2014年4月20日日曜日

完熟バナナの浮力について、と4年ぶりのお知らせ



それでまあ、なんとなく、バナナの話になったのです。ほっとくとすぐに真っ黒くなってしまうし、食べられる期間と言えば熟して数日がいいとこなのに、エクアドルとかフィリピンとか海の向こうの果物を「いつでも」、「(ほぼ)どこでも」、しかもかなり安価で手に入れることができる、というのはいったいどういう仕組みによるものなのか?

それこそ毎日のように船で運んでこなくては間に合わないだろうし、日本全国どこでもバナナとなれば、その量だって尋常ではないはずです。とにかく来る日も来る日もバナナだけをどっさりと何千トンも積み込んで大海を行き来する言わばバナナ・タンカーみたいなものがあれば話は別だけれど、しかし仮に百歩ゆずってそうだったとしても、もげども尽きぬ大量のバナナとサル的な生きものによる惑星規模の仁義なきバナナ・サイクルが成立するためには一日に何本の黄色い皮を剥かねばならないのか、まったく見当もつきません。昨日のバナナをまだ消化しきれていないうちに今日のバナナが来てしまったらどんどん増えて列島が黄色くなっていくばかりじゃないですか?そもそもちいさな島国を埋め尽くしてしまうくらいのバナナを、それよりもさらにちいさなフィリピンのいったいどこで栽培しているのかだって大きな謎のひとつです。旬さえ知らない僕らにとって、もはや食卓にバナナのあることそれ自体が神秘と言わねばなりますまい。

座礁したタンカーから重油が流出、というニュースはときどき耳にするけれど、海上で大量のバナナが流出という話はあまり聞きません。仮に不慮の事故でバナナ・タンカーから数千トンのバナナが海に転がり落ちてしまった場合、そのバナナはどうなるのか?バナナは海の生きものたちにとっても口に合う、甘くて美味しい果実なのか?待てよ、バナナって水に浮くのか?

「浮かないよ、だってどこにも空気ないでしょ」というのがミス・スパンコールの意見です。そうかもしれない。たしかにそんな気もする。沈むとしてもべつにふしぎではない。沈むとしたらどのあたりで水圧に負けてぺちゃりとやられるのか気になるところだし、バナナとイカのツーショットなんかちょっといいかんじにおもえるけれど、とはいえ浮くんじゃないかなあ、というのが僕の意見です。でもなぜ浮くのかはよくわからない。ひょっとしたら学校でバナナの浮力について学んだ日もあったかもしれないけれど、思い出せないなら同じことです。根拠がないぶん、いささか分がわるい。でも浮く気がする。というか、どうせ海に流れ出すならぷかぷか浮いてほしいとおもう。

「浮かないよ」
「いや、浮く」
「浮かないってば」
「ぜったい浮く」
「なにおう、こんちくしょう」
「おとなしくしてりゃつけあがりやがって」
「やろうってのかべらぼうめ」
「のぞむところだ唐変木」

という不毛な言い争いに終止符を打つべく検証した結果がこちらです。



【今日の結論】 バナナは水に浮く。




リリース情報が一部解禁になったようなので、2ヶ月ぶりの更新と4年ぶりのお知らせです。

十数年前に思い描いていたかたちを過去の3枚ですっかりやりきって、本当にまったく出すつもりのなかった4枚目のアルバムが出ることになりました。


「小数点花手鑑」
2014年7月2日発売
FNSR-015 2000円+税
FLY N' SPIN RECORDS

32ページブックレット付き
32ページブックレット付き
32ページブックレット付き
※前回よりページが増えてあまりに大変だったので強調しています


<トラックリスト>
01  七つ下がり拾遺/synaptic ah-choo
02  忘れられた処刑人/back to the future
03  ダイヤモンド鉱/hot water pressure washer
04  鍛冶屋の出来心/ms. Blacksmith sighs
05  バニーズへようこそ!/storm in a coffee cup
06  注射器とカセットテープと公魚釣り/portrait of the Bumout family
07  リップマン大災害/RIPman disaster
08  なれそめ/thanks to partial destruction
09  水蜜桃/shui-mi-tao
10  より良い転落のためのロール・モデル/let’s roll, folks!
11  デッドワックス兄弟の反省会/it's all their fault
12  聖母はトンプソンがお好き/fuwa-fuwa damn
13  100匹数えろ/Jonah the insomnia
14  安田タイル工業のかなり重要な会議(抜粋)/tile different (radio edit)
15  石蕗/how to clip your own nails
16  言葉よりも重いメッセージについて少し/there's a riot goin' home
17  あとがきにかえて/rewrite my quire




