2011年9月26日月曜日
狛犬はヨークシャー・テリアでもいいですか?
もう日付も変わろうかという夜更けにひとりで親子丼をこしらえていると、何だかひどく厳粛なきもちになってくるのです。
虫の音がりんりんと夜の静けさをゆらすなか、米を炊けば文化鍋のふたがカタカタと鳴り(ウチには炊飯器がありません)、その隣では鶏肉とタマネギを弱火でくつくつと煮る音が湯気といっしょにたちのぼります。菜箸でカラカラと卵をとく、ちょっとした仕草にさえ背筋がのびるし、それを鍋に流し入れるとなれば息をのむのもむりはない。ぜんたいに、音はあるのにすごくしずかで、咳をするのもはばかられるくらいです。儀式みたいにおごそかに、食事のしたくをしている。
夜食ではありません。夜になってあわててタワーレコード新宿店に駆けつけ、用を済ませたそのあとうろちょろと寄り道をして、気づいたら食べそこねていた夕食です。日付が変わるまで数時間もいったい何をしていたかというと、とくべつ何もしていなくて(いつものことです)、ただ新宿から早稲田、神楽坂のあたりを原付でうろうろしていた。
神楽坂と言えば幼いころときどき通った赤城神社は、いまや隈研吾の手によってガラス張りのパワースポットに再構築を施され、往時のおもかげは豆粒ひとつものこされていません。異形のものがひたひたと歩くような、いかにも神の社らしい雰囲気と古色蒼然たる狛犬を見にふと立ち寄ったら、境内がいつの間にか表参道ヒルズみたいになっているのだから、誰だって目玉がふたつ前方にポンと飛び出ようというものです。今どきの神さまはFOREVER21で服を買うくらい、時代に溶けこんでおられます。よく見ていないけれど、ひょっとすると狛犬もヨークシャー・テリアだったかもしれない。何にせよつつましさとは縁遠い神社です。お賽銭も硬貨じゃ受け付けてもらえないんじゃないかとおもう。
それはさておき、夜になってあわててタワーレコードに向かったのは、あたらしいBOUNCEが発行されていたからです。
高校生のころから親しんでいた歴史あるフリーマガジンに、初めてじぶんのアルバムが新譜としてちっちゃく載ったときも「いったいどうしてこんなことになってるんだ?」と奇妙な面持ちで手に取った記憶があるけれど(だって詩を読んでるだけですよ)、
まさか今度はその連載記事のロゴをつくることになるなんて、ふしぎなことです。
というわけで、TBSラジオが日曜の夜からお送りしている高橋芳朗HAPPYSAD、その出張版が今月のBOUNCEからスタートしています。この番組特有の甘酸っぱい雰囲気がそっくりそのまま移植されているので、ぜひご覧あそばせ。
ちいさくてわかりづらいけれど、「出張版」という文字までわざわざこしらえる芸の細かさ。
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2 件のコメント:
しまった!つい2日前にタワレコに行ったところでした。また行ってもらってきますとも!
カキフライでかっ!
> s8さん
「ちぇッ、何かイイよな」と口をとがらせたくなるような連載です。ぜひ読んでみてください。いつもありがとう!
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