2015年3月31日火曜日

ケンタッキーフライドチキン@UKからの衝撃的なニュースが安田タイル工業を直撃した話


発売から8ヶ月ちかくたった今ごろになってこんな話を持ち出すのも気が引けますけれども、アルバム「小数点花手鑑」には「安田タイル工業のかなり重要な会議(抜粋)」という不毛なスキットが収められています。「世界をぴかぴかしたタイルで敷きつめたい」「タイルは神が与えたもうた最大の何かである」を合い言葉にもっぱらタイルの、もしくはタイル状の、でなければ便宜上ただそう呼んでいるものの普及につとめてきた安田タイル工業の専務と主任が、これからのタイルとそのあるべき形について真剣に語り合っている様子をICレコーダーで隠し録りしたものです。

くわしくは実際にアルバムをお聴きいただくとして(宣伝)、この会議の録音には2人のこんなやりとりが残されています。


主任:そうですね、いくつかあるんですが、まずひとつには(タイルの)食用という方向性を考えてまして…
専務:しょくようってのは?つまり食べるってこと?
主任:そうです。あのタイルのつやつやしたコーティング部をですね、シュガーグレイズドと言いますか、糖蜜のカラメル化で…
専務:溶けるんじゃないの?
主任:いえ、今はあの、お口で溶けて手に溶けない方式が定着してまして…
専務:溶けないんや。
主任:溶けないですね。
専務:それで、お腹がすいたときに剥がして食べる。
主任:そうですね、張り替えの需要が増えるという点ではそれも見逃せない利点のひとつなんですけれども……


タイトルに(抜粋)とあるとおり、録音は2分ほどでフェイドアウトしていますが、500部限定で製作された「小数点花手鑑 特装版」にはもう1枚「パン屋の1ダース」というCDが付属しており、ここにはこの不毛な会議の続きが収められているのです。ちょっとだけ抜き出してみましょう。


専務:土台の陶器部分についてはどうなの?
主任:はい。えー、ここに資料が……
専務:ウェハースとかにするわけにはいかないでしょ、やっぱり。
主任:それについても検討を始めてまして……

(中略)

主任:そうですね、最初はいろんなのを試……ひょっとするとあの、ウェハースも……
専務:あ、ウェハースいけるんや。
主任:ウェハースが水に弱い、というのもまあ、現時点での話なので、50年後のウェハースは……
専務:ああ、そうかそうか、技術開発が進んだ後のウェハースは……
主任:全然あの、船の材料になるようなウェハースもできてるかもしれないですし……


ああでもないこうでもないと議論を重ねていますが、要は「お風呂とかに貼ってあるタイルが食べられたらいいよね」「そのためにはまず水を克服しないとね」という話です。

さて、ここからが本題ですが、先月この議論に終止符を打ってしまうほど衝撃的なニュースがイギリスから流れてきていたのをご存知ですか。


photo: KFC UK

Edible Coffee cup in KFC Tests in Britain  :New York Times

言わずと知れたフライドチキンの総本山であるKFCが、シアトルズ・ベスト・コーヒー(Seattle's Best Coffee)のイギリス上陸に伴うお披露目キャンペーンの一環として「食べられるコーヒーカップ」を開発した、というのです。

コーヒーカップの形をしたお菓子、ではありません。実際に容器として熱々のコーヒーが注がれる、そのカップがぜんぶ食べられるつくりになっています。これだけでも十分インパクト大なんだけど、安田タイル工業的に目を瞠らずにいられないのはその材料です。

→an edible cup made from wafer coated in sugar paper and lined with heat-resistant white chocolate.

"sugar paper" で「?」となるけど、画像からしてもおそらく砂糖でコーティングしたウェハースを耐熱のホワイトチョコでくるんである、ということでまず相違ありますまい。

砂糖のコーティングを施したウェハースで耐水性を高めて陶器の代わりにする……食用タイルにおけるウェハースの採用はまだまだ先の話だとのんきにかまえていた安田タイル工業にとってはまさに青天の霹靂です。専務と主任が「濡れてもふやけなくて食べるとおいしいタイル」について喧々諤々の議論を繰り広げていたとき、海の向こうではすでにこれを凌駕するプロジェクトがリアルタイムで進行していたのだから、そのショックは言葉に尽くせないものがあります。ひょっとして船の材料になるような丈夫でおいしいウェハースも、50年後どころか世界のどこかでとっくに実用化されてたりするのではないか?

