2008年6月11日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その56


万年塀に飛び乗ろうとして一旦かがみ、一瞬ためらったのち、やっぱりやめてテクテク歩き出す猫をみかけました。思いとどまるまでの心の動きがとても気になる。彼女はなぜ飛ぶのをやめたのか?

あと、ヒゲが繁殖しすぎてちょっとした生態系を形成しかねない勢いなので、はさみで伐採しました。梅雨だし、きのことか生えると困る。


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丑三つドキッ!さんからの質問です(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)。先日のスイカ夜話で手紙をくれた、桔梗ちゃんのママですね。ご本人はじつに洗練された器をつくる、すてきなアーティストでもあります。いただいたメールによると、ふたりで詩人の刻印のデザインについて語り合ってくれた(!)そうですが(たしかに桔梗ちゃんの手紙にもそうありました)、小学生にしてすでにデザインを語れるというのは相当ぶっとんだ話です。どうもありがとう!僕がデザインという概念を知ったのはハタチをすぎてからですよ。いや、もちろんそれは遅すぎるんだけれど。すごくうれしいし、将来がたのしみです。白州正子ばりの審美眼、みがいてください。



Q: 好きな芸術家(表現者)は誰ですか?



多くのなかからひとり、ないしは数人えらぶとなると、これはなかなかむずかしい質問です。そうだなあ、なぜかいまパッと思いついたのは、歌川国芳です(なぜだ?)。江戸末期の浮世絵師ですね。職人的色合いも濃いので芸術家と呼ぶにはいくらかはばかられるところもあるけれど、浮世絵の歴史でもかなりの異彩を放つアウトローだと個人的には感じています。何を描いても独自の世界を映し出して本領がどこにあるのかいっこうにわからない底知れなさが好きです。豪放にして磊落だし、大衆的なポップ感覚と鮮烈なデザイン感覚を持ち合わせ、下世話でありながら同時に気品をしのばせる、まさに不世出の絵師と言えましょう。いちおう歴史ものとか武者絵に持ち味が発揮されると一般的には評されているようだけれど、それでは彼の魅力の1/3も語れません。美人画と春画を同じレベルの傑作に仕上げるあたりに揺るぎない胆力が見えるというか、相反するものを兼ね備えて世間体なんかどこ吹く風というかんじに惹かれます。ソウルミュージックで言うとClarence Reidみたいな人です。このふたりの類似性についてはいずれじっくり腰を据えて考察してみたい。

絵描きでおもいだしたけど、アルフレッド・ウォリスも好きです。とくにそのわけを書かなくても、これはなんとなくわかってもらえるんじゃないかという気がします。そうでもない?

どっちも故人だな。うーん。表現者として嘘いつわりなく尊敬しているのはマドンナです。ミュージシャンとしてというより表現者として、とここはあえて言い添えたほうがいいのかもしれません。

初めての給料でフリーダ・カーロの自画像を買った、という彼女の微笑ましくも意味深なエピソードからうかがえるのは、表現それ自体に対する一貫して誠実な姿勢です。だって、Like A Virgin とか、そんな時代の話ですよ!アイドル的な扱いをされていたそもそもの始まりからすでにディープな審美眼を持ち合わせていたなんて、だれが知っていただろう?すごくしびれる。Like A Prayer のころにハーブ・リッツの撮ったマドンナが表紙のInterview誌は、なんだか年月を重ねるほどに奥行きが増すように見えて、ますます手放せなくなっています。でもだからといって、アルバムをぜんぶ持っているとか、そういうかんじでもないのです。そう考えると、この質問にいちばんしっくりくる回答のような気もしますね。たぶん、だれも想像しなかった答えだとおもうけど。



A: マドンナ



意外だなあ、と書いてる僕自身もおもいます。書くことであらためて深まる認識もあるのだ。



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dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その57につづく!

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