です。ふつうに読んでいるようでかっちりとリズムに絡み合うリーディング+音楽の神髄がここにあります。これに関してはもう、断言していいはずです。

さらに素敵なビートと詩のギャップが大きすぎてもったいないからこれやめたほうがよくないですかと撤回を促さずにはおれなかった「注射器とカセットテープと公魚釣り(Kaztake RMX)」があり、これも去年ツアーで披露して「処方箋」と同じく録り直した「真珠貝亭の潜水夫たち/pearl divers」の酔いどれバージョンありと、見方によってはほぼKBDG祭りと言えなくもないことになっています。


こんな形で現在のKBDGをお届けできることになるなんて、ツアーが決定した数ヶ月前には想像もしておりませなんだ。どうかどうかどうか、この希有な一枚のためにもみなさま、Solo Solo Solo TOURに足をお運びくださいますように……!!


そして改めて、何から何まで話の順序がしっちゃかめっちゃかなことに我ながら驚かざるを得ませんが、今月末からツアーにまいります。5箇所が決定したあとに「やっぱり名古屋もやらへん?」というカズタケさんの一言からさらに3箇所が追加され、計8箇所です。

8箇所……。

カズタケさんや純平さんはともかく、僕に関してはこれまでのライブ密度からしてこれが見納めになる可能性も否定できません。ぜんぶ終わったら衰弱して死ぬんじゃないかとおもう。

刮目あそばせ!


椎名純平+タケウチカズタケ+小林大吾
SoloSoloSolo TOUR 2018 summer

椎名純平(Dezille Brothers)とタケウチカズタケ(A Hundred Birds/ SUIKA)、キーボードその他諸々を駆使した、SOUL/HIPHOPを飲み込んだそれぞれ独特のソロパフォーマンスに、唯一無二の詩人・トラックメーカーの小林大吾が加わる「Solo Solo Solo TOUR」が再び開催!椎名純平の歌声、タケウチカズタケの唸りを上げる鍵盤、加えて、小林大吾の詩の世界、トークも含めて、たっぷりお楽しみ頂けます!

6/29金 神戸三宮Chelsea de Rumba
6/30土 大阪南船場 THE GOOD THING
7/1日曜 広島福山 SO-S DINER
7/2月 加古川 花茶茶花
7/13金 元住吉POWERS2
8/24金@豊橋 輪 -RiN-
8/25土@名古屋千種喫茶モノコト
8/26日曜@敦賀tree cafe

チケットの予約、お問い合わせ等、すべての情報が集約されたページはこちら! →http://www.kaztake.com/7433/

このへんまでくるとさすがに読み飛ばされそうなので二度記しますが、チケットの予約、お問い合わせ等、すべての情報が集約されたページはこちら! →http://www.kaztake.com/7433/


お い で ま せ !


2018年5月10日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その290



ハゼと共に去る犬さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)だれもおぼえていないとおもいますが、ハゼシリーズの3作目です。


A. 歯医者に治療完了まで通いきれたことがありません。コツはありますか?


そうですね、僕がもし歯医者に治療完了まで通いきれる男だったら、こんな中年になるまでもたもた社会の底辺暮らしをつづけてはいないし、地域に溶けこむ温かな家庭を築き、一公務員として波風を立てることなく立派に定年まで勤め上げ、なんなら「おじいちゃんだいすき」と孫に慕われながら人生を全うしていたにちがいありません。いったいいつになったらこの荒れ狂う大海原を抜けることができるのかと数十年もの間ハラハラしながら航海をつづけてきましたが、今となっては嵐のなかでも鼻歌がでるくらいにはそんな夢をみることも少なくなっています。いずれ荒波にさらわれて海の藻くずが関の山です。

それもこれも、僕が歯医者に治療完了まで通いきれる男ではなかったからだし、なぜそうなのかといえばそこに歯医者があるからだし、翻ってだいたいぜんぶ歯医者のせいである、ということになります。まったくもって因果なことです。

どこでもというわけではないでしょうが、最近はアドレスを登録しておくと前日にメールでリマインダーが届く歯医者もあります。うっかり忘れてしまうケースを防ぐ手立てとしてこれはかなり有効です。予約時間の直前までしつこくピーピー鳴らしてくれるスヌーズ機能なんかついてたりしたらいいですね、と他人事みたいに書いているのは当の僕がこのリマインダーを利用していないからです。

