これは一体どこから来て、なぜ畑に置かれたのか……
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ダンス・ウィズ・くるぶしさんから折も折、というかんじの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q1: フライヤー、CDジャケットなどのデザインのとき、浮かんだアイディアの中からどういう基準で選んだり最終決定をだしているのですか?私はアイディアが浮かんでも良いと思うのは自分だけなんじゃないか……と不安になったりします。どのデザインのお仕事でもお洒落なものを製作されてるので、お聞きしたいです。
なるほどたしかに、これは切なる問題です。僕もデザインにかぎらず、たとえば詩を書いたり、ビートを組んだり、あるいは料理をしていてもそんな思いにとらわれることがあります。これ、すごくおいしくできたとおもうけど、そう思ってるのはじぶんだけなんじゃないか、とかね。置かれた状況や程度の差こそあれ、誰もが一度は抱える不安のひとつであると申せましょう。
でもその一方で、僕はこうもおもうのです。仮に良いとおもうのがじぶんだけだったとして、それが果たして「イコール良くない」ということになるんだろうか?10人中9人が気に入るものと、10人中1人しか気に入らないものが同時に並んでいるとき、その支持率で良し悪しを決めてしまっていいんだろうか?
もちろんひとつの目安として、数はそれなりに意味があります。「多いにこしたことはない」という考え方には概ねイエスと言っていいとおもう。でももしこれが「多ければ多いほど良い」になると、似ているようで意味が明らかに変わってきます。何となれば後者は、「少なければ少ないほど良くない」と解釈することもできるからです。そんなこと言ったら広大なマイノリティの原っぱでちいさな花を咲かせる僕のアルバムなんか、問答無用で良くないものにされてしまうじゃないですか?
たしかにそうかもしれません。そうかもしれませんが、それではどこまでいってもしょんぼりするばかりだし、僕としてもさすがにちょっといたたまれません。なのでここはひとつ、受け止め方を変えてみましょう。すなわち「良いとおもうのはじぶんだけ」ではなく、「じぶんが良いとおもうのだからこれは良いものだ」という解釈に切り替えるのです。そもそも良いとおもうのがじぶんだけかどうかなんて実際のところ神様でもないかぎり誰にもわかりっこない、というごくごく当たり前の事実を、ここであらためて思い返してみる必要があります。
では具体的にどうしたらそうおもえるかということですけれども、これはもうただただ、ひたすら数をこなす以外に道はありません。ひととおり完成したあとではなく、浮かんだアイディアの時点で不安になってしまうのだとしたら、なおさらです。そこで立ち止まるとどうしても完走する回数が少なくなってしまいます。結果がどうあれ回数を重ねたほうが、次の走りに期待が持てるとおもいませんか?10回だって走りきればどの走りが良かったかが自ずと見えてくるものです。
実際、「アイディアの時点で選ぶ」ことってほとんどありません。ひらめきが最終的な出来を保証してくれるわけでは全然ないし、浮かんだアイディアは基本的にぜんぶ試します。試して持て余すこともあれば、そこから思いがけない方向へと転がっていくこともある。選ぶのはだから、その後ですね。
だからまあとにかく、やってみることです。すくなくとも僕が決定を下す際の基準は、その積み重ねと反省から生まれています。微調整とかブラッシュアップのほうがそれよりはるかに難儀なんだけど、まずはここからです。
A1: じぶんが良いとおもうのなら、それは良いものとみて間違いありません。
デザインをお洒落だなんて言ってもらえることあんまりないので、うれしかったです。どうもありがとう!良いとおもってるのは僕もじぶんだけだとおもってました。
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ダンス・ウィズ・くるぶしさんにはもうひとつ質問をいただいていたのでそれにもお答えしましょう。
僕にとってパンケーキが人生に欠くべからざる存在なのはたしかです。たしかですが、美味しいものを追求するよりは、ただ小麦粉がこんがりとキツネ色に焼かれていることを祝福したい。そういう原始的なよろこびからすると、世間の話題に上るようなスイーツ系はちょっと気品がありすぎるのです。大雑把なこの向き合いかたで昔から無理なく付き合えていつもしあわせなのはロイヤルホストと、あとは日本から撤退してしまったけどかつてのIHOP(International House Of Pancakes)でした。僕がIHOPに心傾けていまだに忘れられずにいることは、「バニーズへようこそ」ひとつとってもおわかりいただけるとおもいます。20年前にこのブームが来ていたら撤退はしなかったかもしれない、とおもうとくやしくてなりません。あるいはバーガーキングみたいに再上陸してくれてもいいのよIHOP……!
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質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その185につづく!
4 件のコメント:
写真は宇宙船なのでは?
ものの良し悪しは難しいですよね。特にセンスを問われるものは、大吾さんの詩にあるように「アビリーンパラドックス」みたいになって、評価が後から変わるなんてことが今もありますしね。
私も少なからず、人にセンスを問われる仕事をしていますが、自分が作ったものを良いと思う人が何人かはいるはず!と思ってするようにしてます。
評価してくれた人が影響力の強い人ならば、世間的な評価も上がるのかなぁ〜、なんて思ってボチボチやってます。
僕は趣味でいろいろやりますが、あくまで趣味なので、自分が満足したならそれが世界一だと思ってますけど、お仕事でもの創りをされてる方はそうはいかないんだろうなぁ…。
> チムチムチェリーさん
誰かに認めてもらえたら、
それはやっぱりうれしいですものね。
僕もほめられると伸びるタイプですが
同じくらい図に乗るからほどほどでいいです。
> 赤舌さん
いえいえ、どんな立場であろうと
自分が満足したならやっぱりそれが世界一ですよ。
人によってちがってくるとしたら、自分に課す
ハードルの高さだけだと僕なんかはおもいます。
> 匿名さん
37丁目のマンホール!
しかしまたずいぶんな大物ですね、これ。
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