2016年1月28日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その239


好評を博すとはおもわなかったけど、まさか水路橋の話でアクセスが1/3まで急減するとはさすがに想像もしてませんでした。このままいくと2月の終わりごろには10人くらいしか訪れなくなりそうなくらいのすがすがしい墜落ぶりです。つまらない話をして本当にもうしわけありません……。(布団をかぶっています)


山口さんちのツープラトンパワーボム君さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 好きな言葉(またはセリフ)は何ですか?ちなみに私は「日々とは気分にまで働く重力とのたたかいだ」というフレーズが好きです。


どうもありがとう!

僕はどちらかというとじぶんの名前よりも、じぶんの手から生まれたもののほうに重きを置くタイプなので、そう言ってもらえると冥利に尽きます。ことわざみたいに、いずれ出典がわからなくなっても言葉だけがなんとなく残ってる、ってことになったらうれしいけど、それはまあ、望むべくもないですわね。

好きなセリフもいろいろあるような気がしますが、最近で言うとここにもちょっと書いた「ストレイト・アウタ・コンプトン」のラストシーンでの

"What are you gonna call that bullshit?(なんてレーベルにすんだ?)"
"Aftermath. (「その後」だ)"

という直球のやりとりにしびれました。

「ストレイト・アウタ・コンプトン」はかんたんに言うと、ある伝説的グループの栄枯盛衰から見たヒップホップ史の光と影を、ドキュメンタリータッチで描いた映画です。

Aftermath」というのはヒップホップ好きならみんな古くから知ってるこれまた伝説的なレコードレーベルのひとつなのですが、そもそもなぜレーベルにこんな妙ちきりんな名前をつけたのか、それをこれ以上ないくらい単純かつ明快に示してくれるのがこのラストシーンなんですよね。

ひょっとしたら詳しい人は知ってたのかもしれないけど、僕はぜんぜん知らなかったので、いろいろあって、とにかくもう、ホントにいろいろあって、そうした過去すべてに区切りをつけて明日に進むために冠した名が「その後」だった、と知った瞬間の吹き出すようなカタルシス!そしてエンドロール!いやまったく、仮に「いや、あれ実はうそなんだ」と言われても別にかまわないくらいのド級のきもちよさです。いま思い返してもアドレナリンが吹き出ます。

あと、これは僕がこういうことをしているせいかもしれませんが、ジム・ジャームッシュ監督の「デッドマン」という映画のワンシーンにある

"Do you know my poetry?(これがおれの詩だ)"

という一言も昔から印象に残っていて忘れられません。若かりしころのジョニー・デップ扮する主人公が、同姓同名のせいで高名な詩人にまちがわれるんだけど、ある理由から追ってきた男をピストルでパンと撃つ直前のセリフがこれです。


まさかこの数十秒だけアップされてるとは……

観たのはもう20年くらい前のはずですが、まだ成人する前だった僕はスクリーンを前に「うわああああかあああっこええええええ」と顎がはずれそうになったものです。

ピヨピヨさえずりやがって、これでも食ってろとでも言わんばかりのこの姿勢は、とにかく当時の僕をして「この場面、この瞬間が一編の詩でなくて何だというのだ」と心理的に全面降伏せしめるものがありました。今も折にふれてはこの一丁のピストルとぶっ放された弾丸のことを思い出します。あれこれとひねくれたものばかり書いてるから説得力に欠けるかもしれないけれど、小理屈なんぞクソの役にも立たない、というシンプルで頑丈な真理を僕が今も忘れずにいられるのは、まさしくこのシーンのおかげなのです。

なんか文脈込みでないといろいろわかりづらくてすみません。


A: "Do you know my poetry?"




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その240につづく!


2 件のコメント:

山口さん さんのコメント...

人生にも影響を与える言葉ってのは破壊力がありますね!


水路橋のくだりは、「ブラタモリ」みたいで個人的には好きです。
実際に見るともっと迫力がありそうで行ってみたくなりました。

ピス田助手 さんのコメント...

> 山口さん

ありがとう!
こんなんでいいのか……とハラハラしてたから
そう言ってもらえて何よりです。

水路橋、ほんとに素敵なのでぜひぜひ。