2008年11月30日日曜日

円熟味を増す老婦人のロッキンチェア


年賀状キャンペーン、明日でしめきりです。もう10日もたつのか!どうりでヒゲがのびているとおもった。



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大人げないジェラシーのためになんとなく話題としてふれるのを避けてきましたけれども、来週12月6日(土)はAOYAMA月見ル君想フにて今年さいごのSUIKA夜話、東京公演がございます。ゲストはRomancrewとsaigenji!とくにロマンクルーはそのバックをSUIKAがつとめるバンドスタイルでライブだそうです。そいつァまた豪勢な話ですね。毎回言っている気がするけど、さすがにこんな機会はもうないとおもう。

東京公演とあるとおり、今回は名古屋、大阪もツアーで回るようですよ!しかもロマンクルーといっしょに!すごいな、ほとんど家族みたいなものじゃないか。



フン!う、うらやましくなんかないんだからねッ!



あっ


いま唐突におもいだしたけど、12月7日の日曜日は御大タケウチカズタケがらみでインストアライブがあります。僕もチョイ役で呼ばれました。たぶんリリパで披露したあの曲をやれということなんだとおもいます。場所は六本木TSUTAYA!時間は17時!あ、そうなんだ…2日前に届いたメールを今ごろ確認しています。読んだつもりでいたけど、読んでなかったらしい。


告知の優先順位が逆だな、どう考えても。



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Gwen McCraeがいまも唄っていると知って感動のあまりクラクラと気を失いそうになりました。とっくに還暦を過ぎてるっていうのにパム・グリアーみたいなこのカッコよさはなんだ!この風格!しかも "Rockin' Chair" ...。しびれる!

来年は七夕の短冊に「グウェン・マクレーみたいなシブいおばあちゃんになりたい」と書くことにした。

2008年11月29日土曜日

蛇女としてのプロフェッショナリズム


見世物小屋にヘビを生きたまま食らう伝説のヘビ女が出るというので、新宿・花園神社の酉の市に行ってきたのです。バリボリと大きな音を立てて骨を噛み砕きながら本当にアオダイショウを食べていた。なまなましい!


バリボリ


出し物とか演目がどうということよりも、人々がぎゅうぎゅうと詰め寄せる中でのチープな気味の悪さというか、あのザワザワとした猥雑な背徳感はヤバいなあとおもう。心奪われます。ふとした拍子にイリーガルなものが顔を出しても気づかずにスルーしてしまいそうなかんじがね。ヘビ女の小雪さんはとてもキュートで、口から火炎を噴く芸も見せてくれました。あと、どういうわけか着ぐるみではないリアルせんとくんがいた。


バリボリ


しかしつらつら考えてみたら口の中でローソクの火を消すというようなささやかな芸当それ自体よりも、それらを休憩なしにえんえんと数時間ループしつづけるという事実のほうがよほど驚異的です。だいたい15分おきに同じ演目がくりかえされていたし、ほとんどすべての客がそれを一度しか目にしないことを考えると皮肉なことだとおもう。煌煌と燃えさかるプロフェッショナル魂に触れたようで、なんだか胸を打たれた。

ぺらぺらした紙が一瞬で千円札に変わるよ!といったシンプルな手品でも「わー!」となる僕なのでまた行きたいです。よいものをみた。


ゴクリ

2008年11月28日金曜日

地球のでべそからお送りしています


年賀状キャンペーン、しめきりまであと3日です。かけこみでピコピコと応募いただいてます。迷っている人もきがるにメールしてね!



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本当になんでもないようなところに、それはあるのです。まるで子どもがそっぽを向きながらポツリとつぶやくような照れまじりの素っ気なさで、その目立たない案内板はそこが「展望台」への入り口であることをおしえてくれます。「まあ、いちおうあるにはあるけど…よかったら」と言われているようで、どうもこう、ウェルカムな感じが伝わってこない。でもせっかく目をとめたことだし、そう景気のわるい顔すんなよ、ちょっと行って新鮮な空気を吸ってくるからさ、と自信なさげな案内板を励ますようなきもちで、ゆるやかな傾斜をずんずん歩いていくと…




うわッ何かカッコいいの建ってる!



秘密基地だ!秘密基地だ!



絶景!絶景!



エイドリアーン!






というわけで思いもよらなかった探検と絶景を心ゆくまで堪能したのでありました。ホントは紅葉でも愛でようとおもって出かけたのに、こことか笠森観音とか、ついでに立ち寄った場所のほうに気を取られて、紅葉のことなんてちっともおぼえていない。葉っぱは赤かったのか?黄色かったのか?

しかし廃墟のようにガランとして人っ子ひとりいない秘密基地を駆け回ることほど楽しいことはないな。

2008年11月26日水曜日

度肝を抜くクレイジーなお寺のつくりかた


年賀状キャンペーン実施中です(12月1日まで)。女子率上がってます。なんかホッとするな。



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日本建築には懸造(かけづくり)という、1000年以上の歴史をもった伝統的な工法があるのです。斜面や段差のある土地につくられる、テラスのような構造で、いちばん有名なところでいうと清水寺がそれにあたります。崖側にせり出したあの出っぱり舞台のことです。

もちろん懸造自体とてもすぐれた技術だし、それだけでもじゅうぶん感嘆に値するものなのだけれど、ここから常識をとっぱらい、想像力をさらに目いっぱい押し広げて極端に応用すると、こうなります。↓




おお…かなりむちゃなことになっておる。

「四方懸造」です。この大胆にして奇抜きわまりない、というかクレイジーすれすれの発想はどうだ!360度を懸造で囲めばたしかにこういうことになるわけだし、そりゃファンタスティックに現実離れもしようというものけれど、しかしなんてイルなんだろう。やっちゃった感まるだしで、胸を射抜かれます。こんな建築物がホントにあったら、それだけで生きる愉しみがひとつ増えるというものです。でしょう?



じつはホントにあるのです



ええー!

1000年前から今もそこに鎮座する日本で唯一の「四方懸造」、二代広重の筆にも描かれた笠森観音の威風堂々たる姿とその異観を君は目にしたことがあるか?





どうやら400年くらい前に火事で焼失して(わかる気がする)、いちど建て直されているらしいのだけれど(それでも400年前だ!)、本堂には1000年前の床板がたぶん当時の状態そのままに(!)のこされています。足を踏み入れればウエハースのようにサックリと床が抜けるばかりか岩に叩きつけられて死んじゃうので、当然立入禁止です。部屋をのぞきこむことしかできません。でも1000年前にはだれかがそこを歩いていたとおもうとやっぱり胸を打たれるものがあります。だって平安の時代だぜ!


