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ホテルのカリフォルニア巻さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q: 群馬のひいおばあちゃんからの質問なんですが、pってアルファベットの輪っかの部分はなんで右上にあるんですかね??
日ごろ当たり前のように目にしていながら何の疑問も持たず、そういうものとして無批判に受け入れていたことを思い知らされる、じつによい質問です。揺るぎなく見えた世界にぴしりとヒビの入る音が聞こえます。
おもえば僕もひところ、円(¥)はYなのになぜドル($)はSなのか、ふつうに考えたらDではないのか、あれっちょっと待てよく見たら円もYENであってENじゃないな、てことは正しくは「えん」じゃなくて「ゑん」なのか、うわっえええー!まじかよ知ってたのに全然気づいてなかったこれア行じゃなくてヤ行だ!奈良時代にははっきり区別されながら今ではすっかり失われたはずの「ゑ」の発音が現在もキープされてるなんて、そしておそらく九割九分九厘くらいの人が「YEN」と知りながらその読みを気にもしてないなんて、でも「ゑ」の表記じたい明治以降は廃止されたんじゃなかったか?だとしたら「円」を「YEN」と表記したのはいったいいつなんだ?そしてそれは実際に「ゑ」と発音されていたのか?というか今もそう発音すべきなのか?してる人はいるのか?
と最初は素朴だった疑問が気がついたら「現代に残る古代日本語の発音」というまるでシーラカンスの発見みたいな話になっていてわれながら困惑したものです。そのままドルのこともすっかり忘れ、最終的にはポイと匙を投げたことがなつかしく思い出されます。
素朴と言うなら「孫の手」なんかもそうです。なぜ孫なんだ、孫は背中をかくために生まれてくるわけじゃないぞ!と抗議するつもりが豈図らんや、もともとは孫ではなく麻姑という中国の仙女だったと知ったあの日の驚きは忘れようにも忘れられません。飲み会かなんかでおっさんが適当に吹いたホラではないのかと目を疑ったくらいです。一見すると何でもなさそうなことも、一歩ふみこめば時としてことほどさように思いもよらない奥行きを秘めています。いつどんな驚きに出会うかわからないのだから、徒然なる日々であっても探究心だけはつねにゆるゆるとアイドリングさせておきたい。
無論、pの輪っかもこの例に漏れません。奥行きと言える奥行きがあるかどうかはともかく、一皮むけばそこからはぐうの音も出ない事実が浮かび上がります。
A: 輪っかが左上にあるとqになり、左下にあるとdになり、右下になるとbになってしまうからです。
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質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その209につづく!
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