2020年1月31日金曜日

爛漫な色彩に満ちた、夜みたいに黒い絵本のこと

ここに一冊の黒い、そしてじつに美しい本があります。

「くろは おうさま」

文・メネナ・コティン
絵・ロサナ・ファリア
訳・うの かずみ
サウザンブックス社

黒い紙に特殊な黒で印刷された、徹頭徹尾、漆黒の本です。


と言いつつ表紙はふつうに銀色で描かれています。テキストも銀色です。でも言うなればこれらは、そのままでは読むことができない人のための気配りです。中面における本文は銀色のテキストの上部にあります。


本文が黒なら絵も黒く、目で見ただけではどこをめくっても黒一色です。黒についての絵本?とおもわれるのも無理はありません。もちろんそういう側面もあるのだけれど、実際のところこれは世界を彩る数多の色について描かれた、色彩の絵本なのです。


美しい本は数あれど、これほど教訓に富んだ美しい本にはそうそうお目にかかれない、と僕はおもいます。なんとなれば文字どおり世界の見え方が一変するし、その驚きたるや打ちのめされるほどです。

はっきりとはどこにも書いていませんが、主人公のトマスは視覚を持たずに生きる少年です。しかし彼は世界が多彩な色に溢れていることを全身で知っています。ここに描かれているのは彼がいる色の世界であり、僕たちもふくむ世界の色であり、そしてまた、漫然と見ているだけでは決してふれることのできない世界です。

トマスは言います。
「あかは イチゴみたいに すっぱくて、スイカみたいに あまい。
だけど すりむいた ひざこぞうから のぞいたときは いたい。」

五感で味わう色彩の話を、僕は以前にも目にしています。いつだったか忘れたけれど朝日新聞に寄せられた投書で、忘れがたく大好きな話です。まさかこんな形で引き合いに出す日がくるとはおもわなかったけど、ここにもまったく同じ、そして別の、それでいてすごくよくわかる「あか」があります。


40年も前の話です。絵本とは時代も国も言語もちがいます。にもかかわらず彼らの色が同じようにぴったり寄り添うものだとしたら、見ているだけではふれることのできない世界がたしかにある、と思わずにはいられません。そうして今一度、立ち止まって省みるに色彩とは、こんなにも活き活きと血の通うものだったろうか?


あらためて念を押しますが、美しい本です。なんかもうぜんぶひっくるめて、そうとしか言いようがないとおもう。絵を指先で感じる仕様になっているので、実際に触れてみないとその真価が伝わらないところもいい。

今まで見ていた色は何だったのか、そもそも色とは何なのか、美しいということの意味も含めて、考えもしなかった問いをドンと置かれて立ち尽くす人は僕と同じようにいっぱいいるはずです。

去年出たばかりの新刊ですが、アルスクモノイ(@arskumonoi)でも扱っているので、ぜひお店で手に取ってみてください。



2020年1月30日木曜日

ピギー・スモールズのはなしのスタンプの話

そういえばこれまでの足跡をきちんと残していなかったので唐突きわまりないかんじもしますが、ぶたのスタンプができました。


→LINEスタンプ「鶏肋印 参 ピギー・スモールズのはなし

ピギー・スモールズといって、あの手この手でおいしく食べようとする料理人たちをことごとく撃退する武闘派のぶたです。かわいいですね。


サブタイトルにもなっている「ピギー・スモールズのはなし」は、僕がツイッター(@p_p_pinkerton)でちょいちょい流している30秒〜1分くらいの絵本的なひとくちムービーです。現在のところエピソード24まで展開しています。何しろ毎回TLを流しソーメンのように流れていくだけなので、流れたらそれっきりどうにもならない気の毒な作品です。モーメントとかにしたらいいのかもしれないけど、してないのでハッシュタグをひたすらクリックで追跡してください。



スタンプの話に戻ると、基本的には「よし、やるぞ」とおもっても湧かした湯のようにゆっくりと冷めてまた水に戻るのが常なので、間髪入れずに欲しいと言ってくれたBOOKSHOP LOVERの和氣さん(@wakkyhr)がいなかったら、言うだけ言って今もつくっていなかったはずです。和氣さんありがとう!おかげで立派なスタンプができました!

