2008年7月30日水曜日

実行を計画に移すチャンスとは


夕刊の端っこにあるちいさな占い欄で、明日は「計画を実行に移すチャンス」とあり、その通りにするとどうやら大きなツキが巡ってくるようなのです。こんな千載一遇の機会を逃す手はないので、ぜひ実行に移そうと意気込んでいたのだけれど、よく考えたらそもそも計画がない。

なんだってこんなときにかぎって計画を用意してないんだ!いつもだったら…いつもだってこんなかんじだけど、こういうときくらい計画を用意してたってよさそうなものじゃないか、この役立たず!すみません。

今からでも間に合うかもしれないし、ちかくの銀行を襲う計画をたててみてはどうだろう?ふだんだったらうまくいきっこないけど、明日にかぎっては計画に多少不備があっても、足りないぶんはツキが補ってくれることになっているのだから、この際おもいきってストッキングをかぶる価値くらいはあるかもしれない。

あるいは一文を組み換えて、「実行を計画に移すチャンス」と読み替えるのはどうだろう?使われている文字はぜんぶいっしょだし、数も同じでちがうのは意味合いだけだから、回ってくるツキにもそんなにちがいはないのではないか。

何しろリスクだけならそのへんの山よりはるかに高い銀行強盗とくらべて、やろうと思って準備していたことを白紙に戻せばよいのだから、これくらいシンプルな仕事もありません。しかもこれはやれたにもかかわらずやめるという非常にポジティブな戦略的後退であって、やろうとしてやれなかったネガティブな屈辱的撤退とはわけがちがいます。これだけ前向きな心持ちでいて、ツキを呼びこまないほうがおかしい。


すごい幸運が舞いこみそうな予感がしてきた!


果報は寝て待てとはよく言ったものだ。いままでさんざん寝過ごしてきた甲斐がありました。これもひとえに非生産的な暮らしのおかげです。おめでとう。おめでとう。ありがとう。ありがとう。



しかし待てよ…やめるためにはその対象である実行が必要だな。



何をやめたらいいんだ?



2008年7月27日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その63


水駒(50cc)に乗って明治通りをブンブン走っていたら、タクシーであってタクシーではない、車体に「指導車」と書かれたタクシー未満の車とすれちがいました。タクシーであればほぼ例外なく屋根にポチッとのっかっているアレがないのです。ザクに対する旧ザクみたいなかんじといったらわかるだろうか?ドライバーの他にぴちぴちはりはりとした青年ふたりが同乗していて、あとナンバーが緑ではなくて白であった。タクシーにも教習車があるんだ。


 *


ハイファイ弁当さんからのみっつめの質問です。いつもありがとう!



Q: どんな部屋で過ごしているのか出来れば動画で解説を、あと生活用品でこだわっている品は?



「そういうわけで、わたしたちはいま、ダイゴくんの部屋にせんにゅうしています」
「あんまり大きな声を出しちゃダメよ、スワロフスキ」
「ふほうしんにゅうです」
「むずかしい言葉を知ってるのね」
「アンジェリカがおしえてくれたんだよ」
「そうだっけ?」
「ないしょでおうちに入ることを言うんでしょ?」
「そうね。そういうこと」
「どうしてないしょなの?」
「証拠をさがしたり、弱みを握ったり、金品を奪ったりとか、いろいろよ」
「ばれたらおこられる?」
「怒られるだけですめば儲けものってとこね」
「…何してるの?」
「あっダイゴくんだ!ばれたよ、アンジェリカ!」
「この部屋ろくなものないわね、しかし」
「勝手に忍びこんでおいてその言い草はひどい」
「忍びこむ価値のある部屋になってから言ってちょうだい」
「カギはどうしたの?」
「窓ガラスを割ったんだよ。ね、アンジェリカ」
「うわっホントだ!こんなことならふつうにノックしてよ!」
「それじゃ何の意味もないでしょ」
「ふほうしんにゅうなの」
「動画で解説をって言われて来たけど、これじゃ映すものもないわね」
「動画?動画って、ビデオ?」
「これです!」
「スワロフスキ…」
「いまダイゴくんがうつっています」
「映さなくていいよ!」
「つまんない部屋」
「さんざんだな、もう!」
「ほとんどゴミみたいなものばっかり」
「あ、ダイゴくん、これだれ?」
「これはマリちゃんだね」
「何につかうの?」
「さあ…。ミス・スパンコールが連れてきたから」
「げきしゃ!」

