2016年5月3日火曜日

椎名純平さんと「…and the SOUL remains」のこと


わざわざあらためて言うようなことでもないけれど、音楽にとってCDはいまや最優先のフォーマットではありません。その必然性がほとんどなくなっている以上、リリースにはかつてとちがってそれなりの理由が必要になってきます。

椎名純平さん(@junpeishiina)から届いたアルバムジャケットの依頼メールに目玉が2つすぽんと飛び出し、床にころころ転がったあげくそれを踏んづけて派手に転倒、脳天をしたたかに打って前後不覚に陥った僕のよろこびと狼狽ぶりはさておき、だからお話をいただいた際に訊いてみたかったのはまさしくこの点でした。どう考えても配信の方が手軽でコストもかからないし、より多くの人にシェアしてもらうならこれ以上のフォーマットはないのに、「なぜCDなのですか」

純平さんの答えはハッとするほど明快でした。

「ライブの現場に持っていきたいんです。何なら手に取ってくれたお客さんのことを全員知っているくらいの、そんなアルバムにしたくて」

すとんと腑に落ちたばかりか、ついでにこのときストレートに胸を射抜かれてしまいましたと、告白しなくてはなりません。実際、CDであることのこれ以上に端的で明快な理由があるだろうか?言われてみればたしかにデジタルでは、手渡しもサインもできないのです。何よりこの短い一言から、純平さんの人柄があふれんばかりに伝わってきます。うっかり「好きです」と口をすべらせそうになってぎりぎりで踏みとどまったくらいです。不倫はよくない。


アルバムのアートワークについて、当初は「写真は使わず、タイトルだけでシンプルに」というお話だったようにおもいます。「…and the SOUL remains」というタイトルからも察せられるように、裸一貫ではないけれど、最後に残ったのは音楽への衝動だった、とそんなふうに仰っていたのです。なるほど、それならたしかにロゴのみでばしっとストイックなほうがある種の意志を表明するかんじでカッコいいかも。

ところがお会いして直接お話を伺い、まだデモ段階だった音源を聴かせてもらったことで印象ががらりと変わりました。何しろアルバム全編がただただ温かく、おだやかな自信と希望に満ちあふれているのです。先にもふれた純平さんの気取らない人柄が、そっくりそのまま、やわらかに表現されています。

ひょっとしてこのアルバムタイトルは「最後に残ったもの」ではなく、むしろ「それだけあればこと足りる、必要にして十分な何か」を意味しているんじゃないだろうか……?

だとすればタイトルの裏にひそむこの控えめだけれどポジティブなニュアンスを、イメージとしてきちんと落とし込みたい。できれば全体のカラーリングも、行く先を照らす灯台のような明るいトーンにしたい。写真は使わない予定だったにもかかわらず盤面に歌う姿を配置させてもらったのも、お話からシンガーとしての矜持をひしひしと感じたからです。


そんな次第でこうしたアートワークになったわけですが、しかし当初の方向性からはいささか離れてしまったような気もするし、とくに色については本当にこれでいいのか自信がなかったので、山のようなエクスキューズとともにおそるおそるお伺いを立てたところ、メールを送信した数分後にりーんと電話が鳴って飛び上がりました。そして話を聞く前から「すみません」と謝りそうになる僕に対して、純平さんがこう仰るのです。

「アルバムの色って僕お話ししましたっけ?」
「いえ、あの、聞いてないです」
「ですよね……なんとなく黄色を思い浮かべてたんです、じつは」

安堵しすぎて腰が抜けたと、今さらここに記すまでもありますまい。


そんなこんなで完成した極上のアルバム「…and the SOUL remains」は、ライブ会場のみで手に入ります。ブラックミュージックへの愛情がたっぷり詰まった豊潤な音楽性はもちろん、酸いも甘いも噛み分けた大人にしか紡ぐことのできない言葉の数々に胸打たれる、そんな1枚です。どうか現場に足をお運びのうえ、その耳でしかとおたしかめになって!

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

このアルバム、すごく欲しいです!
でも残念ながらライブには行けません。。。
通常販売を密かに期待しております。

ピス田助手 さんのコメント...

> 匿名さん

一般流通しないからこそ意味があるアルバムなんだけど
多くの人に聴いてもらいたいきもちもあります。
ジレンマですね。どこかで出会えますように!