2010年12月29日水曜日

幻の処女作「ジビエとしてのバニー・ガール」



なんだかずいぶんひさしぶりに甘鯛のポワレ教授が訪ねてきてこう言うのです。

「ダイゴくん、アレまちがってるよ」
「アレって何のことですか」
「あのーアレ、本、ピンキーの」
「ピンキー?」
「書いてたろ、説明書に」
「ちょっと待ってくださいよ、ピンキーって誰?」
「誰って…ピンクだよ」
「ピンカートン先生?」
「そうそう、他に誰がいるんだ」
「そんな呼び方されてるなんて知らないもの!」

※特装版をお持ちの方ならご存知かもしれませんが、甘鯛のポワレ教授は「象を一撃でたおす文章の書き方」の表紙に短い推薦文を寄稿しています。


「そうか、そりゃわるかったね」
「ピンカートン先生の本がどうかしましたか?」
「説明書に書いてある説明がまちがってるんだよ」
「ピンカートン先生のプロフィールってことですか?」
「あれ、3冊って書いてあったろ」
「『象を一撃でたおす文章の書き方』が3冊目ですよね?」
「いや、4冊目なんだよ」
「え、そうなの?」
「登場が1950年代ってあったけど、処女作はそれよりずっと前だよ」
「前ってどれくらいですか」
「1914年」
「大正時代じゃないですか!」
「ああ…そうかな?そうだね」
「いくら何でもそれはないですよ」
「いや、ホントなんだって」
「フーン」
「邦訳も出たんだよ、当時」
「邦訳!?」
「ふつうは考えられないよ、誰が読むかねあんな本を!」
「実物があるなら見てみたいですけど」
「だから持ってきたんだよ。うちの蔵からデッドストックが出てきた」
「わっホントだ、何コレ!」




いうわけで、ぶじアルバムをリリースすることができた今年もみなさまにはたいへんお世話になりましたの気持ちをこめて、ピンカートン先生による幻の処女作「ジビエとしてのバニー・ガール」を年賀状として抽選で15名の方に贈ります。

1. 氏名
2. 住所
3. アルバム「オーディオビジュアル」についての雑感

こんなんでもほしいと手を挙げてくれる物好きなかたは、上記の3点をもれなくお書き添えの上、dr.moule*gmail.com(*を@に替えてね)までメールをお送りください。

応募の締切は12月31日いっぱいまでです。あいかわらず、たた短期間ですみません。


 *


大袈裟でも何でもなく今年は、じぶんにできることのすべてをやり尽くした感があります。アルバムを手にしてくれて本当にありがとう!

個人的には、「オーディオビジュアル取扱説明書」(公式サイトからのダイレクト通販でおまけとして付いてきます)を作れたことが感慨深いし、詞を確認するためではなく、あくまで読むことに重点を置いたブックレットの書籍的アプローチにも満足しています。音さえあればという人には何の興味も持ってもらえないかもしれないけれど、実際にはあれこそ、僕が声を使って発信する以前からこつこつと培ってきた特質の最たるものだし、にもかかわらずそれを正面から自然に受け止めてもらえたことが心底うれしい。

それでなくとも僕のもつスキルは、ひとつひとつ個別に取り上げればどれもせいぜい二流どまりです。誰もやっていなかったことでは全然ないし、真似のできないことでもない。でもそれらをぜんぶ組み合わせたらそれなりになる、とは言っていいとおもう。「オーディオビジュアル」(とりわけ特装版)はその証明であり、そういう作品です。詩人と名のる人種のなかで、ここまで複合的におもしろいものをつくれるヤツがそうそういるものか!

 *

天狗になれるほどの規模では全然ないけれど、それでも地図に載らないちいさな無人島を地図に載せたというささやかな自負が、これまでやってきたことに対するいちばんの報酬です。

すくなくともフラインスピンレコーズ、ひいてはそのボス山路和広の株をちょっぴり上げることができたと胸を張って言えるし、充実度においては微塵もかなわない彼の人生に少しばかりの彩りを添えることができたというのは、僕にとって他とは比較にならない大きな自慢のひとつです。彼に「ダイゴ」と気安く呼ばれることの誇らしさ!

古川さんについては…どうかな、誰よりも僕のつくるものを理解して、期待もしてくれるぶん、株を上げるまでにはいたっていないような気もするけれど、でも心からよろこんでもらえたとおもうし、たのしんでくれました。大人になるということについて書いた「いまはまだねむるこどもに」は彼なくしては生まれなかった作品です。僕よりもずっと年配の人に「わかるよ」と頷いてもらえたときは僕が泣きそうになりました。

 *

そうしてもちろんこれらはすべて、あなたのおかげなのです。待っていてくれてありがとう。たのしんでくれてありがとう。

明日への活力がすこしでも満たされますように!

