2014年8月30日土曜日

人生の折り返し地点におけるロスト&ファウンド

ヒップホップ黄金期を背負ってきた男の背中


部屋のなかで見失った何かを探す時間ほど不毛な浪費はない、といつもおもうのです。最後まで見つからないときの喪失感と徒労感は言うに及ばず、仮に見つかったとしてもマイナスがゼロになるだけなのだから、どっちに転んでもやはりあとにはがらんとした空白がのこります。

おまけにこれはここ最近とみに感じることでもあるのだけれど、年齢を重ねるほど探し物に費やす時間が以前よりも長く引き延ばされていくのです。頭が固くなっていたり、視野が狭くなっていたり、感覚的に時間の流れが速くなっていたり、それから注意力の低下なんかもありましょう。同じような場所を何度も何度も行き来してはため息をつき、さっき持ち上げてみた椅子をまた持ち上げ、さっき開けた引き出しをまた開け、さっきひっくり返したゴミ箱をまたひっくり返し、気がつくと平気で小一時間が過ぎ去っています。それでいて実際には目と鼻の先にポンと投げ出してあったりするから、がらりと窓を開けてきらめく星空に「冗談じゃないぞこの野郎、ずっとここにいましたけどみたいな顔しやがって」と怒鳴りたくなったのも一度や二度ではありません。

だいたい注意力が低下するということは、当然それに伴って物を見失う頻度自体が増えていくということでもあります。したがってこの先ますますこのロスト&ファウンドに日々が削られることになるだろうとすこし以前からうすうす気づいてはいたのです。気づいていて、気をつけているつもりなのに、気がつくともう見当たらない。そんなのいったいどうしたらいいんだ?

さらにまた話を極めてややこしくするのが、ときどきどう考えても納得がいかないような場所から探し物がポロリと転がり出てきたりすることです。極端な例で言うと、たった一度ではあるけれど、洗濯した靴下が冷蔵庫から出てきたことがあります。冷やしていたわけではありません。開けたらそこにあったのです。何が困ると言って一度でもそういう経験があると、どこをどう差し引いても絶対にあるはずのない「冷蔵庫の中」という探し場所の選択肢を、この先ずっと除外できなくなってしまうじゃないですか?

このまま捜索に投入される時間が日に1時間、2時間、3時間と増えていくとしたら、妄想でも何でもなく、人生の後半はすべてロスト&ファウンドに埋め尽くされなくてはなりません。

予想される晩年の日記はおそらくこうです。


8月28日(木) 今日も見つからなかった。
8月29日(金) 今日も見つからなかった。それとは別に靴下が片方ない。
8月30日(土) 今日も見つからなかった。爪切りは出てきた。
8月31日(日) カメラが見つかった!しかしSDカードが入っていない。
9月1日(月) 靴下を発見。代わりにあったはずのもう片方が消えた。
9月2日(火) 何を探していたのだったか…しかしあきらめたら終わりだ。


しかしまあそんなことを今から嘆いたところで前回失われた本題がひょっこり顔を出してくれるわけでなし、せっかくだからライブアクトがめずらしく人目にふれたこのタイミングで、それに類するような、あるいはそうでもないような質問にお答えしましょう。

とおもったけどなんかもうそういう感じでもないですね。よろしい、これまた次回に先送りということで今宵はこのままお別れです。みなさま、よい週末を!