アルバムタイトルは「しょうすうてんはなのてかがみ」と読みます。

リリースに伴うあれこれはオーディオビジュアルのときとほぼ同じです。数十枚のサンプルCDを手にあれこれ検討したはずなのに、なぜかまた異常にCDが取り出しづらかったあの悪夢のスリーブ仕様になっているし、前回と同じということはもちろん、通常版とは別に誂えたバージョンが存在するということでもあります。リリース情報解禁時に作業が終わってないどころか一向に終わる気配がない、という点まで4年前さながらです。ぜんぜん進歩してない。

また、フラインスピンのリリース恒例ライブ@渋谷Flyng Booksもあります。これはたぶん6月です。何しろこんなことでもないとライブをしようとしない男だし、いい機会だから2回くらいやってしまえと言われているので、2週つづけてやることになるかもしれません。問題はそのときまでにきちんと作業が終わっているのかどうかですが、それは今考えても仕方がないのでやめておきましょう。ちゃんと終わっていることを祈るばかりです。




しかしそんなことより、バナナですよね、気になるのは。


2014年2月26日水曜日

ホワイトボードで名もなき心のふれあいを


<現在の状況>

・曲順が決まりました。
・マスタリングがおわりました。

ふつうはここまでくるとほぼ完成みたいなものですが、ご存知のように僕の場合はここからが地獄なのでいまだにぜんぜん見通しが立ちません。ふーむ!

いま言えるのは、これまでアルバムにほとんど興味を示したことのないミス・スパンコールがたいへんおもしろがっているということ、それから無人島に持っていきたいCDやレコードのなかにじぶんのアルバムを入れたいとおもったのはこれが初めて、ということです。それが良いニュースなのか悪いニュースなのかは、何を求めているかによって判断がはっきりわかれるところだとおもいますが、しかしそれはまあ、致し方ありますまい。




そんなことはまあさておくとして、去年の年末から僕の住まいは大規模な修繕工事の真っ最中なのです。建物全体に足場ががっちり組まれ、防護幕を張り巡らされ、窓から空のひとかけらも眺めることができません。詩を書いたりビートをこしらえたりしながら、終わるのは来年の3月か…先は長いな…とため息をついていたのに、気づけばもう2月も終わりなんだから月日が慌ただしいのか、それとも僕がのろいだけなのか、考えさせられます。僕の1秒は本当に他の人と同じ1秒なのか?

工事にともない、住まいの入り口にはホワイトボードが設置されました。進捗状況や大事なお知らせなんかがそこに貼り出されて、「ああ今日は洗濯物を干してはいけないんだな」とかそういうことがわかるようになっているわけですね。

といってもホワイトボードすべてが文字やら書類やらで埋め尽くされているわけではありません。多い日もあれば、少ない日もあります。というのはつまり、そこにはいつもある程度の余白がのこされている、ということです。

余白があって、そこにペンがあるなら、することはひとつしかありません。このとき僕の心にポワンと現れた天使と悪魔の短いやりとりをここに再現してみましょう。

天使「いたずらしちゃダメ!」
悪魔「いっしょに描こうぜ」
天使「え、いいの?


そういうわけである日ホワイトボードの隅に、国民的ネコ型ロボットが描かれました。僕だって余白がいっぱいあるからといって、それをすべて絵に置き換えてしまうほど節度がないわけではありません。いつだってそれはささやかな出来心の範囲内でしかないのです。

やりたいことをやりおおせてさっぱりと気が済んだ翌日、ホワイトボードを見てみると


何者かの手によってさりげなく国民的な幼稚園児に描き換えられています。

こうなるとこちらとしても放っておくわけにはいかないので、


国民的なネコを追加

すると翌日……


何者かの手によって国民的な毛虫が追加

しかたがないので


パーヤンを追加

すると翌日……


何者かの手によってミッフィーらしきものが追加

しかたがないので


負けじとクマっぽいものを追加


にぎわい始めるホワイトボード




アンパンマンは僕です


うすうす感づいてはいたけれど、明らかにひとり絵心のある人がいます


雪だるまが僕です




オバQが僕です


ここにきてタマフル放送作家にしてOKB48総合プロデューサー、古川耕が参戦(アンパンマン)


オバQに対する的確な返答(ドロンパ)


鬼太郎も登場


ちびっ子が参戦した模様(そして三たびアンパンマン)




 OKAERINASAI!