パチリ



「この『たばこ』って書いてあるのは?」
「煙草屋のショーケースなんだけど、作業台として使ってる」
「これもとっとこう」

パチリ



「よし、このくらいでかんべんしてやろう」
「ありがとうございます」
「あとね、もうひとつしつもんがあるの」
「何?」
「えーと、せいかつようひんでこだわっている…ひん?」
「ひん?ああ、こっちは『しな』って読むんだよ」
「せいかつようひんでこだわっているしなは!」
「生活用品…」
「それってなに?ハブラシとか?」
「そうだね。何かあったかな」
「こだわるってなに?」
「こだわるっていうのは…しがみついて放さないっていうような意味だよ」
「いいことなの?」
「昔はあんまりいいことじゃなかったとおもうよ。でもさいきんはいい意味でつかわれてることが多い」
「どういうこと?」
「ゆずれない気持ちってことかな」
「かっこいいね!」
「しいて言うなら、野田琺瑯の保存容器かなあ」
「ホーロー?」
「エナメルの…まあ、そういう材質があるんだよ」
「箱なの?」
「おかずを入れて冷蔵庫にしまうためのものだね」
「ふーん」
「タッパーとちがってにおいがうつらないし、直接火にかけられるから好きなんだ。あと、なめらかで冷たい手ざわりがいいの」
「なるほど…」
「わかる?」
「わかんない」
「うち電子レンジないからさ、火にかけられるとべんりなんだよ」
「もえたりしない?」
「燃えないよ、もちろん」
「のだほうろう…」
「メモしなくてもいいとおもうけど」
「ダメなの。ちょうさだから」
「調査ね」
「じゃあこれでいいです。今日はどうもありがとうございました」
「窓をやぶって侵入したとは思えない態度だな」
「アンジェリカどこ?」
「あれ、いないな。どうしたんだろ」
「あっいた!お布団でねてる!」




A: 野田琺瑯のホワイトシリーズです。




 *



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)

2008年7月25日金曜日

小指は2度死ぬ(You Only Live Twice)


今日は右足の小指を部屋の角に2度もぶつけて、つま先がドス黒く染まりました。もしそばに核のボタンがあったら何のためらいもなくポチッと押していたにちがいありません。2回目はさすがにキレるどころの話ではないです。僕が大統領でなくて本当によかった。

その怒りはちょっと言葉にしづらいけれど、クリリンを殺された悟空を思い浮かべてもらえばいいと思います。そういえば小指はクリリンに似ている。

こんなことわざわざリアルタイムでブログを更新してまで書くことではない気もするけど、書いておかないと気が済まない。

1度目は偶然でも、2度目は悪意です。だれのか知らないけど、まったく!


ああ、でも書いたら気が済んだ。よかった。

2008年7月24日木曜日

ウェイトレスなウェイトレスのいる店


風呂掃除をしていたら3日もたってしまった。気がつくといつも浦島太郎みたいな心持ちで困ります。

今日は新宿の洋食屋さん「アカシア」で穴子のコロッケを食べました。ウェイトレスが全員おばあちゃんでした。みんな体重が軽そうで、そういう意味ではたしかにweightlessではある。



 *



前回トロピカルでブリンブリンなリゾートショッピングサイト "isola" を紹介しましたが、isola はサイトと並行して、小粋なフリーペーパーも発行しています。これ、もう書いて良いのかな?

こんなの↓




創刊号の特集は、コーヒーです。それにちなんで、「コーヒーの始まりについての話」というちいさな童話を書きました。

ほんとうは、「コーヒーの実を食べたヤギが(カフェインで)興奮して踊り出す」という、コーヒーの発見についてよく知られた伝説をおもしろおかしく書くことになっていたはずなのだけれど、そんならいっそオリジナルの伝説にしてしまえと強引に趣旨をねじ曲げて書いたのがこれです。(そんなことばっかりやってるから敬遠されるんだ)

お姫さまと祈祷師のささやかなやりとりを軸にした、アラビアンナイトふうのお話に仕上がっています。



都内各所にバラまかれる予定だそうですが、具体的にどこで配布されるのかはじつは僕も知りません。でもとても素敵なフリーペーパーなので、血眼になって探してみてください。芥川賞作家の中村文則さんも掌編小説を寄稿されています。すげえ。しかもほぼ同い年ときいて、なんとなく煙草に手が伸びました。

スパスパ

フー。




フリーペーパーといえば、そうだ思い出した。




名古屋発・カルチャー&いろいろマガジン "SCHOP" の最新号にほんのりとさりげなく、「詩人の刻印」が紹介されています。ぺらぺらめくってたら載ってたのでお茶を吹き出しました。いつの間に?




