イリオモテ山中湖さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. おせち料理に新メンバーを加えたいのですが、オススメは有りますか
むむむ、そうですね、ひと昔前なら語呂合わせで縁起の良さそうなものを選ぶ方向で考えていたでしょうが、現在ではどちらかというと元旦に食べる豪勢な料理の詰め合わせで、何ならフレンチとか中華もあって、おまけに「本日中にお召し上がりください」だったりと、気づいたら敬虔な願いそっちのけの陽キャ祭りみたいな様相になっているので、よほどのインパクトでないと新メンバーとして認められない不安があります。
何しろ重箱に伊勢海老とかシャトーブリアンが葉巻を吹かしながら伝統文化みたいな顔で鎮座していたりするのです。伊達巻きや数の子はそこにいません。人間界で言ったらドナルド・トランプくらいのトリックスターでないととても太刀打ちできるものではない。
また仮にトランプ級の一品を加えることができたとしても、今度は果たしてそれをおせちと呼べるのか、それを言ったらそもそもフォアグラのテリーヌが入ってたりするのはどうなんだという話だけれど、場合によってはおせち派(MOGA: Make Osechi Great Again)と反おせち派にぱっきりと分断され、やがて内戦になり、円が急落し、国が国としての体をなさなくなるばかりか、今こそ変革の時であると方々から意気軒昂な鬨の声が上がり、そこへ本来のおせちとその地位を取り戻すべく原理主義を唱える一派が現れ、埒が開かないことに苛立った一部の強硬派が歴史的な正当性を盾に武装勢力と化し、東京湾にあるちっこい猿島を占拠したあげく一方的に独立を宣言、ますます混乱に拍車がかかり、ここにきて反目しあっていたMOGA、反MOGA、原理主義穏健派がやむなくおせち連合として一時団結、猿島の鎮圧を試みるも、数日かけて丁寧にコトコト煮た黒豆や、おせちくらいしか出番のないチョロギによる思いのほか切ない必死の抵抗で難航、最終的に猿島くらいなら沈めてもいいという苦渋の決断に至り、地図から島がひとつ消える未来も、つらつら考えると全然ないとは言えますまい。多くの犠牲を出してまで守りたかったおせちとは一体何だったのか、各方面がそれぞれ自省に向かえばいいですが、そうはならないのが人類です。ことによると他国を巻きこんだ大戦に発展しかねません。
その上で一品、加えるとしたら僕は餅を選びます。餅かよ!とお思いでしょうが、そもそも餅はおせち外の存在であり、裏を返せばどのおせち宗派も認めざるを得ない正月の象徴です。落とし所を失った彼らをもう一度結び合わせる食べ物があるとすれば、餅以外にありません。
遠からぬ未来、子どもたちが「ねー、なんでお雑煮があるのにおせちにもお餅が入ってるの?」と無邪気に尋ねる様子が目に浮かびます。
僕らの子孫である親たちはこう答えるでしょう。「それには長い長いお話があってね……」
A. 餅です。
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その494につづく!

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