2014年8月27日水曜日

いつになく読むだけムダな前置きと失われた本題

のびのびとくつろぐ化け猫1ぴき


えー、では目立った動きも尽きたようなので、そろそろ通常運行とまいりましょう。ここで通常運行というのはとくにお知らせや報告もなく、埒もないことをもやもやと書きつらねてすきま風の吹くいつものブログに戻りましょうということです。「小数点花手鑑」から新たにここを訪れてくださったみなさまには僕もたいへん心苦しいのですが、ブログを立ち上げて7年このかた、ミュージシャンらしい風情を醸し出すのはいつもわずかにアルバムリリースの前後のみであり、その他はおおむね何の役にも立たない与太話で埋め尽くされています。明らかにここ数年で最大の話題を繰り出したにもかかわらず、ぶっちぎりのアクセス数をほこるエントリがいまだに「コロンブスの目玉焼き」であってこの先追い抜く気配がないことからしても、それは推して知るべしと言えましょう。アメブロ認定のオフィシャルブログを立ち上げて、主にスタッフがニュースを更新しつつ、ときどき本人が顔を出して「今日は撮影です」とか「お楽しみに!」とかそういう華やかな幻想を抱いてはいけない。スタッフも何も、ここには僕がひとりぽつねんといるばかりです。

とはいえ、いつ来ても同じ温度感なのがこのブログの唯一にして最大の長所です。燃料がないのだから、消える火もありません。華々しさや喧噪の代わりに虫の音があり、するりと流れこむ風に草や葉がそよぎます。あるかなきかの音楽活動に関する情報収集なぞこの際すっぱりとあきらめるのが吉です。いっそ縁側でお茶をすすりつつ庭に咲きほこるサルスベリやツルハナナスを愛でるような心持ちでおいでませ。

…とここまで書いたところで、ご覧なさい。もうだいぶ字数を費やしているのに、その虚ろなことと言ったらありません。話と呼べる質量もなく、しいて言えば栄養価の低さに定評があるキュウリのようなありさまです。

でも140字以内にまとめられた濃密な情報群がイグアスの滝のようにどうどうと流れるこのご時世に、今さらひとつふたつのトピックを放りこんで焼け石に水以外の何になりましょう。むしろこれくらいすっからかんなほうが、却ってオピニオン過多な巷間に一石を投じるようなメッセージ性を帯びないともかぎらないじゃありませんか。なんかしっかりしたこと言ってる気がする、いやそうでもないな、と小首をかしげながら「まあいいか」とブラウザを閉じる、もしくはくちくなるけど何も残らない、そんな水道水にも似たそっけない潤いが許容されてこそ世界は愛おしい、と打ち枯らした尾羽でせっせとつくろう8月の夜更けです。

考えなしに書き出した前置きが長くなりましたけれども、そうこうしているうちにうっかり肝心の本題を失念してしまったことだし、初めからこうする予定でしたと潔くふんぎりをつけて、今夜はこのままおいとまするといたしましょう。

何だったっけかな。まあいいや、思い出したらまた何ごともなかったかのように前置きから始めればよいのです。ごきげんよう!

2014年8月22日金曜日

ハロワ夏フェス@J-WAVE 「HELLO WORLD」後記


あらためて、これが人生最後のライブになる可能性も全然ゼロではない昨夜(ギリギリ昨夜です)の「ハロワ夏フェス」長尺スタジオライブ@J-WAVE「HELLO WORLD」にお付き合いくださったみなさま、本当にありがとうございました。お楽しみいただけましたでしょうか…。


ライブの記憶はすぽんと抜けているので、個人的なハイライトはTAROさんとのトークです。これだけでもお邪魔した甲斐があったとしみじみおもえる楽しい時間をすごすことができて、感悦という他ありません。TAROさん素敵すぎます。ハロワスタッフのみなさまのお心遣いがまたつつみこむように温かく、目頭を押さえながら後ろ髪を引かれる思いでスタジオを後にするわたくし。

配信されたライブの模様はアーカイブとして公開されています。保存期間はおよそ一ヶ月です。「小数点花手鑑」はムービーの類が一切ないし、それでなくとも露出が極端に少ないので、昨夜の映像は期間限定とは言えダイオウイカ並みの貴重な映像記録となりましょう。


