案ずるより産むがタカシさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)
Q. 短歌や俳句のTV番組やYoutubeの動画を見ていると怒りが抑えられなくなります。ラップや歌の歌詞を見てもそう思うこともありますが、短歌や俳句は特に顕著です。限られた文字数を無駄に使い、言うべきでないことに無駄な文字数を費やしている句を見ると許せなくなります。そしてそれが他人に誉めそやされていることにも無性に腹がたってしまいます。自分でもどうかしてると思います。自分でも俳句は作りますが、文句を言えるほどのものは作れていないのに、他人の表現を見て怒りの感情が異常なほど湧き出てしまいます。もちろん口からも出てしまい、友達やパートナーに愚痴みたいに言ってしまって、しばらく後に自己嫌悪する日々です。自分がもし、自分が言っているような批判を受けたらきっと平静ではいられなくなります。なのに口にするのをやめられません。最近はSNSやTVから離れるようにして何とか心の平穏を保とうとしています。大吾さんはそうしたことは当然ないとは思いますが、日々心を乱されないために何かした方がいいように思うことがあれば教えてください。
正直なお人柄とそれゆえの懊悩がひしひしと伝わってきます。ご自身でもよくないと痛感しているだけに、これはつらいですね。
僕はというと、うーん、短歌や俳句ではないけれども、うっかり耳にしてしまった歌詞にギョッとすることは大人になってからわりとちょいちょいあります。うっかり口をついて出ることもあった気がするけど、ただ怒りでは全然ないです。どちらかというと冷や汗が流れます。
言葉がどうこうというよりも、たとえば美味しい炒飯を食べたことがない、もしくはそもそも求めていないのに「炒めればいいんでしょ」とてきとうに作ったひと皿を食わされるのにも似た、どちらかというと主に良し悪し以前の戸惑いですね。
ただ歌詞にかぎらず、なんであれ時代とか潮流というものがあるので、そういうもんなのかもな、と今はわりとソフトに受け止めるように努めています。あくまで内心でギョッとしているだけです。僕だって上の世代からギョッとされてる可能性、めちゃめちゃありますからね。
さてその上でいただいたご質問は、言葉との向き合いかた云々ではなく、むしろストレートに心のエラーである、と僕はおもいます。最大のポイントは「怒りが抑えられない」という部分です。短歌や俳句における言葉のあり方は、たまたま怒りのトリガーとして機能したにすぎません。もし言葉よりも料理に重きが置かれていたら、巷にあふれる簡単で美味しい手抜き時短レシピなんかがトリガーになっていた可能性もあります。したがってここでの問題はその対象がなんであれ、なぜ怒りが抑えられないのかです。わかっているのにやめられないところにそのヒントがあるかもしれません。
そもそも、怒りには快楽の側面があるらしいと言われています。古くはアリストテレスがすでに言及していたほどです。そしてべつにその方面の専門家でもなんでもない僕も、経験的にそう感じます。これをもうすこし科学的に解きほぐしてみましょう。
怒りにはドーパミンという、神経伝達物質の放出が伴います。このドーパミンには、放出の原因となった対象への距離を縮める傾向というか、側面があります。直接的に欲するというよりも、たとえば誰かがズルをするのを見て怒りを感じたら、以前よりも他人のズルを感知しやすくなる、ということですね。感知しやすくなれば当然、怒りの頻度も増えることになります。正のフィードバックによる悪循環の完成です。怒るたびに次の怒りを予約している、と言っても過言ではありません。
またこの悪循環は、とりわけ外に向けて発散する(ポストしたり愚痴ったりする)場合に顕著だとされています。なんとなれば一時的にスッキリはするので、以降はそのスッキリを求める回路が強化されてしまうのです。
なのでまさに「離れる」ことこそが最適解です。自覚的に距離を置かないと、過去のドーパミン作用によって無意識に近づいてしまいます。
以上を踏まえて、僕らのぷよぷよした脳みその内側で何が起きているかを、この際みっちり叩きこんでおきましょう。理性の問題というよりは、生物として不可抗力な挙動のひとつであると理解するだけで、きもちがすんげー楽になるし、世界と適切な距離を保つことの大切さが骨身に沁みるはずです。
悪循環に陥っている認識があるならばそれはもう、見るたびに怒るというより、怒るために見るフェーズに入っています。
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あとは、そうですね、これはなんというか人生哲学みたいになってしまうんだけど、なるべく物ごとの良い面を抽出するようにふんわり心がけてみてください。誰であれ、そしてなんであれダメな理由を挙げるほうが圧倒的に楽で、長所を具体的に抜き出すのはめちゃめちゃ難しいです。ダメ出しのときはやたらと具体的なのに、褒めるときは良いとか素晴らしいとかヤバいとか、語彙がいきなり激減します。埋もれて見えない長所を拾い上げることのできる人はそれこそ、絶滅が危惧されるほどの希少種です。
言葉を尽くすなら、それこそここにその甲斐がある、と今の僕なんかは自戒をこめておもいます。
A. 脳みその内側で何が起きているかを、みっちり叩きこんでおきましょう。
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その492につづく!