2010年12月25日土曜日

安田タイル工業のホワイトクリスマス2010




世界に向けて遠吠えを!

あるかなきかの零細企業、あの安田タイル工業の慰安旅行が数年ぶりに帰ってきた!

2008年5月以来となる今回は、ひとり1万円でなるべく遠くまで行き、かつ宿泊して帰ってくるというたいへん羽振りのよい旅行に専務と社員、総勢2名の大所帯でくりだします。

ローカル線の終点に行きたい、というタカツキ専務の意向によって白羽の矢が立てられたのは、群馬県は信越本線の端っこにある横川駅です。厳密に言うと終点ではないのだけれど、線路がそこで途切れているのはたしかだし、何より横川といえば駅弁「峠の釜めし」発祥の地として全国的に名の知れた駅でもあるので、期せずして目的ができたと満場一致で可決されたのです。よし、峠の釜めしを食べにいこう!


ただし、他に選択肢がなかったという絶望的な理由で、出発は12月24日の朝です。365日のうち、男ふたりで1泊するならこの日だけはなんとしても避けたいと誰もがおそれ、ことによると心がポキンと折れかねない危険な日取りだけれども、こればっかりはどうにもできません。この日しかないとなったらそれはもう、矢が降ろうと火の粉が舞おうとこの日しかないのです。メリークリスマス!


待ち合わせ場所に向かう途中の新宿駅構内



これからそれを食べにいこうというのに、集合する前からいきなり旅の目的を失う安田タイル工業


今しがた目にした重大な事実からは目をそらし、何ごともなかったかのように出発です。旅の予算としてひとり1万円の入った封筒が手わたされます。費用はすべて、ここからまかなわなくてはいけません。


新宿駅→横川駅 2,210円×2 残金15,580円(2人分)


乗りました。


着きました。


食べました。

峠の釜めし 900円 + 玄米弁当 500円 残金14,180円(2人分)


目的を果たしたあとはこれといってすることもないので、道すがら目にした柚子や金柑や柘榴を電光石火で口の中へと放りこみ、河原に降り立つカワセミを愛で、猛ダッシュで逃げるサルを追い、コウモリの変な鳴き声に驚きながら、地図もないままてくてくとあたりをうろついて回ります。


「む、あのカッコいい山は何だ」
「あれは妙義山です、専務」
「なんてカッコいいんだ。近くまでいこう」

道中見かけた看板(宿泊するのはここではありません)



(何の関係もないニューヨークを持ち出してきたばかりか、わざわざ和訳してあることに立腹して罵倒し始める安田タイル工業の面々)


山の中腹にある妙義神社



「おや、登山道入り口がある」
「いま15時半ですから、これから登ると下山は不可能です」
「うむ…」
「その証拠に僕ら以外誰も見当たりません」
「誰もいないな」
「夜は氷点下になるので野宿は死を意味します」
「うむ、死だ」
「でも登りましょう」
「登ろう」

装備と呼べる装備はほぼ皆無にかかわらず、何のためらいもなく上級者コースを行こうとする安田タイル工業(専務にいたっては家からここまでパーフェクトに手ぶらで来ています)


上級者コースは傾斜が急すぎるため、あちこちに鉄の鎖が打ちつけられているのです。

「専務」
「何だ」
「ちらほら降ってくるこの白いものは何ですか」
ケセランパサランだろう」
「専務は物知りだなあ」


この鎖を登ると




この状況からするとあんまり信じたくないので必死に現実から目を背けていたのだけれど、残念ながらここまで来てとうとう、さっきからちらほらしていた白いものが雪であると認めざるを得なくなりました。しかもみるみるうちに吹雪いてきて人生のカラータイマーがピコンピコンと点滅を始めています。果たしてぶじ下山できるのか、頼んでもいないホワイトクリスマスに文字どおり凍りつく安田タイル工業の面々。

(お忘れかもしれませんが、この日はクリスマスイブです)

それではここで、ふりしきる雪のなかタカツキ専務が世界に向けて放つ渾身の遠吠えをご覧ください。



このあと逃げるようにして山を降りたらいつの間にか雪もやんでいたので、ホッとして神社近くの道の駅に立ち寄り、おいしいおやつを買いました。

おやき(3個入) 130円 残金14,050円(2人分)

とは言うものの、この時点ですでに日はとっぷりと暮れており、道の駅の従業員にも「この時間になるとバスはありません」と気の毒そうに言われてしまったため、しかたなく街灯すらない真っ暗な山奥の国道を麓の駅に向かって約5キロ、ひたすらてくてく歩きつづけることになります。

