2009年5月12日火曜日
彼、あるいはスマートボールの行く末 その1
ホワンホワンホワ〜ン
「この着信音はしっぱいだな。もしもし」
「ピス田です」
「ごくろう」
「博士ですか」
「他に誰がいるんだ」
「ターゲットを発見しました」
「やれやれ!」
「ずいぶんヒゲが伸びてます」
「手間をかけさせる男だ」
「今のところ動く気配はなさそうです」
「まるで逃亡者だな。結局どこにいたんだ」
「浅草です」
「浅草?」
「浅草です」
「浅草なんかでいったい何をしとるんだアイツは」
「それが…」
「どうした」
「パチンコみたいです」
「パチンコ?」
「たぶんそうだとおもうんですけど」
「たしかか?」
「やせっぽちのヒゲメガネでした」
「そんな生きものは浅草だけでも掃いて捨てるほどいるだろう!」
「あとは…」
「なんだ」
「研ナオコの『夏をあきらめて』を口ずさんでたので…」
「ああ、それならまちがいない」
「まだ5月なのに…」
「まったくだ」
「なんだか不憫で…」
「気のせいだ」
「そうですかね…」
「しかし下町でギャンブルとはおそれいる」
「わたしも目を疑いました」
「予想外にもほどがあるぞ」
「でも昔よくやってたって聞きましたよ」
「昔っていつだ」
「10代のころはバイト代全額つぎこんだことあるって」
「どうしようもないという意味では今とあんまり変わらん気もするが」
「そうですね」
「とりあえず捕獲にいこう。今どこだ」
「おいしい揚げまんじゅう屋さんの前です」
「揚げまんじゅう?」
「ハフハフ」
「食わなくていい!だいたい仲見世に何軒あるとおもってるんだ」
「いちばんおいしいとこですよ」
「雷門のでかい提灯に貼り付いとけ!」
ガチャン
*
つづく
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