柱が多すぎて割り箸のようだ…。


近くで見ても何がどうなっているのかさっぱりわからない。



十数メートル(あるいはもっと)の高さはゆうにある廻廊たるや…


なんかもう寺の眺めじゃない。





まちがいなく、日本が世界に誇れる建築物のひとつです。奇想にもほどがあるし、今もふつうに拝観できることが奇跡だとおもう。こんなに多くの人がお参りしてバラバラ分解したりしないんだろうか?雨ざらしで朽ちたりしないんだろうか?21世紀に建てられる住宅の多くは数十年もてば幸運というくらい耐久性が低いっていうのに、いったいどんな魔法をかけるとこんなむちゃな建築が可能になるんだ?

しかしここを拝観するためだけにわざわざ遠くから泊まりがけで足を運ぶとしてもその価値はあります。本当に。どこ探したって他にこんな場所ないんだから!


場所はこのへん







おまけ:大きなクスノキから生えるダイゴくん

2008年11月25日火曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その73


年賀状キャンペーンがびっくりするくらい低調です。たしかにただのハガキでしかないけど、もうちょっと…もうちょっとノってくれてもいいじゃないの!

あとタマフル経由の男子率が異様に高い。

いっぽうでキャンペーンとはべつに、質問もいただいています。これはつまり…「年賀状なんて、オラいらね」ということでいいんですよね…?


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あしたのジョアさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)真っ白に燃え尽きたボクサーが好んでのむヨーグルトのことですね。乳酸菌もたっぷりです。



Q: 日本の映画はみますか?もしよければおすすめなど教えていただきたいです。



以前にも似たような質問をいただいていて、そのときは

1. 吉原炎上 (1987)
2. ユメ十夜 (2006)
3. (おまけ)ウルトラマンティガの37話「花」

とお答えしています。あとはこれに、そうですね、「七人の侍 (1954)」と「マインド・ゲーム (2004)」を足しましょう。せっかくだからべつに映画と入れ替えようかな、ともおもったんだけれど、僕の嗜好をかなり的確にあらわしているという気がするので、このままにしておきます。映画にかぎらず、僕がフィクション全体に求める要素というのは、ここに挙げた5つでだいたいカバーできているとおもう。

しかし好きな日本映画と言われてパッと思いつくのが「吉原炎上」というのもね。なかばトラウマになってしまっているのかもしれません。



A: 七人の侍(これさえあれば事足りる1本)



あしたのジョアさんからはもうひとつ、べつの質問をいただいています。どうもありがとう!受験生ということですが、こんなくだらないブログ読んでたら受かるものも受からなくなるんじゃないかといささか心配になります。がんばってください。



Q: こき使われた意思の無い言葉たちはどこに向かうのでしょうか。



A: 行きつけの飲み屋です。



望もうと望むまいと、そもそも言葉というのは僕らにこき使われる運命にあります。地位を与えてはいけないし、それを望んでもいけません。こまごまとした愚痴を吐き出し、さっぱりとリフレッシュして、明日もまた元気に口の中へと出勤するほかないのです。


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dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


2008年11月24日月曜日

7:3の割合が本当に意味するところとは


おや、これはもしかして…




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まるで往復書簡のようだという手厳しい指摘はさておき、



20日付のタカツキブログより)
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小林大吾のブログによると
タカツキの言動の7割がダウト3割がホント
というのが定説だけど
小林大吾の言動だって70%位の信頼度なので

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タカツキの信頼度が30%であるのに対し、小林大吾の信頼度が70%というのはなるほど、それなりに説得力のある数字に思えます。ではこれをもうちょっとちがった角度で検証してみましょう。

ここに分かれ道があります。映画「ダウン・バイ・ロー」の印象的なラストシーンとはちがい、正しい道は右か左のどちらかです。分かれ道にはタカツキと小林大吾というふたりの案内人がいて、行くべき道を指し示してくれます。


ただし、タカツキは10回のうち3回しかホントのことを言いません。7回は嘘をつきます。
いっぽう小林大吾は10回のうち7回はホントのことを言います。嘘をつくのは3回だけです。


正しい道を行く確率が高いのは、どちらに道をたずねた場合でしょう?


考えるまでもない?


でもよく考えてみてください。もしあなたがタカツキが指し示した道とは逆の道を行くなら、正しい道を行く確率は僕と同じになるのです


なんてことだ!


にもかかわらず、やっぱり多くの人が小林大吾に道をきくことになるとおもう。奥にある信憑性は同じでも、見かけ上のふるまいひとつでこうも差が出るわけですね。僕がにぎる3割の嘘のほうがよほど巧妙で危険かもしれないのに!(たとえば「正しい道は右だけど、僕としては左のほうがずっと良いとおもいます」というような答えならどうだろう?嘘をついていなくても惑わされるし、仮に嘘があるとわかっていてもどこにあるのかわからない)


基本的に見破りやすいその嘘によって被らなくてよいはずの損害を被ることになるという意味では、むしろタカツキは正直者の部類に入るのかもしれません。そして残念ながら(と僕は言いたい)、多くの人がそのことに気づいている。愛される所以です。鼻持ちならない。


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そういえば以前フライングブックスで出されたショートケーキの苺をつまみ食いしたことがあるのだけれど、その責めを負ったのは真犯人たる僕ではなく、タカツキでした。「こんなことするのはタカツキしかいない!」と何もしていないのにさんざんな目にあっていた。

知らんぷりしていっしょに無実のタカツキを責め立てながら、生き抜く術を身につけるというのはこういうことだなとしみじみ感じたことです。

あといま思い出したけど、不慮の事故で自分のケータイを踏まれてしまったtotoさんの記憶が、本当は別の人だったのにいつの間にか「タカツキに踏まれた」という記憶にすり替わっていた、やるせない話もありました。


季節も季節だし、きのどくな彼のために赤い羽根募金でもしてあげたらどうだろうと、なんだかやさしいきもちになる秋のおわりです。


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そして僕はといえば世界的な金融危機の波にのまれてかどうか、じぶんの株をかなり無意味に下げてしまった気がしなくもないというか、いやいや(と首をふる)、底値ならむしろ上がる一方というわけだし、こんなときこそ買い時だと前向きに受け止めることもできるじゃないか。とは言え…