発行者であるウエハラご夫妻の熱烈なラブコールにはいつも頬がゆるみ、そのあと胃がキリキリと痛みます。買いかぶりはほどほどにしてください。どうもありがとう!

しかしおかげさまで僕としてはいつポックリ往生してもオーケーになりました。うれしいことです、本当に。もう思い残すことはないなあ。

ちなみにSCHOPは渋谷フライングブックスでも手に入ります。手に取りたくなるポップでキュートなデザインとはうらはらに、多彩で高密度な情報量をほこる、ブイヤベースみたいなフリーマガジンです。奪い合うようにして持ち帰ろう!


 *


あと、さいしょのころのブログにも書いた、青山の路上で拾った銀無垢のジッポーについて「こういう思い入れのないものに限って失くさないんだよねえ」みたいなことを人と話していたそばから失くしました。思い入れはないからべつにいいようなものだけど、いまいち得心がいかない。

2008年7月21日月曜日

エレガントでスパークリングなリラクシンタイムの話


日曜日はじぶんが人見知りであることを今さらながらというか、数年ぶりに思い知らされました。とてもおめでたい席であったにもかかわらず、最初から最後までいたたまれない夜であった。「お仕事は何を?」ときかれたら「あ、会社員です」とちいさな嘘で受け流す心づもりで居たのに、僕と同じくただの人として同席していたフラインスピンオーナーが「彼は詩人でー」と聞かれる前に言っちゃうものだからどうにもならない。そのくせ「おれフォローしないからね!」と投げ捨てて沈黙するんだから、そんなのないよと思う。数匹のヘビににらまれたカエルみたいに脂汗をかかされました。べつに珍味あつかいされたってかまわないけど、わざわざじぶんから「珍味っす、よろしくっす」とアピールする必要がどこにあるっていうんだ?

ご多分にもれず僕も「けっきょくのところあなたは何者なのですか」とつっこまれることにとても弱いです。

ぺらぺらの紙みたいになって、落ちこんで帰ってきました。友人の結婚を祝いに出かけたはずなのだけれど。


 *


さて、つい先日インターネット大海原のど真ん中で、isolaという常夏のリゾートショッピングサイト(?)が華やかにオープンしました。抜けるような青空と照りつける太陽のもと、キラキラと乱反射するエメラルドグリーンの海に囲まれながら、訪れる人が島民となり、島を散策するようなきもちでお買い物ができる素敵なサイトです。




そのラインナップにはワイン、葉巻、アートといった、ブリンブリンに成熟した大人のアイテムがずらずらと並び、一見すると僕のボンヤリした日常とは結びつきそうにない、エグゼクティブなバカンスをエンジョイみたいな輝きに満ちあふれていますが、

フゥ。(息つぎ)

どうして僕がここに言い及んでいるのかというと、isolaではこだわり抜かれた7種類のオリジナルコーヒーを販売しており、そのイメージロゴの制作を思いもよらない成り行きから僕が請け負うことになったのです。

こんなの↓




コーヒーを買うと、袋にそれぞれ小さなロゴシールがぺたりと貼られて届くんだそうですよ。シールの見本をいただいたのだけど、とてもかわいいので大事にしています。僕もなんかちょっとこう、上流階級の仲間入りをしたような錯覚ができてうれしいです。

本当に良いものだけを厳選して取り揃えているという話なので、この夏は人にちょっと差をつけてエレガントでスパークリングなリラクシンタイム(よくわからない)を満喫しよう!あとは人見知りをなおせば、社交界デビューも夢じゃない!

いえ、僕のことじゃありません。


isolaに関してはもうひとつ、サイトオープンと同時に発行されたフリーペーパーの話があるのだけれど、そろそろねむたくなってきたのでまた次回に書きましょう。


 *


ちなみにミス・スパンコールはいま仙台で大学教授と奇妙なアバンチュールの真っ最中です。何をしてるんだあの人は?

