2012年8月14日火曜日

それとは別の何だかよくわからないもの 前編



重くて固い上に、表面もゴツゴツしていて岩みたいな、たぶん乾燥した無花果を押し固めたようなものの中にアーモンドが入っている何か」で思い出したけれど、そういえばこのとき、これといっしょにもうひとつ別の何だかよくわからないものを土産として受け取っておりました。




そうして目をぱちくりさせながら「これは何?」とたずねれば、「さァ…」と首をかしげながら「小銭が余ってたから」と身もふたもないことを言うのです。「重くて固い(中略)何か」のときはそれでもいくらか好意が感じられたのに、こっちは好意どころか気持ちのきの字も見当たりません。なるべく使い切りたいという気持ちはわからないでもないけれど、ユーロが余ったのならそのコインを記念としてくれればいいじゃないか?そしてなぜその何だかよくわからないものを他の友だちではなく、僕に寄越すのか?

というもやもやした個人的な葛藤はさておき、土産としてもらった以上はそのままうっちゃってもおかれません。すくなくともこれが何であるかくらいは僕も知っておきたいし、うっちゃるならそれが何であるかを知った上で堂々とうっちゃりたい。

その見た目と「Funky Bandz」と銘打ってあることからして、どうやら輪ゴムっぽいぞというところまではなんとなくわかります。輪ゴムで不快な思いをしたことはないし、どちらかといえば便利な道具という認識だからそれならそれでまあよろしい。そもそもスペイン土産として輪ゴムはアリなのかという根本的な是非についてもこの際ふれずにおきましょう。そこから異議を唱えていては話がちっとも進まなくなってしまうからです。

よくみると左上に「Collect & Trade」と書いてあります。「集めて友だちと交換しよう!」ということらしい。言われてみればカラフルだし、パッケージもファンシーだから、子どもならそうした用途も大いにあり得ましょう。子どももいない30代半ばのおっさんはこれを誰と交換したら良いのかというやりきれない点については、ひとまず今後の課題として脇に置いておきたい。

問題は右上にある文字です。「Wrist Bands」と書いてある。


リストバンド?


たしかに、輪ゴムを手首に巻くことは往々にしてあります。必要以上に巻いているおばちゃんを見かけることだってある。しかしだからといってそれをリストバンドと呼ぶかどうかはまた別の話です。日ごろ輪ゴムを手首にかける機会があるとすればそれはまちがいなく一時的な便利のためであって、それ以外の理由はありません。

待てよ、だとするとこれはファッション的な意味合いをもったちょっとあたらしい輪ゴムなのではないか、と僕は考えます。輪ゴムをファッションとして考えるのではなく、ファッションとしての輪ゴムを考える、それはたしかに逆転の発想です。輪ゴムじゃなくても良さそうなものだけど、そんなつまらない揚げ足取りをしてもしかたがありません。一見の価値くらいはあるような気がする。

そうして中身を引っぱり出してみたらみたで、今度はまた別の大きな壁にぶち当たるのです。


後編につづく。

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