松井田駅→北高崎駅(宿の最寄り駅) 400円×2
寒すぎて飲んだ缶コーヒーと缶スープ 120×2 残金13,010円

北高崎から宿に向かうとちゅうのマクドナルドでビッグマック 200円×2 残金12,610円(2人分)


 *


ようやくたどり着いたこの日の宿もまた、驚異的なコストパフォーマンスを誇るハイライトのひとつと言えましょう。何しろコーヒー飲み放題、天然温泉付き、朝食付きでひとり2,400円です。なぜそんなに安いのかというと


シングルベッドがひとつしかない、いかにもクリスマスのために設定されたカップル専用直球プランだからです


宿泊代 2,400円×2 残金7,810円(2人分)


しかし安田タイル工業の社員はみな恋人同士のように仲が良いので、そんなことは気にしません。温泉までついてそれ以上何を望むというのだ。

さっそくフロントに赴いて温泉のことを聞くと、地図を指で指しながら「こちらの国道を南にまっすぐですね、お車で10分ほど…」



車で10分?



隣接しているとばかり思いこんでいた温泉は2駅先、およそ5キロ南にあることが判明、徒歩なんですとは言えずに平静を装いながら「ありがとう」と礼を述べてホテルを後にする安田タイル工業の面々。15キロ以上歩いてヘトヘトにも関わらず、風呂のためにさらに5キロの道のりを歩く羽目になるとは誰に予想できたでしょう。(節約のため、おいそれと電車にのることもできないのです)


でもさすがに帰りは電車にのりました。

夕食(屋台のラーメン) 900円+870円
電車賃 140円×2
缶ビール2本、ワイン、肴3種 950円 残金4,810円(2人分)


このあとのことはあんまりおぼえていないのです。


クリスマス当日の朝、ホテルの部屋からみた景色


この日はとくにハイライトもないので、電車にのって下車せずにひたすら遠回りをして帰りました。(もうこのへんで書くのがいいかげんめんどくさくなっています)

群馬に行ったはずなのに、帰りの車窓から千葉にあるディズニーランドを眺めているのはなぜなのか…


立ち食いそば(昼食) 480円×2 
菓子パン(おやつ) 70円 残金3,780円(2人分)

高崎駅→新宿駅 1,890円×2 残金0円(2人分)

歩いた距離 約25km


そして新宿着


♪パ〜パラララ〜(エンディングテーマ)


飽くなき探究心と情熱を胸に、安田タイル工業は今後も逆風に向かって力強く邁進してまいります。ご期待ください。


安田タイル工業プレゼンツ「聖夜の正しい過ごしかた」 終わり

2010年12月20日月曜日

真心をこめて、とりとめのないことを



何にも書くことがないけれど、自分のことだしそう邪険にするものでもないと思い直してとりあえずキーを叩き始めています。

と書いた途端にきもちが散ってなんとなくベランダに出たら鉄柵の陰が足元にくっきりと浮かんで月がとても明るい。


そういえばカメラの中をのぞいたらこんな写真がありました。


なりふりかまわぬ善意に目頭が熱くなります。


 *


ダイゴくん最近なにしてるの?と聞かれて顔を紅潮させながら「何もしてないよ!バカ!」と激昂する12月です。それは僕だってワイングラスを片手に「そうだね…最近は事業の立ち上げに追われててんてこまいさ」とか、「そろそろ新しいボムをドロップするつもりだ…ヤバいのができたと確信している。期待してくれ!」とかそれっぽいことを言えたらおもしろいとおもうけど、残念ながら僕の人生は大多数の人がそうであるように、とくべつ劇的なわけではない。

その代わりというかなんというか、僕の周りにいる人は僕の100倍劇的な生き方をしていて、そういう意味ではあんまり飽きることがありません。先日も僕より一回り年上の人妻が抱えるじつにハードな悩みを思いがけず聞かされる羽目になって、答えの出ない問題をいっしょになってあーでもないこーでもないとひねくり回していたくらいです。

そんなの僕に話したってどうにもならないとおもうんだけど、どういうわけか昔から一夫多妻的感覚とか性的つまみ食いの極端な事例をちょくせつ耳にする機会が多くて、そのたびに「ふーむ」と腕を組みながら絶句しています。

大人になればなるほど愛情とは理性から切り離された独立機関だということが実感としてよくわかってくるので、どのみち打てる手なんてそんなに多くないのです。大抵の場合は当の本人がそのことをいちばんよくわかっているし、話すだけ話して、聞くだけ聞いたらあとはお互いチャーリーブラウンみたいに「sigh!」と弱々しくつぶやくほかない。

ちなみにそういう話の着地点として「ダイゴくんを好きになればよかった…」的なことを昔はよく言われたりしたんだけど、実際好きになられたことはかつて一度もありません。けしからん上にまったく人をバカにしている。ちょっとくらい好きになったってバチは当たらないってのに!