僕にだって「愛するより愛されたい」とおもうときはある…



(つぶやきながら布団にもぐる)

2008年11月22日土曜日

あれから1年もたったのか…の巻


えーと、いつも温かなきもちで支えてくれているみなさまに感謝のきもちをこめて、今年も年賀状を送ろうと考えているのです。

という話をこないだぽにょっとしましたが、フライング気味で2通「ください」というおたよりをいただいたので、ここできちんと募集したいとおもいます。「テリーヌだとおもったらスパムじゃないか!」さん、ポークビッツ事件くん、いつもありがとう!ペンネームがおかしなことになっている上に長すぎて呼びかけている気がしないな。

ちなみに去年までの年賀状はこんなかんじでした。




ことし1年小林大吾としてはほとんどろくな活動をしていないにもかかわらず、気長に見守ってくれてほんとうにありがとう。応募してくれた人全員にお送りできるとおもうので、きらくにメールしてください。

デザインは決まり次第、またここでお知らせしましょう。


必須項目は以下の3点です。
1. 氏名
2. 住所
3. わりとどうでもよさそうな質問をひとつ

※3は言うまでもなく、ブログの延命措置として欠かせないものです。


そして宛先はいつものこちら
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


しめきりは、今日から10日後の12月1日です。


去年は10通くらいだったし、今年もそんなに来ないとおもうので、ストーブにあたりながらぬくぬくお待ちしています。


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業務連絡!業務連絡!フライングでメールをくれたポークビッツ事件くんは氏名も住所も記載がなかったので、えーと早急に送り直してください。どこに送りゃいいんだ?

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ちなみにポークビッツ事件くんはきちんと質問を送ってくれたのだけれど、思いもよらない内容だったので、今ここでそそくさとお答えします。これはちょっとさすがに早いうちに解決しておかないとマズいという気がする。


<ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その72>



Q: 今更ですが、『花咲く種をまく男』でラップしてる人は誰ですか?誰をfeaturingしてるんですか?



A: あれも小林大吾ですよ!



ああ、ビックリした。

でも「ひでえラップしやがる」と思われるくらいなら、だれか別人だと思われているほうがいいような気もしてきました。

ちなみにこの曲はアルバム制作にかかわった古川P、フラインスピンオーナー、タカツキの3人に初めて聴かせたとき、もっともリアクションが薄かった作品です。すこしはラップもためしたい、とおもってやってみたんだけど、あまりに反応がないので(というかちょっと引いていた)、ものすごく恥ずかしくなってやっぱりやめたほうがいいんだろうかとモヤモヤ悩んだことをおぼえています。とくに日本語ラップのご意見番としてさんざんラップを聴いてきている古川さんの無表情っぷりは深刻なものでした。そりゃあそうだろうとおもう。ムリを通してすみません。でも結果的には、入れてよかったんだよね?…ね?

2008年11月21日金曜日

困ったときの決着のつけかた(内田さんの場合)


こないだ「オススメの本をおしえてください」という質問をいただいたときにいくつか候補を考えていて、けっきょく「最近のもの」と「知名度が高くて、なおかつ意外と知られていないもの」を選んだのだけれど、読み返したらだれかに話したくなったのでもう一冊ご紹介です。


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ダイゴくんはブログをがんばって更新してエラいなあ。

いえいえそんな!


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さて、読めばたぶん誰でもビリー・ワイルダーの「情婦」よろしく「この結末をだれにも話さないでください("you will not divulge to anyone the secret of the ending.")」と言いたくなるし、その意味ではミステリー小説とむりやり括れなくもない(ただし結果として相当アクロバティックな)一冊が、内田百閒の「居候匇々」です。




新聞の夕刊に連載された小説だったのだけれど、それに先がけて掲載された「作者の言葉」にはこうあります。



(略)毎日書いて行く内に、作中の人物が勝手にあばれ出して、作者の云う事を聴かなくなったら困ると、今から心配している。どうにも手におえなくなれば登場人物を鏖殺(みなごろし)にして、結末をつける外はなかろうと考えている。



いくらなんでもみなごろしにしちゃダメだよ!と飛び上がってびっくりするようではいけません。じっさいにはそれ以上に衝撃的な結末が待っているのです。そしておそらく、これ以上の破壊力をもつ結末は他に考えられない。インパクトだけなら後半部分をまるまる袋とじにして立ち読みを禁じた筒井康隆の「残像に口紅を」より大きいとおもう。

モンティ・パイソンが好きな人ならぜったい気に入るはず!

70年前の小説を紹介するのに、40年前のコメディ集団を引き合いに出すというのもなんだか困ったことだけど、でも読んだらわかります。ほんとに。前書きのはずだったのにいつの間にか本編に取って代わられている導入部もすごい。

内容はいわゆる大衆小説です。この本が持つインパクトはそれゆえにこそという気がする。どうでもいいようなところでモタモタしてなかなか先に進まないじれったさも好きです。レコードをいつまでもスクラッチするのに似ているとおもう。

そしてパイソンズでいうとテリー・ギリアムにあたるのが挿絵を担うキュール(シュールとクールにキュートを足した合成語)な版画家、谷中安規です。やむにやまれぬ事情があったとはいえ、みずからをサンプリングして使い回す手法はいまもめちゃめちゃ刺激的でかっこいいとおもいます。うらやましい。

おたのしみあそばせ!

2008年11月20日木曜日

ミス・スパンコールの名前の由来


ブログの更新にYouTubeをつかってたとえば好きな曲を紹介したりするのはてっとりばやくて楽ちんなのだけれど、しかしそれはあまりにもおろそかに過ぎるのではないか、いや、でもYouTubeにはびっくりするような貴重な映像もあるし…という七面倒くさいジレンマにときどき悶えています。

でも映像が貼ってあるとちょっとわくわくするんですよね。しませんか?

というわけなので今日はミス・スパンコールの名前の由来にもなった "the Sequins" の曲をぺたっと貼っておきましょう(べつにきらきらして素敵とかそういう理由でついた名前じゃないのだ)。たぶんミス・スパンコールがいちばん好きなガールズグループのひとつだとおもう。僕も彼女におしえてもらいました。LPを出していないので、コツコツ気長に7インチを集めるしか聴く手立てがなかったんですよね。

しかしこんなのまで気軽に聴ける時代なのだなあ。





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あと、おそるおそるではあるんだけど、今年も年賀状企画をやるつもりです。だいじょうぶだよね?そんなにいっぱい来ないよね?募集のついでにまた質問を送ってもらおうかなあと考えています。ひょっとして去年そんな企画やってたってことを知らない人もいるんだろうか?


