2016年5月17日火曜日

時計の玉座にふんぞり返るふてぶてしい12のこと


ラジオの録音を午前0時にセットしようとしたら、タイマー表記が「AM/PM」「1〜12」しかないのです。

そうすると設定は必然的に「AM12:00」になるとおもうんだけど、よくよく考えたら午前の始まりに12という数字はいかにも平仄が合いません。ふつうに考えたら「PM11:59」の1分後は「AM0:00」で、百歩譲っても「PM12:00」になるはずです。AMとPMが切り替わっているのに、数字だけが連続したままで、1時間後に遅れてリセットされるのはどう考えてもおかしい。

混乱の原因は1から12という数字の範囲にあります。それだと数え年と同じ理屈で午前も午後も1時から始まることになってしまうじゃないですか?

だからこれはきっとプログラムミスにちがいない、12時間表記なら「0~11」にすべきだったんだ、まったくしようがねえな、とひとまず納得しかけたところでふと壁にかかった振り子時計に目をやると、時計の玉座とも言うべき「0」の位置に堂々と「12」がふんぞり返っていやがるのです。


あ、そうか時計がもともとこうなんだから、このアナログ表示をデジタルに置き換えたらそりゃ「1〜12」になるよな、なんだプログラムミスじゃなかったてへぺろ!と目からウロコがぽろぽろこぼれかけたところで、緩んだ表情がまた能面に戻ります。

待てよ……。

そういえば今までちっとも疑問におもわずに生きてきたけれど、先の理屈からするとこの表示は明らかに妙です。なぜ末尾の数字である12が悪びれもせずしれっと王様みたいな顔をしてそこにいるんだ……?その位置はたしかに終わりを意味してもいるけれど、それはあくまで一瞬にすぎません。そこからの1時間はむしろ始まりであるはずです。

だとすると本来あるべき時計の表記はこうか、


こうでなくてはなりません。


もちろん歴史的に見て、時計の文字盤に「0」がない理由ははっきりしています。なんとなればゼロという概念の発見と伝播は時計の発明よりもずっと後のことだからです。それは今も多くの文字盤でローマ数字が使われていることからもわかります。ゼロ表記の可能なアラビア数字がヨーロッパに伝わるころには、すでに文字盤が「Ⅰ〜Ⅻ」で定着していたわけですね。

だとしてもやはり、なぜ文字盤の頂点に鎮座して高らかに始まりを告げる数字が「12」なのかという疑問はとけません。ゼロがないなら順序はどうしたって「1」が最初にくるはずです。

いちばん最初にここに12を置いたのは誰だ?

そして誰もそれを疑問におもわなかったのか?

「これはこういうものだ」という無自覚の刷り込みがいかに強固で覆しづらいかは僕自身、これまでやってきたことでもイヤというほど痛感してきたはずなのだけれど、これほど至近距離にある不自然に数十年たってから気づくなんてなあ、ズズー、とすする新茶の美味さに目をみはる初夏です。

でもアラビア数字ならここは「0」にすべきだとおもいます、やっぱり。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

確かに、12:00って午前とか午後とかAMとかPMとか言われても何時のことだかわかりにくいですね!
24時間表示にしたら解決かと思いきや、「○日26時○分」とか言われてまた混乱します。

ピス田助手 さんのコメント...

> 匿名さん

そうそう、それは僕もおもってました。
25時とかって、いつから使われるようになったんでしょうね?