2011年11月22日火曜日
竪穴式住居とヴィクトリア女王の間にあるもの
ある日の午後、晴れ渡る青空の下で築100年と言われても頷ける朽ち果てた木造のボロアパートから、ものすごい美女が出てきたときの衝撃といったらないのです。
うっかり寄りかかったらガシャガシャペタンと崩れて薪の山になりかねない老朽ぶりとはいえ、今なお現役の住宅なのだからどんな人が住んでたってよさそうなものではあるけれど、でもたとえばですよ、豪奢な衣装に身を包んだ若きヴィクトリア女王が野趣あふれる竪穴式住居からいそいそと外出するところを目撃したと想像してごらんなさい。気取りのなさを通り越した得も言われぬギャップには、ヒョウタンから馬が飛び出すよりもはるかに深く大きな感動があります。忘れることはできません。小さくなりゆく後ろ姿を眺めながら、立ちすくんで去りがたい。何だかいいものを見たような気がするし、見てはいけないものをみてしまったようなバツのわるい心地もする。こうしてゆくりなく胸に突き刺さった恋の矢が、いったい誰に引き抜けましょう?いいえ、断じて能わざることであると宣言せずにはいられません。ことによるとガラスの靴が落ちてるような気さえして、ひとしきり辺りを見渡すありさまです。このシンデレラめ!
とは言うものの、じっさいのところ僕も思春期を通過してだいぶたつそれなりの年ごろなので、ソワソワした心の始末に困ることもなく、今みた光景の一部始終をいつからか貯め始めた眼福コレクションにポイと仕舞ってスマートに片をつける祝日前夜です。明日の法事に今から気が重たい。
ちなみにミス・スパンコールが手に入れた最新の眼福コレクションは
日付が変わろうとしている夜の地下道に3人の若者(男2、女1)がいて、そのうちのひとり(男)が「ごめん、じつはオレ終電がもうすぐなんだ!」と申し訳なさそうに駆け出したとおもったら、残りのふたりも「なんだよ、早く言えよ!」と言いつついっしょになって駆け出した。
というものです。ふむ…どこにでも転がっていそうな話ですね?じっさいありふれていると言ってもよろしい。でももしこういう細かなところに眼福を見いだすことができたら、それだけで日々はちょっとだけカラフルになると僕はいつもおもうのです。
この話の要点を書き出してみましょう。
1)先に駆け出した彼はどうやらひとりだけ電車がちがうらしい
2)とつぜん駆け出したということは、それまで言い出せずにいたようだ
3)言い出せなかったというだけで何となく彼の温かい人柄がうかがえる
4)電車がちがうということは、のこりのふたりは走らなくてもいいはず
5)にもかかわらずいっしょになって駆け出している
6)何のために?
7)もちろん友情のために。
8)3人の関係性が甘酸っぱくてかわいい
ね。ちょっとだけカラフルになった気がしてくるでしょ。ニュースになるようなただひとつの例外ではなく、むしろどこにでもあって誰にでもおぼえのありそうなごくごくありふれた話だとおもえばこそです。見すごさないようにしたいとおもう。
一方ではそのために「だから何?」と日々言われつづけてるんだけど。
伝わりづらい…?
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4 件のコメント:
眼福コレクションという響きがステキですね。
私も眼福コレクションに入れられる様な普段は気付かずに通り過ぎていたであろう眼福を掬い取っていきたいです。
> とくさん
そう感じてもらえると僕もうれしいんだけれど、でも伝わりづらいんですよね、こういうの、すごく。
刺激的、ではないしね…
掬い取ったら、おすそわけしてください、ぜひ。
ちょっと違うかもしれないけど、僕はこないだ見た「女子高生が柴犬を散歩させてる様」にやられました。
なんでだかはわかりません。
ただ女子高生と犬が好きなだけかもしれません。
> 匿名さん
それはやっぱり、女子高生と犬が好きなんでしょうね。僕も好きですけど。
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