2008年7月19日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その62


水曜日はフラインスピンオーナーYMZと古川P、タカツキせんぱいと4人で、都心から車で1時間ほど高速をすっとばして辿り着く、人外の秘境で豪勢な打ち上げをしてきました。詩人の刻印の発売から8ヶ月半をへて、ようやくここでひとつの区切りをつけたことになります。

べつにそのへんの天ぷら屋とかだっていいし、前は実際そんなかんじだったんだけれど、局地的とはいえ思わぬ広がりを見せた詩人の刻印に関しては、多くの人が恵んでくれたいくばくかの幸運に感謝を捧げながらしみじみとそのよろこびをかみしめる、ちょっととくべつな一席を設けたいと考えていたのです。

そしてこの会合は、3枚目のリリースに向けた、それぞれの意志確認の場でもありました。形式的にはこのときをもって、あらたな制作期間に入ったということですね。その夜おそくにさっそく古川Pからプロデューサーっぽいメールが届いて焦りました。


みんな本当にどうもありがとう。がんばります、もっと。


ちなみに詩人の刻印は、あちこちのお店で売り切れていて、すわ廃盤かという話もあるようですが、もちろんそんなことはありません。廃盤にする理由は何もないです。渋谷フライングブックスでは今もふつうに手に入ります。



 *



百万枚の皿(ロシア製)さんから、もう何度目か忘れちゃいましたがまた質問をいただきました。気を遣わせてしまった感じがアリアリですみません。どうもありがとう!



Q: 趣味はなんですか?



お見合いにおける第一声のようでひじょうに緊張する質問です。ないと答えるのはすごく抵抗があるんだけれど、かといってコレと言えるものが見当たらない。履歴書の記入欄でもいちばん脂汗のにじむ部分かもしれません。

辞書をみると「仕事・職業としてでなく、個人が楽しみとしてしていること」とあるけれど、そんなこと言ったら風呂上がりのビールだってたぶんその範疇におさまってしまう。そうじゃなくてもう一歩こう、能動的なかんじがしますよね。貪るくらいの鼻息の荒さがほしいし、ちょっと人には言いづらい、背徳性なんかあるとなお良しです。「じつは…」と切り出さざるを得ないような意外性というかね。何にせよ、人が聞いたら「へー、そうなんだ」と唸ってくれるようなものでありたい。「ああ、いいよね、アレ」という具合に簡単に同意してほしくない、趣味とはつまりそういう陰湿なニュアンスをすべてひっくるめた排他的な営みであるとわたくしは考える次第であります。そうか、だから脂汗をかくことになるんだ。

だって「趣味は読書です」よりは「趣味は女装です」と言ってみたいですよ、それは。驚きもされずに「なるほど」なんて頷かれた日にはなんだかションボリしてしまう。「知りもしないで、知ったような顔すんなよな」とおもう。そんな水面下の駆け引きみたいなことしなくたっていいようなものだけど、へんなところで負けず嫌いなのです。ギャフンと言わしてやりたい。

しかしそう考えると、完全にじぶんの首をしめてしまったようですが、胸をはって堂々と言えそうな趣味なんて何ひとつありはしません。



と、そこへ、おや。こないだ骨董市でビル・マーレイそっくりのおじさんから100円値切って買ったちいさなコップが目に入りました。(逃避)




ああ…やっぱり可愛いじゃないか。手のひらにおさまるこの手頃なサイズといい、三ツ矢サイダーの気さくで親しみやすいロゴと、シンプルで飽きのこない、それでいてモダンなツボを得た図案…、


フゥ…(ウットリ)




時代の技術的限界からくる無骨な厚みと、それゆえにどうしても除去しきれずガラスに閉じこめられてしまう無数の気泡…プリントの手ざわり、経年からにじみでる程よい寂寥感…、醸し出される侘びと寂び…


そこへミス・スパンコールがやってきて、「コップ、スキなんじゃないの?



「そうだね。コレかわいいし」
「そうじゃなくて、そもそもコップ自体がスキなんじゃないの?」



ハッ。(何かに気づく)


そういう目であらためて部屋を見回してみると、そういえばたしかにウチにはあちこちからあの手この手でくすねてきたコップがいろいろ…

思い返せば、ブログでも以前に相模川で拾ってきたコップを披露したような…

意識せずになんとなく抱えていたきもちを「それは恋です」と指摘されて、稲光が脳天をつらぬき走るような新鮮なおどろき…。

対象がコップ(無機物)というだけで、展開的にはそのへんのラブコメと変わりないじゃないか。



き、



気がつかなかったな…。



A:コップフェチでした。



本当に、つい一昨日くらいに気づかされたことだったので、いまだにその驚きから抜け出せていません。知らなかった、じぶんがコップ好きだったなんて!