ライトなすっぽかしはこれでよいとして、問題は「わかっているのに行かない」ケースです。僕なんかは完全にこれにあたります。わかってるんなら行けよとお思いでしょうが、ことはそれほど簡単ではありません。実際わかっているのに行けていないからこうして問題になっているのです。

歯医者の治療は他のケガや病気とちがってメンテナンスの要素が大きい、ということもあります。そもそも歯医者にあたらしく予約を入れるタイミングというのは明らかに治療を必要とする場合だとおもいますが、いちばん大きな問題が解決してもそれで解放されることはほとんどありません。大きな問題があるときはまずまちがいなくそれ以下の小さな問題を山ほど抱えているからです。そしてこれらの問題はいっぺんにではなく、ひとつひとつ片付けていくことになるので、当然それに見合った年月が費やされます。ひとつが片付いても1年たてばその間に状況はがらりと変わるし、なんなら片付いたはずの問題にまた立ち返る場合もあるでしょう。気づけば口の中のどこが今どうなっているのか判然としなくなり、そしてそのなんだかよくわからないきもちが臨界点を超えた時点で、歯医者はすっぽかされます。

ではいったいどうすればよいのか?

僕の場合は気づくのがおそかったこともあり、今となってはリスクが大きくなりすぎて断念せざるを得なかったのだけれど、しかしもしまだ間に合うようであれば、やはりこれがいちばんだろうと今でもおもいます。


A. 歯医者と結婚すればよいのです。


ただし、歯科医は配偶者に「虫歯のない人」を選ぶ傾向があります。というか、僕がそういうケースをいくつか知っているだけですが、考えてみたらそりゃそうかという気もするので、虫歯のために結婚したいのに虫歯のある人は向こうにとってそもそも対象外、というこの強烈なジレンマを踏まえたうえで挑んでみてください。

あと既婚者はきちんと離婚を済ませてからにしましょう。




質問は10年たった今でも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その291につづく!

2018年4月12日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その289


Youはヤスシお隣はタカシさんからの質問です。(ペンネームはご自身でつけられています)


Q. 20代の男です。これまでお付き合いした女性は、別れ話を切り出すと必ず、なぜ?と尋ねてきました。相手を振る理由を説明していると、どんどん自分が人でなしに思えてきて嫌になるのですが、どうかひとつ、この問いに対する回答例を頂けませんでしょうか。


ペンネームが最高なのでうっかり取り上げてしまいましたが、これはまた火気厳禁なかんじの質問ですね。

初めにお断りしておくと、相手にその気がないのに一方的に別れを切り出せば「なぜ?」と問い返されるのは、これはもう、誰がどこからどう見ても、至極当たり前の話です。そこに多少なりとも疑問を感じていること自体、いささか問題があると言わなくてはなりません。なんとなればここには、相手のきもちを慮る想像力が決定的に欠けているからです。

また、「どんどん自分が人でなしに思えてきて嫌になる」とありますが、一方的に別れを切り出す以上それくらいの負荷を背負うのは、これまた至極当たり前の話です。しかもはっきり申し上げて、大した負荷ではありません。えんぴつを真ん中からベキンとへし折るような心の動きを自己嫌悪と呼ぶなら、この場合は削りすぎた芯の先っちょがポキッと折れたくらいのことです。

なので、そうですね、まずはご自身の防衛反応を脇に置くことからはじめましょう。「なんでこんなきもちにならなくちゃいけないんだろう」とお思いかもしれませんが、相手はもっと「なんでこんなきもちにさせられなくちゃいけないんだろう」と思っているはずです。だったらなおのこと言わずにいるほうがいいような気もしてきますが、それですっきりするのは振る側だけであることを忘れてはいけません。それを人でなしと呼ばずに何と呼びましょう。

おもいきって踏みこむなら、こと恋愛においてはみんな多かれ少なかれ傷つけたり傷つけられたりしているのだし、べつに人でなしでもいいじゃないかと僕なんかはおもいます。その上で、なるべく善良でありたいと願い、行動すればよいのです。恋愛にかぎらず見たくない現実に目をつぶって善良であることなど望むべくもないと肝に命じましょう。人でなしであること、そこがスタート地点です。

そしてここに立つと、話は一気に簡単になります。相手が人でなしだとわかれば振られる側としてもこの恋に拘泥する理由はもはや何ひとつないし、振る側は振る側で「人でなしなんだからしかたないよな」で落ちこむ理由はありません。ウィンウィンじゃないですか?

