アタフタヌーンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. 好きな食べ物は先に食べる派ですか?後に食べる派ですか?
これはですね、どシンプルに思えるし実際どうでもいいことこの上ない話ではあるんだけど、考え始めるとなかなか奥行きがあります。
先であれ後であれ理由は基本的にどちらも同じです。そのほうが喜びが大きい。ですよね?好きなものを食べることの意味と価値もそっくり同じはずだし、にもかかわらずなぜ人によって着地が真逆になるのかという話にはあんまりなりません。互いにわかり合うことなく「へぇ〜」で終わります。不思議というほかない。
今の僕はどちらかというと先に食べる派です。でも昔は迷わず最後に食べる派でした。どの時点で変わったのか、ぜんぜん記憶にありません。気づいたらそうなっていた。
それを踏まえてつらつら思い返してみると、後で食べるのは食べたらなくなってしまうという気持ちが大きく作用していたような気がします。昔は深く考えなかったし、最後のひと口が好物ってうれしいじゃんくらいにしか思ってなかったけど、突き詰めるとどうも失うことの悲しみを無意識に避けようとしていた節がある。ごはんはまだあるのにいちばん好きなものはもうない、みたいなね。でも最後のひと口なら食事も終わりなので、そんな気持ちになることもない。
とくに子どものころなんかは食事に対する主体性がかなり薄いし、次にいつ食べられるかわからないこともあってなおさら別れを惜しむようなところがあったかもしれません。
翻って今の僕は単純に食事ができることの喜びを、大げさでなく毎日ひしひしと感じています。この心境における好物にはもはやありがたみすら感じるくらいです。もちろん昔ほどたくさん食べなくなったとか、いちばん美味しいタイミングで食べたいとか他のいろんな要素が絡んでくるとはおもうけど、いずれにしても得られることの喜びが大きい。食べたらなくなることよりも、むしろ食べられることのほうに比重が置かれています。
以上のことから考えるに、好きな食べものを先に食べるか後に食べるかを決めるのはおそらく、「失うことの悲しみ」と「得られることの喜び」の天秤です。喜びに傾く場合は先に食べる、悲しみに傾く場合は後に食べる、ということですね。傾きが大きい場合もあれば小さい場合もあるから、白黒というより相対的かつ流動的で、これなら僕が立場を変えたのも頷けます。
そもそもそんなこと聞かれてないので回答としては一言で済むんですけど。
A. 今はわりと先に食べます。
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その424につづく!
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