それでまあ、なんとなく、バナナの話になったのです。ほっとくとすぐに真っ黒くなってしまうし、食べられる期間と言えば熟して数日がいいとこなのに、エクアドルとかフィリピンとか海の向こうの果物を「いつでも」、「(ほぼ)どこでも」、しかもかなり安価で手に入れることができる、というのはいったいどういう仕組みによるものなのか?
それこそ毎日のように船で運んでこなくては間に合わないだろうし、日本全国どこでもバナナとなれば、その量だって尋常ではないはずです。とにかく来る日も来る日もバナナだけをどっさりと何千トンも積み込んで大海を行き来する言わばバナナ・タンカーみたいなものがあれば話は別だけれど、しかし仮に百歩ゆずってそうだったとしても、もげども尽きぬ大量のバナナとサル的な生きものによる惑星規模の仁義なきバナナ・サイクルが成立するためには一日に何本の黄色い皮を剥かねばならないのか、まったく見当もつきません。昨日のバナナをまだ消化しきれていないうちに今日のバナナが来てしまったらどんどん増えて列島が黄色くなっていくばかりじゃないですか?そもそもちいさな島国を埋め尽くしてしまうくらいのバナナを、それよりもさらにちいさなフィリピンのいったいどこで栽培しているのかだって大きな謎のひとつです。旬さえ知らない僕らにとって、もはや食卓にバナナのあることそれ自体が神秘と言わねばなりますまい。
座礁したタンカーから重油が流出、というニュースはときどき耳にするけれど、海上で大量のバナナが流出という話はあまり聞きません。仮に不慮の事故でバナナ・タンカーから数千トンのバナナが海に転がり落ちてしまった場合、そのバナナはどうなるのか?バナナは海の生きものたちにとっても口に合う、甘くて美味しい果実なのか?待てよ、バナナって水に浮くのか?
「浮かないよ、だってどこにも空気ないでしょ」というのがミス・スパンコールの意見です。そうかもしれない。たしかにそんな気もする。沈むとしてもべつにふしぎではない。沈むとしたらどのあたりで水圧に負けてぺちゃりとやられるのか気になるところだし、バナナとイカのツーショットなんかちょっといいかんじにおもえるけれど、とはいえ浮くんじゃないかなあ、というのが僕の意見です。でもなぜ浮くのかはよくわからない。ひょっとしたら学校でバナナの浮力について学んだ日もあったかもしれないけれど、思い出せないなら同じことです。根拠がないぶん、いささか分がわるい。でも浮く気がする。というか、どうせ海に流れ出すならぷかぷか浮いてほしいとおもう。
「浮かないよ」
「いや、浮く」
「浮かないってば」
「ぜったい浮く」
「なにおう、こんちくしょう」
「おとなしくしてりゃつけあがりやがって」
「やろうってのかべらぼうめ」
「のぞむところだ唐変木」
という不毛な言い争いに終止符を打つべく検証した結果がこちらです。
【今日の結論】 バナナは水に浮く。
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リリース情報が一部解禁になったようなので、2ヶ月ぶりの更新と4年ぶりのお知らせです。
十数年前に思い描いていたかたちを過去の3枚ですっかりやりきって、本当にまったく出すつもりのなかった4枚目のアルバムが出ることになりました。
「小数点花手鑑」
2014年7月2日発売
FNSR-015 2000円+税
FLY N' SPIN RECORDS
32ページブックレット付き
32ページブックレット付き
32ページブックレット付き
※前回よりページが増えてあまりに大変だったので強調しています
<トラックリスト>
01 七つ下がり拾遺/synaptic ah-choo
02 忘れられた処刑人/back to the future
03 ダイヤモンド鉱/hot water pressure washer
04 鍛冶屋の出来心/ms. Blacksmith sighs
05 バニーズへようこそ!/storm in a coffee cup
06 注射器とカセットテープと公魚釣り/portrait of the Bumout family
07 リップマン大災害/RIPman disaster
08 なれそめ/thanks to partial destruction
09 水蜜桃/shui-mi-tao
10 より良い転落のためのロール・モデル/let’s roll, folks!
11 デッドワックス兄弟の反省会/it's all their fault
12 聖母はトンプソンがお好き/fuwa-fuwa damn
13 100匹数えろ/Jonah the insomnia
14 安田タイル工業のかなり重要な会議(抜粋)/tile different (radio edit)
15 石蕗/how to clip your own nails
16 言葉よりも重いメッセージについて少し/there's a riot goin' home
17 あとがきにかえて/rewrite my quire
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アルバムタイトルは「しょうすうてんはなのてかがみ」と読みます。
リリースに伴うあれこれはオーディオビジュアルのときとほぼ同じです。数十枚のサンプルCDを手にあれこれ検討したはずなのに、なぜかまた異常にCDが取り出しづらかったあの悪夢のスリーブ仕様になっているし、前回と同じということはもちろん、通常版とは別に誂えたバージョンが存在するということでもあります。リリース情報解禁時に作業が終わってないどころか一向に終わる気配がない、という点まで4年前さながらです。ぜんぜん進歩してない。
また、フラインスピンのリリース恒例ライブ@渋谷Flyng Booksもあります。これはたぶん6月です。何しろこんなことでもないとライブをしようとしない男だし、いい機会だから2回くらいやってしまえと言われているので、2週つづけてやることになるかもしれません。問題はそのときまでにきちんと作業が終わっているのかどうかですが、それは今考えても仕方がないのでやめておきましょう。ちゃんと終わっていることを祈るばかりです。
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しかしそんなことより、バナナですよね、気になるのは。