さらに人でなしには、人でなしにしか言うことのできない、圧倒的な破壊力でかつ後腐れもなさそうなダブルミーニングな最終兵器(リーサル・ウェポン)があります。

こう言えばよいのです。


A. おれ人間じゃないんだ……




質問は10年たった今でも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その290につづく!

2018年2月4日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その288


乱取りチキンさんからの質問です。


Q. 無人島に何かひとつ置き忘れるとしたら何ですか?


膝を打たずにはいられない、いい質問です。「無人島に何を持っていくか」というのは言ってみれば食卓におけるカレーと同じで、バリエーションこそあれひまつぶしに最適な質問のデファクトスタンダードだとおもいますが、「何を置き忘れるか」というのはいまだかつて考えたこともありません。もう無人島にいる、というかなんならそこでけっこうな年月を過ごしているところから考えるじつにフレッシュな出発点は、無人島にひとり取り残されてしまったときだけでなく、日ごろから僕らを悩ます蚊の羽音のようなあれこれと向き合う上でこれまでにないアプローチを提示してくれているような気さえしてきます。具体的にどう役に立つのか見当もつかないのでたぶん気のせいだとはおもいますが、すくなくとも何かこう、するどい点を突いている気がしないでもないのはたしかです。

置き忘れると言っても、あらかじめ持っていったものとはかぎりません。長いこと暮らしているうちに手放せなくなった握り心地がすべすべの流木とか、よりどころがほしくてなんとなく祀ってみた石ころとか、探検してたら見つけたひとつなぎの財宝とか、島から持ち帰るはずだったものも含まれます。

ただ、見つけてもいない財宝を置き忘れてくやしがるというのはかなり高度な想像力を要する割にぜんぜん意味がわからないので、考えすぎて良さげにおもえてくる前に除外しておいたほうがよいでしょう。すべすべの流木あたりは僕なんか記念に持って帰りたがりそうだし実際置き忘れそうな気もしますが、それで小一時間考える甲斐はあったのかと言われるとこれもやっぱりぜんぜんないので、採用するわけにはいきません。

そんなこんなであれこれ想像を巡らせてみたのですが、つらつら考えるに無人島で暮らすのは生半なことではありません。暮らすというよりはむしろ生き延びるというべきです。身なりにかまってはいられないし、食えそうなものは何だって食う必要があります。楽園みたいな島ならよいけれど、未知の生物がうごめくロストワールドみたいな島である可能性もある以上、毎秒毎分が生きるか死ぬかであり、やるかやられるかです。気にするのは外敵の目であって人目ではありません。そもそもそこに人はいないのです。

そう考えると、かつては持っていたけれど無人島で生きるにはむしろ邪魔になりそうなもの、とはいえ捨てるのもアレだしまたいつか必要になるかもだからとりあえず脇に置いておこうとおもったらそのまま置き忘れてしまいそうなもの、がひとつだけあります。


A. 恥です。




質問は10年たった今でも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その289につづく!

2018年1月22日月曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その287

エヴ……エヴむ……?


ヴィンセントヴァン誤報さんからの質問です。


Q. 長年使ってたFacebookをやめようと思ってます。なにか挨拶的なものはいりますでしょうか。誰も気にしてないわと思われるのもなんですし。当方53歳。


いずれやって来るとうすうす感づいていたその日が、とうとうやってきたわけですね。フェイスブックにかぎらず「SNSをいつまでつづけるか問題」は今や人生においてかなりの高確率でまたぐことになる段差のひとつです。そしてこの段差をいかに切り抜けるかが人生の最終的なカギを握ると言っても過言ではありません。

僕もこれまで長いこと「フェイスブックは?」「やってないです」「なんでやらないの?」というやりとりをそれはもうげっぷが出るほどさんざん繰り返してきたので、今ではやってもいないのにそろそろやめるかというきもちに傾いています。

どうすれば始めてもいないことをやめられるのかという問題は単純に見えてなかなか一筋縄ではいきませんが、というのもやめるためにはまず始めなければならないし、始めたからにはある程度つづけないとやめたとは言いづらいからですが、それに比べれば話はずっとシンプルです。