……とまあこれが今にいたるまでずっとつづいており、とてもそのすべてを列挙するわけにはいかないのだけれど(ムーミンのあとにはミーが描かれてました)、こうして紡がれていくやりとりの何が最高といって、誰がいつどれを描いているのか誰にもわからないままつづいている、という点です。ですよね?しかも最初は僕ともうひとりくらいだったのに、どう見ても途中から参戦する人が増えています。

このちょっとした出来心による、無言にしてささやかなリレーを最高と言わずに何と言いましょう。うむ、世の中捨てたもんじゃないな、としみじみ思わせてくれるじゃないですか?ハートウォーミングきわまりない!


ちなみにこれが最新




どの部屋の誰だかちっともわからないけれど、少なくともここには話のわかる住人がいる、それがわかっただけでも十分に意義のある修繕工事だったとおもうのです。


2014年2月7日金曜日

ちかごろのわたくし…のつもりがまた前書きで力尽きたこと


ここ最近でもっとも大きなショックのひとつは、ヘビ女の小雪さんが逃亡したという話を風の噂で耳にしたことです。どうやら見世物小屋フリークの間では去年の夏あたりから話題になっていたらしいのだけれど、世事に疎くてちっとも存じ上げませなんだ。

小雪さん…。


たしかに傘には長いのと短いのがある…




ひと月の空白?何を言ってるんだ、昨日もここでたのしい話に花を咲かせたじゃないか、という顔でしれっとお話ししますけれども、

1. 曲はぜんぶ出揃っています。

いったい何のことだったか忘れてしまうくらい月日が流れてもいるし、たいしたアレでもないので、何だったらしゅっと読み飛ばしてください。

今は古川さんに曲順をゆだねているところです。今回は僕も並びに対するイメージがかなりはっきりとあったのだけれど、どうもその方面のセンスはあまり芳しくないということでおとなしくしていることになりました。昼夜を問わず、ああでもないこうでもないとがっぷり四つで取り組んでくれているそうなので、まちがいなくボン・キュッ・ボンのセクシーな並びになると今から期待感で胸がいっぱいです。

その間僕が何をしているかといえば、彼の四歳になるキュートなご息女といっしょにうふふと微笑み合いつつ戯れています。僕くらいおっさんになると「ダイゴ好き!」という直球きわまりない愛情表現には脳天をかち割られるほど弩級のインパクトがあって、何しろ平静ではいられません。わかってる…そこに言うほどの意味はないってわかってるんだけど、でも…!

何の話だっけ?


2. 未収録曲があります。

一般的なミュージシャン的な観点からすると、そんなのはむしろごくごくふつうのことであって特筆するようなことではもちろんありません。ありませんが、僕の場合はちがいます。というのも僕はビートも詩もひとつひとつこしらえるのにひどく(ひどくです)時間がかかるので、最低限の量がまとまった時点で線を引かないとリリースの予定なんてとても立てられなかったのです。だからお蔵入りになった作品は…ひとつくらいはあったかもしれないけど、でも基本的にはありません。ビートさえひとつも余ってない。みんなどうしてそんなにいっぱいつくれるんだろうと不思議でしかたないくらいです。

それがなぜ今回にかぎってそんなに数があるのかは僕にもよくわかりません。なぜだかよくわからないけど、あるのです。なぜでしょうね?

アルバムに収録されないのは、入りきらないとか、内容的に劣るとかそういうことではなくて、もっと単純に「コンパクトでいい」という理由からです。リーディングは腹七分目くらいでちょうどよろしい。

では入らなかった詩やビートはどうなるのかというと、これはたぶん、スペツナズみたいな特殊部隊的扱いになるとおもいます。たぶんですけど。


3. スワロフスキもいるよ!

