ふくらはぎだるおさんからの質問です。(ペンネームはご自身でつけられています)
Q: 大吾さんのアルバムを年代順に聴いてると確実に表現力が増していっているのを僭越ながら実感します。新しい「処方箋」などは本当に素晴らしいと思います。そこで質問ですが、朗読の練習は日常的に行なっているのですか?行なっているとすれば詩を朗読する上でなにか気をつけていることなどあるのでしょうか、よろしければパンドラ的質問箱で扱っていただけると嬉しいです。
あと僕はコーヒーが好きなのですが、夜に飲むと眠れなくなります。でも夜のコーヒーはチルな感じで大好きなんです。どうすればいいですか
僕はたしかに今も細々と活動をつづけていますが、しかしその細々ぶりたるや、場末のさびれた商店街の片隅にぽつんと残っているちいさな煙草屋でうたた寝しながら店番をしているおじいちゃんみたいなものなので、過分な賛辞をいただくとビクッとしてうろたえてしまうところがあります。
おまけに最後にリリースしたアルバムがすでに4年かそれ以上前ときているので、これは本当に最近の質問なのか、数年前のものを引っぱり出してきたのではないのか、なんならぜんぶ自作自演ではないのかとじぶんでじぶんを疑う始末です。
ちがいます。これは本当につい最近いただいた質問です。その証拠に新しい処方箋について触れてくれています。そうなると残る可能性は自作自演ですが、そんな攻めの姿勢があるのならとっくの昔にそうしているし、そうであったためしなどかつて一度もないことは火を見るより明らかです。
なのでここは、もはや失われつつあるある種の尊厳を取り戻してくれたハートウォーミングな一通であると結論づけて先に進みましょう。ふくらはぎだるおさん、どうもありがとう!
朗読の練習を日常的に行っているか、ということですが、結論から言うとまったく行っていません。まったくというのは文字通りまったくであって、すこしとかときどきを四捨五入してゼロにしているのではなく、始めからゼロです。
もちろん、だからといって何も考えていないというわけではありません。どうしても考えざるを得ない状況というのがときどきあって、そういうときは本当に寝食を忘れて向き合います。そうした状況のひとつが、ライブアクトです。
どうしたら最後まで飽きずに楽しんでもらえるだろうとか、リーディングに何ができるだろうとか、要するにそういうことですね。とりわけ2年つづけた独演会「オントローロ」では、何度来ても楽しんでもらえるようにということをつねに考えていたとおもいます。
そのうえで改めて気をつけたいと今もつくづく思い知らされるのは、「朗読には聴き手がいる」ということです。当たり前と言えば当たり前だし、もっと言えば朗読に限ったことでもないですが、これを意識するのとしないのとでは天と地ほどの差があります。そして誤解をおそれずに言うなら、それがすべてです。
言葉の選び方とか、滑舌とか、声色とか、個別の要素はいくらでもありますが、そのどれもが「聴き手がいる」ということのためであって、すべてそこに含まれてきます。もっと上手く読めるようになりたいとおもうし、実際そう言ってもいるけれど、それも結局「聴いた甲斐があったとおもってもらいたい」というきもちの裏返しです。というか、そうでないならわざわざ人に聴かせる意味も、人前に立つ意味もない。ですよね?
また、その「聴き手」には自分自身も含まれます。じぶんが客としてじぶんのパフォーマンスを観たり作品を聴いたりしたときに楽しめるかどうか、ということですね。正直たのしめたことはまだないけど、その視点があるのとないのとではやっぱり違ってくるんじゃないかなとおもいます。
と、あまり積極的に活動しない僕が言うこと自体、ちゃんちゃらおかしい気もしますけど、だからこそなおのこと、やることが昔と寸分違わず同じなら今も人前に立つ資格はないとじぶんを追い詰めているようなところがあります。そりゃ消極的にもなるわいと逆ギレする所以です。
もうひとつ、夜のコーヒーについてですが、僕はもうかれこれ数十年飲みつづけているせいか、就寝前にゴクゴク飲んでも直後にスヤスヤ寝ています。逆に言うと僕の場合、眠気覚ましにカフェインは微塵も効きません。
なので、体への影響を気にせずにせっせと飲みつづけていれば、夜に飲んでも平気で眠れるようになります。実際のところ効いてしかるべきカフェインが効かないのは肉体的に決して好ましい話ではないとおもいますが、それはまた別の話なのでまた別の機会に考えましょう。
A. 自分自身を含む、聴き手の存在を意識するように心がけています。コーヒーは飲みつづけるとカフェインが効かなくなるので、夜のんでもスヤスヤ眠れます。
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質問は10年たった今でも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その292につづく!
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