2023年10月6日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その402


カントリー道路さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. タコさんウィンナーに敬称をつけるならタコさんウィンナーさんでしょうか?それともすでにタコさんが付いているので不要でしょうか?または、タコさんは間違いでタコウィンナーさんが正解なのでしょうか?


これは考え出すとなかなか奥の深い問題です。

そもそもがウィンナーであってタコではないことを考えると、主体となるのはウィンナーです。敬意を払われるべきはウィンナーなのだから、本来はタコウィンナーさんが正しいように思われます。

一方で弁当にこれが入っているとき、わたしたちは「ウィンナーさんだ!」とは言いません。おそらくそれを見た全員が「タコさんだ!」と言うはずです。そうなるとウィンナーが主体であるという大前提からして疑わしくなってきます。仮にタコのほうが主体なのだとすれば、こちらに敬称がつくのは当然のことです。おかしいのは敬称の位置ではなく対象の語順であって、この場合の正しい呼び方はウィンナータコさんになる、と僕は考えます。

これはタコさんウィンナーの「さん」が敬称だった場合の話ですが、そうではなく、これが固有名詞の一部だとした場合、話はまた変わってきます。さかなクンサンプラザ中野くんでもお馴染みの問題であり、ご両人とも敬称が追加されることを望んではいないようですが、とはいえこれは明らかに僕らの名前と同じ固有名です。本人の意志がどうあれ、客観的に考えれば敬称をつけなくていいことにはなりません。この視点に立つとタコさんウィンナーもまた固有名であって、呼び方はタコさんウィンナーさんということになります。

ところがこれで終わりではありません。固有名であればその終わりに敬称をつける、それはそのとおりですが、敬称としての「さん」がつくのは原則として固有名をもつ生き物として認識されている場合だけです(フィクションを含む)。親しみをこめてブタさん、ペンギンさんといった一般名詞につくケースはむしろ例外と言っていいでしょう。

タコさんウィンナーはタコですらありません。生前はブタさんであったと強弁することもできますが、ウィンナーが転がっていたら誰だってこれをウィンナーと言うはずだし元ブタさんとは認識しないはずなので、ウィンナーと呼ぶならその時点でそれは食品です。

食品にかぎらず生き物として認識されていないものに対して敬意を払う場合に相応しいのは、むしろ接頭語の「御」です。ごはんとかお風呂とか、少なくとも接尾語の「さん」ではない。ですよね?

したがって、タコさんウィンナーが固有名であり、かつ加工食品であることを踏まえて敬意を払うとするならば、最も理にかなっているのはおタコさんウィンナーである、ということになります。


A. おタコさんウィンナーです。




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その403につづく!

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