久しく音沙汰のない母親からメールがきたとおもったら「これからアメリカ。離陸は18時」と突拍子もない用件が手短かに書いてあるのです。唐突すぎて開いた口がふさがらないまま時計に目をやると、針は17時ちょっとすぎを指しています。
そんな大事なことを離陸1時間前になって言わないでいただきたい。
おまけにあとのことは嫁に行って育児にてんてこまいの妹に全部まかせてあるらしい。いかにも僕は長男としても兄としてもどこか心許ないところがあるし、じぶんでもそれは重々自覚しているつもりだけれど、しかしこうもあからさまに蚊帳の外へ追いやられると、さすがに今後の身の振り方を考えさせられないわけにはいきません。行く末がちっとも当てにならないという、至極まっとうな理由でもろもろの権利を剥奪される日もそう遠くない気がする。
だいたい彼女はじぶんの息子が数日前にまたひとつ年をとったことに気づいてるんだろうか?
*
アルプスの少女は異人さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q: まだ20代なのですが、小さいことから大きいことでよく「うっかり」してしまうのが多いです。注意はしているのですが、どうしたらいいでしょうか。
身につまされる質問です。かくいう僕も
「なんで電話に出ないの」
「すみません、うっかりしてました」
みたいなことがままあります。すすんで状況を悪化させたいわけでは全然ないけれど、悪化したら悪化したでまあ仕方がないよね、といういわゆる未必の故意を多分に含んでいるため、数々のうっかりに天引きされたその信用といったら往時のジンバブエドル以下です。
注:かつてジンバブエではあまりに破滅的なインフレ率のため(年間65000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000000%)、最終的に驚愕の100兆ドル紙幣が発行されました。当時の闇レートだとビッグマック1個が1兆4000億ドルになる計算です。
等比級数的に下落しつづける僕個人の信用はともかく、うっかりしないですむならやっぱりそれにこしたことはありません。
つい昨日あったばかりのささやかな例を挙げると、買い物に出るのに靴を履いてから部屋のカギを持ってないことに気づきました。カギを取りにいったら、なぜか財布もそこにありました。あぶないあぶない、と両方手にしてカギもばっちり閉めたのち、こんどは傘が必要だったことに気づきました。
出かける気がないどころか、もはや生きる気がないと言われても反論できないレベルのうっかりです。こうなるとさすがに呆れ果てるし、腹も立ちます。忘れるというよりとるべき行動がそもそもインプットされていないような気がする。前々からひとこと言ってやらなくちゃならないとおもっていたけれど、いったいお前の頭は
前回もほぼ同じ話をしてるじゃないか!
(恥ずかしい)
もちろん僕も、注意はしているつもりです。でもうっかりはいつもその隙間をめざとく見つけて顔を出します。その隙間をふさごうとすれば、やつらはさらにその隙間をすり抜けてくるのです。いたちごっこというほかない。ではどうすればよいのか?
じつは長年煮え湯を飲まされつづけた結果たどりついた、解決とまではいかなくとも多少の軽減は期待できる打開策がひとつだけあります。正攻法ではまったくないし、どちらかといえば封印しておきたい禁じ手です。しかしそれを踏まえた上でなおすがりたいと思うのであれば、試してみてもいいかもしれません。じっさい僕も、3割くらいはこれでしのいでいます。つまり…
A: うっかりしていたことさえうっかりしてしまえばいいのです。
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質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その139につづく!
3 件のコメント:
お誕生日だったんですね、おめでとうございます!
桜の季節がよく似合うかただと勝手に想像させていただきました。
お誕生日おめでとうございます。
私は自転車で出かけて、出先に自転車をとめたまま歩いて帰ってきて、五日後それにきがつくといううっかりをしょっちゅうやらかします。
> しろさん
どうもありがとう!
どちらかというと染井吉野より山桜が好きです。
> 合田一人さん
わはははは!
熟練の度合いが伺える高品質のうっかりですね。
どうもありがとう!
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