しかしこれ以上ないくらいミュージシャンぽいことをしてきた夜であった。


おまけ1:クローズ後の六本木ヒルズ

おまけ2:ヒルズを後にするプロデューサーとレーベルオーナー


それはそれとして、すこし前の話になりますが、smrytrps(サムライトループス)というグループがリリースしたアルバムのデザインワークを手がけたことがあります。

いきなり何だとおもわれましょうが、まあお待ちなさい。

そのアルバムというのは「オレンジ・ボヤジャーズ」、「パープル・ギガント」、「ぐんじょうのびろうど」の3枚です。

 1. オレンジ・ボヤジャーズ

 2. パープル・ギガント

3. ぐんじょうのびろうど

可愛いデザインですね。(自画自賛)

このうち、「パープル・ギガント」には、デザインだけでなく客演としても2曲に参加しています。というより、僕がこしらえた小品をインタールードに採用してもらった、といったほうが正しいかもしれません。

そのうちのひとつが、つまりスタジオライブ冒頭で流れた「偉大な詩人による慎重なイントロダクション」です。じつは「小数点花手鑑」よりもずっと以前から、きちんと音源になっていたのですね。なのでsmrytrpsの実質的リーダーであるタカツキにも使用の許可をもらっています。タカツキさんありがとう!



ちなみに上に挙げた3枚、どれも上質のアルバムなのでぜひ聴いてみてください。

僕が客演するもうひとつのインタールードである12曲目、「暮らしの情報バラエティー番組 『たそがれロンリー』」もお忘れなく!

2014年8月19日火曜日

とにかく太っ腹なスタジオライブについてのお知らせ


画像は本文と一切関係ありません。ありませんが、「水密桃/shui-mi-tao」に出てくる「朱塗りの丸盆」がつまり野菜の下にあるこれです。


もたもたしていたら日にちが目の前に迫ってしまいましたけれども、明後日8月21日(木)はJ-WAVEで絶賛オンエア中の「HELLO WORLD」(月〜金、22:00〜24:00)にスタジオライブでお邪魔することになりました。

8月は「ハロワ夏フェス」と題してまいにち日替わりで多彩なアーティストがスタジオライブを披露するという、くらくらするほどゴージャスな企画の一環です。2部構成で計30分という長尺もさることながら、YouTube Liveでも専用の個室で同時配信の太っ腹ぶり、ネット環境さえ整っていれば全宇宙のどこにいてもストレスフリーでご視聴いただけます。



もちろんというべきかムニャムニャとお茶を濁すべきか、これ以降ライブの予定はありません。よろしければお付き合いくださいませ。


それはそれとして、えーと、よくよく目をこらさないとおわかりにならないかもしれませんが、ブログの体裁が若干変わりました。(主にPC版)

開設してからかれこれ7年もの間ずっと同じテンプレートのまま変えずにきたのは、大のお気に入りだったからでは全然なく、いつでも自由にカスタマイズできるということをすっかり、完全に、いっそ清々しいくらい、忘れていたからです。あれはあれでなかなか趣もあったし、今おもえば最良の選択だったような気がするとは言え、しがみつくほど思い入れがあるかといったら別にありません。すみっこの文言をちょこっとだけいじってみたり、アルバムのジャケット画像をちまちま差し替えることで「よしよし、これで心機一転」とご満悦だったのだから、たぶんだいじなネジが2、3本抜け落ちていたのでしょう。昨日の朝それにふと気づいて「あっ」と声が出たときの茫然自失ぶりをおもい返すと、いまも顔が真っ赤に火照るようです。追加可能なガジェットがぞくぞくと増え、HTMLやCSSが自在に組みこめるどころか、今やレスポンシブデザイン対応のテンプレートまでフリーで腐るほど配布されているというのに、あさっての方角を向いて鼻をほじるようなていたらくにはまったく、おめでたいの5文字がよく似合います。

そんなわけで古くなった障子をべりべりと剥がすようにして、ぜんぶきれいに貼り替えです。取り立ててどうという見目でもないし、けっきょくレスポンシブ対応も見送ってしまったからモバイル派のかたにはいまいちピンとこない話で相済みません。

僕としては7年の垢を未練なくいっぺんにざぶりと洗い流した、その爽快感がすべてです。さっぱりしてやった!