しかしなんだって僕はこんな話をしているのだ?


 *


ひとつお詫びをしなくてはいけません。というのもこのブログ、スパムを自動検出してくれる機能がついてるんだけど、ときどき善意のコメントまでポイとそっちに放り込まれてしまうようなのです。こないだ何気なく見てみたら一件まぎれこんでいるのがあってビックリしてしまった。タカヤさん、せっかく書いてくれていたのに、気がつかなくてごめんなさい。意図した操作では決してありません。いつもありがとう!


 *


ついこの間オープンしたタカツキのタカツキによるみんなのためのデジタル商店がなんだか知らないうちに充実しています。100円玉1枚と引き換えにmp3をダウンロードできるたいへん先進的なシステムです。僕も参加した古めかしい音源まで引っぱりだされていて、鼻血が吹き出ました。2枚目のアルバムを出すよりもずっと前の話ですよ!リンクしようとおもったけど、なんとなく気が削がれてしまった。困ったことです。

でもzoeくんが自身のボンヤリした父親っぷりをいつものように淡々とラップする「KanKanKan」は胸を打つ良い曲なので、ぜひ聴いてください。等身大の父親とはこういうものだとつくづくおもう。わかっているはずなのに、何度聴いても涙腺がゆるみます。こどもの手を引いて歩く男の背中は、どのパンチラインよりもはるかに説得力がある。


 *


それから、いいかげんほとぼりも冷めたダイゴくんのDJですけれども、結論から言うと彼はまたしてもプレイ中にレコードを止めました。そんな経験が今までに2回あるというのはこうなるとむしろ一周して自慢になるような気がしないでもありません。もしここをお読みでかつあの瞬間に居合わせた人がいらしたら、逆にいいものを見たと気持ちを切り替えてください。よもやあの悲劇がくり返されることになろうとはまったく、思うようにはいかないものです。


えーと、そういうわけで僕からは以上です。近況報告でもないばかりか、どこを切り取ってもあまりにとりとめがなくて我ながら憮然としてしまうな。

2010年12月7日火曜日

彼女は本当に今コスタリカにいるんだろうか



エドガー橋でひとり暮らしをしている僕の伯母は歯切れがいいというか遠慮がないというか、先日もケータイに電話してきてこう話すのです。

「あのね、あんた絵すきでしょ。カンディンスキー展の招待券あるんだけどね、もってく?」
「あ、じゃもらいにいくよ」
「そう。じゃわるいんだけどあたしもいろいろと忙しいからさ、あんたと話してるヒマないの。週明けコスタリカ行くから
「コスタリカ?」
「だから券だけ取りにきて、そんでさっさと帰ってくれる?

伯母はそろそろ70に手が届こうとしているはずだけれど、日常会話においてこれほど身もふたもない人を僕は他に知りません。コスタリカってなんだ。

そうしてじっさい訪ねてみたらさすがに玄関先で追い払われるようなことはなかったけれど、その代わり「そろそろ帰ってくれる?」と2回言われました

彼女は本当に今コスタリカにいるんだろうか?


 *


ジリリリン
ガチャ
「もしもし」
「ああ、ダイゴくん。24時間ヒマなダイゴくんですか。ピンカートンだけど」
「なんて感じのわるい電話だ」
「いま真珠貝亭にいるんだけど、来ない?」
「行きません」
ガチャン

ジリリリリン
「うるさいな、もう。もしもし」
「あー、もしもし?」
「あ、カズタケさんだった」
「なに?」
「何でもないです」
「あのさ、8日のイベントなんやけど」
「SUIKAが出るやつでしょ」
「そうそう、ダイゴくんDJやらへん?」
「ははははは」
「ははははは」
何言ってるんですか?
「いやいやちゃうねん、じつは…」

というわけで、SUIKAではなくなぜかイベントスタッフ直々の無謀なご指名によって、SUIKA出演のイベントで好きなレコードを回していいことになりました。はて…

さすがにちょっと不安になり、「僕かつてプレイ中にうっかりレコードを止めちゃって、いいかんじに揺れていたフロアを沈黙で凍りつかせたことがあるんですけどそれでもいいですか」という旨のメールを送ったら「たのしみにしています」というたいへん肝の座ったメールが返ってきたので、どうやらまちがいではないらしい。

そんな冗談みたいな話はさておき、12月8日のSUIKAライブは凄まじいまでのゲスト陣にみな目を丸くすること必至です。そのへんのこと僕ぜんぜん聞いてなかったので、背中にいやな汗をかきはじめています。こんな豪勢な人たちの前でゆるゆるレコード回すなんてやだ!


