2008年7月19日土曜日
ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その62
水曜日はフラインスピンオーナーYMZと古川P、タカツキせんぱいと4人で、都心から車で1時間ほど高速をすっとばして辿り着く、人外の秘境で豪勢な打ち上げをしてきました。詩人の刻印の発売から8ヶ月半をへて、ようやくここでひとつの区切りをつけたことになります。
べつにそのへんの天ぷら屋とかだっていいし、前は実際そんなかんじだったんだけれど、局地的とはいえ思わぬ広がりを見せた詩人の刻印に関しては、多くの人が恵んでくれたいくばくかの幸運に感謝を捧げながらしみじみとそのよろこびをかみしめる、ちょっととくべつな一席を設けたいと考えていたのです。
そしてこの会合は、3枚目のリリースに向けた、それぞれの意志確認の場でもありました。形式的にはこのときをもって、あらたな制作期間に入ったということですね。その夜おそくにさっそく古川Pからプロデューサーっぽいメールが届いて焦りました。
みんな本当にどうもありがとう。がんばります、もっと。
ちなみに詩人の刻印は、あちこちのお店で売り切れていて、すわ廃盤かという話もあるようですが、もちろんそんなことはありません。廃盤にする理由は何もないです。渋谷フライングブックスでは今もふつうに手に入ります。
*
百万枚の皿(ロシア製)さんから、もう何度目か忘れちゃいましたがまた質問をいただきました。気を遣わせてしまった感じがアリアリですみません。どうもありがとう!
Q: 趣味はなんですか?
お見合いにおける第一声のようでひじょうに緊張する質問です。ないと答えるのはすごく抵抗があるんだけれど、かといってコレと言えるものが見当たらない。履歴書の記入欄でもいちばん脂汗のにじむ部分かもしれません。
辞書をみると「仕事・職業としてでなく、個人が楽しみとしてしていること」とあるけれど、そんなこと言ったら風呂上がりのビールだってたぶんその範疇におさまってしまう。そうじゃなくてもう一歩こう、能動的なかんじがしますよね。貪るくらいの鼻息の荒さがほしいし、ちょっと人には言いづらい、背徳性なんかあるとなお良しです。「じつは…」と切り出さざるを得ないような意外性というかね。何にせよ、人が聞いたら「へー、そうなんだ」と唸ってくれるようなものでありたい。「ああ、いいよね、アレ」という具合に簡単に同意してほしくない、趣味とはつまりそういう陰湿なニュアンスをすべてひっくるめた排他的な営みであるとわたくしは考える次第であります。そうか、だから脂汗をかくことになるんだ。
だって「趣味は読書です」よりは「趣味は女装です」と言ってみたいですよ、それは。驚きもされずに「なるほど」なんて頷かれた日にはなんだかションボリしてしまう。「知りもしないで、知ったような顔すんなよな」とおもう。そんな水面下の駆け引きみたいなことしなくたっていいようなものだけど、へんなところで負けず嫌いなのです。ギャフンと言わしてやりたい。
しかしそう考えると、完全にじぶんの首をしめてしまったようですが、胸をはって堂々と言えそうな趣味なんて何ひとつありはしません。
と、そこへ、おや。こないだ骨董市でビル・マーレイそっくりのおじさんから100円値切って買ったちいさなコップが目に入りました。(逃避)
ああ…やっぱり可愛いじゃないか。手のひらにおさまるこの手頃なサイズといい、三ツ矢サイダーの気さくで親しみやすいロゴと、シンプルで飽きのこない、それでいてモダンなツボを得た図案…、
フゥ…(ウットリ)
時代の技術的限界からくる無骨な厚みと、それゆえにどうしても除去しきれずガラスに閉じこめられてしまう無数の気泡…プリントの手ざわり、経年からにじみでる程よい寂寥感…、醸し出される侘びと寂び…
そこへミス・スパンコールがやってきて、「コップ、スキなんじゃないの?」
「そうだね。コレかわいいし」
「そうじゃなくて、そもそもコップ自体がスキなんじゃないの?」
ハッ。(何かに気づく)
そういう目であらためて部屋を見回してみると、そういえばたしかにウチにはあちこちからあの手この手でくすねてきたコップがいろいろ…
思い返せば、ブログでも以前に相模川で拾ってきたコップを披露したような…
意識せずになんとなく抱えていたきもちを「それは恋です」と指摘されて、稲光が脳天をつらぬき走るような新鮮なおどろき…。
対象がコップ(無機物)というだけで、展開的にはそのへんのラブコメと変わりないじゃないか。
き、
気がつかなかったな…。
A:コップフェチでした。
本当に、つい一昨日くらいに気づかされたことだったので、いまだにその驚きから抜け出せていません。知らなかった、じぶんがコップ好きだったなんて!
でも履歴書には書きづらいだろうな、たぶん。
*
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
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