挨拶については、そうですね、何かひとこと残しておいたほうが後腐れがなくてよさそうにおもわれます。なんとなればただやめただけなのか、それとも今までずっといたように見えて実は最初からどこにもいない架空の存在だったのか、傍目には判断がつかないからです。僕なんかは実際に面と向かって「架空の人だとおもってました」と言われたことがあるくらいなので別にどっちだっていいようなものですが、何かひとことあればすくなくとも存在自体が口裂け女みたいな都市伝説のひとつにされてしまう可能性はかなり減るはずです。

では実際にいくつか例を挙げてみましょう。

1)平素よりひとかたならぬお引き立てを賜りまして心より御礼を申し上げます。開設以来みなさまのご厚情をあずかりぽつぽつと雨垂れのように更新してまいりましたが、このたび新体制を含め存続か廃止か熟慮した結果、なくてもそんなに困らないなということで本日をもちまして終了することとなりました。永らくご指導ご鞭撻を賜りました関係各位の皆様には心から感謝申し上げますとともに、今後ともあの手この手でお引き立てくださいますよう、よろしくお願いいたします。

2)ご愛読ありがとうございました。ヴィンセントヴァン誤報先生の次回作にご期待ください。


3)バイバイキーン!

こんなことなら何も言わずにスッとアカウントを消したほうが100倍マシな気がしないでもないですが、それはまあそれとして案外(1)とかふつうにアリかもしれません。というかたぶん、僕はこれ使うことになると思います。いずれ。


A. スマートな離脱を祈ります。




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その288につづく!

2018年1月12日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その286


3年目の受話器さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 当方駆け出しのアクセサリー作家なのですが、スワロフスキービーズを扱うようになる前からかわいらしいスワロフスキのことのほうが親しみ深かったために、ビーズを扱うたびに思い出しています。いろいろなサイズや形のビーズがあるけれどどれに似ているかなと考えたりもします。そこで質問なのですが、スワロフスキがそのすてきな名前になった理由やビーズとの関係はあるのでしょうか?

A. そうですね、スワロフスキがスワロフスキなのは、ちまちましてコロコロしてきらきらな上にスワッとしてロフッとしてスキ!なかんじが、軽さと柔らかさと愛らしさを兼ね備えていたからです。

クリスタルガラスの老舗としてざっくり記憶していましたが、ビーズもあるんですね。ヴェルサイユ宮殿のネックレスみたいなシャンデリアが好きです。


風邪の又三郎さんからの質問です。

Q. 年末の大掃除が毎年とても嫌です。中掃除くらいなら自発的にやれる気もするので大掃除と中掃除の境界を教えてください。

A. とちゅうでマンガを読み始めたりして片付かなくなったらそれが大掃除です。


積み荷バラバラ……という感じさんからの質問です。

Q. 札幌はここ数日で笑うしかないくらい雪が降り積もったのですが、KBDGさんならどんな雪像を作りますか?

A. 重機の使用もふくめて、どこまでデカい雪玉がつくれるのかトライしてみたいですね。


サルバトールだるいさんからの質問です。

Q. 自分は学校関係を営業して回る仕事をしているのですが、その仕事の一つとしてグラウンドの遊具の交換修理などがあります。小林大吾さんは幼い頃、お気に入りの遊具などはございましたでしょうか?自分は滑り台です、滑り台の上から廃タイヤを転がすという、今にしてみたら中々に危険な遊びをしていたなと思います。何がしたかったんだろう……。

A. 僕が通っていた小学校には「ピラミッド」という、巨大な三角柱を寝かせたような切妻型の遊具がありました。何をするかといったら、助走をつけてその斜面を駈け登り、てっぺんをまたぎ、また滑り降りるだけです。滑り台から廃タイヤと本質的にはそんなに変わらない気もしますね。