でも履歴書には書きづらいだろうな、たぶん。



 *



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)




2008年7月15日火曜日

大きすぎるラジオとJazzmatazz Live@Jazz Cafe, London


ふと我に返ると2日3日たっていて、びっくりしますね。日の歩みがもうすこしゆっくりだといろいろ助かるんだけれど。じりじりと蒸し焼きにされて、ともすると香ばしい匂いがあたりにたちこめそうな暑さです。


 *


ウチには両手で抱えるくらいの大きなラジオが、ふたつあります。ひとつは10年くらい前に仕事の途中で拾ったもの(拾ったその晩、このラジオをつけたら流れてきたのが宇多田ヒカルの "Automatic" だったから…やっぱり10年くらい前だな、きっと)、



もうひとつは祖父母の形見(みたいなもの)です。



弦楽器や振り子時計と同じで、木に囲まれた空間をたっぷり使っているからか、とにかく音が瑞々しくて、今もときどき思い出したようにカチリとつまみを回してラジオ深夜便を聴いたりしています。真夜中にフランク永井とか聴いてると「ここはどこだ」という気持ちになれてなかなか新鮮です。

よく使っていたのは拾ったと書いた前者のラジオで、それは祖父母のラジオがずっとあとになってウチにきたからなんだけど、そういえばこっちのラジオはまだ電源を入れたことがなかったとおもって、きのうふとつまみを回してみたのです。


すると


おや、この声は…Guru(of Gangstarr)だ!Jazzmatazzのライブだ!しかも@Jazz Cafe, London (※注1)だ!



思わず耳が釘づけになりました。GuruのJazzmatazzシリーズはvol.2あたりまでしかまともに聴いていないのだけど、アルバムよりライブのほうがはるかにスリリングでカッコ良すぎです。だいたいJazzmatazzなのに、なんで"Mass Appeal"なんか演ってるの?もう、シビれる!



いうかんじでしばらく聞き惚れて、気がついたらやたらと音が良い。きれいとかクリアとかそういうことではなくて、立体感というか、奥行きと広がりがある。ひとつひとつの音に質量があって、耳よりもむしろ体に響く。

流れているのがライブだからよりハッキリ感じられるというのはあるだろうし、何しろラジオ自体が大きい上に木製だからデジタルよりも心地良く響くのはわかるんだけれど、それにしてもファットな音がする。

そう思って、それまで使っていた拾いもののラジオをつけてみると、それだってほぼ同じ大きさの木の箱だし良い音がすると感じていたのに、やっぱり明らかなちがいがあるのです。

こいつは思わぬ発見をした!



ちなみに Guru の Jazzmatazz Live@Jazz Cafe, London は今夜もひきつづき、J-WAVEの JR EAST Midnight Trainで放送されるそうですよ、となんとなくタカツキさんやカズタケさんに向けて書いておこう。それまでに読むかな?


それにしてもふと思い立ってつけたラジオから、自分の嗜好にぴったり合致する音楽が流れ出すよろこびって、ちょっと他にくらべられるものがないですよね。出会い系と言えば出会い系だけど。




※注1:Jazz Cafe, London→D'AngeloやPete Rock & CL Smoothも演った、とてもゆうめいなライブハウスです。ダニーやカーティスがライブをしたNYの"Bitter End"みたいなイメージなんだけど、ひょっとしたらぜんぜんちがうかもしれません。

2008年7月11日金曜日

よりしずかなくらやみをもとめて


夏の鼻息も荒くなってきているというのに、ゴロゴロと寝転がってばかりいる、あいかわらずのていたらくなので、そろそろ詩でも書こうと深い海の底へぶくぶく潜り始めています。

潮にのって漂い、昆布に巻かれて、サメから身をかくし、しずかなくらやみへ、よりしずかなくらやみへ。

詩を書く僕にとっていちばん邪魔なのは、「で、だから何なんだ?」という干涸びた視点です。外からではなく、自分の内から湧き水のようにしみ出してくる困ったリアリズムを宥めるのは本当にたいへんで、「だから、な?書かなくたっていいんだよ。別にお前じゃなくたっていいだろう?」という意地の悪い(自分の)声をかき消すためには、とにかく頭の中をほうきでレレレと掃いてキレイにし、潜水服を着てざぶんと海にとびこむほかないのです。

それにしてもどうしたらアイディアが湯水のように溢れ出るなんてことになるんだろう?僕自身のイメージでは、すっかり乾ききったように見える雑巾をぎゅうっとしぼって、ようやく垂れる1滴の水がアイディアであり、それを飢えた獣のように貪るのがお決まりの流れなんだけれど、そういうのって僕だけなんだろうか?

