2013年1月26日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その118


足の指に乗り上げた荷物の重量を数百キロと書きましたが、後日「1トンはあるね」と訂正されました。つまり僕の右足の薬指は、こんなに可愛いなりをしていながら1トントラックとほぼ同じ積載量を誇る、ということです。

今日からMr.アンブレイカブルと呼んでいただきたい。


(ビジュアル的に物足りないという理由で差し挟まれた1枚)




ちんぴらごぼうさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士が適当につけています)甘くも辛くもない、どっちつかずのきんぴらのことですね。


Q: 右と左をすぐに判断できません。簡単な覚え方はないでしょうか。


じつを言うとこの問題には僕もずいぶん前から悩まされています。判断に迷ってふと立ち止まるくらいならまだしも、まちがえてから気づくので始末に負えません。おまけにまちがえるその確率がかなり高い。いっそ「僕が左と言ったらそれは右という意味です」と宣言したほうが早いんじゃないかと真剣に考えるくらいです。

右と左はわかります。「右はどっちですか」と言われれば右手を挙げることもできます。ところが「駅はどっちですか」と訊かれてその答えが右のとき、とっさに「左です」と答えてしまう傾向があるのです。右という意味で「左」という言葉を、左という意味で「右」という言葉を使っているふしがある。指し示すところのものは同じなのだから、自分自身で行動する分には支障もないし別にいいかという気もするんだけど、誰かに伝えるとなるとそうもいきません。というかむしろ大問題です。何となれば本人は右のつもりで左と言っているわけだから、あとで詰られても言いがかりだとおもいこんでしまいます。僕もおそらく「どうも変だな」と気づいてから今の認識に至るまでにかなりの時間(あるいは年数)を費やしているはずです。脳みその配線が1本まちがっているんじゃないかとおもう。

いつからこうなのかなんて知りようがないし、ひょっとしたら正しかったことなんてかつて一度もなかったんじゃないかとおもうと気が気ではありません。僕が道を右と教えたせいで本来つまずかなくていいはずの石につまずき、その隙に手荷物をひったくられ、慌てて追いかけたらマンションの2階あたりから植木鉢が落ちてきて頭に直撃、命は取りとめたもののなかなか全快にいたらず、病室の窓から外を眺めながら「あの蔦の葉っぱがぜんぶ落ちたらわたしの命は…」みたいなことになっていたとしたら、僕は…僕は…。(首をくくる準備をしています)

しかしそんな詮無い苦悩を抱えるのはよしましょう。求められているのは右と左の簡単な覚え方であり、それはまた同じように混乱を抱える僕にとっても有益な答えであるはずです。すくなくとも最後の葉っぱを固定するためのセロテープを持ち歩かずにすむのであれば、向き合う価値は十分にあります。

そも、「右」とは何ぞや?また「左」とは?

利き腕が左右どちらにもあり得る以上、俗にいう「箸を持つほう」という覚えかたは意味をなしません。鉛筆やハサミも同じです。とすると右、あるいは左とはいったい何なのか?身ぶりならカンタンです。でももし電話でその概念を伝えるとしたら?幼児でも理解できるくらいのはっきりしたちがいがあるのに、いざシンプルに言葉だけで説明しようとすると考えこんでしまうのはいったいどういうことなのか?

北を向いたときの東、と表すことはできます。横書きの文章で句読点を打つほうとか、時計の針が進むほうと言うこともできる。しかしそれはそれでまちがってはいないとしても、ある程度進んだ文明を前提にしないと左右を説明できないのはなんだか釈然としないものがあります。だってどう考えても、もっとこう原始的な概念じゃないか?

しかしまあ、これまでに並べたものを捨て忘れたエロ本といっしょにぜんぶ焼却炉につっこみ、がらんとした頭で再度シンプルに考えれば、心臓のあるほうが左で、ないほうが右です。これなら仮に文明が滅び去ってもじぶんが生きてさえいれば区別ができます。北斗の拳におけるサウザーのように内蔵の左右がすべて逆(注1)という稀な場合もありますが、そろそろ結論を出しておかなくてはいけないし、ここまできたら数千分の一とか数万分の一の確率でおこる例外まで気にかけている余裕はありません。そのときはまたそのとき考えればよろしい。厳密さなんてどんぶり勘定の前ではしらす干しに混じったちっちゃいタコくらいの意味しかなさないということを、いい機会だからしっかりと肝に銘じておきましょう。

(・ω<)☆

では心臓とは反対のうつろな空間には何が入っているのかというと、これはたぶん心です。左に心の臓があって右に臓がないのだから、のこるのはつまり心ということになります。どちらも同じもののように扱われることがあるけれど、鼓動はただ、心と連動しているにすぎません。それに動くものが一方にあるのだから、それを動かすものはもう片方にあるのが道理です。ですよね?


A: 心臓が左、が右です。


ちなみに僕個人の例で言うと、「寝ぐせのあるほう」が右で、ないほうが左です。太陽が必ず東からのぼるのと同じように、僕の寝ぐせも必ず右につくことになっています。おまけにシャワーをかるく浴びたくらいではびくともしない強情なやつです。例外はありません。たまには左につけようと寝方を工夫してみても、目が覚めればやっぱり寝ぐせは右についています。なんだよコイツと毎朝おもう。


注1:リンク先のウィキペディアには「東京理科大学の松野健治助教授の研究室で内臓逆位のハエが見つかった際、その遺伝子をこのキャラクターに因んで「サウザー遺伝子」(Myo31DFsouther)と命名している。」という愉快なエピソードが紹介されています。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その119につづく!


2 件のコメント:

もよよ さんのコメント...


今までお箸を持つ方を右としていましたが、大吾さんのアンサーが一番しっくりきます。

ふと気になったのですが大吾さんは右利きですか?左利きですか?





ピス田助手 さんのコメント...

> もよよさん

右利きです。
そして個人的にはまだ「右と左って何なんだ?」
というきもちが拭いきれずにいます。