このところずっと、お医者さまでも草津の湯でも治らない、というかハナから相手にしてもらえそうにない、ちょっとした症状に悩まされて回復の気配もさらさらなく、ためいきしきりなのです。
他所では何と呼ぶかわかりませんが、僕の郷土では昔からこれをナキウサ症候群と呼んで一過性の失調に数えられています。要は「TXT」の3文字が泣いているウサギにしか見えなくてほとほと困り果てる症状のことです。
一般的な日常生活において「TXT」にふれることはそれほど多くありません。そもそもこの3文字はほぼテキストファイルの拡張子にかぎって使われる文字列であり、仮に目にするとしても大文字ではなくむしろ小文字です。症状も末期になると小文字でも発作を誘発しかねないのですが、ともあれ通常は3つの大文字がひっきりなしに目に飛びこんでくる状況などまずないに等しいと言ってよいでしょう。
ところがOSがMacの場合は事情がすこしく異なります。何しろご覧のとおりアイコンにはっきり「TXT」と書いてあるのです。字でそのとおり書いてあるからまちがいようもないし、すごくわかりやすい。すごくわかりやすいけれども、それだけにしょっちゅう目に留まります。テキストファイルをまいにち湯水のごとく扱う人にとってはなおさらです。
おまけにこれがまた症状の悪化を加速する大きな原因のひとつだとおもうんだけど、アイコンの端っこがちょこっと折れてて耳みたいなんだよね!こう、ピョコってかんじで無駄に愛くるしさを演出してくれているというか、どことなくさみしげで、きもち悄気ているようにもおもわれるし、何かツラいことがあったんじゃないかとおもったらもういてもたってもいられず、おい大丈夫だって、そうしょんぼりするなよ、やなことばっかりじゃないよ、そんな顔されたらこっちまでキュッと胸がしめつけられて嗚咽をこらえながら机に突っ伏したくなるだろうがああああああ!!!
※これが発作です。
症状を緩和するにはいっさいの電子機器を遠ざけ、どこかしずかな町に行ってひなびた宿に部屋をとり、秋の冷めた風にやがて色づく山肌なんかを眺めながら、ひと月ばかり静養するのがいちばんです。沢のせせらぎや銀木犀のやさしいにおい、どこかの家で番をする犬の遠吠えに、閉じ込められていたわずかな野生がむくりと頭をもたげます。滝壺のしぶきを浴び、山の恵みを食らい、淀んでいた血液が音を立てて巡り始めます。身体が溌剌なら心も闊達です。こうなればもう「TXT」も単なる文字にすぎません。ゲシュタルトっぽい何かが崩壊してたにちがいないがそれにしても我ながら完全にどうかしていた、まったくこれが泣いているウサギに見えただなんて、どこにそんなウサギが、ウサギが……泣いてるやないの……。
ことほどさように症状が末期に至ると、アイコンはもはやこんなふうにしか見えません。
かなしい。なんだかよくわからないけどすごくかなしい。そしてくるしい。なのに愛くるしい。そしてくるしい。
5 件のコメント:
はじめまして、二週間ほど前にタマフルのライブ(ポッドキャストで)でダイゴさんの事を知って、曲を聴いたら、すっかりハマってしまい、結婚してから初めて嫁に頭を下げてCDを買ってもらった者です。トラックと詩のなんとも言い難いハーモニーにひかれ、聴き込んでいます。(説明書は最高ですね!)鯣の様な歌が好きな私にはたまりません!
ブログも読んでますよ、昨日ピス田助手の手記もやっと読み終わりました。あまりの長さに気軽に読み出した分ビックリしました。
これからも楽しみにしてます。
ちなみにナキウサ症候群はうつるんですね!
私もナキウサにしか見えなくなりました・・・。
私にはスーパーのレジ袋に見えます。寛解を願います。
> チムチムチェリーさん
はじめまして、こんばんは。
ここ2週間でお手に取られたばかりなのに
もうピス田助手の手記まで読まれたなんて
さすがにいろいろと重たかったのではないか
とおもいますが、でもうれしいです、すごく。
説明書も楽しんでくれているなんて、冥利に尽きます。
これからもどうぞゆるゆるとお付き合いくださいますように。
どうもありがとう!
> ちゃりおさん
言われてみればたしかにそう見えますが
今度はレジ袋がウサギに見えそうで心配です。
私はナキウサ症候群と言うことに気がつきました TXT
> 匿名さん
あっ最近ちょっと治りかけてたのに!
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