2014年8月14日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その182



この車、どうやって入れたんだろう?


野放図なオズの魔法使いさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: よく曲中に出てくる人物の容姿を想像するのですが、ムール貝博士はフランス人のようでピス田助手はイラン人のような顔という認識で大丈夫ですか。


言葉による描写は解釈の余地がふんだんにあるので、視覚的なそれとちがってたちのぼるイメージは百人百様です。カリガリ博士のようなマッドな医者を思い浮かべようと、ジプシー・デンジャーみたいな巨大ロボを思い浮かべようと、またムチムチプリンとしたグラマラスな女性を思い浮かべようとそれを否定することは誰にもできません。

僕なんか露出がすくないせいか、たまに人前に出たりすると「ああ、こんな人なんだ…」と微妙なリアクションをされることがあります。たしかにそれまで無限にあった可能性がある日とつぜん他所からひとつに固定されてしまうわけだし、抱いていた印象とだいぶかけ離れていればそれも無理からぬことです。しょんぼりしたいのはこっちだいという気もするけど、そんなのはまあくるくると丸めて屑カゴに叩きこんでおきましょう。ことほどさようにというか、自由に想像しているときがやっぱりいちばんたのしいとおもうし、だからフランス風でもイラン風でもブーゲンビル風でも車田正美風でもぜんぜん問題ありません。

ただ、ひとつ気がかりなのは、ピス田さんのことです。というのもじつはこれまでにたしか2度ほど、ここで彼の近影を披露してるんですよね。

こんな顔をしている、と言えればまだよいのですけれど、一般的な成人とくらべて全体的に風采が若干ユーモラスというか、そもそもどこからどこまでが顔なのかちょっとわかりづらいというか…

ピス田助手近影


でもまあ、容貌に関してはまだ解釈の余地が十分残されてるとおもうし、それほど気にしないでよいとおもいます。


A: その認識で大丈夫です。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その183につづく!

2014年8月10日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その181



文字通り熱いタバコ屋の看板



つぶつぶ交換さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)貨幣ではなく、つぶとつぶでやりとりする初歩の経済ですね。


Q: この街全体、肉屋の軒先のような興奮とシュールさがお互いさほど不満なさそうに同棲しているバンコクから送信します。わりと旅行鞄に入れているのにも関わらず結局一度も使われることなく終わってしまいがちな旅の持ち物を教えてください。


旅の醍醐味はなんといってもその非日常性にあると言ってよいでしょう。煩いから切り離された時間のなかで見聞きし、味わい、感じることすべてがさながら降り注ぐやわらかな雨のごとく、しわしわの心に潤いと刺激を与えてくれます。

僕が好んで思い描く非日常性とはたとえばこういうことです。

A. 滞在先で一夜のアバンチュール
B. 蚤の市で買った器が定窯の白磁だった
C. 国際的な陰謀に巻きこまれて危機一髪

ほかのふたつが非日常というよりむしろ非現実的なせいもあるかもしれませんが、こうしてみるとAの実現可能性はすこぶる高いようにおもわれます。おもわれませんか。

じっさい僕がある島にぶらりと訪れたときは、ひとり旅らしき女性と海沿いの道ですれちがい、「ちょっとしたきっかけひとつで転がる石みたいにどうにかなっちゃうかも」と冷静に考えれば空しいことこの上ない期待に胸が高鳴ったものです。

しかし言うまでもなくそんなことにはなりません。あってもせいぜい軽い会話を交わすくらいが関の山です。わかっています。わかっていますけれども、これに類するシチュエーションに遭遇するとやっぱり「ちょっとしたきっかけひとつで転がる石みたいにどうにかなっちゃうかも」と冷静に考えれば空しいことこの上ない期待に胸を躍らせることになるのです。ほとんど条件反射みたいなものだとおもう。

したがって、「わりと旅行鞄に入れているのにも関わらず結局一度も使われることなく終わってしまいがちな旅の持ち物」と言われたら僕の場合は渋々これを挙げることになります。


A: 下心です。


念のためお断りしておきますけども、あまり本気にしちゃダメですよ。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

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その182につづく!