せっかくなので審査ではねられて修正した画像も載せておきましょう。これからスタンプをつくる人は参考にしてください。


2020年1月27日月曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その298


簡潔な回答のほうが「よかったよ」と言われるのでこの12年がんばって書いてきたことは一体何だったのだろうと思わないでもありません。


機動戦士が生んだ無さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)親父にもぶたれたことがない少年を主人公とした、虚無の物語ですね。

Q. 猫は好きですか?
A. もちろん、郵便ポストの上でせっせと素振りするカマキリと同じくらい好きです。ただ最近はSNSでしょっちゅうバズって流れてくるネコちゃんかわいい動画にいいかげん閉口しているところがあります。いちいちかわいいので「くそ、ふざけやがって」とぷりぷり腹をたてる始末です。やんなります。


ブラッド・ぴとっさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. スター・ウォーズは観ましたか?
A. 今のところ最新作以外は観ています。しかしなぜ最初の三部作をエピソード4から始めて6で止めたのか、観れば観るほどその慧眼を思い知らされるばかりです。


名探偵コナイさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)できれば名探偵は来てほしいですよね。

Q. 一番好きなスター・ウォーズは帝国の逆襲ですか?
A. 帝国の逆襲ですね。しかしなぜ最初の三部作をエピソード4から始めて6で止めたのか、観れば観るほどその慧眼を思い知らされるばかりです。


ムーンライトよもすがらさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 4月から東京で働くことになりました。東京でおすすめの飲食店はありますか?
A. リンガーハットがおすすめです。長崎県民にも愛されているらしいので間違いありません。皿うどんの麺を2倍にすると目を疑うような異形の物体が皿に乗って出てきます。


電卓の騎士さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)アーサー王に仕える総務部経理課の担当職員ですね。

Q. 朝 昼 夜のどれが好きですか?
A. 昔から一貫して圧倒的に朝ですね。一日がぜんぶ朝だったらいいのにと小さいころからよく思っていましたが、いまだにそう思う朝があります。


ハレンチトーストさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. シチューはご飯にかける派ですか?
A. 市販のルーを溶かしてつくるタイプのシチュー、ということならそういえば一人暮らしのころは辛味とスパイスを抜いたカレー的なものとして食べていた気がしますね。ヨーロッパの人々からするとこれはパンを味噌汁にひたして食うようなことかなあ、とコタツでひとりぼんやり考えていた記憶があります。




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その299につづく!


2020年1月22日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その297


右ストレート果汁さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 音楽にハマったきっかけは何ですか?


シンプルだけれど考え始めるとあれこれ思い返される、味わい深い質問です。そうですね、少なくとも小学校くらいまでは自分の意志で音楽を聴くということをした記憶がありません。Bon Jovi について熱く語るクラスのませた女子を路傍の石みたいな顔で眺めていたし、「TRAIN-TRAINのブルーハーツって曲」としばらく勘違いしていたくらいなので、その何もわかってなさ加減たるや推して知るべしです。

音楽という広い大海原があると認識したのは中学生になってから、おそらく級友にPoisonというハードロックバンドを薦めてもらったときです。"Every Rose Has Its Thorn" に関してはもう一生分聴いたので、この先二度と聴かなくても差し支えないかなとおもいます。

同じころ、初めて自分の意志で買ったアルバムがBobby Brownの "Don't Be Cruel" です。とりわけ "Every Little Step" は一生分どころか二生分くらい聴いているはずですが、未だに心躍ります。なぜでしょうね?