毛皮を着た米茄子さんからの質問です。

Q. KBDGさんにとって2016年を漢字一文字で表すと何になりますか。

A. 「過」、もしくは「去」ですね。


EUだな(ハハハン)さんからの質問です。

Q. 誕生日にもらって一番嬉しかったものはなんですか?

A. ミス・スパンコールにもらった「手漕ぎボート」のMVです。これはもう、たぶんこの先ずっと変わらないとおもいます。


桶狭間のお茶会さんからの質問です。

Q. アイスには賞味期限がないって言うのは本当なんでしょうか?

A. ロッテのお客様相談室によると本当のようですが、だからといって冷凍庫に入れたまま10年くらい放置したアイスを食べるかといったら、食べないですよね、たぶん。


百人うぃっしゅ!さんからの質問です。

Q. すきなひらがなは何ですか?(わたしはむ、とかぬ、がだいすきです)

A. 僕もぬ、好きです。あとはゐなんかも、煮え切らなくて好きですね。


ラ・ラ・ランボー/怒りのダンスさんからの質問です。

Q. 「めんどくさい」を越えた先に達成感があるらしいというのは知っているのですが、何事も行動に移すまでにかなりの労力を要してしまいます。また、エイヤ!と意を決して行動に移しても、すぐ集中が切れてインターネットサーフィンをしてしまったり…。楽な方に流れず、きちんとすべきことをするにはどうすればいいか教えてください!

A. それができていたら僕もこんなところでこんなことをせずにもうすこしましな大人になっていたでしょう。僕に言えるのはただ、ぼんやりしているとこんなところでこんなことをするほか能のない大人になってしまうよということだけです。


脳天ハンカチ落としさんからの質問です。

Q. 頂き物の洋梨がダメになるタイミングがわかりません…。だいぶ柔らかくなってるんですけど、コレまだ食べれますか?

A. 切ってみましょう。


とりあえずビームさんからの質問です。

Q. 普段、曲を聴いていて、大吾さんのリリックは、整いながらも親しみやすい、綺麗な言葉遣いだなあと思っております。私自身、日本語の懐の深さのようなものが好きなのですが、言葉は良くも悪くも移ろいでしまいます。変化は歓迎すべきですが、その中でも変わらず残しておくべきこともあります。そのあたりの線引きは非常に難しく、気にいる・いらないの個人の視点に左右されがちです。大吾さんの中で、言葉に限らず、何か変化が起こる時、維持すべきもの・変えるものを判断する指標はありますか?

A. 有形と無形を問わず、1000年以上前から「意識的に」維持できているものはおそらくひとつもない、というのが僕の印象です。仮に維持できているように見えたとしても、くりかえし再発見されているにすぎません。よいものは自然とのこって受け継がれます。仮に途切れてもかならず再発見されます。何より僕が今こうして使っている言葉ですら山と積まれた変化の賜物であることを考えると、何であれ「変えずに維持すべき」とはちょっと言いにくいよな、というのが正直なところです。僕自身は変化という変化にものすごく弱いので、何も変わらずにいてくれるとすごくありがたいんですけど。


ローリング蕎麦党さんからの質問です。

Q. わりと同期・同年代の結婚ラッシュが続いた一年でしたが、先人の言葉にあるように「結婚は人生の墓場」とは本当なのでしょうか?

A. 仮にそうだとしても、自ら進んで墓穴をせっせと掘ったのは他ならぬその人自身なので、同情の余地はありません。


ヘリコバクター・ペロリさんからの質問です。

Q. 最近、お店探しに食べログを参考にすることが多いのですが、本当においしいと感じるお店に中々出会うことが出来ません。本当に美味しいお店の探し方をご存じであればご教授ください。

A. 金に糸目をつけないことです。


アジでコイ釣る5秒前さんからの質問です。

Q. 火星にいける権利が手にはいるなら、行きますか?ただし片道で、地球に帰ってこれません。行くとしたら、何を持って旅立ちますか?

A. 僕は寒いのが何より苦手なので、平均気温がマイナス43℃の火星なんかには死んでも行きません。仮に「温かくするから!」と言われても、「何もしないから!」と言ってホテルに誘うようなものなので、1ミリも信用なりません。それでもなお行かなくてはならないとしたら、そうですね、自害用のピストルを持って旅立ちたいとおもいます。




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その287につづく!

2018年1月5日金曜日

妹をほめたら海に突き落とすガッツな姉君に祝福を


日本神話に、磐長姫(イワナガヒメ)と木花咲耶姫(コノハナサクヤヒメ)という姉妹がいます。姉の磐長姫は二目と見られぬ醜女です。娶ればその子孫は岩のように長い寿命を授かると言います。いっぽう妹の木花咲耶姫は類稀な美女で、娶ればその子孫は木に咲く満開の花のように繁栄するそうです。

この姉妹は天照大神(アマテラスオオミカミ)の孫である邇邇芸命(ニニギノミコト)に嫁ぎますが、姉の磐長姫はぶさいくであるという身もふたもない理由から、ひとりだけ返品されてしまいます。すがすがしいほどの鬼畜ですね。その代償として、木花咲耶姫のみを娶った邇邇芸命の子孫はこののち、花のように短い寿命を授かることになります。