それこそこのブログを隅から隅まで読んでいないと何のことだかさっぱりわからないとおもいますが、でも出てきます。




あれ?本題がべつにあったのに、例によって前書きだけでこんなに長く…

じゃあホワイトボードを舞台にしたちょっとイイ話はまた次回に繰り越しということで今日はお開きにいたします。

人生をそこはかとなく彩るけれども、役に立つかと言われればべつに立たないとっちらかった与太話の数々にそろそろまた心血を注ぎたいです。

たとえ誰にも求められていないとしても。


2014年1月4日土曜日

2014年も変わらず、ぬるめの燗くらいの塩梅で




あけましておめでとうございます。

ぎりぎりまでどたばたとあれこれやっつけておいたおかげで大晦日はゾウガメのようにのっしりむっくりおだやかに過ごすことができ、そんならここはひとつブログも締めのご挨拶といきますか、と腕まくりをしたはいいものの、なまじリリースのお知らせなんかをぽろっとこぼしていたばかりに却っていつもどおりののらくらした調子が出ず、どうもこう鯱張ったというか肩に力の入ったようで2時間たっても一向らちがあきません。ふだんなら格別、1年の締めとなったらやっぱりいちばん鮮度の高いお話、というのはつまりアルバムのことですが、それにふれないわけにはいかないだろうし、と言ったって世に掃いて捨てるほどあるCDが1枚ふえるだけのことをそう大げさに書き立てるわけにもいかないしでにっちもさっちもいかなくなり、けっきょくぜんぶうっちゃって公園に日向ぼっこでもしにいくことに決めたのです。英断だったとおもう。


日向ぼっこをしていたらどこからともなくやってきて


トートバッグを座布団代わりにごろりと寝転がり


ノートをしっぽでめくってなぜか自らはさみこむ猫


それでまああとは棍棒で後頭部をぶん殴られたような具合で時間があっという間に飛び去り、気がつけば1月も早4日です。お天気もくずれると言いながらなんとか持ちこたえて晴れ晴れときもちのよい年明け、みなさまいかがおすごしですか。有楽町の一角でおきた火事がまさか日本列島をぷるぷると揺らすような騒ぎになるとは思いもよりませんでしたな。

僕は実家の押し入れから20年ぶりに発見された若かりしころの芸術作品に、何とも形容のしがたいショックを受けておりました。大事にしまってあったのでは全然なく、なぜか奥の壁に画鋲で留めたまま20年放置されていたのです。25センチ四方くらいの大きさで、どうも蟹をあらわしているらしい。


どちらかというとスクラップにされた重機みたいな印象ですね。

こんなの別に必要でもなんでもないから、しかたがねえ、また画鋲で留めておこう、と押し入れに戻そうとしたら、物好きな妹が新居に飾るといってお持ち帰りになりました。さすがにそれはちょっと考え直したほうがいいんじゃないのと忠告はしたのだけれど、「この兄にしてこの妹あり」みたいな血の濃さって、つまりこういうことなのかもしれません。


ともあれ改めて、「手書きなんですね…」と毎回地味に驚かれるいつもの年賀状キャンペーン、年越しも目前に押し迫った慌ただしいアナウンスにもかかわらず1万通()に届こうかとおもわれる多くのご応募をいただき…

※数字は景気よく誇張されています

…ありがとうございました。いただいた温かいおきもちは、丁寧に煮て一晩寝かせた大根のように、ほくほくとやわらかく身にしみております。ほんらい全員にお贈りすべきところをそうもできない至らなさ、面目ないことに今回も抽選になってしまいましたが、毎年ご応募くださる方ほどその低倍率を実感しておられるはずなので、次回があればそのときはどうかまた気軽にお付き合いくださいませ。ホントにどうもありがとう!

何といっても僕がたのしみにしているのは、おたよりに少しく書き添えられたみなさまの近況です。はじめましての人も、すっかりおなじみの人も、うれしい話、せつない話、引っ越したり、転職したり、恋がうまくいったり、いかなかったり、結婚のご報告も数通(!)あって月日の流れにしみじみ感じ入ることもしばしばでした。身の上話に耳をかたむけるの、大好きなんだよね!用事なんてべつになくていいから、もっとちょいちょいおたよりくれたらいいのに!とさえおもいます。年賀状にははずれても全員にきちんとお返事しているので、実際のところメールでのお返事のほうが時間をかけているくらいです。ささやかでもみなさまとこんなやりとりがつづけられていることのよろこびを胸にいざ足を踏み入れる2014年も、どうかこれまでと変わらずほそぼそとお付き合いくださいますように!