心身ともにひどく消耗するし、ふーむ。なんだかおかしな労働をしているな。

えーと、じゃあそういうわけなのでまたちょっと潜ってきます。



海女みたいだ。

2008年7月7日月曜日

おちてくる雨粒を人力で数えることについて


耳にはさんだえんぴつが頭をかたむけた拍子にポロリと落ち、あわててつかもうとしたら手のひらにブスリと突き刺さって現在とても難儀しています。

しかたがないのでベランダで煙草をくわえながら、雨粒をひいふうと数えているのです。数えるそばから畳みかけるように降ってきて、どうにもならない。

どれくらいの面積なら、そこに落ちる雨粒を人力で数えることができるんだろうか?野鳥の会の人々を10000人くらい集めて、数取器で一斉にカチカチやったら、ひょっとしてそれなりに精度の高い結果が得られるんじゃないだろうか?

コップを地面に置いて、たまった雨水の量から何滴と逆算したらよさそうなものだけど(アメダス方式)、それは42.195kmのフルマラソンを「車で走ったらいいのに」と言うのと同じくらい冷え冷えとした考えかたであって、どうもあんまり感心しない。どのみち無益な研究なのだから、合理性を排除してなるべく丸腰でとりくみたい。こういうときに多細胞生物としての限界と可能性を追求しないで、いったいいつ追求するというのだ。

とおもったらやんでしまった。なんだ、気の短い雨だな。

スピードガンで雨粒の落下速度を計測するのもいいですね。何キロくらい出てるんだろう?


しかし紅白歌合戦の結果集計を日本野鳥の会とそろばん日本一に託すというモンティパイソン的発想は、カリキュラマシーンと並んで長く語り継がれるべき無形文化財のひとつですよね、おそらく(思考の跳躍)。


それにしても手のひらがズキズキする。

2008年7月5日土曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その61(b)


ダブルスコップ(通称ダブスコ)さんにいただいた質問のつづきです。



Q: 好きな動物は何ですか?(ムール貝博士にも聞いていただけますか?)



ドンドンドン

「ハーカーセー」
「どこのガキんちょだ」
「やぶからぼうにすみません」
「そうおもうなら少しは遠慮ってものをおぼえたらどうだ」
「そうですね。えーと」
「聞いてなさそうだな」
「ちゃんと聞いてますよ」
「遠慮だぞ。えんりょ」
「わかってますってば」
「いい子だ。では解散」
「遠慮はいらんてことでしょう」
「ぜんぜん聞いてないじゃないか」
「好きな動物はなんですか」
「動物?」
「ニュアンスとしては禽獣だとおもいます」
「ウシとかブタとか鶏は好きだよ」
「それを愛情と呼ぶのはいささか問題がありますよ」
「食べちゃいたいってのはよくある愛情表現じゃないか」
「実際に食べるとなると話は別です」
「ああ、そういえば昔…」
「恐竜とか言い出すんじゃないでしょうね」
「ドードーを飼ってたことがあるよ」
「ありそうな話だ…」
「ほんとは偉大なワンドゥードルが良かったんだけど、何しろさいごの一ぴきだし、ジュリー・アンドリュースとケンカになったからやめたんだ」
「あいかわらず極端な選択肢ですね」
「いま思えばもっと粘ってもよかった」
「好きだったんですか?」
「まあ、美人だからな」
ジュリー・アンドリュースの話じゃないですよ」
「他にだれがいるんだ」
「動物の話です」
「ああ…そっちか」
「あからさまにガッカリしてるな」
「沢田研二がジュリーと呼ばれてるのは彼女のためだぞ」
「そんな豆知識はどうでもいいんです」
「ドードーか。アイツ扱いづらいんだよ」
「体も大きいですしね」
「トイレに入るとなかなか出てこないし」
「共用なの?」
「おまけにヘビースモーカーで部屋がいつも煙たい」
「ほとんどおっさんだ」
「思い出したらいろいろ腹が立ってきた」
「好きな動物の話をしてるんですよ」
「こっちはドードーの話をしてるんだ」
「だいたい合ってるような気もするからいいか」
「あと、あくびがうるさい」
「あくびがうるさい?」
「重低音がすごいんだ。窓がびりびりふるえる」
「ははあ」
「なんだ?」
「博士と波長が合っていたってのがなんとなくわかってきました」
「こっちはよけいな記憶を掘り起こされて気分がわるいよ」
サウンド・オブ・ミュージックでも観ましょうか?」



A: ドードー



 *



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)



その62につづく日はくるか?