12月8日(水)
PLAY GROUND@代官山 晴れたら空に豆まいて
      開 18:00演 19:00 
      前 2,800当 3,300 それぞれ+1D 500
           
=出演者= SUIKA with Special Guest
      otouta
      ALOHA
      小林大吾 (DJ)

=Special Guest=
      サイプレス上野
      KEN THE 390
      TARO SOUL
      抹 from Pentaphonic
      らっぷびと
      ILL SGIMOTO from COCKROACHEEE'z



とりあえずこの日のDJについては忘れてください。僕がフロアで聴きたいレコードを持ってくるくる回しに行くだけです。空気の読みかたも知りません。

それにしてもライブアクトではなくレコード回転係として参加するあたりがじつにダイゴくんらしい。

2010年12月1日水曜日

6粒の豆がどうしたというんだ



キッチンに立つ足元のちょうど指先あたりに、コーヒー豆が6粒ころがっているのです。まるで誰かがそこに並べて置いたかのように、2cmから3cmくらいの間隔を空けて、豆がつぶつぶと点線を描いている。

いちおう言い添えておくと、じぶんで並べたわけではありません。いくら僕でもコーヒー豆を足元につぶつぶ並べて愛でるほど酔狂ではない。気づいたらそこにあったのです。



なんだか妙なことではあるけれど、それはいい。豆だってつぶつぶころがることはある。人間だっておいしいお店にはすすんで行列をつくるんだから、床におちた豆がまっすぐ列をなしたからといって何を意に介することがあるだろう?空から見れば人も豆も区別なんてつかないし、そう考えるとまァそんなこともあるかな、という気がしてくる。おかしくはない。じっさい、現実は時として空想をひょいと飛び越えることがあるものです。

問題は、数日前までこれが4粒しかなかった、という点にあります。なぜ気づいた時点で拾わずにころがったままにしておいたのかという問題もあるにはあるけれど、ずぼらの一言で片がつく話でもあるし、然るべきときには一掃されるとわかっているのだから、とりあえずここでは棚に上げておきましょう。床に豆が4粒ころがっていても、日々の営みには何の影響もない。豆には豆の事情もある。

ところがそれから2日ほどたってふと足元に目をやると、4粒が5粒に増えているのです。何度見てもたしかに、4粒目の右隣に同じような間隔を空けて、ちょこんと1粒が仲間に加わっている。アッハッハ!ふえてる!

とはいえさいしょの時点で数えまちがえていた可能性も否定できないので、ここでもやっぱりそのままにしておきました。隔たりのある別の世界に憶断で口をはさんではいけない、というのは大人としてたしなむべきマナーのひとつです。うたがいなく、豆には豆の事情がある。

しかし冒頭にも記したように、いまここには6粒の豆が並んでいます。豆には豆の事情があるといっても限度があるし、これはいささか奇妙な事態です。一度は気のせいにできても二度目はさすがにできません。いくら科学に疎いといってもウナギが泥から自然発生すると真剣に考えたアリストテレスの時代から、二千年以上の月日が経っているのです。無から有は生まれないということくらい、僕にもわかる。どうして床におちた豆がひと粒ずつ増えていくのか?それもきれいに直列をなして?

古代の人ならここに何がしかの吉兆を読み取ることもできるんだろうけれど、いかんせん現代人はそのへんの感受性が鈍くていけません。これがある種のメッセージなのだとしたら、僕はこの直線につらなって増えゆく数粒の豆から何を読み取ったらいいのだろう?

とりあえず、左端の豆からひと粒ずつ名前をつけることからはじめました。
1粒目:傲慢
2粒目:嫉妬
3粒目:憤怒
4粒目:怠惰
5粒目:強欲
6粒目:暴食

7粒目がころがり出たら、「色欲」と名付けるつもりです。

2010年11月26日金曜日

彼は本当にその文章で象を倒したのか?