当時リリースされていたすべてのアルバムを買い集める、というところまで初めて突き進んだのが、Level 42というフュージョングループです。あるマンガがきっかけで聴くようになったんだけれど、それこそCDが擦り切れるくらい聴いたので、もう好きとか嫌いとかの範疇からすでに外れているようなところがあります。Zeebraが "Something About You" をサンプリングしたときは「なぜよりによってこれを……」と複雑なきもちになったものです。

それまでの音楽に対する向き合い方が海辺の釣りみたいなものだとしたら、初めて自ら外洋へと漕ぎ出したそのタイミングがたぶんこのあたりだったとおもいます。ヒットチャートで目にすることもなかったし、「海の向こうにジパングって島があるらしいぜ」と聞いて航海に出るような、そんな期待があったのかもしれません。


A. Level 42のアルバムをせっせと買い集めたことです。




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その298につづく!

2020年1月18日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その296


咳をしてもイートインさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)自由律俳句の代表的な句のひとつですね。


Q. シンデレラも靴下の穴が一番最初に開くのはやはり、親指からでしょうか?


靴下の親指とその穴問題は僕にとって今もなお不可解な謎のひとつです。やろうとおもえば今すぐにでも解決できそうな話なのになぜ穴の発生を根本から防ごうとしないのか、シンギュラリティも間近に迫った21世紀になってもまだ放置されたままであるというのはまったく納得がいきません。あんなもん、どう考えたって親指から穴があくに決まってるじゃないかとおもう。

靴下もいちおう指の並びに合わせた形状ではあるけれども、言い換えてみれば並びだけです。親指と小指では肉まんと焼売くらいの明確な差があるのに、それをくるむ布が並びしか気にしていないというのはいかにも手抜かり、もとい足抜かりと断じるほかありません。親指付近はあきらかにもっと布が必要だし、足りてないから必然的にそこだけ伸ばされるし、伸びるから穴があきやすくなるのです。なぜこんな、雨が降ったら濡れるくらいの当たり前のことをわざわざ力説しないといけないのか全然意味がわからない。おい靴下聞いてるのか、お前の話だぞ

だいたい、穴があくという事態からしてそもそも解せない気もするのです。あくなよ!!21世紀でシンギュラリティだぞ!ロケットをこしらえて月に降り立って、じゃ次は火星行っちゃう?みたいなこのご時世でなぜ靴下にはまだ穴があかなければいけないのか?穴のあかない靴下より宇宙空間に飛び出すほうが簡単だとでも言うのか?そんなわけありません。そんなわけないだろうが!(靴下を床に叩きつけています)

考えてみれば僕のスウェットパンツにもよく尻に穴があきます。正確には尻というか臀部にですが、ひどいときには2つも3つも開くことがあります。

なぜ3つも開くまで穿きつづけているのかはこの際問題ではありません。肝心なのはなぜ穴があくんじゃいという点であって、僕がいつまでもだるだるした穴あきのスウェットパンツを着用していることではありません。

ここでつよく申し上げておきたいのは、スウェットパンツの臀部にあいた穴は靴下の親指部分よりもはるかに不可解であるという事実です。穴のあくような圧力が全体的にやわらかな臀部の一体どこから加わるというのか?念のため言い添えておくと僕の尻に布を突き破るような突起はありません。大抵の人と同じくつるんとしたものです。

そうなるとやはり、責めを負うべきは穴であり、その発生を防ぐのはこれから科学の技術的特異点を迎えようとする人類の、これ以上保留にはしておけない急務であることがはっきりしてきます。放っておけばどんどん穴はあくし、あいた穴はどんどん広がっていくし、その上シンギュラリティ後のAIに「穴のあかない靴下を編めばいいじゃない」と言われでもしたら、果たして人類に立つ瀬はあるのか?ありません。迫りくる穴とその侵略に対してわれわれはもはや一刻の猶予もありはしないのです。


A. もちろん親指からです。




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その297につづく!