アルバムについては……そうですね、えーと、先にも書いたように日常の延長線で思い出したようにぽつんと咲いたちいさな花みたいな話だし、そう気負うものでもありません。古川さんやフラインスピンをおもえばあんまり消極的でもよくないとおもうけど、でもモノがモノだし、他とちがって僕が僕ですからな。

今年も変わらず例年どおり、ぬるめの燗くらいの塩梅でよろしくおねがいします。


2013年12月28日土曜日

百戦錬磨なジゴロのいななきを聞け




正直、今年はもうムリだ…と7割がたあきらめていたのです。


<ここから20行ほど言い訳がつづいたので全部カット>


それでまあ、それはたしかにそうなんだけれども、といってもカットしてしまったので何がたしかなんだかこれではさっぱりですけれども、ともあれなんだかんだ言いながらこれまで年末になると思い出したようにポロリとやってきたちいさなことを、どんな理由であれ途切れさせてしまっては後生がわるいし、この先だって覚束ないよな、と今朝にいたって考え直した上、大慌てでとりかかり、ようやくどうにかこうにか目鼻がつきました。よかった!

そういうわけで今年も全体的にみればとくに何をしていたわけでもないのに、ふらりと立ち寄りがてら縁側でお茶をすするような塩梅でのんびりとお付き合いくださったみなさまに心からありがとうのきもちをこめて、年賀状を20名くらいのみなさまに贈ります。



ご希望のかたは件名に「あるジゴロのいななき」係と入れ、

1. 氏名
2. 住所
3. わりとどうでもいい質問をひとつ
4. きもち

上記の4点をもれなくお書き添えの上、dr.moulegmail.com(*を@に替えてね)までメールでご応募くださいませ。言うまでもなく競争率は低いです、いつも。

締め切りは例によって12月31日の大晦日が目安です。が、このありさまではどのみち年が明けてひと息ついてから書き始めることになるのと、そもそも応募がそんなにないので、3が日くらいまでなら意外と間に合うかもしれません。(仮に抽選となった場合でも、いただいたメールには必ず返信しています)

今年あらたに追加された4番目の項目は、毎年1/3くらいは妙に無機的なメールが投函されるので、せめて「こんにちは」くらいあってもいいじゃないの、という僕のしょんぼり解消のために設けられました。あと、これで低い倍率がさらに下がるならそれはそれで好ましいと言えなくもないこともないではないような気がしなくもない、というふくざつな魂胆もあります。

そしてこれまた例年のごとく、まだ答えていない質問をうっちゃったまま前のめりに募集する不義理な点については、そっと棚に上げてぼたもちでも供えておいてください。

今年はあと1回くらい更新できるかしら。どうかしら。

とりいそぎ、お知らせまで!


2013年12月25日水曜日

安田タイル工業のクリスマス慰安旅行2013


目がさめたらきりきり冷える外気との温度差に窓がしたたりまくっています。じぶんの部屋ではありません。のっぴきならない事情もあったとはいえ、まさかクリスマスイブイブの朝を専務の部屋で迎えることになるとは……。




世界に向けて遠吠えを!

あるかなきかの零細企業、あの安田タイル工業のクリスマス慰安旅行が、何ごともなかったような顔をして2年ぶりに帰ってきた!去年は専務リア充につきあっさり中止となった慰安旅行が、なぜ今年になって復活したのかという点については聞かないであげていただきたい!

※これまでの旅行については2010年版2011年版をご参照ください。


2011年12月以来となる今回も、とくに得るものもない自虐的な旅にタカツキ専務とダイゴ主任、総勢2名の大所帯でくりだします。

「朝だ!出かけるぞ」
「でもさっき寝たばかりですよ」
「今年も日帰りだ」
「前回はハードでしたからねえ」
「今回はソフトだから心配いらない」
「おや!」
「ハートウォーミングでラブリーな旅になる」
「四十路間近の男ふたりでいく旅のキャッチフレーズとしてはぎりぎりアウトじゃないですか?」
「さらに今回は車でいく」
「なんですって!」
「小粋にドライブとしゃれこもうじゃないか」
「イヤッホウ!」



さむくて凍りついたフロントガラスの霜をせっせとかき落とす専務




よく見るとケースもないむき出しのiPhoneでかき出していて目を疑います




おまけになぜかかき出した霜を運転席のほうに寄せたまま出発しようとする詰めの甘さ




ともあれそそくさと高速に乗った一行の前に、雲ひとつない澄み切った晴天が広がります。こいつァ幸先がいいぞ!