ピンカートン先生を代理に立てて、ぽつぽつとつぶやいていたらいつの間にかシュガーヒルにいるギャングのボスに会いにいくという、ゆるゆるとした物語になりつつあるので、それならべつにこっそりやる必要もないか…と思い直してアカウントを書き留めておくことにしました。

ピンカートン先生の様子を見にいく


現在の状況
・先生が地下鉄に3日くらいのりつづけてやっとシュガーヒルにたどりついたところです。(きのうは野宿してました)


ちなみに同姓同名のアカウントがあるということですが、それは僕ではありません。

2010年11月24日水曜日

3Dメガネを3つかけても9Dにはならない



いいかげんタイミングを逸したところでtwitterのアカウントを取得して、あることないことポツリポツリつぶやいています。リアルタイムでホラを吹きつづけるのは今のところとてもたのしいです。つかいかたまちがってる気もするけど、これならじぶんに合ってるとおもう。そして案の定、肝心のダイゴくんがほとんど出てこない。

Twitterの利点は前よりずっと理解してるとおもうので、発信と受信にもうすこしアグレッシブな姿勢を持てるといいんだけれど。

それにしてもこれだけ多くの人が暇をみつけては飽きもせず文字の濁流を眺めているというのに、活字離れっていったいどういうことなんだ?

 *

3Dに対するアグレッシブな姿勢

2010年11月18日木曜日

東京には七色にきらめくパンダがいます



そういえば今を去ること2年前、ふいに現れてわが家に常駐することになった富山の置き薬ですが、じつは今もたいへん良好な関係がつづいているのです。本当に2、3ヶ月おきにやってきては薬のいっぱい詰まったトランクをひらき、使ったぶんだけ集金と補充をすませて、「ではまた」としずかに去っていきます。トローチなんて使わないとおもってたけど、あったら使うし、じっさい使えば効くんだから、置いてみて初めてわかることもある。


そうしてその薬箱から忘れたころに引っぱりだす風邪薬にはていねいに「かぜ」と書いてあるのです。


「かぜをひく薬」ではない。


 *


東京にはtokyo.pandaという種類のパンダがいて、これはSUIKAの大将タケウチカズタケと希代の名バイオリニスト高木和弘まちがってもパンダではない2名のオスのミラクルな掛け合わせから生まれた交雑種の次世代パンダです。

高木さんはリンク先のウィキペディア(!)を見てもらえばわかるように、大袈裟でもなんでもなく世界的にごっつい(タケウチカズタケ談)バイオリニストとして知られています。誤解をおそれずにいうならば、完全に雲の上の人です

そんな殿上人がタケウチカズタケと交配して新種のパンダを生みだすに至った道のりはというとキュルキュルキュル


(めんどくさくなってきたのでテープを早送りしています)


そしてこの2人によるtokyo.pandaのデラックスでスーパーなミニアルバムが、じつは先々月あたりにポロリと発表されていたのです。しかも通販とライブ会場のみで販売という驚異的な間口の狭さでちびちびと流通しています。

今やある種のジャンルを創出しつつあると言っても過言ではない野性的なキーボードと、文字どおり世界レベルの超絶バイオリンによって、白黒どころか七色に煌めくこれほどまでに美しいパンダが存在したことなどかつてないというのに、その流通が春のせせらぎのように控えめであるというのはまったく、信じがたいことです。なぜもっとスキャンダラスに、なぜもっとセンセーショナルに、なぜもっとハレンチにキュルキュルキュル


ちなみに僕はこのアルバムにまったく関わっていなかったのだけれど、完成したデータを見せてもらったらたまたまスペルミスをみつけてしまい、行きがかり上しかたなくその1文字だけウチのPCで修正しています。なのですくなくともこの1文字についてのみ、僕も関係者です。(自己アピールおわり)


そんな2人がミニアルバムの完成記念もかねて、今月11月28日(日)に渋谷Flying Booksでライブイベント「トーキョーパンダのつくりかたショー」 を開催します。心躍るタイトルですね。

つくりかた、というのはどうやらアルバムの曲を演奏するだけでなく、新曲が完成するまでの過程をライブでぜんぶ見せることを指しているようです。そんなことできるんだ…。いっそその場でCDに焼いてほしい。

そしてここが大事なところですが、このユニークな趣向をイベント通してナビゲートするのはなんと我らが


古川 耕です。


…なんで?



というわけで僕にとっては何だか妬ましい、一方では古川 耕ファンにとっても見逃せないイベント、時間も15:00からと早いので、日曜午後としてはちょっとぜいたくな過ごしかたができるんじゃないかとおもいます。


ご予約その他詳細はこちら


 *


<ぼんやりとしたつぶやき>
情報社会とは無縁なはずのtotoさんまでとうとうtwitterをはじめたときいて、衝撃をうけています。なんとなくだけど、そわそわするものがある。

2010年11月10日水曜日

するどすぎる姓名判断と朝までSUIKA TV



まるで昨日も更新していたかのように何食わぬ顔でお話しますけど、とあるマンションの一室で人生の大先輩であるご婦人お二方と談笑していたら、なんとなく占いみたいな話になったのです。生年と姓名を聞かれて答えたところ、こんなご高察をたまわりました。

「こういう人はね、ある日突然、それまで積み重ねてきたものにあっさり見切りをつけて、ぜんぜん違うこと始めちゃったりするのよ。そうなると過去なんてもう、見向きもしないの」


あまりの慧眼ぶりに「ありうるー!」といっしょになって腹を抱えるわたくしたち。やだなーもーなんでわかるのー!