2008年11月19日水曜日

世界遺産としてのソウル・トレイン


どうやら渋谷FLYING BOOKSでは文字どおりフライングで発売されているらしいタケウチカズタケの "UNDER THE WILLOW -ICHIGO-" には、僕もひとつビートを提供しています、という話はしましたっけ?4曲目に収録されている "sounds like a lovesong" というトラックがそれにあたります。「ビートくれや」と乞われて渡した無骨なドラムにさらりとエレピがからむ、かき氷みたいにシンプルな曲です。(彼のmyspaceで試聴できます)


そもそもドラムを僕の好きなテンポで組んでいるから、というのもあるんだけれど、できあがった曲を聴いたら言葉がすごくのせやすくて、(ものすごくひさしぶりに)詩を書きました。

何しろ詩人というりっぱな肩書きとはうらはらに、むしろそれを剥奪されてもおかしくないくらい僕はふだん詩を書かないのです。それなのにどうして今こんなことになっているのか、いまだによくわからない。ふしぎですね。最後に書いたのはそれこそ詩人の刻印をつくっていた1年以上前のことだったような気がする。


要はそうして書き上げた詩が、立場の入れ替わった新曲 "sounds like a love song feat. Takeuchi Kaztake" として日曜日に披露されたわけです。他人事みたいだけど。

そういう経験がほとんどないとはいえ、誰かと曲をつくるということの醍醐味をこれくらい実感したことはありません。もともとそんな予定じゃなかったからかもしれない。でもずっとひとりで、ぜんぶひとりでやってきたから、余計にしみわたるよろこびがあります。

カズタケさん、ありがとう。みんなにもよろこんでもらえたみたいで本当によかった。


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それはそれとして


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キャー!Joneses がソウルトレインで "Sugar Pie Guy" を演ってた!

前からおもっていることではあるんだけれど、ソウルトレインの映像はすべて世界遺産としてユネスコに登録してほしい。この21世紀にあって鑑賞できるメディアがほとんどYouTubeのみっていったいどういうことなのだ。

音楽ももちろんそうだし、加えてここにはたしかな映像美があるとおもう。ひと晩中みてても全然飽きない。

個人的には冒頭のスキャットで鼻血ブーです。

2008年11月17日月曜日

ソムリエとバリスタのいる家




いやまったく、それがどれほど豪勢な夜であったか、足をお運びいただいたみなさまにさえ実感しきれていなかったのではないかと僕はおもうのです。何しろ日本におけるヒップホップ次世代の筆頭を担うROMANCREWのALI-KICKがトークのためだけに呼ばれたばかりか、東京交響楽団でコンサートマスターをつとめるバイオリン奏者の高木和弘さんを2曲でフィーチャーするんだから、宴の規模に対してふるまわれたご馳走の豪華さといったらない。ウィキペディアの項目になるような人たちですよ!


「のんびりウチで飲もうよ。ワインもコーヒーもあるし」と気軽に誘われてともだちの家に遊びに行ったらソムリエとバリスタがいた、というくらいの驚きです。



そしてそんな巨人ふたりをさりげなく包みこんでじぶんの色に染め上げてしまうタケウチカズタケの器のデカさ!こういう状況を目の当たりにすると、この人こそ何者なんだ、と今さらながらに畏敬の念が頭をもたげます。滅多に味わうことのできない極上の時間がそこにありました。

僕はといえば、ゲストとして迎えられたにもかかわらずひとり馬車馬としての窮状を切々と訴えて、洗練されたグルーヴィナイトをめちゃめちゃにひっかき回すていたらくです。思い返して今ごろ正座でうなだれています。きのうのじぶんに「おまえはもうすこし空気を読みなさい」とたしなめてやりたい。


ともあれ、次々と打ち上げられる花火をみるような矢継ぎ早の展開と、合間に3人のゲストをさらっと迎えたメリハリの良さもあって2時間という長丁場(しかも基本ワンマンです)をぜんぜん感じさせない、濃密にして後味も爽やかなたのしいたのしいライブでした。休憩もはさんでいないのに本当にあっという間だった。

とりわけ、 "Renée Fr." という曲でみることができた、高木さんとの軽快でスリリングなセッションには魂を引っこ抜かれました。バイオリンて、あんなカジュアルで切れの良いステップを踏むこともできるんだ!と目からウロコがぽろぽろこぼれ落ちる思いでした。


「UNDER THE WILLOW -ICHIGO-」リリースおめでとう!いいアルバムです、しみじみと。


あと、ライブ終了後の打ち上げで、モツ鍋をつつきながらALI-KICK君と「LPより7インチのほうがノイズがしゃりしゃりして気持ちいい」という、暗号にしか聞こえないようなフェチっぽい話ができて楽しかったです。ALI君ありがとう。



おまけ:結婚式帰りの古川プロデューサー(ダイエットに成功しています)

2008年11月15日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その71


前回「ほめてくれ」と書きましたが、一晩たってみると大草原のどまんなかでひとり「この指止ーまれ!」と叫んでいたようなきもちになってきました。プロップスは要求するものではない、と当たり前のことをしみじみおもう。要求して通るのはせいぜいサクマドロップスくらいのものだろうと、僕もわかってはいるのだけれど。



 *



質問箱 その9で登場してくれた鼻泥棒さんから2つめの質問です。どうもありがとう!