不遇きわまりないお姉さんはさておき、その美しさゆえになにごともなく妻となった木花咲耶姫を祀るのが、全国に1,000以上ある「浅間神社」です。

浅間神社は富士山信仰から生まれた神社で、富士山を望むことができる各地に点在していますが、基本的にそのどれもが木花咲耶姫を主祭神として祀っています。なぜなのかはよくわかりませんが、富士山と言えば木花咲耶姫である、とひとまずここではイコールで結んでおきましょう。浅間神社の総本宮とされている富士山本宮浅間大社で祀られているのも、もちろん木花咲耶姫です。他に父である大山祇神(オオヤマヅミノカミ)や夫である邇邇芸命も配神として祀られています。

しかしそうなると気になるのがあの不遇なお姉さんです。主神である木花咲耶姫は当然としても、父や夫を祀るのなら姉の磐長姫だっていっしょに祀ってよさそうなもんですが、そこに彼女はいません。1,000以上ある浅間神社のほとんどすべてで、磐長姫だけがみごとにスルーされています。何かやらかして除外されるならともかく、何ひとつわるいことをしていないのにこの扱いの差はいったい何なのだと、ぶさいくの同類である僕としても憤慨を禁じ得ません。握りこぶしで机を叩いて責任者出てこいと言いたい。

ところがそんな木花咲耶姫びいきの浅間神社にも、例外として、それはもう例外中の例外として、磐長姫を主祭神として祀っているところがあります。僕はその事実を知っただけでも目頭が熱くなりましたが、その例外中の例外のひとつ、個人的には文句なしに五つ星をつけたい最高の浅間神社が、伊豆半島の南西部、烏帽子山にある雲見浅間神社(くもみせんげんじんじゃ)です。













烏帽子山は海底火山だったころの冷え固まったマグマの名残なので、急峻な岩山です。傾斜が45度はある上に一段の幅が十数センチほどで足の半分くらいしか乗らないスリリングすぎる階段と、参道にはとても見えない岩道をがつがつと上っていくと、その頂上に雲見神社の本殿があります。






浅間神社は富士山信仰の神社なので、富士山を目視できる場所に多くあるわけですが、もちろんこの烏帽子山からも晴れた日はきれいな富士山を望むことができます。


が、

ほかの土地とちがってここは主神が磐長姫であり、先にも書いたように美しい妹との確執があるため、ここから眺めた富士山(=木花咲耶姫)を讃えると海に突き落とされるという言い伝えがあるそうです。富士山信仰の神社なのに富士山をほめたら海に突き落とす、そのアンビバレントなふるまいに胸がアツくなります。この話だけでも星4つぶんくらいの価値があるとおもう。

ちなみにどのあたりに突き落とされるかというと、たぶんここです。


それにしても景色がいいだろうとはおもいながら、その想像をかるく飛び越える360度の圧倒的な景観には息を呑むほかありません。来る人を拒むようなハードすぎる参道と、その対価というにはあまりある眺望絶佳、これをツンデレと言わずになんと言いましょう。遠くに望む富士よりも、ここに鎮座する磐長姫をこそ最大の音量で讃えたい。

もちろん何も知らずに訪れてもその甲斐はあるとおもいます。でも磐長姫を知って訪れると、胸を満たす感慨はより忘れがたいものになるはずです。

そして磐長姫と木花咲耶姫が争うなら、僕は迷わず磐長姫の側に立ちます。美しいということの意味を問うて、全力で立ち向かいたい。なんとなれば目立たないし詣でる人も多くはないけれども、それゆえにこそ心にずっと留めておくべきだいじなことを、この神社は教えてくれる気がするのです。三が日で34万人もの参拝客が訪れる浅間大社が、いったい何を教えてくれるっていうんだ?磐長姫を祀った心ある先人にも、満腔の敬意を表したい。

と言って大きくて立派なものにケチをつけるわけでもないけれど、おもえば昔からずっとこっち寄りだった気がするじぶんの立ち位置を伊豆半島の西端であらためてしみじみと確認しつつ、よっこいせと足を踏み出す2018年です。

今年もこの調子でひとつよろしくおねがいします。

松崎の河口でみかけたカワセミ