いずれにしても安田タイル工業にとって一刻を争う事態であることだけはたしかです。早急に主要メンバーを招集して会社の未来図を描き直さなくてはなりません。時代を先取りしていると得意になっていた「食べておいしい丈夫なタイル」の発想がすでに手遅れだったなんてまったく、つくづく井の中の蛙ぶりを痛感させられます。広げたはずの大風呂敷も今やハンカチにしか見えません。世界は広い。

2015年3月28日土曜日

栗千葉市役所から届いた丁寧かつ理不尽な通知のこと


【TRINCH】にTシャツほか4点を追加しています。


「それでね、博士」
「うわっ何だやぶからぼうに!どこから生えてきた」
「人を草みたいに言わないでください」
「草のほうがよっぽど無害だ」
「僕は人畜無害の見本市みたいな男ですよ」
「Wipe your dirty hands!」
「何ですか?」
「お前の汚れた手を拭きなさいと言ったんだ」
「これはどうもご親切にすみません」
「気にするな。独り言だ」
「それにしては命令口調でしたけど」
「英会話のレッスンだ。邪魔をするな」
「英会話?」
「It is rumoured that Diago is dead.」
「いまデッドって言いました?」
「邪魔をするなと言ったろうが!」
「話を聞いてくださいよ」
「いつからいた?」
「ずっといましたよ」
「まあいい。用件はなんだ。あ、ちょっと待て」

バシッ

「痛い!」
「よし、気は済んだ。話せ」
「英会話のテキストを投げつけるなんて!」
「これくらいで済んだだけありがたいとおもえ」
「言われてみればありがたいような……」
「用件はなんだ」
「あ、そうそう、あのですね」
「それは気の毒だった」
「まだ話してないですよ」
「もう聞き終わったような気がする」
「まだ見せてないですよ」
「もう見たような気がする」
「これなんです」
「めげないやつだ」


「それがどうした」
「市役所から届いたんですけど」
「見ればわかる」
「博士の差し金ですか」
「何でもかんでも人のせいにするな!」
「だって略奪のお知らせですよ!」
「略奪になんか興味はない」
「でも……」
「その気になれば何でも手に入る」
「どうやって?」
「手を伸ばせば向こうから飛びこんでくる」
「限りなく略奪に近くないですか」
「まあよかったじゃないか」
「?何がですか?」
「まちがえた、気の毒だったな」
「定型句で適当にあしらわないでください」
「あしらう以外にどうしろと言うんだ」
「横暴すぎるとおもうんです」
「何がだ。むしろ親切じゃないか」
「いきなりこんな、根こそぎ持ってくなんて言われても……」
「だから事前に知らせてるんだろうが」
「法に反してませんか」
「法に基づいて執行するんだろ」
「ぜんぜん釈然としない」
カカオの原産地はどこか知ってるか?
「え?原産地?何の?」
「カカオだ」
「カカオ?ってチョコの?」
「何度も言わせるな」
「南米ですよね?何の話ですか?」
「じゃ最大の産出国はどこか知ってるか?」
「南米じゃないんですか?」
「ちがう。アフリカだ」
「アフリカ?なんで?」
「中南米は病害が多くて話にならんのだ」
「こっちも今まさに話になってないですけど」
「チョコLOVEなヨーロッパはアフリカにカカオ農園をつくった」
「はあ」
いま世界中どこへ行っても当たり前のようにチョコが買えるのはアフリカがヨーロッパの植民地だったからなんだぞ
「それがどうかしたんですか?」
「ここまで言ってもまだわからんのかこのヘドロ脳め」
「謂われのない中傷を受けてる気がする」
「その略奪がいずれ世界に恩恵をもたらすかもしれんということだ」
「世界に!?」
「世界にだ」
「恩恵を?」
「恩恵をだ」
「でもそんなこと言われても僕には関係ないですよ」
「冷静なやつだ」
「困ったなあ」
「だいたいそんなにイヤならなぜ引っ越さないんだ」
「Σ(゚Д゚)」
「対象地域の外に移れば……なんだその不愉快な顔は」
「(*´∀`*)」
「Would you please get out of my face?」


