2015年5月24日日曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その212


オイッスは目にして!さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)ザ・ヴィーナスのヒットシングル「キッスは目にして!」のいかりや長介バージョンですね。


Q: 「どうしても苦手なもの」への折り合いはどう付ければ良いでしょうか?昔っからアニメが物凄く苦手です。何というか女性キャラのハイトーンボイスを聞くと、イラッとするというか、何かゾクッとするというか…小さい時から、家族含め周囲の女性の声がハスキーボイスの人が多く、あの様な高音に免疫が無いのです。ただ、会社等ではアニメ人気がすごく、気づいたら会話から置いてけぼりを食らうこともしばしば…なにか良いアドバイスをお願いします!


たとえば僕は体長2ミリ以下の虫の大群がものすごく苦手ですが(虫自体はすきです)、これとどう折り合いをつけるかと言ったら「なるべく近づかないようにする」くらいしかありません。もし何かの拍子に近づいてしまったら「慌てず騒がずそっと立ち去る」ことにしています。普通じゃねえかとお思いでしょうが、折り合いをつけるというのはせいぜいこういうことです。というか、ここでうっかり克服の方法を訳知り顔で語ったりしたら、同じ論理で僕もアリの大群と向き合わされることになりかねないので、迂闊なことは言えません。(念を押しておきますがアリ単体はすきです)

ただ、一方でここには大きな固定観念が潜んでいるようにも見受けられます。なんとなれば、アニメにおける特有のハイトーンボイスは単なる要素のひとつであって、それ自体がアニメを表しているわけではないからです。ここで言うハイトーンボイスが具体的にどれくらいのハイトーンなのか、たとえば「ワカメちゃんはNGだけど花沢さんはOK」とかそのへんがはっきりしないのでアレですが、仮に秋葉原をてくてく歩いていると耳にするようなトーンがそれに当たるとして、それでもそうした声が一切含まれないアニメはたくさんあります。少なくともある特定の発声が苦手だからといって、即アニメが苦手とイコールで結ぶことはできません。それらはまったく別の問題です。

なのでまず、そのふたつをすっぱりと切り離してみましょう。それだけでもアニメに対するハードルはぐっと下がるはずです。よほどの偏見がないかぎり、お気に召すアニメはきっとあります。

アニメの魅力がわかればそこから先はオイッスは目にして!さん次第です。その魅力がハイトーンボイスへの抵抗感をあっさり上回るかもしれないし、やっぱり全然ダメかもしれない。僕自身はアリの生物学的な面白さや美しさを知ってもその大群に対する抵抗感はとくに変わらなかったので、何とも言えません。

でもこのケースにかぎらず、日常会話において置いてけぼりを食らうことは往々にしてあります。そんなときは「ふむふむ」「へー」と相づちを打っていればよいのです。何ならこちらからあれこれ質問してみてもよいでしょう。僕も乃木坂46のファンの人(筋金入り)とある会で同席して最初は何の話をしているのだかちんぷんかんぷんでしたが、ここぞとばかりに気になることを尋ねていたらいつの間にか見方が180度変わりました。身を置く環境によってはむちゃくちゃハマっていても全然おかしくなかったとしみじみおもいます。見方が変わっても足を踏み入れずにいるのは僕の場合それで身を滅ぼすことが容易に想像できたからです。あんまり思い出さないようにしていたのに、おかげで何だかもやもやしてきちゃったじゃないですか。

しかしまあ、知らずにいた魅力を知るというのは、その対象が何であれエキサイティングなことです。

いい機会なので、なんとなく手を伸ばしづらいけど観ればそのスゴさがわかるアニメの一例として、以前プロデューサーの古川さんから教えてもらった「おジャ魔女どれみドッカ〜ン!」の第40話(「どれみと魔女をやめた魔女」)をオススメしておきましょう。ファンの間では最高傑作とも謳われる一編ですが、ファンでなくともここで描かれる世界の文学的な奥行きには圧倒されるはずです。(またこの回の演出を務めているのが「サマーウォーズ」「おおかみこどもの雨と雪」の細田守監督であると申せば、それだけでハッとされる方もありましょう)


A: アニメに罪はありません。


あと、これはどうでもいいような私見ですが、アニメ特有のあの声は日本が世界に誇る発明のひとつだと僕はおもいます。




質問はいまも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その213につづく!

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