Q: そういえば一年の半分近くわたしは風邪っぴきなんですね。そんなわけで予防法を教えていただきたいのです。




1年の半分が風邪っぴきというのは、そうでない人からするとさすがに尋常ではありません。考えようによってはむしろ風邪をひいている状態が鼻泥棒さんにとって正常なのであり、一般に言うところの健康な状態がむしろ風邪にあたるのではありますまいか。人体における大多数の細胞がAという立場をとるのであれば、その体の基本的方針はAになるはずです。つまり鼻泥棒さんの体はしょっちゅう風邪を賛成多数で可決しているわけですね。そうなるとこれはもう、これでいいのです。一度決まってしまったことをくよくよしたところで賛成派が増えるだけだし、ここはひとつ地道に賛成派を説得していくしかありません。

それはまあともかく、僕としてはうがいをしたり、ビタミンをサプリで摂取したり、手洗いをしたりという小手先のあれこれよりもむしろ、朝ごはんをきちんと食べることのほうが1000倍だいじです。とくに少しでもいいから毎朝野菜と果物を摂ることで、免疫機能が高まって予防につながるばかりか、日々の体調が劇的にととのいます。栄養素がとれていればいいというのではなくて、もぐもぐと「噛む」ことにこそ意味があるのです。体調管理における焦点がみんなちょっとズレていると僕はおもう。

こういうことを言うとたいていの場合「まあ、そりゃそうなんだけどさ」という前置きのあとに「時間がない」と「食欲がない」のどちらか、あるいは両方が返ってきます。そのきもちは僕もよくわかる。でも時間がないと言ったってシャワーを浴びないということはないだろうし、ひげを剃ったり、髪をとかしたりもするでしょう?それは時間がないとは言わないし、「時間をかけたくない」というだけの話です。たぶんみんな、かける手間にくらべて見返りが少ないと考えてしまうんだとおもう。ムリして朝ゴハンを食べるくらいなら、ちょっとでも寝ていたいとかね。起きていきなり食べようとしたってそりゃ食欲なんか湧くわけないですよ。

でも僕からすると、それはムリをしてでも起こすべきアクションのひとつです。はっきり言っておくけれど、生きものである以上、理由なんていりません。時間や食欲の有無なんて知ったこっちゃないし、見返りがあろうとなかろうと、食べると言ったら万難を排してでも食らいつかねばならないのです。それにビタミンCをサプリで摂るのとくらべて、グレープフルーツをかじることがどれくらいの大仕事だっていうんだ?


「今日で世界も終わりだね、お母さん」
「そうらしいね」
「もう明日はないんだよ」
「そうなのかね」
「だってもう決まったことなんだよ!」
「そう、じゃしかたないね」
「悠長に朝ゴハンなんか食べてる場合じゃないでしょう!」
「いいから食べなさい」


これがつまり、正しい朝の風景です。たとえ数時間後に世界が消えてなくなるとしても、これだけは欠かしてはならぬ、朝食とはことほどさように絶対的なものなのです。ごらんなさい、ここに描かれた母の誇り高き姿を!世界でいちばん偉い王様がいるとして、それよりもさらに気高く偉大な存在があるとすれば、それが朝食です。万物の頂点に君臨すると言ってもいい。アレキサンダー大王と言えどもおいしい朝ゴハンの前には降伏せざるを得ないはずであると僕は考えるものであります。

極端な話、ここさえがっちりと押さえておくなら、夕食なんかとらなくたっていいのです。夜中にゴハンをいっぱい食べてしまうと、消化が間に合わなくてけっきょく朝も食べたくない、という悪循環に陥ります。われながらすごく理にかなっていることを言っている気がする。

とにかく、しっかりと朝ゴハンを食べてください。もっと言うなら、ただ食べるのではなくて、10分でいいから食卓について正面から向き合ってください。話はそれからです。でもそれだけでまちがいなく風邪はひきづらくなると僕はおもいます。もしとっくに食べてたらすみません。と最後にぽろっと言うことでもないな。




A: まず朝食からはじめよう!




質問に対する回答というよりも、朝はしっかりゴハンをかきこもう、というプロパガンダでした。またね!



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



ぶえっくしょい!ズズー。

2008年11月14日金曜日

パンダみたいな犬の絵を描いたこと





しくじった!
うっかり1日とばしてしまった。

上の画像は、えーと、タケウチカズタケ「UNDER THE WILLOW -ICHIGO-」に関するちょっとした企画のためのイラストなんだけど、あんまり可愛くできたのでもったいないから貼りつけました。犬である必然性はまったくないので、たぶん採用されないとおもう。

絵は描けないとおもってたけど、描けないなりに可愛く仕上がるものだなあ。

商品化希望のメールがいっぱい来たら嘆願書つくります。

dr.moule*gmail.com(*を@に変えてね)


とりあえず「いい仕事をするじゃないか」とほめてほしい。


 *


水曜日はタカツキ邸でtotoさんと3人、というわりと珍しい顔合わせでコロッケをつつきました。とくに目的はありません。なんとなく来て、冷めたコロッケを食べながら「さみしい部屋だね」とか何とか言って、なんとなく帰ってきただけです。

そういえばふたりとも折々にケータイを取り出してパシャパシャ何かを撮ってたんだけど、僕にはそういう習慣がまったくないので、ちょっとした文化の壁みたいなものを感じました。ああやってブログに写真を載せたりするのか。なるほど。

しかしそれを知ったところで、どうにもなりません。前にもお話ししたように僕のケータイはいまだにアンテナがピンと伸びるひじょうに古めかしい代物なので、極端な話「撮る」と「それを見る」以外のふくざつなアクションに対応していないのです。「送る」ことさえままならない。なんだよもう!たった数年しかたってないのに、化石みたいな扱いじゃないか!

あと全国で数人だけがその存在を知っている「タカツキがラジオ」という驚くほど無意味なラジオの第2弾をtotoさんが帰ったあとふたりで録りました。

小林大吾のiriver(ipodではない)に入っている音楽を垂れ流しながらその曲についてぼそぼそとしゃべるだけなので、公開されるかどうかも定かではありません。流れる曲自体はどれも素敵なものばっかりなんだけど。

2008年11月12日水曜日

デジタルカメラ、あるいは池田亀太郎のこと



デジカメをデバカメ(出歯亀)と読み間違えました。


言うまでもなくご承知のこととおもいますが、実際それは似て非なるものです。

そしておそらく、デパガともちがいます。それは人を引き寄せますが、デバカメは人を寄せつけません。デパガは女性ですが、デバカメはだいたいにおいて男性です。

いや、デジカメの話ではなかったか?

それはもうどうでもいいのです。ここにいたっては、「歯の出た亀」という珍奇な言葉のほうがよほど問題であると僕は考えます。両脚と首が甲羅から出るだけでも十分だっていうのに、そのうえ歯まで出るとなるとこれはただごとではない。言葉の印象だけなら「野次馬」と同じカテゴリに入れてもよさそうだけど、だからどうしたと言われるのも癪なので、ここは辞書を引いてお茶を濁すつもりです。

(辞書をとりだす)

我が家の広辞苑は使いこみすぎて「アジる」という単語より前の44ページ(表紙含む)がまるまる消え失せているのが玉にキズだけど(第何版だったかさえもわからない)、イイ大人はこまかいことなんか気にしないのです。日本を代表する偉大な辞書の1語目がいきなり造語で始まるんだから、金田一先生には気の毒なことをしているとおもう。


(パラパラ)


あった!