アッハッハ!



笑いごとではない。



ような気もするが気のせいにちがいない。


 *


というわけで小林大吾に関するお知らせは相変わらずとくに何もないのですが、レーベルメイトであるSUIKAが弱火でコトコト煮込んだ新譜「スイカ夜話」、本日発売となりました。パッケージも思いのほか好評みたいで、僕としてもひと安心です。フラインスピンオーナーなんか「最高傑作」と自賛するくらいでうれしいかぎりというか、僕のは?


いっぽう僕はといえばここでひとり、アマゾンの「スイカ夜話」商品紹介でなぜか言及されている


じぶんのアルバムタイトルをぼんやり見つめているのです。


× オーディオヴィジュアル
○ オーディオビジュアル


「スイカ夜話」が売れれば売れるほど、そしてこの紹介文を多くの人が引用してくれればくれるほど、まちがったアルバムタイトルが広まっていくこのジレンマ!敵は本能寺にあり、とはよく言ったものです。

SUIKAブログにこれがそのままコピペで貼られているのをみたときはさすがにマズいとおもい、闇ルートで入手したIDとパスワードをつかって秘密裏に侵入し、「ヴィ」を「ビ」にそっと訂正しておきました。誰にも言わずにこっそり直したから、気づいてないSUIKAクルーもいるはずです。


ていうか誰か気づいてよ!

ワーン!


 *


いえ実際は、やァまた話の種がひとつ降ってきた、というかんじであんまり気にしてはいないんだけれど。だれもそんなとこ見ないだろうから、いいんだ。


 *


さてそんないかにもダイゴくんらしいエピソードはさておき、今宵はアルバム発売を記念してUstreamで「朝までSUIKA TV」を垂れ流すそうです。朝までというか視聴者がゼロになるまでだとおもいますが、お時間があったらのぞいてみてください。吹きだまりのようにどこからともなく集まってきたメンバー同士でしまりのないトークが延々繰り広げられているはずです。

スタートは22時ごろから!

ちなみにたぶん、僕もそこにいます。いるだけですけど。

2010年10月26日火曜日

馬車馬オブザイヤー受賞記念式典その後



すでに2日がすぎてしまいましたが、小林大吾の馬車馬オブザイヤー受賞記念式典@代官山UNITは、万雷の拍手と地鳴りのような喝采に包まれながらぶじ幕を閉じました。フラインスピンに対する長年の貢献を高く評価いただき、まこと欣喜に堪えません。ご来場いただいたみなさま、本当にありがとうございました。

ステージ上で祝福とともに首にかけられた3つのレイのうち、ひとつはレイではなく祭壇の装飾品(金具付き)だったことなど、誰が気に留めましょう。首がチクチクするほど身に余る光栄に浴して、今はただこのよろこびを噛みしめながら襟足のあたりをぽりぽりかくばかりです。物販に「オーディオビジュアル」が置かれていなくとも、それはこの際たいした問題ではありません。

今後もこの栄誉にあぐらをかくことなく、馬車馬として更なる高みをめざし、精進をかさねてまいりたいとの思いをより一層つよくした次第です。


ありがとうございました。ありがとう。ありがとう。


(パチパチパチ)


キリキリ働く受賞後のダイゴくん

 *


ハッ。


(目がさめる)


何だかわれながら気の毒な夢を見たような


オヤ、これは




(大団円のうちに終幕と相成ったスイカ夜話@代官山UNITの顛末についてはSUIKAブログをご覧ください)


 *


本来なら夜話でスポットを当てる必要なんか全然ない馬車馬のことはさておき、日曜に会場でお買い求めいただいたみなさま、ならびに特設サイトからご予約いただいたみなさま、アルバム「スイカ夜話」はおたのしみいただけておりますでしょうか。

みんなを笑顔にしたいというただその一心から、FLY N' SPINクルーが総出で丹精こめてつくりあげた、僕らにとっては最上の1枚です。より多くの人のもとに届くことを心から願っています。

そしてもしアルバムに心動かされることがあったなら、彼らにそのきもちを伝えてあげてください。ちいさく短いことばでも、それは流れる星を目にしたときのように、彼らの胸にのこるはずです。

僕個人としても、空を埋めつくすくらいの流星群を彼らに見せてあげたい。


(僕からはとりわけ、誰よりもSUIKAに対する思い入れがつよく、時として先走りすぎるきらいのあるタケウチカズタケに、ひときわ輝く太陽クラスの暑苦しい星を贈ります)