2015年3月25日水曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その207

すごい近くにツグミがきた


2Dプリンタさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 大吾さんが、歳をとるとともに恥ずかしくなってできなくなったことは何かありますか?私はメリーゴーランドに乗ることです。なんとなく「子供か、子供の付き添いでないと乗ってはいけないもの」というイメージがあって…大好きなのでいつかひとりで堂々と乗りたいです。


できればそっと胸に秘めておきたい大事なものなので名前は伏せておきますが、そういえば僕もあまりに思い入れがつよすぎていっそ個人で所有したいくらい大好きな遊具がひとつあります。前にも書きましたっけ?


人生の折り返し地点と言ってもおかしくない年になった今もそのきもちは全然変わりません。そのスタイルから構造、ネーミングに至るまで何もかもが昭和っぽい野暮ったさに満ちていて、たしか今では日本に下手したら1台、よくて数台しか残ってないような遊具です。昨年の冬、ひさしぶりに遊んだときもちびっこに紛れて堂々と並びました。どちらかといえば周りのちびっこより係のお姉さんのほうが戸惑っていたような気もするけど、操作に慣れた中年のおっさんがヤッホーな勢いでぐりんぐりん乗り回してるんだからそれはまあ、しょうがないよなとおもう。

したがって僕は言うまでもなく、2Dプリンタさんのメリーゴーランドが好きというきもちを心の底から支持する者です。今すぐにでも連れていきたいとおもうし、何なら僕もいっしょに乗りましょう。手を伸ばせば届く道ばたの花と同じくらいフレンドリーなよろこびを、誰であろうと奪うことはできません。あるいはメリーゴーランドに乗らないことで保たれる大人としての何かを右手に、乗ることで得られるシンプルなよろこびを左手にのせて比べてみるのもいいとおもう。どう考えても左手のほうが大きくてやわらかくて温かいという気がしませんか。

質問の答えになっていないのはもちろん僕もよくわかっています。わかっていますが、何しろ僕は先の例からもおわかりのように、大人になっても遊具にヤッホーでぐりんぐりんの人間なので、どうか大目に見てください。

エクスキューズついでにもうちょっとだけ食い下がると、東京の遊園地では老舗に数えられるとしまえんには、100年以上前に作られて今なお現役で稼働する、クラシックにして超モダンなアールヌーヴォー様式の、うっとりするほど美しいメリーゴーランド「カルーセルエルドラド」があります。ご存知ですか?日本どころか世界的にも最長老クラスの回転木馬なので、遊具というよりもはや文化遺産です。他を圧倒する威厳と貫禄、褪せることのない煌めきをまとったこのメリーゴーランドの前では、大人と子どもの線引きも用を成しません。みな等しくその美に打たれるばかりです。

そしてこれなら、誰に憚ることなくそのよろこびを心ゆくまで堪能できましょう。何しろメリーゴーランドであると同時に貴重な文化財でもあるのです。長く受け継がれてきた歴史の一端にふれるのだから、これ以上の大義名分もありません。いつかなんて先を待たずに、意気揚々と乗りこもう!


A: それはそれとして、恥ずかしさは年々薄れていってる気がします。何に対しても。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その208につづく!

2015年3月22日日曜日

甘鯛のポワレ教授による実践的な英語のレッスン vol.1



【TRINCH】に数点、追加しています。どういうわけだかちっとも支持される気配のない芥川鼻店から、キュートな看板娘がお目見えです。エロ本の山から生まれた火焔鳥iPhoneケースもあるよ!


