2015年7月16日木曜日

いつかみたあの万年塀のちいさな落書きを分かち合うこと


オントローロの演目をぽつぽつと並べ始めております。今のところ音源になる予定のない曲("fishing ghost revised")や御大タケウチカズタケのリミックス(のうちのひとつ)といった飛び道具を用意して、ここでしか聴けないことをさも大事件であるかのようにあらんかぎりの声でアピールしまくるつもりでいたけれど、考えてみたらほとんどライブをしてこなかったんだから、そりゃ何をやっても珍しいよなとおもわないでもありません。だいたい当の本人であるこの僕からして、詩人の刻印やオーディオビジュアルを聴き直すのが5年以上ぶりという体たらくです。おもった以上に声が若くて冷や汗が出ます。あのころの僕に今の話をしたら「気でもちがったの?」と笑われそうです。

もともと僕はじぶんがこしらえたものに対して「大勢で共有する類いのものではない」というおもいがあります。ライブに積極的でない理由のひとつがこれです。必要とする人が何かの拍子に手に取ってくれればそれでよかったし、じっさい今もそうおもっています。ひとりでいる人に、ひとりでもまあ何とかなるもんだよとほんとに何とかなりそうなゆるさで言えればそれでよかった。いつだったか「DON'T WORRY」と書かれた万年塀の話をしたことがあるけれど、理想と言えばあれがまさしく理想です。誰も知らないような塀の落書きが、他のどんな言葉より大きな慰めになることもある。

でもふと思い立ってなんとなく始めたオントローロで、そればかりではないことがよくわかりました。万年塀の例でいうなら、「あの落書きみた?」「みた!」と言い合えるささやかなよろこびをしみじみ痛感させられています。僕のつくるものを手に取る人もまた、僕と同じ役割を担ってくれるというごくごく当たり前の事実を、今ごろ理解するなんてまったく面目ないことです。

だからこそ、これまでずっと音沙汰もなかったのに来たいと手を挙げてくれる人がいることを、心からありがたくおもいます。「万年塀、おれもみたよ!」と僕の代わりに言ってくれる人がいるなら、これほど心強いことはありません。そしてこれほど冥利に尽きることもちょっとありません。あとはよろしくたのみます、と他力本願な一言も添えておきたいくらいです。本当に本当にありがとう。

それにしてもまさか15分で売り切れてしまうとはさすがに思いませなんだ。ほら、ひとりじゃなかったでしょ、ってこれなら言ってもいいよね?

もちろん、とこんなに早くから宣言することになるなんておもってもみなかったけど、03と04も予定しています。なにか重大な物理的、心理的アクシデントが起きないかぎりはその後もほそぼそとつづいていくはずです。またちいさなボートで迎えにあがりますので、今しばらくお待ちくださいませ。

あとここだけの話、システム上の都合から金曜の朝あたりに若干のキャンセルが出るんじゃないかと踏んでいます。よかったらチェックしてみてね!

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