…とはしゃぐそばからわかりやすく垂れこめ始める暗雲



この数分前まで最高の上天気だったと言っても信じてもらえないかもしれませんが



後ろの空はあざ笑うように晴れ渡っています



しかしまあ考えようによっては空の色がちょっと変わっただけだし、この程度の凶兆をいちいち気に留めてもいられません。暗雲にも慕われる気さくな町工場、それが安田タイル工業です。


「朝飯を食ってなかったな」
「そういえばそうですね」
「どっかで食っていくか」
「というとまさか…」
「列車の旅では味わえない大きな醍醐味のひとつだ」
「サービスエリアですね!」
「よし、寄るぞ」
「イヤッホウ!」












とてもきれいで洗練されたゴージャスなサービスエリア内をうろうろと見て回り、なんとなく釈然としない思いを抱えながら、なんだかよくわからないテーブルで軽い朝食をすませ、ふたたびドライブに戻ります。

「あの、専務」
「どうした?」
「僕まだちょっと受け止めきれてないんですけど」
「何を?」
「さっきのあれ、サービスエリアですよね?」
「そう書いてあったろう」
「でもユナイテッド・アローズ入ってましたよ」
「入ってたな」
フリーズ・マートも入ってましたよ」
「そうだっけ?」
「屋内でBMW売ってましたよね
「そういえばあったなあ」
「あまつさえコンシェルジュです」
「何をそんなにぷりぷりしてるんだ?」
「それにあのスタイリッシュなトイレ」
「ぴかぴかだったな」
「お洒落すぎておちおち用も足せないんですよ!」
「ケツの穴の小さいやつだな、はははははは!」
「お腹を抱えて笑うほどおもしろくありません」
「そう言うな、ほら前を見ろ」
「なんですか?」


「やや、晴れてきましたね!」
「ちがうちがう、山だ、よく見ろ」
「あっなんか書いてある…」


茶だ
「茶ですね…」
「静岡に来たという実感が湧いてくるだろう」
「あ、静岡が目的地だったんですね」
「人工衛星からも見えるんだぞ」
「ナスカの地上絵ってひょっとしてこういうことだったんですかね?」





そんなこんなで砕け散った恋の話などにキャッキャと花を咲かせつつ、車でのんびり4時間かけて辿り着いた先は…


大井川鐵道の新金谷駅です。


趣たっぷりの駅舎にしばし見とれる安田タイル工業の面々。ハートウォーミングという専務の言葉もあながちまちがいではなかったようです。

「いい雰囲気ですねえ」
「そうだろう」
「わりとあっさり目的地着いちゃいましたけど」
「ちがうちがう、ここがスタート地点だ


呆気にとられるダイゴ主任をよそに、いそいそと列車にのりこむタカツキ専務。静岡県島田市の中心部から大井川に沿って北にのびる大井川本線は、よその大手私鉄から譲り受けた車両のみで運行している(つまり独自の車両を持たない)、ふしぎな路線です。これは元南海高野線の急行車両。


そういえば行き先をまったく聞いていなかったことに今さら慄然としながら、列車は軽やかに走り出します。





前回の重機的な恋とその後を彷彿とさせる黄色い彼氏のしんみりした後ろ姿



これは元近鉄の特急車両








長いこと揺られてようやく辿り着いた終点駅に降り立つ安田タイル工業の面々。澄んだ空気を胸いっぱいに吸いこみながらウーンと伸びをしているところへ専務の声が朗らかに響きます。

「よし、乗り換えるぞ!」
「まさかの中継地点!」


「わあ、蒸気機関車じゃないですか!」
「まあな。でも乗るのはこっちだ」


「めっちゃちんまり!」
「もともとダムをつくるための専用鉄道だったからな」
「さっきまで乗ってたのとはちがうんですか?」
「さっきのは大井川本線で、これは井川線」
「なんか真ん中あたりに寒そうな車両がありますよ」