2014年8月7日木曜日

そうめんをおいしくするたったひとつの冴えたやりかた


はい、つーことでエクスペンダブルズたかしが午前1時からビビッと直感であなたの脳みそに何となくお届けしている「ミッドナイト丑三つ時」、そろそろお別れの時間が近づいてきちゃってノーウェイってかんじなんだけど、ここはひとつメールなんか読んじゃったりしてパリッとしたいとこだよね!っといけねえ、メールは、そうそう、ちょっとトラブってまして、今アレなんですよ、読めてないっつーかスパムがね、なんかすごい来ちゃってて、また巧妙にリスナーを偽装したりしてくるもんだからうっかり開いて、あまつさえ添付ファイルをね、いまどき律儀にクリックしちゃったりして、ブエックショイ!あ、ごめんなさいね。まーそんなわけでシステムが強制的にお盆休みに突入したと言いますかそういうかんじで、読めないんですね、メール。でもほら、なんていうかね、ロストして初めてわかるだいじなことってあるじゃん?こうなるとやっぱね、痛いほど身にしみるわけ、郵便、すげえなと。人から人へね、運ぶわけですよ、人が。停が電しようが何しようが、人さえいればお届けってよく考えたらね、インクレディボーつーかワンダホーつーか、ふぁ…ふぁ…ふ…あ、止まりましたね、すごくないこれ?あ、くしゃみのことじゃないですからね、念のためね、郵便ですよね、郵便。なんで今日はメールじゃなくてハガキをね、なつかしいよなあこの紙の固さ!こんなラブリーだったっけ?もうほおずりしたくなるよ、しちゃうよ、しちゃうからね、んー!はー。ッきし!あ、ちょっと鼻水……あれ?ティッシュいつもここにあったよね?……え?あー、だからトイレットペーパーが置いてあんのこれ、おいおいここはお手洗いじゃねーぞって番組冒頭からずっとふしぎだったんだけど、やっとわかったよ!ハハハハハ!ブピー。っとすみませんね、もう垂れる寸前だったもんで、そんでえーと、そうそうハガキね、読みます、読みますよ、もーたっくさん送ってもらってね、片手で数えられるくらい多くのお便りをいただいてるんですけども、そのなかから泣く泣く1通選ばせてもらいます。えー、横浜県の……横浜県!?横浜って県だったっけ!?え、これまじ?……まじなの?……うえーオレ全然知らなかったよ、ホントなの?人のことバカだとおもって適当なこと言ってない?……そうなんだ、何で誰も教えてくれないのよ、みんな知ってるの?あらまー、あれ、そしたら神奈川は?ある?あるの?あるんだ、なるほどねー、世の中移り変わっていくんだね、はい、じゃえーと横浜県のラジオネームおそれ山イタ子さんからお便りいただきました。どうもありがとう!


「たかしさんこんばんは!いつもたのしく聞き流しています!たかしさんのトークの合間にぶちこまれる可愛いくしゃみが大好きです!リクエストは そうめん's BLOOD feat. いぼのいと『ゆで時間は1分』をおねがいします!」