このグローバルでビッグデータのクラウドコンピューティングがソーシャルな時代にあって、英語は欠かすことのできない世界の共通語です。先日の天声人語で目にした「誰もが貧しかった時代には等しくドリームがあった。」という一文を見るにつけても、もはや後戻りのできないところまで来ているとつくづくおもわされます。


そんなクリームみたいな単語を持ち出されてもいまいちピンとこないようですけれども、あったというのだからかつてはきっと「あっ家にドリーム置いてきちゃった」「ふたつあるけど、使う?」みたいな会話があちこちで当たり前のように交わされていたにちがいありません。

しかしそれもドリームなるものを共有しているからこそ成り立つ話です。小川のような会話の流れをせきとめて「ドリームって何?」と尋ねるのはやはり憚られるものがあります。空気を読むことが高度に求められる現代においてはなおさらです。発音も判然としないようなむずかしいのはともかくとして、日常的に使われる単語くらいはできればあらかじめ押さえておきたい。

そこで今日はすこし英語の勉強をしようとおもうのです。いいあんばいに英単語カードの立派なセットもあります。缶に入っている高級なやつです。



100年ちかく前のだからちょっと古いし、今みたら「dream」も入ってなくて代わりに「dread(恐怖)」が入ってたけど、まず問題はないでしょう。レッツラーン!

He is a burden to his parents.
彼は両親の厄介ものだ。

Yesterday a young man threw himself into the crater of Mt. Asama.
昨日一青年が浅間山の噴火口へ身を投げました。

I am sorry to say that all my efforts were in vain.
私の凡べての努力が無駄であつた事が残念である。

The house is enveloped in flames.
家は火焔に包まれた。

I gave a kick to the mad dog.
私は狂犬を一と蹴り蹴つた。

It is rumoured that Kato is dead.
加藤が死んだと云ふ噂がある。

I beat the dog soundly.
私は犬をうんと打つた。

Wipe your dirty hands with the towel.
お前の汚れた手を手拭でふきなさい。


実践的な例ばかりでじわじわきますね。しっかりおぼえましたか? Wipe your dirty hands! ではまた次回、お目にかかりましょう。ポワレ!(挨拶)

2015年3月19日木曜日

さて、そろそろ極上の鳥刺しについてお話しておこうの巻


先日のチケットタオルにひきつづき、クリープハイプのツアーグッズ「ボーイズENDガールズTシャツ」をデザインしています。販売は今週末スタートの全国ツアー後編から!あまりに出来がよいため、はやくも話題沸騰です。僕のなかでですけど。


若きクリープファンのみなさまが黄色い悲鳴を上げながら身につけてくれますように。そして願わくばそれをこしらえたのがよれよれしたしがない中年であることがバレませんように。


そしてそういえばすっかりお伝えし忘れていましたが、今月末は三軒茶屋のUmebacheeというお店で「おいしい鳥刺し feat. ライブ&DJ&トーク」的な他にあまり例のないかたちでのイベントがございます。言うまでもなく僕のライブではありません。僕は好きなレコードを適当に回したり回さなかったりする係です。


2015. 3. 28 土曜深夜
深夜のUNDER THE WILLOW kitchen
@三軒茶屋 Umebachee
OPEN 23:00
MUSIC CHARGE 1,500
LIVE: タケウチカズタケALI-KICK
DJs: ALI-KICK小林大吾Killy Gackley


HIPHOP/HOUSEを生み出し続けるキーボーディスト・プロデューサー、タケウチカズタケが音で繋がる音楽仲間達と、ライブ+DJ+トークを三軒茶屋の日本酒の美味い店で繰り広げる夜!(中略)黒いグルーヴと鍵盤の音、美味い酒と楽しい仲間が集まる「深夜のUNDER THE WILLOW kitchen」へようこそ!!


ということなのですが、イベントの打ち合わせを兼ねつつ、鳥刺しがおいしいというので僕もご相伴にあずかったところ、想像をはるかに上回る衝撃の美味さだったため、急遽「むしろ鳥刺しがメインでいいんじゃないの」ということになりました。ふだん口にしている鶏肉が近所の遊び友だちなら、ここで出会えるさまざまな種類の鳥刺しは高貴な気品を身にまとい、舌の上にレッドカーペットが敷かれるような正真正銘のセレブリティです。とにかくこの鳥刺しを多くの人に味わってほしい。そしてその味わいをより豊かにしてくれるようなライブまである。最高じゃないですか?