2008年7月3日木曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その61(a)


昨夜は古川プロデューサー夫妻が夜ふらりとウチを訪れて、コーヒーを飲んでいかれました。キュートな奥方とは何度もお会いしているのだけど、ウチに足をお運びいただくのははじめてだったので、何か粗相がありはしなかったかと今ごろハラハラしています。


 *


ダブルスコップ(通称ダブスコ)さんから、ふたつめの質問です(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)。どうもありがとう!



Q: 好きな動物は何ですか?(ムール貝博士にも聞いていただけますか?)私はカバが好きです。



そういえば、ずいぶん前に「人間以外の生きものに生まれ変わるなら何がよいか」という質問に答えたことがあったので、これはたぶんベクトルが同じだろうとおもって読み返してみたら、そうでもありませんでした。ハシビロコウはたしかになれるものならなってみたいけど、好きかと言われるとべつにそれほど好きでもない。こういう、似て非なる感情の境界に明確な線を引いておくと、いろんな局面で役に立ちそうな気がしますね。

好きな動物…そもそも「日高敏隆」という名前にピクっと反応するくらいなのでひとつにしぼるのはむつかしいですが、牛が四六時中もぐもぐやっている様子をえんえんと眺めるのは好きです。生きるというシンプルな状態を非常にわかりやすく体現してくれているような気がします。「だれも自分のことをわかってくれない」という気分のときに眺めると効果的です。デザインとしての美しさを考慮に入れるなら、青草を食む乳牛(ホルスタイン)がベストですね。

もっと突っ込んで言うと、角のある偶蹄類はだいたい好きです。ヌーとか、シロイワヤギとか、アオヒツジとか、カリブーとかですね。なぜかというと僕には角がないからです。だから角はなるべく大きいほうがうれしい。ジャコウジカも神秘的で惹かれるものがありますが、角があるかどうかは覚えてないです。なかった気もするな。


あとはもう絶滅してしまったけれど、かつて南太平洋のハイアイアイ群島に生息していた鼻行類ですね。説明するよりじっさいに見てもらうほうがいいとおもいますが、嗅覚器官としての鼻が極限まで進化してついには歩行器官にまでなったという、変わった動物です(別名ハナアルキ)。ここにリンクしたのはその種類と生態、はては骨格標本まで網羅したすばらしい書物で、以前はハードカバーを持っていたのだけど、むかし付き合っていた女性の部屋に置いてきてしまい、買い直そうとおもうころには絶版で手に入らなくなっていました。僕の生涯でもっとも悔やまれることのひとつです。

15年くらい前、今とは書架の配置が異なる池袋リブロで、はじめて手に取ったときのドキドキを今もときどき思い出します。



A: 角のある偶蹄類(あるいは鼻行類)



 *



博士にも、ということでしたが、例によって長くなってしまったので2回に分けてお答えします。ちなみに、今回いただいた質問が今のところ最後の質問です。とうとうきたかというかんじですね。

しかしまあ実際のところこんなに長くつづくとはおもっていなかったし、60回もやればりっぱなものです。みんなどうもありがとう!ここまできたら締め切る気にもなれないので、これからも気軽にお送りくださいませ。



dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)




その61(b) につづく!

2008年7月1日火曜日

お好み焼き「千房」のレイモンド・ローウィ


先日、大阪で行われたライブのあと、SUIKAの面々と打ち上げでお好み焼きの「千房」に行ったのだけれど


そのときもらってきたマッチがこれ↓



このマッチを見ていたミス・スパンコールがふと、「あー!」と頓狂な声をあげるのです。

「なにごとですか」
「このマッチをよくご覧なさい」
「?」
「わかりませんか」









あっ。













口にくわえたあのヘラは、オリーブの葉だったのか!