でば-かめ【出歯亀】(明治末の変態性欲者、池田亀太郎に由来。出歯の亀太郎の意)女湯をのぞくなど、変態的なことをする男の蔑称。




……。




ボンヤリ考えていたよりもずっとハードな史実にぶち当たっておもわず目を伏せるわたくし。お茶を濁すつもりが濁りすぎてもうドロドロです。どう収拾をつけたらいいんだ?かるいきもちで辞書なんか引くんじゃなかったとおもう。真実はいつだって青汁みたいな味がする。


しかし自業自得とはいえ、ある意味これは死刑の上に位置する究極の刑罰なんじゃないのか?へんな名前をつけられた上に辞書にのるなんて、考えただけでも泣けてくる。ギロチンのほうがまだマシだ。


えーとつまりこの話の教訓は、女湯をのぞくときには細心の注意を払おう、ということです。一歩まちがえれば死よりもおそろしい刑罰が待っています。


たぶん。

2008年11月11日火曜日

たったそれだけのためにつくられた古道具の逸品





リアルタイムよりもむしろ、ほとぼりが冷めてからおもむろに話し出すことのほうが多いブログなので、いまさらことわりを入れることもないとおもいますけれど、えーと終了してから2週間以上たってようやく「Open House Market」の話です。マイペースにもほどがある。

ともあれ、思っていたよりもずっと多くのお客さまにお集まりいただいて、どうにかぶじ、ニコニコと笑顔でこの催しを終えることができました。どちらかといえばペシミスティックでありながら、老獪でときに大胆な賭けに出ることもある不敵な敏腕家、日月堂店主ですらこの先の展望に一筋の光を見たようだから、その手応えと達成感は推して知るべしと言えましょう。このブログをきっかけに足を運んでくれたみなさま、本当にありがとうございました。しかしこうして書いているとますます自分が何者なのか判然としなくなってくるな。

何しろ昭和初期に立てられた邸宅なので、そこで使われていた調度品にいたってはさらに古いものも多くあり、「これ何だ?」と首をかしげてしまう用途不明のキテレツな(と今の僕らの目には映る)道具が次々と出てくるのです。そのひとつひとつについて鈴木家当主が「これはね…」とていねいに歴史を紐解いてくださる愉しみといったらまったく、筆舌に尽くしがたいものがありました。

たとえばね、柄杓(ひしゃく)を想像してみてください。厚みがあって重たい金属のお椀に、木の棒が持ち手(柄)としてくっついているかんじです。と書けばどうしても柄杓になるし、実際そうとしか見えないんだけど、ただ水を汲むにしてはあまりにゴツいし、つくりが頑丈すぎる。柄杓が自転車なら、こっちの道具は戦車です。


「このがっちりした柄杓みたいなものは何ですか?」
「ああこれね、アイロン
「アイロン?これアイロンなの!?」
「お椀のとこに炭を入れるでしょ」
「ふむふむ」
「でホラ、お椀の底が…」
「あ、すごい平べったい」
「そう、だからそこを押しつけて使うの」


おお…


とまあ万事が万事こんな具合だったのです。一方では部屋の奥から日に焼けて色褪せたイームズの椅子(!)が出てきたりするんだから、まったく、そわそわせずにいられるほうが絶対におかしい。


 *


さて、そんな物語の尽きないユニークな調度品のなかにあって、ひときわ異彩を放つ指物がありました。指物というのは、釘を使わずに木材同士を嵌め合わせてつくる家具や道具のことですね。

↓それがこれ。冒頭の写真はこれをパタンと閉じた状態です。



木枠にガラス板を嵌めこんだだけのシンプル極まりない体裁なのに、なんとなく感興をそそるキュートなたたずまい。これ何だかわかりますか?

折りたたんで持ち歩くための把手もついています。



窓、ではもちろんないのです。



「スズキさん、これ何ですか?」
「あ、これはね、ハンカチはり
「ハンカチって…あ、干すの!?」
「洗ったのをね、ここのガラスにこう、はりつけて乾かすの」
「ハンカチを干すためだけの道具ってことですか、ひょっとして?」
「そうそう、縁側に置いてね」

(絶句)

「…昔はそういう道具がふつうにあったんですか?」
「うーん。いや、どうかな。指物師につくってもらったんだとおもうけど」
「指物師って…じゃコレ特注!?」
「うちはホラ、子どもが多かったから…」
「……」
「これだと4枚いっぺんに干せるでしょ」
「たしかにそうですけど、でもこんな立派な…」
「ふふふ」



「それにしても」と僕らなら思うじゃないか!



けっきょくこの逸品はイベント終了まで誰の手にも渡らずにしまったため、最終的に僕が鈴木家からお譲りいただくことになりました。ユーモラスな趣と同時に、そのちいさな歴史を受け継いだようでとてもとてもうれしい。いつかまたこの奇妙な道具の来歴について、次の世代に話すことがあるだろうか?


 *


すべての片付けを終えてがらんどうに静まり返った鈴木家を後にする際のしんみりとした感慨は、2週間たった今も僕のなかに仄かな余韻として残っています。さいごのさいごでささやかな花を咲かせてくれた鈴木邸は、今月にも取り壊される予定です。


2008年11月10日月曜日

更新頻度低下防止キャンペーンのための小夜曲 1


マンション1階にある集合ポストのそばに、不要なDM等をポイできるゴミ箱が置かれているのだけれど、そのゴミ箱には大きく黒マジックで「チラ紙入れ」と書いてあるのです。

なんとなく口に出すのがはばかられるようなモヤモヤした俗っぽさが出ていて、なかなか的を射た当て字だとおもう。


 *


プール大の巨大ゼリーにぷるんと飛びこんだらその快感は如何ばかりか、という思考実験をくり返しています。

ぷるんと跳ねるのか、それともぷるぷるぷると沈んでいくのか?



ではごきげんよう!