大まかに言うと、鳥刺しに舌鼓を打つ合間にライブをしたりレコードを回したり気の向くままに喋ったりしながら鳥刺しに舌鼓を打つ、そんなイベントです。"UNDER THE WILLOW -kitchen-" というイベント名もこうなるとなぜ "UNDER THE WILLOW -chicken-" でないのかふしぎなくらいですが、ともあれラジオみたいな雰囲気でわいわいやることになるんじゃないかとおもわれます。

何より座敷です。いやでもゆったりと寛がざるを得ないし、おまけにおいしい日本酒がずらりときています。そんなこんなで一献傾けつつ、極上の鳥刺しとタケウチカズタケの熱いプレイに聞こし召してもらえるなら僕らとしてもこれに勝るよろこびはありません。そしてさらにこれは推測ですが、おそらくALI-KICKのシンガー(!)としての一面も観られるんじゃないかとおもいます。ぜひともお誘い合わせのうえ、舌なめずりでおいでませ。

2015年3月16日月曜日

つねに時代の先を行くアンビヴァレントな駆け落ちマガジン「ELOPE」3月号のお知らせ


ノストラダムスの大予言を機に創刊した日本初の駆け落ちマガジン「ELOPE」も、いよいよ17年目に突入!真実の愛を追求するワン・アンド・オンリーな雑誌として、正しくも心ない火の粉を振り払う日々は変わらずですが、その甲斐あってか今では親子二代で愛読されてるご家族もいらっしゃるとか。「甘く切なく抜け目なく」をモットーに、フットワークもますます軽く、ELOPEはこれからも純愛道を一心不乱に突き進んでいきます!人の恋路を邪魔する者はたとえお釈迦さまでもゆるしません!世界を敵に回しても、ELOPEだけはあなたの味方です!ついでに婚約不履行による訴訟で現在も法廷闘争中の編集長に励ましのお便りを!

3月号の巻頭特集は新生活応援企画第2弾!「続・プロが教える身元偽装マニュアル」です。偽名によるメリット・デメリットとは?効果的な変装は安易な整形を超えるってホント?完全な別人として生まれ変わるのに必要な資金ってどれくらい?盲点を逆手に取る「盗まれた手紙メソッド(Purloined Letter Method)」って何?などなど、盛りだくさんの内容でお届けします。他にも嘘をつかずにすむちょっとしたコツや、知っておきたいPhotoshopの基本的な操作といった日常生活を支えてくれるディテール方面までしっかりとカバー。かゆいところに手が届くいたれりつくせりの充実ぶりです。

第2特集はお待ちかね、駆け落ちカップルの聖地とも言われる「グレトナ・グリーンへの移住計画」。ドラマチックな土地の歴史を紐解きつつ、のびのびと愛を語る先輩方の暮らしをレポートします。現地の不動産情報や移住に必要な手続きもわかりやすくまとめてあるので、あとは2人で荷物をまとめて離陸するだけ。必見です!

そして忘れちゃいけません。春といえばもちろん付録はコレ!「女将の口が固い安心の宿マップ」2015年版が今年も満を持して登場です。オンライン予約が可能なので、リハーサルとしての活用もOK。事前に事情を伝えておくと思いがけないサービスがあるかも!?本番にそなえてとっておきの宿を見つけてください!

【その他の鉄板コンテンツ】
・経験者が語る成功と失敗の実例
・ウォートン流交渉術に学べ!
・これが最強!追っ手の撹乱に使えるITツール
・置き手紙はこう書け
・教えてベンジャミン
・ムード高まる春の倹約レシピ
・最新駆け落ちファッション
・捜索願インフォメーション
・文通コーナー
・虹色ポエム

今月号の表紙に使われたイタリアのGiordano製タンデム自転車を抽選で一名(というか二名というか)の方にプレゼントします。ご希望の方はハガキに住所、氏名、年齢、電話番号、ご両親へのメッセージもしくは捨て台詞をお書き添えの上、ご応募ください。3月27日(金)の消印有効です。たくさんのご応募、お待ちしています!

注:日本国内において、公道でのタンデム走行が可能な自治体は非常に限られています(長野、兵庫、広島など)。詳しくはお近くの公安委員会にお問い合わせください。


……というTシャツをふくむ数点がTRINCHに追加されています。



デッドワックス兄弟の反省会をモチーフにした「it's not my day」マグでは、曲中で触れられているシュガーパイ・デサントのレコードが明らかに!一見カッコいいけどよく見るとひどいことしか書いてない「バニーズへようこそ!」マグもお見逃しなく!


