2008年9月29日月曜日

ソウルフルな自動車産業の亡霊


例によって例のごとく、レコード屋さんでLPをラックからトストスと上げ下げしていたら、きもちのよい曲が店内に流れはじめたのです。さいきんはソウルの主流がLPではなく7インチのシングルだったころの名曲を集めた良質のコンピレーションが定期的にリリースされているので、これもそのひとつかしらとおもって耳を傾けていたんだけれど、あんまり素敵なのでレジ前の「NOW PLAYING」と貼られたCDを確認しに足を向けたところ、その視線の先にあったものがあまりにも意外で、目が点になりました。






Raphael Saadiqだ…。



ラファエルが Tony! Toni! Tone! だったころは70'sへの敬愛というかそのフェチぶりがほうぼうで語られていた気がするけれど、このアルバムではどういうわけかさらにさかのぼって、古い意味でのR&Bからソウルと呼ばれるようになるころのサウンドがみっちり詰まっているのです。でもこれ回帰というより案の定完全に懐古趣味だし(にこにこ)、いったい誰に向けてつくったものなのかさっぱりわからない。ラファエルの新譜ときいて手に取った人ならへたをすると落胆しかねないギャップがあって、呆気にとられます。Stevie Wonderがハーモニカで参加というフィーチャリングのしかたひとつとっても古き良き時代(そんなものがあればの話だけど)を偲ぶかんじがアリアリで変な吐息が鼻からもれてしまう。

そうそう、こんなシャカシャカしたタンバリンもね、モータウン全盛期のJack Ashford(タンバリンと言えばこの人、みたいなイメージがあります)みたいで…とおもってクレジットみたら本人で、鼻水がでました。現役!?あ、Paul Riserまでいる!

なんだコレまるっきりモータウンじゃないか!参加メンバーが重鎮というか、おじいちゃんばっかりです。まるでブエナビスタソシアルクラブだ。

しかもこれだけモータウンの面々でがっちり脇を固めておきながら、リリースは今のモータウンじゃないんだから、何をか言わんやです。

さすがに音圧だけははちきれんばかりにパンパンだけれど、それにしてもヴィンテージという意味ではこないだのアル・グリーンの新譜にもひけをとらないというか、オマージュにしてはあまりにもフェティッシュな両者のこの偏向ぶりにはなんだか考えこんでしまうものがあります。いったい何が起きているのだ?まさかディアンジェロあたりがこの流れで再浮上してくるんじゃないだろうな。

さらにこのアルバムには驚くなかれ、JAY-Zがフィーチャリングされているのです(なんでだ?)。60'sのヴィンテージサウンドにJAY-Z!ちょうどレジで支払いをするときに鼻にかかったあの声が聴こえてきたので、ギョッとしました。店員さんにも「コレ、びっくりしますよね」と声をかけられてしまった。郷愁を誘うのどかな曲にわざわざそんなのっぺりしたラップのせなくてもいいじゃないかという気もするけど、色物としてはかなり珍奇な仕上がりなので一聴の価値ありです。でもたぶん、二聴の価値はない。

でもコレ、すごい好きだ…。だいたい、お店でかかっている曲を気に入ってその場でCDを買うなんて、何年ぶりのことだろう?ブルーノートみたいなクールなジャケットはどうだ!

あれ?リードマイルス?なんかピントがずれてるな?


まあいいや。しかし驚いたなあ。


あと、どうでもいいけどウチの母親が15年くらい前に Tony! Toni! Tone! の読み方について首をかしげていたことを、さっきふとおもいだしました。わりとリアルタイムで聴いていたんだな。

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