2020年1月16日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その295


気がつくと質問箱を放置してしまうのは、毎回毎回一球入魂すぎて力尽きるからだ、もっとさくさく軽い歯ざわりでお答えすればいいじゃないか、とさも今ひらめいたかのように膝を打つことをたしか数年に一度くらいの感覚で繰り返しているのですが、今回がそれです。


プライベート大豆さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. コーヒーをいれる時に大切にしてるポイントってありますか?
A. しいて言うなら注ぐお湯の量を一定のペースで保つことですね。ただ、長いこと当たり前のように毎日入れているとほっといても手が勝手に入れてくれるようなところがあるので、個人的には「よそ見をしない」も大事なポイントになっています。何の参考にもならないとおもいますけども。


桜を見る貝さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. ほうとうはお好きですか?
A. 好きです、というか小麦粉が好きなんです。たぶん。


親ノドグロ子シラスさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 好きな車種はなんですか?
A. 土砂を運搬する一輪車、いわゆるネコが好きですね。扱いにくさと慣れたときの一体感で言ったら赤い跳ね馬にもひけをとらないとおもいます。


旅は靴ずれ夜は寝酒さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 朝寒すぎて布団から出たくありません。どうしたらうだうだせずにぱぱっ!と出られると思いますか?
A. 布団のなかでついうだうだしてしまうのは、いつ命を落とすかわからないような不安に苛まれることがない日々を過ごしている証でもあります。暗殺者を雇い、じぶんを標的に設定しましょう。そのギリギリの緊張感が、暮らしにリズムを与えてくれるはずです。


ジョーのカーさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. 大吾さんはシンデレラでいうところの12時の鐘に間に合う側の人間ですか、間に合わない側の人間ですか
A. 間に合うも何も、そんな晴れ舞台には縁のない側の人間です。間に合わなくても予定があるだけマシじゃねえかとおもいます。


暴れん坊性分さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 5月ごろ「2月になったら安田タイル工業ぶちかますぞ」と専務が言ってた。とのツイートがあったのですが、2020年に実現されそうですかね?
A. どれくらいの規模を「ぶちかます」と表現するかによりますが、安田タイル工業では神社のお賽銭に100円入れるのもぶちかますの内に入るので、たぶんすでにもう何度かぶちかましてるはずです。そして今年も畳み掛けるようにぶちかましていくはずです。


シュレーディンガーのぬこさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 先日Twitterで呟いていた軽い気持ちで用意した餃子のレシピを教えてください!
A. 軽い気持ちだったので、食った時点でもう思い出せずに頭を抱えました。しかしまあ、そういうものです。人生というのは。


ウォーキング電動さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. 葛飾区は好きですか?
A. 江東区と同じくらい好きです。


ニルスのふしぎな足袋さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)

Q. ポルトガルと聞いて思い浮かぶイメージは?
A. そりゃやっぱり、と言っていいのかわからないけど、カステラですよね。




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その296につづく!

2020年1月13日月曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その294



多孔質セラミックス・パさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)「パ」はおそらくパワーのことだとおもいますが、使いかけの消しゴムに書いてあった文字がそこで切れていたので実際のところは不明です。ひょっとしたらパンツだったかもしれません。


Q: 子どもが一歳5ヶ月になりました。まだ歩くのが出来ませんが、日々成長しております。周りの子と比べると遅めのようですが、彼のペースでいいと思っています。我が子には寛大な気持ちを持てるのに、自分の人生はつまづいてばかりです。なんでこんなにしんどいのかなと思っています。今週末は職場の忘年会行きたくない。と憂いています。すべて自分の思い通りになるようにするにはどうしたらよいでしょうか。


ほのぼのとしんみりに油断していたらやぶからぼうに野心が飛び出して腰を抜かす質問です。たしかにすべてを自分の思いどおりに、したいですよね。

すべてを思いどおりにするいちばんの近道は、紙幣で尻が拭けるほどの大富豪になることです。残念ながら僕は富豪だったことが一度もないのですべてと言い切ることはできませんが、ほぼすべてであることは間違いありません。能力だろうと時間だろうと、また愛でさえ自由自在です。(愛に関してはたぶん富豪になった時点で概念が変わるとおもいます)

お金がすべてではないはず、と仰りたいきもちはよくわかります。しかし端的に言ってこの世はお金がほぼすべてです。そもそも「価値」の2文字からして「お金に換算したら」という身もふたもない意味であり、しかもそれに取って代わるだけの力を持った言葉が未だにないことを改めて思い出さなくてはいけません。日ごろから僕が小銭しか入っていない財布を地面に叩き付けながら「人生に価値などない」と吐き捨てているのはこのためです。あるという人は今すぐそれだけのキャッシュに換えていただきたい。