2008年11月9日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その70


※ 更新頻度の低下防止キャンペーン実施中です。


タカツキブログがこのところ目に見えておもしろくなっていて目が離せません。ヤギのフンみたいにどうでもいいことをポロポロと道ばたに落としていくから、つい追っかけてみたくなるのです。東京弁(というものはたぶんそもそも存在しないのに、そう呼びたくなる)がすっかり板について、いつの間にかクセから魅力へと置き換わっています。味わいぶかいなあ。

追っかけたところでそこにはヤギの尻しかないんだけど。

よくもわるくも根っからのホラ吹き体質です。吹いたそばから忘れていくので始末に負えない。

割合としてはホラが7、事実が2、真実が1、というかんじなんじゃないかとおもう。半分以上がホラであることに驚くのではなく、それでも他では得ることのできない真実(とその教訓)が10%含まれている点に留意しましょう。



 *



このブログではすでに何度か登場してもらっている桔梗ちゃんからとてもシンプルな質問をいただきました。どうもありがとう!



Q: 好きな色は何色ですか?



答えるのがいささか照れくさい質問です。まっすぐにしか打ち返すことができないので、ここを訪れてくれている大多数の人にとってまちがいなく楽しめる回答とは言いがたいかもしれないけれど、そのへんは各自やさしさと心意気でカバーしてください。



A: 赤です。



緑や青にも好ましいとおもえる領域があるんだけれど、赤のほうが許容範囲が広い、というかんじです。ふだんから意識しているわけではなくて、なんとなく部屋を見渡したら暖色系が多かったから、寒そうな色よりはポカポカしているほうへと引き寄せられる傾向がある、というだけなのかもしれません。極度のさむがりであることとも無関係ではない気がする。

ただ、まろやかでありながらハッキリとした自己主張がうかがえる、あるいは明るいなかにも侘び寂びがひそんでいる、そういう色なら何でも好きです。じっさい、詩人の刻印のカラーリングはそういう基準で選ばれています。

色そのものよりも、色合いのほうに重きを置いているんでしょうね。

お役に立てましたか?



 *



dr.moule*gmail.com(*を@に替えてね)



おかげさまでさりげなく70回を突破です。しかし意外としぶとく続けられるものだなあ!

2008年11月8日土曜日

野うさぎたちの井戸端会議2001


※ 更新頻度の低下防止キャンペーン実施中です。



オバマさんを評して語ったベルルスコーニ首相の「日焼けしていて格好いい」という衝撃的な発言は、その立場からすればたしかにあまりにも思慮に欠けるし、ジョークよりもジョークらしい歴史的逸話としてこの先長く語り継がれるのはまちがいないんだけれど、しかしよくよく考えてみたら黒人であることばかりが取りざたされる世界の論調に比べて、逆に驚くほどニュートラルな物の見方をしているととれなくもない気がするのです。

「オバマくんは日焼けしててかっこいいなあ」
「首相、そういう肌の色なのです」
「いや、たとえそうだとしてもさ!」


 *


昔撮った写真が出てきました。


近所の林でのびのびとくつろぐ野うさぎたち。


米大統領選の感想をひそひそと話し合う野うさぎたち。


「あなた誰に投票した?」
「わたしオバマ」
「わたしペイリン」
「馬鹿ね!ペイリンに投票してもしかたないでしょ」
「どうして?」
「立候補してないもの!」
「しっぱいした!」



しかし僕のなかではペイリンと言ったら誰が何と言おうとパイソンズのマイケル・ペイリンです。


イギリスの国営番組で世界中を旅して回った元スーパーコメディアンと、
アフリカを大陸ではなく「国」と大雑把に認識していた(!)副大統領候補。

知性派はどっちだ!


 *


あ、なんかちょっと今日ブログっぽい。

2008年11月7日金曜日

池袋駅東口階段途中の奇跡(半径50㎝)


※更新頻度の低下防止キャンペーン実施中です。



22時すぎ、池袋駅東口のパルコ脇から地下構内へとつづく大きな階段のとちゅうで、わりとおっさんくさい風情を漂わせた青年ふたり(僕よりも年上ということはさすがになさそうだけれど、一杯やりながら子どもの写真を待ち受け画面で眺めていてもおかしくない年頃)が、トレーディングカードのコレクションを見せ合ってウフフとそれはそれは楽しそうにささやき声で談笑しているのです。なんだかキラキラしたカードをいっぱい持っていた。

何も大量の人が行き交う階段のとちゅう(しかも池袋だ)でやらなくたってよさそうなものだけど、それにしてもうれしそうな顔をしている。

大人になってから僕はあんなふうににやけたことがあるだろうか?抑えきれない喜びにうち震えながら、それをこぼしてしまわないように口元で噛みしめるようにして?

ましてそんな、おそらくは最上の喜びを誰かと分かち合うなんてことがあったろうか?


「こ、これ見て、これ」
「わ、う、うわぁ…」


というかんじで?

いい年をした男ふたりが雑踏にまぎれて「ウフフ」「エヘヘ」と微笑み合うさまはどう考えたってビジュアル的に赤信号なんだけど、そこには確かに、かげろうにも似たα波と幸福のオーラがゆらゆらとたちのぼっていたのであり、「なんだかいいものを見た」というまろやかなきもちを勝手にもらって家路についた木曜日でありました。生々しくもピチピチと跳ねるような幸せを目の当たりにした。

いま思い出したけど、喜びだけを抜き出して言うなら、カズタケさんが好物のウニをほおばるときの顔もそういえばあんな感じです。

でもそれを誰かと等しく分かち合うとなると途端にハードルが高くなるわけですね。うれしい気持ちを察してうれしくなる、という二次的なよろこびではいけません。感情のゆらめきが常にシンクロしていなければいけないのです。


「ウニだ…」
「ウニだね…」
「ウフフ」
「エヘヘ」
「お、お先にどうぞ」
「いえそんな!そ、そちらこそお先に」
「じゃ、じゃあせーのでいっしょに…」
「そ、そうだね、いっしょに」
「せーの」

パクリ


という具合に。
うあーもうすごいうらやましい!たのしそう!たのしそう!ずるい!



カズタケさん、ウニ友達っている?