これねー、オレもほんっとびっくりしたんですよ。いやくしゃみの可愛さじゃなくてね、たしかにベリーキュートなのはアイノウってかんじだけど、そうじゃなくて、そうめんね。もう最近すっごい局所的に話題沸騰で吹きこぼれてますけど、そうめん's BLOODのこの曲きいて初めて知ったもん。いやいやいや、たしかにね、さっきもね、知らないことありましたけど、そうめんて昔からあるじゃん!んでどこの家にもあったりするじゃん!袋の裏みればゆで時間書いてあるし、大体どのそうめん見ても2分前後ってなってるわけ。したらそのとおりつくるじゃん、当然。カップラーメンだって3分て言われたら素直に3分待つじゃん。ホントに3分かどうかとかたしかめないでしょ。おんなじですよ。それがアータ、「ゆで時間は1分」て、て……てっくち!失礼、こんなんもう、革命でしょ!ゲバラですよ!目からグリコがごろっと……え?わかってますよ、ウロコでしょ?わかってますって!それくらいね、衝撃的だったってことを言いたいわけよ、だって半分じゃん!あのーあれ、時間がね。1分でいいわけねーだろって、おもうでしょ?おもいますよね?つーかオレはおもったから。ありえねーって。でもこんだけヒットしてさあ、はちくの勢いでね、……漢字?漢字は知らないけど、要はすごい勢いってことでしょ。そんでもう今年は紅白確定みたいなね、そしたらやっぱやってみないわけにはいかないっしょと。やらずに曲紹介とか不誠実なことできるわけないっしょと。おもって茹でてみたわけですよ、そうめんを。きっかり1分。そしたらまー……なんつーの?そうそう、目からグリコですよ!いやーグリコ、ごろっと落ちたよね、こんなにちがうの!?って。ちがうったってね、せいぜい歯ごたえくらいのもんなんだけど当然。でも断然うまくてさあ!革命でしょ!ゲバラですよ!さっき言ったっけ?でもこれホントにね、知っちゃったら2分とかね、もー茹でてらんないですよ、1分半でも長いとおもうね、ジャスト1分。ノーダウト。最高でしょ。もう何憚ることなく大声で断言しますけど、「ゆで時間は1分」、まちがいなしです。まじで。じゃあね、お湯みたいに熱く語り倒したところで……え?あ、曲かける時間ない?ないってこたないでしょ。ないの?いいじゃん、かけちゃおうよ、だめ?イントロは?イントロでもほら、いちおうシャウトしてるし、「ゆで時間は1分」て。ギリギリ?よし、じゃイントロだけでも聴いてもらいましょう。まじでそうめん観変わります、試して驚け!そうめん's BLOOD feat. いぼのいと で、「ゆで時間は1分」。お相手はお耳の恋人エクスペンダブルズたかしでした、おやすみグッナイ!


2014年8月3日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その180


あの娘とイスカンダルさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)古代進と森雪のことを歌った1985年のヒット曲ですね。


Q: アンジェリカは元気でやっていますか?


一見するとどうということもなさそうにおもわれて、そのじつかなり挑発的な質問です。

アンジェリカというのはアルバム「詩人の刻印」(2007年)に登場する女傑であり、このブログにおいてはまず最強と目される人物のひとりですが、今から2年半ほど前にこれとほぼ同じ質問をいただいたときは、回答からなぜかピス田助手による手記が紐解かれてしまい、延々と足かけ4ヶ月計80,000文字ものスラップスティックなすちゃらか娯楽巨編へと発展しているのです。




以上をふまえて送られてきたこの質問を、挑発的と言わずに何と言いましょう。アクセスが絶叫マシンのように落下した悪夢の4ヶ月間が脳裏によみがえります。描かれている世界はアルバムとほとんど変わりないはずなのに、まったく解せない。

ちなみにQ&Aのコーナーで回答に80,000文字を費やすというのは世界中見渡してもそう類を見ないとおもうし、こんなにたのしいんだからいっそ書物にして「小数点花手鑑 特装版」の目玉コンテンツにするのはどうですかとプレゼンしてみたものの、わりと早い段階で却下になりました。


(遠い目)




