2015年3月25日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その207

すごい近くにツグミがきた


2Dプリンタさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 大吾さんが、歳をとるとともに恥ずかしくなってできなくなったことは何かありますか?私はメリーゴーランドに乗ることです。なんとなく「子供か、子供の付き添いでないと乗ってはいけないもの」というイメージがあって…大好きなのでいつかひとりで堂々と乗りたいです。


できればそっと胸に秘めておきたい大事なものなので名前は伏せておきますが、そういえば僕もあまりに思い入れがつよすぎていっそ個人で所有したいくらい大好きな遊具がひとつあります。前にも書きましたっけ?


人生の折り返し地点と言ってもおかしくない年になった今もそのきもちは全然変わりません。そのスタイルから構造、ネーミングに至るまで何もかもが昭和っぽい野暮ったさに満ちていて、たしか今では日本に下手したら1台、よくて数台しか残ってないような遊具です。昨年の冬、ひさしぶりに遊んだときもちびっこに紛れて堂々と並びました。どちらかといえば周りのちびっこより係のお姉さんのほうが戸惑っていたような気もするけど、操作に慣れた中年のおっさんがヤッホーな勢いでぐりんぐりん乗り回してるんだからそれはまあ、しょうがないよなとおもう。

したがって僕は言うまでもなく、2Dプリンタさんのメリーゴーランドが好きというきもちを心の底から支持する者です。今すぐにでも連れていきたいとおもうし、何なら僕もいっしょに乗りましょう。手を伸ばせば届く道ばたの花と同じくらいフレンドリーなよろこびを、誰であろうと奪うことはできません。あるいはメリーゴーランドに乗らないことで保たれる大人としての何かを右手に、乗ることで得られるシンプルなよろこびを左手にのせて比べてみるのもいいとおもう。どう考えても左手のほうが大きくてやわらかくて温かいという気がしませんか。

質問の答えになっていないのはもちろん僕もよくわかっています。わかっていますが、何しろ僕は先の例からもおわかりのように、大人になっても遊具にヤッホーでぐりんぐりんの人間なので、どうか大目に見てください。

エクスキューズついでにもうちょっとだけ食い下がると、東京の遊園地では老舗に数えられるとしまえんには、100年以上前に作られて今なお現役で稼働する、クラシックにして超モダンなアールヌーヴォー様式の、うっとりするほど美しいメリーゴーランド「カルーセルエルドラド」があります。ご存知ですか?日本どころか世界的にも最長老クラスの回転木馬なので、遊具というよりもはや文化遺産です。他を圧倒する威厳と貫禄、褪せることのない煌めきをまとったこのメリーゴーランドの前では、大人と子どもの線引きも用を成しません。みな等しくその美に打たれるばかりです。

そしてこれなら、誰に憚ることなくそのよろこびを心ゆくまで堪能できましょう。何しろメリーゴーランドであると同時に貴重な文化財でもあるのです。長く受け継がれてきた歴史の一端にふれるのだから、これ以上の大義名分もありません。いつかなんて先を待たずに、意気揚々と乗りこもう!


A: それはそれとして、恥ずかしさは年々薄れていってる気がします。何に対しても。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その208につづく!

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