2016年4月15日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その245


ひん死の重傷を負った青年が緊急搬送されてきたので、ひとまず運び入れています。

東海道中ヒザ蹴りでさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がなんとなくつけています)


Q: 就職活動中に彼女に振られました。僕は何をどうすれば良いのでしょうか?


傍目から見てもたいへん気の毒な事態です。何もこれから海へ漕ぎ出そうというときに、船底に穴を空けていかなくたっていいようなものですが、いやまったく、人生とはかくも無情であるかとしみじみため息をつかずにはいられません。まあお茶でもお飲みなさい。

ズズー

いただいたメールには結果しか書かれていなかったので、具体的に何が起きたのかはわかりませんが、望まぬ別れだったことはたしかなようです。つらいですね。考えたくないのにすてきな思い出ばかりがフラッシュバックして、その喪失感にごろごろとのたうち回り、何も手につかなくなるそのきもちは、僕もよくわかります。すくなくとも瞬間的には、世界不幸ランキングにおいて5ケタくらいは順位が跳ね上がったはずです。ランキング上位にはまだ40億人ほどひしめいているとはおもいますが、いずれにしても就職活動どころではたしかにありますまい。

何をどうすればよいか?

とっておきなのであまり大っぴらにはしたくないのだけれど、出し惜しみしてもいられません。この際だから僕が知るかぎりこの世で最も含蓄に富んだ処方のひとつを、ここに記しておきましょう。

今から20年ちかく前、トム・ウェイツがジャマイカでジョン・ルーリーと釣りをしていたときの話です。彼はボートの上で釣り上げた魚を、あろうことかパンツの中に入れようとします。

Tom Waits: "That's what I've usually done in the past when I've been depressed.(昔からヘコんだときはいつもこうしてたんだ)"

なぜ魚を、そしてなぜパンツなのか、それは大した問題ではありません。重要なのは釣った魚をパンツに入れることであり、その結果もたらされる気分が "I'm Alright." であるということです。すくなくともトム・ウェイツは魚をパンツに突っ込んだのち、何ごともなかったかのように再び釣り竿を手にしてそのまま釣りをつづけています。是非などはなからお呼びでない、これ以上に単純明快な手の打ちようが他にあるだろうか?

なので今度の休みはぜひ、釣り竿を持って湖なり渓流なりに行きましょう。替えのパンツを持っていくかどうかはそのときの気分におまかせします。いっぱい釣れたらバーベキューもいいですね。ついでと言っちゃなんだけど、またそういうときにひょっこり、運命の人と出会ったりするものですよ。


A: 釣った魚をパンツに入れることです。(You should put a fish in your pants.)


就職活動がんばってください。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その246につづく!

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