2015年3月13日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その206


甘く危険なカオリン(ケイ酸塩鉱物)さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q: 2012年、ダイゴさんにとって1番の事件は?


どう考えても2015年に引っぱり出してお答えする質問ではないとおもいますが、これにはわけがあります。というのもこの年、僕にとっていちばん大きな事件は、気持ちの整理に3年を費やさねばならないほどショッキングなものだったからです。ようやくこうしてぽつぽつとお話できるようにはなった気がするものの、それでもやはり、思い出すと頭を抱えてゴロゴロとのたうち回りたくなります。夢であってくれたらいいのにと今でもおもうし、記憶にうすく靄がかかっているからひょっとしたらこの年ではなくてもっと前だったかもしれないし、でなければ実際に夢だったかもしれません。すくなくとも若気の至りというにはちょっと薹が立っていたことはたしかです。ただ、僕は幼少時に「虹の上をすべる魔女をみた」というにわかには信じがたい記憶がはっきりとあるくらいなので(本当にそういう記憶がある)、そもそも体験が脳内で捏造されている可能性もあります。まあ、何でもよろしい。

あの日、僕はある町におりました。家から原付で30分ほどの距離です。大した用ではありません。小一時間で済ませて帰路についたのはたしか宵の口、日が暮れて間もないような時間だったとおもいます。寒かったのか暑かったのか、季節の記憶も曖昧ですが、とにかくそそくさと原付にまたがり、寄り道もせず、来たときと同じように30分かけてまっすぐ家に帰りました。マンションの駐輪場に原付を停めて、ヘルメットを脱ごうとしたそのときです。

ない。

ざわっと全身が総毛立ったのをよくおぼえています。状況が状況だけに、本当に頭を両手で抱えていたはずです。そしてふと原付のシート脇にあるヘルメットホルダーに目をやると、そこにはヘルメットがさも当たり前みたいな顔をしてぶら下がっています。「ずっとここにいたけど、よかったの?」というかんじです。ポンと飛び出したふたつの目玉が地面に落ちて排水溝に転がっていきます。お前まじでわかってたんなら言えよ!何で言わないんだ!ともの言わぬヘルメットを詰らずにはいられません。何となれば他に責める相手がいないからです。

先にも書きましたが、行きも帰りも30分の距離です。30分もこの尋常ならざる状態をキープしつづけていたなんて、そんなバカな話があるだろうか?何が信じられないといって、ちょっと思い返しただけでもその日の帰路にはすくなくとも3つの交番があるのです。そのうち1つは人の多い大きな駅前、もうひとつは街道と街道が交わる大きな交差点にあります。よほどのバカでないかぎりそんなところを頭髪むき出しで走り抜けたりしないはずですが、この日の僕はよほどのバカだったと認めなくてはなりません。だいたい、それを差し引いても30分は長すぎる。

念のためにお断りしておくと、ここまでみごとに人として欠くべからざる大きな義務をすっぽかしたのは、後にも先にもこのときだけです。だからなおのことなぜこのときだけこんなことになってしまったのか、いくら考えてもさっぱりわからない。恥ずかしいのと恐ろしいのとで、穴があったら頭から飛びこんだあとにコンクリを流しこんで何か社会のためになる建物の基礎にしてもらいたいくらいです。おもしろおかしい失敗談ならともかく、ぜんぜんおもしろくない上に危なすぎてシャレにもなりません。

誰にも言えず、といって忘れることもできず、すっかり打ちのめされました。体はともかく心は完全に暗くてじめじめした独房の中にあったと言っていいでしょう。ぶじ釈放されたのか、それともまだ服役中なのか、おそるおそる省みてもまだ判然としませんが、教訓というにはあまりにも大きいこれが僕にとっての事件です。生きているうちにタイムマシンが実用化されたら、この日の僕にドロップキックをお見舞いしにいこうとおもいます。


A: フィクションだとおもって忘れてください。


フィクションにしては虚しい気がしますけど。


質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その207につづく!