大富豪までの道のりについてはまた別の問題なのでここではふれませんが、もし「なんだそんなことでいいのか」と思えるようであれば、わりとすぐにでもすべてが思いどおりになるでしょう。

ただし、すべてが思いどおりになるということは、それによって思いどおりにならない人が次々と新たに生まれうる、ということでもあります。

確実に、とは言いません。しかしその可能性がそうでなかったときに比べて飛躍的に高まるのは確かです。打ちのめされる彼らの屍をばきばきと踏み越えていく精神力だけは忘れずに携えていきましょう。健闘を祈ります。


A. 大富豪になりましょう。




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その295につづく!


2020年1月11日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その293、あるいはまだ明けない2019


2020年は昨年の更新頻度を上回るぞ、そのためにはまず季節の節目や行事を抜け目なく押さえることだ、正月とか成人式とか節分とかバレンタインとか桃の節句とか、と意気込んでいたのに気づけば松の内もすぎて、出だしから芳しくありません。

さて困ったぞ、今さらおめでとうもあるまいし、いやべつにおめでとうでもいいんだけれども、適切なタイミングで困っておかないと困った目で見られかねないというので積極的に困っていたところ、安田タイル工業の専務より「12月を延長する」との通達があり、2019年を続行することになりました。12月だけで100日を越える可能性もないとは言えないのでもういくつ寝るとお正月なのか判然としませんが、とりあえず今日は2019年の12月42日です。

でははりきって2019年を続けてまいりましょう。

カルロス・ゴーンさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)レバノンからわざわざありがとう!


Q. もっと時間を上手に使えるようになりたいです。ついつい二度寝してしまうとか、スキマ時間を全てSNSや動画サイトに捧げてしまうとか、毎日そんなのばっかりで自分にはもううんざり。どうしたらキビキビと、やりたいこと・やるべきことに取り組めるようになれますか?


とてもゴーンさんの質問とはおもえませんが、なるほどそうなんですね。ではやるべきことをキビキビ取り組みたいと夢見ることにかけては右に出る者のない僕がゴロゴロしながらお答えしましょう。

まず二度寝をしてしまうのは、布団がきもちいいからです。いっそ捨ててしまうのがベストですが、出なければ「ちょっとさむいな」くらいまで布団を薄くしましょう。そこそこ暖をとれるけれども決してポカポカにはならない新聞紙なんかもいいですね。二度寝もへったくれもありません。

SNSや動画を見てしまうのは、そこにスマホがあるからです。これも捨てましょう。それだと連絡がつかなくなるとお思いかもしれませんが、特定の受刑者に手紙を出し、ラジオに曲のリクエストをしてもらい、ニューヨークタイムズの広告を隈なくチェックするという七面倒くさい手順を踏まないとコンタクトが取れないゴルゴ13でさえ世界中から引き合いがあります。要はニーズを高めればよいのです。

それができりゃ苦労しねえんだよ、と椅子をお蹴りにもなるでしょうが、やるべきことをキビキビ取り組める人々というのは基本そういう連中です。僕としては「二度寝しようよ」というほかありません。

僕なんかはこれまで数十年、うんざりするほど自分にうんざりしてきたので、今さらうんざりが大挙してやってこようと痛くも痒くもありません。1が2や3になれば目立ちもするでしょうが、1億が2億や3億になったところで気づきようがないのです。

したがってうんざりに次ぐうんざりもまた、それ自体が巡り巡ってひとつの解法になり得ます。うんざりを受け入れ、うんざりと共に生きましょう。いずれうんざりなしでは何か欠けたようなきもちになるはずです。共生が尊ばれる今の時代にぴったりの生き方という気がしてきませんか?

ゴルゴか共生かなんて考えるまでもないと僕はおもいます。


A. もっと積極的にガンガンうんざりしていくことです。




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その294につづく!