ちなみにこのアルバム、SUIKA6人がそれぞれ手売りで20万枚ずつさばいて水面下で人知れずミリオンを達成する予定です。

2010年10月21日木曜日

アルバムに仕掛けられた馬車馬のちいさな罠



FLY N' SPIN RECORDSが健気な馬車馬にピシピシと鞭をふるいながら総力を挙げてお届けする、SUIKA乾坤一擲のニューアルバム「スイカ夜話」発売に向けて、心のこもった店頭用POPをこしらえました。言わなきゃ誰にも顧みられることのない、ナイチンゲールもビックリのこの献身ぶりにどいつもこいつも目頭を熱くしていただきたい。(いつもおもうけどこのブログは詩人としてよりも馬車馬としての活動記録のほうが群を抜いて多いです)



リリースに合わせたフライヤーもつくりました。(オーディオビジュアルのときはつくり忘れています)


ステッカーもつくりました。(どのタイミングで何に使われるものなのか、じつは僕もよく知らない)


そして気づいたら製品版が出来上がってました。


ここだけの話ですがじつはこのアルバム、フラインスピンオーナー以外のSUIKAクルーにはたしか知らせていない、ちょっとしたイタズラがパッケージに施されています。(さっきまでじぶんでも忘れてた)


でもこれ、SUIKAのみんなにはないしょですよ(ひそひそ)。


そんな馬車馬の愛らしいイタズラをいち早くたしかめることのできる機会が今月24日、次の日曜にUNITで行われる音楽的どんちゃん騒ぎ、「スイカ夜話十六夜」です。ゲストは環ROYと降神!

僕は例によって例のごとく、物販席にちょこんと座ってひっそりと売り子をしているとおもわれます。詩人としての面影はおそらく微塵もありません。というか僕たぶんフラインスピン内でさえ詩人だとは思われていない気がするんだけどそういう切ない現実にはこの際目をつぶるとして


来てね!

2010年10月15日金曜日

それを聴くと今もパブロフの犬みたいに




Roots と Q-Tip のライブが昼間っから USTREAM で配信されると聞き、そいつァ素敵だ…とのんきにかまえていたら、あまりの展開に度肝を抜かれて、観終わるころには頽れてむしろシクシク感涙にむせぶ羽目になった Hennessy Artisty 2010




Black ThoughtがODBの「Shimmy Shimmy Ya」やその他ヒップホップクラシックスをカバー(!)しまくっても、Erykah Badu が出てきて "You Got Me" を歌っ(!)ても、そこに Eve が絡んで(!)ライムをキックしても、まだ余裕を持って「豪勢だなァ!」とニコニコ観ていられるのだけれど、


Q-Tip の "Bonita Applebum" から Isley Brothers の "Between the Sheets" へ繋いだところへ、ひとりの紳士が身のこなしも軽やかに登場したときはさすがに仰天して口にふくんだコーヒーを霧吹きみたいに噴射するところでした。


ろろろろ


Ronald Isley その人じゃないか…


忘れようったって忘れられない、特徴的すぎるあのまゆ毛は見紛いようもないよ!

"Between the Sheets" → "Footstep in the Dark" → "For the Love of You" というヒップホップ世代が泣いてよろこぶ名曲を次から次へと披露するものだから、ディスプレイの前で硬直してほとんど気を失いかけました。艶かしいあのファルセット!


 *


ああ、もうこのまま誰にも気づかれずに部屋で白骨化しても悔いはないな…とぼんやり放心していたショウの終盤、今度はさらに個人的な琴線をかき鳴らす懐かしいイントロが…

"Every Little Step"だ!


Bobby Brown だ!


またずいぶん太ったな…


僕にとっては20年前に生まれてはじめて買った洋楽のCDが Bobby Brown の "Don't Be Cruel" であり、そのきっかけが "Every Little Step" だったので、これはもはや善し悪しとか好き嫌いをすっ飛ばして深く深く耳の奥に刻みこまれている曲のひとつなのです。パブロフの犬みたいに、この曲が流れると自動的に泣くよう涙腺がセッティングされているのです。

それを…それを The Roots の演奏で!


(気を失う)


(気がつく)



(Mary J. が "Real Love" を演ってるのを観て)


(気を失う)


(気がつく)


(顔を洗う)


(顔を拭く)


ゴシゴシ


ふー


しかしあれは一体何だったんだろう?10年前に MTV Unplugged で Jay-Z のバックを Roots が演奏してるのを観たときもドキドキした記憶があるけれど、今日のはまた…


 *


そういえばこのブログ、あんまり音楽の話をしないですね。