2009年12月9日水曜日

新・黒いパンサー 最終話「長いお別れ」



<前回までのあらすじ>
わりと硬派な忘年会のカラオケでうっかり名曲「見知らぬ国のトリッパー」を歌って組織のひんしゅくを買い、命を狙われることとなった「黒いパンサー」こと愛作平三(あいさく・へいぞう)。持ち前のタフネスとひねりのきいたトンチで数々の難局を切り抜けてきた彼だったが、アルプス山麓でヨーデルの練習中、ヤギ3頭と引き換えに裏切った牧童ペーテルの密告によってとうとう組織にその身を引き渡されてしまう。絶体絶命の危機に陥った平三に打つ手はあるのか!?二転三転する予測不能の展開に1秒たりとも目を離せないハードボイルド巨編、ついに完結!哀しみのヨーデルに心がふるえる…

テーマソング



 *


「さて、お祈りの時間だ」
「祈る相手なんかありゃしないよ」
「かつての仲間に銃を突きつけられる気分はどうだ?」
「あんまりいいものじゃないね」
「まだひっくり返せる気でいるのか?」
「何をだ」
「この状況をさ」
「いや…さすがにあきらめた」
「らしくないじゃないか」
「らしくあってほしいのか?」
「遠慮しておくよ、お前のこわさはよく知ってる」
「だろうな」
「何か言い残すことはあるか?」
「そうだな…」
「なければこれでさよならだ」
「あるといえば…ある」
「言ってみろ」
「ヨハネスブルグに妹がいるんだ」
「そうだったな。アフリカ作戦のときに会ったよ」
「きれいだったろう?」
「ああ、美しい女だった」
「おれが消えたら天涯孤独の身になる」
「気の毒なことだ」
「彼女の世話をたのみたい」
「なんだと?」
「彼女の面倒をみてやってほしいんだ」
「笑えない冗談だな」
「冗談でもなんでもないさ」
「相手を見てものを言え」
「だから言ってるんだよ」
「仮に約束したとして、それをおれが守るとおもってるのか?」
「おもってるとも」
「救いようのない馬鹿だな」
「だからこうしてつかまってるんじゃないか」
「無様なもんだ」
「たのんだぞ」
「託すのは勝手だが、おれの知ったことじゃない」
「そう言うだろうとおもったよ」
「もういいだろう。おれにも立場ってものがある」
「それから…」
「呆れたやつだな、まだあるのか」
「あいつに伝えてほしいんだ」
「何だ」
「今週…12月12日の土曜にある<スイカだけ夜話>を忘れるなと」
「なんかの暗号か?」
「そのまんまだよ。場所は青山 月見ル君想フだ」
「よくわからんが伝えておこう。気は済んだか?」
「そうだな。もういい」
「さらばだ、黒いパンサー」

ガシャン

「だれだ!」
「おいおい、そいつはおれの獲物だぜ」
「む、おまえは…!」


 *


今さら言うことは何もありません。みんな元気かなあ…

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