凍てつく寒さのなか山間部に向かうにはいささかエクストリームすぎる感がなくもない、スケルトンな車両に躊躇なく乗りこむ専務






一見するとぽかぽかして暖かそうにおもえますが、遮るものが何もないので暖かいどころの話ではありません。窓1枚へだてた隣の車両には暖房がガンガンきいているとわかっているだけに、なおさら寒さがつのります。またこの路線はそれでなくとも山間だけにトンネルが多く(たしか50箇所以上)、このトンネル内の冷えこみ具合といったらほとんど懲罰です。あと至極当然の帰結として、音がすごいうるさい。







ここでふと先頭車両のあるものに目が止まり、忘れかけていた現実へ否応なく引き戻される安田タイル工業の面々



メリークリスマス!


それはそれとしてやはり寄る年波には勝てず、無言で暖房車へと避難しています





「おい、着いたぞ!」
「え、ここですか」
「ハートウォーミングでラブリーなポイントがここだ!」
降りるの僕らふたりだけみたいですけど…」
「望むところじゃないか。何が不満なんだ?」







この駅は湖上のど真ん中にあって施設らしい施設もなく、むしろ恋人たちがお互いの愛を再確認するためのスポットとしての機能に特化しています。したがってホームに降りてひとしきり愛を確認し合ったあとはとくにすることがありません。次の下り電車は1時間半後、しかも16時43分発のこれがこの日の終電です。

これまでの流れ上、いやでも永遠の愛を誓い合わざるを得ない専務と主任


それではここで、数キロ四方にまったく人の気配がない山間の湖畔からタカツキ専務が世界に向けて放つ渾身の遠吠えをご覧ください。




手本を見せようとしゃしゃり出る主任



ちなみにふたりの遠吠えはここから放たれています


「とりあえず愛は確認しましたけど」
「うむ。したな。たっぷりした」
「これあと帰りの電車を待つしかないですよね?」
「いや、待たない」
「でもどこにも行きようがなくないですか」
「四の五の言わずについてこい」

















「橋が見えてきましたね」
あれを渡り切った先に最終目的地がある
「あ、まだ最終目的地があったんですね」
「ハートウォーミングで超ラブリー」
「愛ならさっきさんざん確認しましたけど」
「クリスマスにはうってつけなんだ」
「橋の手前に大きな鉄琴みたいのがありますよ」
「うむ。あるな」
「奏でましょうか」
「奏でよう」




心温まる可憐な演奏を終えた安田タイル工業の面々は、いよいよ最終目的地へとつながる大きな吊り橋を渡ります。



 その先にあったのは……


八橋小道、通称ラブロマンスロードです。

「どうだ」
「ははあ」
「胸がいっぱいになるだろう」
「なりすぎて胸焼けしそうです」
「これ以上クリスマスにふさわしい場所があるか」
「でも人っ子ひとり見当たらないですよ」
「貸し切りだ」
「誰に借りたんですか?」

説明には、「恋愛という戦いに必勝を祈り末広がりを意味する"八つ"の橋と小道を歩いていく。起伏に富んだ遊歩道はさながら"人生の道"のよう」とあります。

「戦うみたいですよ、専務」
「戦うからには勝たねばなるまい」
「僕ら中年なんでもうあんまり体力が」
「いくぞ、つづけ!天運我にありだ」









ぶじすべての橋を渡りきり、非の打ち所のない圧倒的な勝利に鬨の声を上げる安田タイル工業の面々。

「あれ?」
「どうした」
「橋、8つ渡りました?」
「渡っただろう」
「ひいふうみい…7つしかないですよ」
「いや、渡ってるはずだ」
「見落としたっぽいですね」
「荒ぶってたからな。瞬殺だったんだろう」
じゃあ帰りますか
「うむ。まだ16時すぎだがじき終電がくる





♪パ〜パラララ〜(エンディングテーマ)


飽くなき探究心と情熱を胸に、安田タイル工業は今後も逆風に向かって力強く邁進してまいります。ご期待ください。


安田タイル工業プレゼンツ「聖夜のラブリーな過ごしかた」 終わり




※このあと9時間かけて帰りました。




おまけ1:列車を見送る専務




おまけ2:「帰りにさわやかなハンバーグを食わせてやる」と専務が連れていってくれたさわやかなハンバーグレストラン