プルルルル

何?
「あ、アンジェリカ」
「そうだけど?」
「だよね、えーと」
「……」
「機嫌わるそうだね」
「そう?」
「どうかした?」
「ダイゴくんが電話かけてくるときってろくな話ないから」
「そんなことないよ!」
「いきなり下着の色聞いてきたりするし」
「人聞きがわるすぎる!」
「だいたいそうでしょ」
「ちがうよ!あれはそういう質問がきてて……」
「その質問てのがうさんくさいって言ってるの」
「でも、本当なんだよ」
「で、また質問てわけ?」
「ちが…いや、ちがくもないけど」
「前も聞いたけど何なのそのシステム」
話せば長いことでして……
「いまゴロゴロしてて手が離せないの。じゃあね」
「待って待って待って!すぐ終わるから!」
「あ、そうそう、そういえば博士がね」
「博士?」
「博士」
「ムール貝博士?」
「他に誰がいるの」
「博士が……どうかしましたか」
「あ、まあいいや、言っちゃうとつまらないし」
「何?何なの?」
「ダイゴくんこないだアルバム出したんでしょ」
「……出しましたね……」
「よかったね」
「ありがとうございます……え?どういうこと?」
「おめでとうって言ってるの」
「ご親切に痛み入ります……え、ちょっと何?」
「博士のことも書いたんでしょ?」
「ぎくり」
「ちょっと聴いてみたい気もするけど」
「あの……それで博士は…‥」
「べつに。鼻歌まじりに何かつくってるってだけ」
「それはぼくにかんけいがあるのですか」
「ないといいよね」
「何?何をつくってるの?それが出来上がるとどうなるの?」
「はいはい。で、何なの?
「え?」
「用件は何って聞いてるの」
「いや、あの、博士の……」
「それはもういいでしょ。用がないなら切るけどいい?」
「待って、わかった、切らないで!」
「じゃあどうぞ」
「助かった!じゃあ、えーと、あっ」
「何?」
「いや、なんかこの流れだと切り出しづらいっていうか」
「ちょっと……」
「いや、はい、だいじょぶです、えーとあの」
「……」
…最近、どうですか?
「……」
「……」
「……」
「……」
元気にしてますけど?
「ですよね……」
「それが用件なの?」
「いや、その、そう、です、ていうか」
「ひょっとして何?愛の告白でもしたいわけ?」
「滅相もない!」
「だってそれ質問とかそういうことじゃないよね?」
「いや、ほら!前にあったじゃない?」
「何が?」
「シュガーヒル・ギャングとさ……」
「いつの話?」
「2年くらい前……かな……」
「ふーん」
「そうだ!あの軍艦は?どうなった?」
「軍艦?」
「Sweet Stuffの店の前の川に置いてかれた軍艦だよ!」
「今もあるけど?」
「今もあるんだ!川は?流れてるの?」
「流れてるけど?」
「でも、どうやって?」
「どうって船底をくり抜いて……ねえ、聞いてもいい?」
「あ、はい、どうぞ」
ナンパされたときと同じ空気をかんじるんだけど
「ガーン!」
「わるいけど他あたってくれる?」
「ちがうの!ちがうの!前も同じようなかんじで……」
「……」
「ピス田助手の手記が始まったから……」
「……」
「また始まったりするのかなって……」
「ダイゴくん…」
「はい……」
はやくよくなるといいよね
「病気じゃないよ!」
「またれんらくする」
「したことないじゃん!」
「おだいじに」
「あっ」

プツリ

ツー
ツー
ツー



A: 取りつく島もありません。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

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その181につづく!


2014年8月1日金曜日

ドーナツ・プラネットの夢は発酵してふくらむ


それでおもいだしたけど、ついこの間ある通りを水駒(※原付)で杉並方面に向かってぶいぶい走っていたら、環状八号線にぶつかるちょっと手前で「ドーナツ製造販売」という看板が目に入ったのです。

よくよく見たらそうではなくて、「米国製ドーナツ製造機販売」と書いてある。

「ドーナツの製造販売」と「ドーナツの製造販売」では似ているようで意味がまるでちがいます。ドーナツの製造と販売はわかるし、そのために製造機があるのもいたって自然です。でもドーナツの製造機を販売するとなると、これは控えめに考えても、やはりちょっとしたことであると言わねばなりません。だってドーナツを揚げるためだけに特化したマシンが1年に何台売れるっていうんだ?

