袖すり合うも他生のぴえんさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. ムール貝博士の嫌いなことわざを教えてください。私の嫌いなことわざは、禍福は糾える縄の如しです。
「嫌いなことわざ」というのはなかなか新鮮な切り口です。とりあえずムール貝博士は火に油を注ぐのに忙しいので代わりに助手である僕がお答えしましょう。
禍福は糾える縄の如しとはまた渋いチョイスです。僕も日常生活で耳にした記憶がほとんどありません。あったかな?言われてみれば当たり前にセットにしてんじゃねえよという気もしますが、個人的にはむしろ好きなことわざのひとつです。
意味としてはまあ、人生山あり谷ありみたいなことですが(そういえば山と谷ではどっちがいいんでしょうね?)、それ自体は別にどうでもよろしい。好きなのはこれが僕にとってバイブルのひとつである曲亭馬琴の「南総里見八犬伝」にやたらと出てきまくる諺だからです。ついでに言うと、月満つれば則ち虧く、もめちゃめちゃ出てきます。月は満ちもすれば欠けもするという意味で、一般的には栄枯盛衰の意味合いで使われるようですが、実際には欠けてもまた満ちるので八犬伝では「禍福は〜」と同じように用いられていて、僕もそっちのほうがしっくりくる印象です。とにかく一難去ってまた一難みたいな話の連続なので、あるいは裏テーマのひとつなのかもしれません。現代語訳でもそうなんだろうか?
嫌いとまで強い思いを持っているわけではないけれど、これ別にいらねえな、と昔から思っているのは七転び八起きです。七転八倒という反物質みたいな熟語がある以上、互いに打ち消しあって何の意味もありません。なぜよりによって七と八なのか、そっちの方がよっぽど気になるくらいです。ファミマにする?ローソンにする?みたいなことでしかないとさえおもいます。
逆に好きなのは罪を憎んで人を憎まずです。これほど完璧な先人の知恵と高度な精神はそうそうないとおもうんだけど、今に至るまで僕自身も含めてほぼ誰一人実践していないところがいい。たぶんこの先もムリだろうし、せめて無形文化遺産として語り継がねばなりますまい。誰が言い出したのか知らないけど、ほんとにすごいとおもう。ある種の無理ゲーだからこそ今もふつうに通じてしまうという、典型例のひとつですね。
いずれにしても禍福は糾える縄の如しなんてそんなにしょっちゅう耳にする諺でもないし、記憶から抹消したところで何の支障もないと僕なんかはおもいます。上記の理由で、僕は好きですけど。
A. 七転び八起きです。
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その412につづく!
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