2013年2月10日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その123



押したい




スウィンギン天丼さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ベスパで配達されるモッズのための天丼のことですね。


Q: よくある戦隊ものなどのロボットに入るための入り口はその機体のどのあたりにあるのでしょうか。かかとでしょうか?つむじでしょうか?


今もそうだとよいのですが、たしかにひと昔前の戦隊ものでは毎回むくむくと巨大化する怪人への対抗手段として、それとほぼ同じサイズの巨大ロボットが呼び出されていましたね。ほどなくしてやってきたロボの元へ颯爽と向かうヒーローたちの後ろ姿は、今も脳裏に焼きついています。

しかしつらつら思い返してみるとこの場面、駆け出すヒーローたちとロボットの間には相当な距離があったような気がしてなりません。個人的な印象で言うと、浅草からスカイツリーを見上げるくらいの遠近感です。遠すぎませんか。

あんまり近いと踏まれてしまうし、離れればそれだけ安全なのはよくわかります。また観光がてらぶらぶらと散歩するぶんには余裕で徒歩圏内です。必ずしも遠いとは言えません。しかし可及的速やかに駆けつけるとなると、およそ2kmの道のりはスプリンター並みの脚力でも5分はかかります。すでに巨大化してしまっている怪人にしてみれば、マニキュアを塗ったり煙草を取り出して一服でもしないかぎり、この間をもたせるのは至難の業です。また仮に怪人がこの時間差を受け入れるフェアプレイ精神の持ち主なのであれば、わざわざスケールの大きな肉弾戦に持ち込まずとも、話し合いによる穏便な解決が十分期待できます。感情的に直接が無理でも、第三者を介した交渉なら受け入れる余地もきっとあるでしょう。にもかかわらずそれをしようとしないのはつまり、怪人の懐がそれほど広くないからです。広かったら広かったでヒーローの立つ瀬がないし、むしろそうあってくれないと困るような事情もあります。となれば致命的なタイムロスの回避がやはり何としても必要です。いかにしてそれは成されているのか?

もちろん、ヒーローだから足がメチャ早い可能性もありえます。それならそれで何の問題もありません。あるいは映っていないところでタクシーに乗っていたとしても、ことが地球の危機なのだからなりふりかまわないのが当たり前です。そういう姿勢はむしろ積極的に支持したい。

しかし僕としてはここにもうひとつ別の、もっと根本的な疑問をさしはさむ余地があると考えます。端的に言うならこういうことです。そもそも彼らは本当にロボットに搭乗しているのか?

たしかにヒーローたちはコックピット的な空間で着席しています。ロボットも水を得た魚のようにバリバリと動き出します。しかし幼心に当時から気になっていたのは、彼らがあまり操縦をしているようには見えない、という点です。ときどき何かのボタンを押したりレバーをいじったりはしているけれど、どちらかといえばコックピットの中で全員が同じポーズをとっていたことのほうが印象に残っています。怪人との戦いにおいてすくなくとも人と同じくらいの機敏にして繊細な動作が要求されることを考えれば、息の合う仲間たちとのさらなる一体感よりもロボットとの一体感のほうがどう考えたって優先されるべきではないのか?

しかしこの不思議も、ロボットが自律的に行動していると仮定すれば合点がいきます。まるで中に人が入っているかのごとくバリバリ動き回っているのだから、そもそもコントロールを必要とはしていないと考えるのがやはり自然です。

そしてそれはまた、ヒーローたちはロボットを操縦していない、という衝撃的な事実をも意味しています。どうやら僕らは長いこと誤解しつづけていたらしい。

ここから導きだされる結論はもはやひとつしかありません。ロボットまでの距離が遠すぎるという先の疑問と突き合わせてみても、平仄が合います。こんな単純なことにどうして今まで気づかなかったのかと呆れ果てるばかりです。つまり…


A: あれは搭乗しているのではなく、コックピット的な楽屋でモニター越しに応援しているのです。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その124につづく!

3 件のコメント:

名無しの職無し さんのコメント...

更新の頻度が禿しく、失敬激しく2013年をそんなハイペースで飛ばして大丈夫かと博士が心配です。

アジ さんのコメント...

戦隊ものでロボットが出てくると、「大きくなる前にロボットで怪獣をプチッと踏み潰してしまえばよかったじゃないか」と思ってしまうのですが、そうしない理由でもあるのでしょうか。

ピス田助手 さんのコメント...

> 名無しの職無しさん

僕もそう長くはもたないような気がしています。



> アジさん

それだと力の差がありすぎてどっちが悪者だか
わからなくなるからじゃないですか?