2012年9月5日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その110


しゃちほこバルさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)地下鉄極楽鳥線エドガー橋駅から徒歩3分のところにある、最近注目のスペインバルですね。


Q: 来年"バイクで日本一周"する予定なんですが、「ココだけは行っといた方が・見といた方が・食べといた方がいい!!」という所教えて欲しいです。


や、しまった。これはもっと早くに答えておくべきだったぞ」と後から気がついて脂汗をたらすことがときどき……というかわりと頻繁にあるんだけれど、これもそのひとつです。質問をいただいたのが去年の年末で、今はといえばそろそろ秋のにおいが立ちはじめるころですから、控えめに考えても一周どころかすでに三周目に突入されているような気がします。しかしまあ、歩みののろさでいったら三輪車にもひけをとらないブログです。そのへんはうやむやなかんじであんまり気にしないでください。

それにしても日本一周とはまた夢のある話ですね。バイクとはいえ、こまめに回っていたらどれくらいの日数を要するのか、想像もつきません。人生をゆさぶるような出会いや体験はありましたか?

僕自身はさほど旅人気質でないこともあって、オススメできるほど多くの土地を知りません。知らない土地をぶらぶらとねり歩くのは好きだし、おもわず感嘆の声を上げるような景勝地や万人の舌を唸らす美味もいくつか経験しているとおもうけれど、それだってたかが知れています。何かあったかしらと首をひねったら、茨城県にある友部というサービスエリアが真っ先に思い浮かんだくらいです。せっかく日本を一周するんだからもっと他にこう、ファンタスティックな物とか場所がありそうなのに、しようのないことですね。

ちなみになぜこのサービスエリアが印象にのこっているのかというと、露店で売られていた今川焼があまりにおいしくて、食べ終えたそばから踵を返してけっきょく20個も買って帰ったからです。「なぜこんなにおいしいのですか」と訊ねたら「小麦粉を3種類ブレンドしてるんだけど、それでかな」と威張るでもなく控えめに照れ笑いを浮かべたおじさんの人柄も忘れがたい。そう、とにかく皮がおいしかった。いくら粉モノ好きとはいえ、20個も買ったのは後にも先にもこのときだけです。ただし、同行した友人2人は「ふつうじゃん」とにべもなかったことを公平に記しておかねばなりますまい。

しかし僕にとって大事なのは、こうしたちいさな驚きです。おおきな驚きにだけ目をとめるくせをつけてしまうと、あちこちに転がっているちいさな驚きを見逃してしまいます。地平線まで広がる大草原も、ベランダの端っこにちんまりと生きる苔も、その美しさにちがいはないのに、ともすると感動を「機会の少なさ」でランク付けしてしまいかねません。そしていったんランク付けをすると、以降ちょっとした感動では物足りなくなっていきます。僕としては死ぬまでちょっとしたことでいちいち不思議を感じていたいのです。(※話をすり替えようとしています

そうした視点で見渡せば、それこそ日々は驚きの連続です。ある一日に見かけた風景を例に挙げましょう。



近未来っぽいけどよく考えたらべつに未来ではない電気店



マンションの一室すぎてどうしても入る勇気がでなかった書店



初めて聞くのにものすごい既視感をおぼえる丼



この視点さえキープできれば、どんな土地でも目いっぱい楽しめることうけあいです。


……


という具合にうまく煙に巻いてもいいのですが、そんなひねくれたことを言ってもはじまらないし、一箇所だけ挙げるとするなら、大阪の舞洲という人工島にあるゴミ焼却場(大阪市環境局舞洲工場)をピンポイントでオススメしましょう。


かのフンデルトヴァッサー(Hundertwasser)が設計した、なんてことは知らなくてもかまいません。「ゴミ処理場?これが?」とただ呆気にとられて立ち尽くせばそれでよいのです。見る価値あるよ!


A: 大阪市環境局舞洲工場


それからこれはおまけみたいな話ですが、僕の母親は旅先でかならず油揚げを買ってきます。「なんで?」と訊いたら「食べればわかるよ」と言われました。なぜ油揚げなのかよくわからないけど、彼女曰く顕著に土地ごとのちがいが出るらしい。原料はどこだって同じのはずなのに、ふしぎですね。






質問はいまも24時間受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



 その111につづく!

3 件のコメント:

赤舌 さんのコメント...

自分の地元の話で恐縮ですが、神奈川県の横浜や川崎にある工業地帯の風景が大好きです。何度も見てるのに、見るたびに震えます。特に夜明け。

名無しの職なし さんのコメント...

いつも楽しく拝見させて頂いております。フンダートヴァッサー、あのモザイクな建物から彼の大変変態さが伝わってきますよね。オーストリアでゴミ焼却炉とマンション(今でも普通に賃貸されてます)を見て参りましたが、感想は大阪のそれとかわりませんでした。嫁さんが日本人だった気がします。離婚してますが。センス皆無の日の丸構図写真で申し訳ありません。http://cdn.uploda.cc/img/img504cc6cf3d23c.jpg
http://cdn.uploda.cc/img/img504cc6c774373.jpg
http://cdn.uploda.cc/img/img504cc6bb752e6.jpg

ピス田助手 さんのコメント...

> 赤舌さん

川崎の工業地帯は僕も大好きです。何というかこう、人の手をはなれた巨大な生きものみたいな気配があるんですよね。


> 名無しの職なしさん

こんにちは!うわァ、写真、すてきですねえ。オーストリアでもゴミ焼却炉をアレンジしてたとは知りませんでした。僕はあんまり変態ともおもわないんですけども。