僕としても愉快な話がそう毎日あるわけではありません。ないけれども、その一方で起きるときは立て続けに起きるのもまた、世の常であると申せましょう。迷宮入りした靴下の事件について記したその日、じつはもうひとつ別の奇妙な事件が起きておりました。
というのも、カタカタとキーを叩いていたまさにそのとき、ゴリゴリゴリゴリ!と聞き慣れない音がどこからか響いてきたのです。
誰もいない部屋で耳にする物音はそれだけで心臓をカエルみたいにぴょんと跳ねさせます。物が落ちたくらいの音でさえいちいちギクリとさせられるのに、聞き慣れないとなればなおさらです。おまけに鳴り始めたとおもったらそのまま鳴りつづけて止む気配もありません。非常ベルとか目覚まし時計の鳴りかたに近い。でもそのどちらでもないとすぐにわかったのは、音の違いに加えてそれが奇妙な振動を伴っていたからです。壁を伝ってくるような印象さえある。まったく、何がこわいといって、何が何だかわからないこと以上にこわいことがあるだろうか?
ひょっとすると隣でちょっとした工事でもしてるのかもしれない、と希望的観測を抱きながら音の出所をおそるおそる探っていくと、どうも洗面所のあたりがあやしいようにおもわれます。そっちはたしかに隣室との境でもあるから、工事だとすれば辻褄も合う。でもそれにしては音が直接的です。壁を伝ってくるというよりは、今まさにそこで鳴ってる気がする。鏡だ。鏡から聞こえる。ていうか待って、何?鏡が震えてる!ちょっと、何なの一体!
と沸き立つ恐怖を懸命に抑えつけながら勇気をふりしぼってさらに一歩踏み出した結果、そこで目にしたのは
ちょっと珍しいタイプの電動カミソリであった。
なぜかはよくわからないけれども、とにかく誤作動を起こしてぶるぶる震えていたらしい。鏡の脇に据え付けられたプラスチックのトレイに入っていたせいか、却って大仰に響き渡ったわけですね。
なーんだ!
と
お思いでしょうね、おそらく?誤作動だってそりゃ心臓にわるいけど、とはいえありえないことではないし、わかってしまえばこうして騒ぎ立てるほどの話でもないじゃないか?
ちがいます。早合点してはいけません。話の核心はこの先にあります。
というのも、いいですか、
我が家にこの物体の持ち主は存在しないのです。
使ったおぼえはありません。買ったおぼえもありません。もらったおぼえもなければ、誰かが泊まりに来たこともありません。僕がふだん使うカミソリは、当然べつにあります。ミス・スパンコールまで引っぱり出して、考えうるありとあらゆる可能性を考えてみたけれど、持ち主はやっぱり見当たらないのです。
イヤアアア!
ちょっともう、ホントに勘弁してちょうだい!
誰のなの、これ!
*
ネバーエンディング素通りさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)そういえば僕、「3」の存在を知らなくてほんとに素通りしてました。
Q: カラオケの分厚い歌本にダイゴさんはひっそりと入り込んだりしないのですか?
これはまた思いもよらない質問です。正直、考えたこともありません。どんなシチュエーションで読み上げるのかぜんぜん想像できないし、やるとしたら、いったいどれを…?
でももし声に出して読んでみたいとおもってもらえるなら、うれしいです。言葉にとってもこれくらい冥利なことはありません。どうもありがとう!でも合コンとかでうっかりセットしちゃったら大惨事になるとおもいますよ、たぶん。
A: 字幕を追うのがたいへんじゃないですか?
*
質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その134につづく!
2 件のコメント:
わかります。私もお酒が入って、拓郎さんの旅の宿を歌い上げたあたりで突然に大吾くんの詩が歌いたくなって、 ガーゴイル 〜 紙くず までをアカペラで演ることもあります。どうですか、大吾くんも一緒に……。
そういえば以前、猫沢エミさんがご自身のブログで、エミさんの曲が登録された記念に一行で歌っていらしたことを報告していたのを思い出しました(笑)
> f.k さん
「拓郎さんの旅の宿を歌い上げたあたりで」
というのがなんかちょっとうれしいですね。
でもガーゴイルから紙屑までって…
アルバムの最初から最後までじゃないですか!
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