鋼のレンチン術師さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. 一年程前から小林大吾さんを聴くようになり、質問箱もピス田助手の手記も全て読むほどハマってしまった兄からの質問です。仕事に行きたくない時のよい対処法はありますか?仕事自体はさほど辛くないのですが、出勤から退勤まで室内にこもりきりなので息が詰まります。 また夜勤もあるので生活リズムの切り替えが大変な時もあります。いっそのことズル休みしてしまえば良いのですが、それだとお金が稼げずご飯が食べれません。
質問箱どころか、限られたごく一部の人だけが強烈な反応を示す類の読みものである「ピス田助手の手記」まで読破するとは相当な猛者です。お兄さんありがとうございます!
なぜ仕事に行かなくてはならないのか、もしくはなぜサボってはいけないのか。それは古来より人類が折にふれては直面してきた問題のひとつです。この問いが21世紀の今も絶えないのは、いかにしてサボるかをほとんど誰も心の底から真剣に検討してこなかったからではないか、と僕は考えます。
ここでいうサボるとは、「有給を使わず、誰にも迷惑をかけず、評価や収入に影響がなく、何ごともなかったかのように翌日からまた鼻歌まじりで仕事に行ける状態で、仕事に行かないこと」であるとしましょう。多くの人はこの定義の時点ですごすごと退却してしまいます。どう考えてもそんなことは不可能のように思えるからです。でも、果たして本当にそうだろうか?
脱獄不可能と言われたアルカトラズ刑務所から脱獄を果たした伝説の囚人、フランク・モリスを思い出してください。
ちょっと話はそれますが、僕はこの脱獄不可能という言葉が大好きです。なんといっても「あ、刑務所って基本的には脱獄可能なんだ」「いや、ぜんぶ脱獄不可能にしとけよ」と思わせてくれるのがいい。縁があるわけじゃないけど、夢があります。
しかしそんな部分をいつまでもスルメみたいに味わっていても仕方ないので、一般的な刑務所は「人は脱獄できないが怪物なら脱獄できる」、アルカトラズは「怪物でさえ脱獄できない」とひとまずここでは考えましょう。フランク・モリスはその怪物でさえ脱獄できないレベルの刑務所を人として脱獄してしまったわけですね。
できるかと問われたら100人が100人、絶対にムリだと断言するような行為を、彼は成し遂げています。生死不明と言われていたので、ひょっとしたらどこかで溺れたかもしれませんが、少なくともそこはアルカトラズではない。そしてこの事実は、不可能が単に「まだ可能になっていないだけ」であることを示唆してもいます。不可能だったはずなのに、できちゃってますからね。
そう考えると、「有給を使わず、誰にも迷惑をかけず、評価や収入に影響がなく、何ごともなかったかのように翌日からまた鼻歌まじりで仕事に行ける状態で、仕事に行かないこと」が果たして本当に不可能なのか、疑わしく思えてきます。ひょっとしてまだ誰も気づいていない、目からウロコのとんでもない解がどこかに眠っているのではないのか…?
もちろん僕はその回答を持っていません。持っていたらこんな底辺をうろうろするような生き方はしていないし、フランク・モリスだってアルカトラズを脱獄するのにYahoo!知恵袋でどうにかしようとは思わなかったでしょう。われわれの求める答えはもっと深遠なところにあって容易に見つかるものではない、例えば聖杯とかワンピースみたいなものだけれども、大事なのはそれが「存在する」ということです。
ないと思われている答えを探すべく、二度寝する布団の中で綿密な計画を練りましょう。全然なさそうな気がするのは、これまでずっとないと思いこまされてきたからです。本当にあると信じないかぎり、あるものもないことになってしまいます。
1日や2日で見つかるとは思いません。5年でも10年でも、あきらめずに何度でもトライしましょう。続けることが肝心です。やがて「有給を使わず、誰にも迷惑をかけず、評価や収入に影響がなく、何ごともなかったかのように翌日からまた鼻歌まじりで仕事に行ける状態で、仕事に行かない方法」を見つけたとき……言うまでもなく、人生が変わります。
A. 日々の仕事は、どこにも影響を及ぼすことなくスマートかつエレガントにサボるための計画を立てる、その隠れ蓑だと考えればよいのです。
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その447につづく!