2008年11月6日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その69


そういえば僕は正月にもらう甘くとろとろに煮たおいしい黒豆を、だいじにしすぎて腐らせてしまうという愚にもつかない所行を毎年くりかえしているのです。わかっているのに毎年頭を抱えるんだから、これはもう習性というほかありません。百舌のはやにえに近い。

どうしてまた唐突にそんな話をしだしたのかというと、この企画をできるだけ長く引き延ばしたいという小賢しい思惑によってだいじに温めていたはずの質問をうっかり忘れかけていたことに、今さっきメールボックスを開いて気がついたからです。なんてことだ!脳みその出来が小鳥とおんなじだなんて、我ながらがっかりしてしまう。

でもまあ、前向きに!もう読んでくれていないかもしれないけど、だいじょうぶ、少なくとも僕が読んでます。僕が読んでくれるのなら、誰よりも勝手知ったる相手であることだし、それだけで書きつづけようというきもちになるものです。

そういうわけなので気を取り直して、犬も歩けばボニータになるさんからふたつめの質問にお答えします。どうもありがとう!できればまた戻ってきてください。



Q: オススメの本を教えて下さい。



さいきん読んだものの中で群を抜いておもしろかったのは、ジョー・ヒルの「20世紀の幽霊たち(小学館文庫)」です。いちおうホラー小説という括りにはなっているけれど、そんなカテゴライズがまったく意味をなさないほど懐の深い短編集だとおもいます。あるジャンルがあって、その枠におさまるべき体裁を保っているにもかかわらず、愛好家以外の読者を獲得したとき、その作品はクラシックと呼ばれてしかるべきですよね?おそらくこれも、そのひとつです。僕自身はこわがりなのでホラー愛好家ではぜんぜんありません。わざわざ恐怖に手を伸ばして叫ぶ人の気が知れない。

ちなみに小学館文庫というのはメジャー感たっぷりのその名とは裏腹にまだ刊行点数がちょっぴりしかない生まれたてほやほやの文庫なので、刷数が少ないうえに一冊も置いていない本屋さんも珍しくなく、ほしいとおもったときにはどこも売り切れでわざわざ神保町の書泉グランデまで足を伸ばさなくてはいけませんでした。今はごっそり増刷されたようなのでたぶんどこでも手に入るはずです。置いてある書棚を探すのが多少めんどくさいことをのぞけば。

小学館といえば奇才・古川耕による「フットマークデイズ (1)〜(3)」が絶賛発売中であることもお忘れなく!


あとは、そうですね。あまねく知られているイメージとはあまりにもギャップがありすぎて絶句してしまう衝撃の原作、カルロ・コッローディの「ピノッキオの冒険」をおすすめしましょう。ここに描かれたピノキオのどうしようもなく愚かなふるまいの数々といったら、苦々しくて目も当てられません。

しかしそれゆえにと言うべきか、はっきり言っておもしろさはディズニーの比ではないのです。

何しろピノキオの野郎ときたら学校でつかうABCの練習帳を、ジェペット爺さんが雪ふる夜にじぶんの上着を売ってまで用意してくれたにもかかわらず、その数ページ先で芝居を観るために売っぱらってしまいます。

「上着は、おとうさん?」
「売っちまった」
「なんで売っちゃったの?」
「暑かったからさ」

そんなちょっと涙腺のゆるむハートウォーミングなやりとりの、数ページ後ですよ!これをリアルと呼ばずして何がリアルだとしみじみ僕はおもう。

ちなみにディズニーでは愛すべき名脇役として描かれているコオロギも、原作では物語もろくに進まないうちにピノキオの馬鹿のせいでポックリ死んでしまいます。

えええー!



A: カルロ・コッローディ「ピノッキオの冒険」



いやまったく、これを読んだらディズニー版なんか生ぬるくって観てられないです。本当に。



 *



dr.moule*gmail.com(*を@に替えてね)

↑これを記すのもひさしぶりだなあ…

2008年11月5日水曜日

TOKYO FM とフレッシュなプリンスの話


TOKYO FM に SUIKA がでると言われたので、一抱えもあるデカいラジオのつまみを合わせて耳をかたむけていたら、カズタケさんがほとんどしゃべらないのでびっくりしてしまいました。

MCじゃないからむしろそれがふつうなんだけれど。

爆発的な拡散で知らぬ間に耳に届くという意味では、やっぱりネットよりも電波だよなという思いをJ-WAVE以来つよくしていたので、SUIKAの馬車馬としても待ちに待った機会でありました。だって彼らが売れたらその恩恵がひょっとしたら僕にも巡ってきて、いずれは500gのブルガリアヨーグルトを定価で買えたりするかも知れないんだぜ!ちょっとぜいたくかな、やっぱり「恵 megumi」にしとこう…と肩を落とさずにすむ日が来るかもしれないんだよ!

多くの人に届きますように。そしてあわよくば僕もそのおこぼれにあずかれますように。


 *


前回の投稿に燃朗さんからコメントいただいてたんですね。どうもありがとう!そうそう、僕が望んでいたのはまさしくそういうリアクションです。「モスデフがMCだったなんて!」

ラッパーが映画俳優として活躍するのはめずらしいことではないけれど、いまやすっかりハリウッドスターになったウィル・スミスもかつてはFresh Princeという名で一世を風靡したMCだったといったら、さすがにびっくりする人もいるんじゃないだろうか?あるいは、Fresh Princeは知っていて、ウィル・スミスも知ってるんだけど、ふたりが同一人物であることを知らないヘッズとかね。隔世の感があります。タッグを組んでいた Jazzy Jeff は今も現役の大御所DJです。

ラッパーだったというだけじゃなくて、紛うかたなきスーパースターだったのですよ!頂点→どん底→頂点というこれほど極端な転身と再起の成功例を僕は他に知りません。


"Boom! Shake The Room" - DJ Jazzy Jeff and The Fresh Prince





以前質問箱におたよりをくれたモンマルトルの岡っ引きさん(これもすごい名前だ)からも、「DVDで観るつもりだったんだけれど、ブログを読んで面白そうだったからやっぱり観てきました」といううれしいおたよりをいただきました。どうもありがとう!ご丁寧にあらすじまで書いて映画を紹介することないよな、しかし…とちょっと思っていたのでうれしいです。赤ちゃんができたそうなので、ぶじ生まれてきたあかつきにはいただいた質問「ネーミングセンスを磨くにはどうしたらよいか?」への回答を参考に、すてきな名前をつけてあげてください。とおもって読み返してみたらろくなこと書いてませんでした。ともあれ、おめでとう!

「とも」という名前はどうでしょうね?漢字で書くと「強敵」です。