でも買いたい。そんなマシンを専門に売る会社があるなんて、なぜ今まで誰も教えてくれなかったのか。

こうなると気になって仕方がないので、家に帰ってそわそわしながら検索すると輸入代理店のホームページがありました。何しろドーナツ・マシンのことを考える日がくるなんて夢にも思っていなかったから、このサイトをひらくだけでも相当わくわくさせられるんだけれど、なかでも目を引いたのはこの一文です。

マーク9は製造中止となりました。在庫は残りわずかです。

マーク9……!?

1台を開発するのだってたいへんな時間と労力とコストを要する工業機械がすでに9代目なのだとしたら、もしやこれは想像していたよりもはるかに長い歴史をもつマシンなのではないか?

この時点で僕の関心は、日々研鑽を重ねながら今この瞬間もドーナツ・マシンのさらなる改良に余念がない(にちがいない)、製造元へと移りました。


それがドーナツ製造機で世界一のシェアを誇り、この分野では唯一の専門メーカーである「Belshaw」です。


専門というのはもちろん1923年の創業からひたすらドーナツ・マシンのみを製造しているという意味であり、だとすればこれはもうほとんどウィリー・ウォンカのチョコレート工場みたいなものであり、なかんずくフラワーズ(※注)にとってはまさしく夢のごとき会社であると決めつけてしまわないわけにはいきません。幻想を抱きすぎなのはこっちだって百も承知だけれど、こういうときに幻想を抱かないでいったいいつ抱くんだとわたくしはつよく申し上げたい。

※注:久しく音沙汰のなかった小麦粉ラブな荒くれ集団ザ・フラワーズ(The Flours)については、このあたりのエントリを参照のこと。


Belshawのドーナツ・マシン、マーク1。



生き馬の目を抜くこの時代にしてこのテンポです。強制的に癒されます。作業効率を考えるとこのマシンはいったい何のためにつくられたのかという根本的な疑問が湧き起こらないでもないですが、心和むのはたしかだし、根気よく待てばドーナツがひとつずつ確実に増えていくのだから、それ以上何を望みましょう。



マーク2。



ドーナツが1列に2個並び、作業効率が倍になりました。個人的には、超かっこいいイントロと内容の温度差いちじるしいこのドーナツメイキン動画がいちばん好きです。



マーク6。


作業効率が数十倍に跳ね上がっています。マーク1とは比較にならないほど高度なシステムです。しかし何と言っても驚くべきは、心に平穏をもたらす要素が合理性の追求によって損なわれるどころか、却って増しているようにもおもわれる点です。殺風景な部屋の片隅で人知れずポテンと油に転がり落ちるドーナツ生地の健気な姿には、どことなく悲哀も感じられます。がんばれ!がんばれドーナツ!


しかしやはり押し寄せるグローバル時代の波には抗えません。人々はもっと多くのドーナツを求めているのです。ドーナツ・マシンはやがて、惑星規模の需要に応えるべく大きな変貌を遂げていきます。



そうしてこのまま1列に並ぶドーナツの数が10から20、20から40と順当に増え、ベルトコンベアはもちろん線路や道路でも幅が足りず、いずれナイル川やアマゾン川が丸ごとドーナツ・ラインに取って代わり、ヘンゼルとグレーテルのお菓子の家よろしく地球全体がひとつのドーナツ工場として統合される日もそう遠くないとしたら……

食べきれないな。

と、
ドーナツ片手にもぐもぐやりながらフラワーズの末端構成員としては今からそんなことばかりを心配しているのです。