【前回までのあらすじ】
生まれて初めてSP針と真空管アンプでSP盤を聴かせてもらってじたばたしています。
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目からウロコどころか、目玉がそのままポロンと転がり落ちるくらいちょっと衝撃的な体感がそこにありました。ブルースがどうとか曲がどうとか以前に、この音楽体験そのものに圧倒されたというべきかもしれません。この音はいったい何ごと!?SP盤て、こんな世界なの!?7インチとは世界が、というよりもうこれ惑星がちがうんじゃないの!?
「これは誰の曲ですか?」
「これ?これは Johnny Guitar Watson」
「Johnny Guitar Watson!?」
ヒップホップを聴いてきた人ならすぐにピンと来るその名前にも驚いたけれど、僕が知っているのは70年代の Johnny Guitar Watson です。60年代に活動していたことも何となくは知っています。でもまさか50年代までさかのぼれるとは思いもよらなかった。昭和で言ったら「ALWAYS 三丁目の夕日」より前だし、東京タワーさえそのころはまだ建ってません。
そのころの新宿
でもこの日いちばんの驚きはそのあとにありました。「こんなのもあるよ」といって店主がかけてくれたのは、James Brown の "Try Me" 、そのSP盤だったのです。
JBは同じ曲を何度もレコーディングしているので、"Try Me" なら僕もわかります。前回挙げた "Revolution Of The Mind" でも演ってるし、一聴してかなり古いバラードだとわかってはいたけれど、50年代のSP盤に吹き込まれてたなんて僕の世代ではそんなのもう、レコード屋さんに足繁く通ってたって知りようがない話です。売ってないし。JBを好きな人はそれこそ数えきれないくらいいるとおもうけど、ファンクに目覚めるよりずっと以前のSP盤まで手にする人がどれくらいいるんだろう?
そんでこの "Try Me" がまた超イイの!耳から心臓を直接引っ掴まれてガンガン揺さぶられたと言うより他に表しようがありません。しかもこれJBがまだ25歳だったころの録音ですよ!こないだUNDER THE WILLOW kitchen@新宿タワレコの控え室で「ファンク以前のJBはべつにおもしろくない」みたいなことを臆面もなく話してたんだけど、五体投地なみの土下座で全面的に撤回したい。すくなくともSP盤で聴く1958年(←東京タワーができた年)の "Try Me" は掛け値なしに最高です!
要は前回、ライブに準ずるくらい体験としてのよろこびがある、と書いたけれども、それを言うならこの日の体験こそがまさしくそれだった、ということです。とにかくあまりにも圧倒的で、僕はレコードのことなんてなんにもわかっちゃいなかったと痛切に思い知らされました。時代を遡れば遡るほど衝撃が大きくなるって、いったいどういうことなんだ?他にもいくつか聴かせてもらったんだけど、とくに(本来の意味での) R&Bは好みにもぴったり沿うかんじで本当に良かった。
「SP盤だとあとシャンソンなんかもね、いいんだよね」
「シャンソン…良さそうですね」
「エディット・ピアフとかね。今ないけど」
そんなに聴いてこなかった時代のブルースを聴いてもメチャ良いとおもえるんだから、そりゃシャンソンだってカントリーだってきっとすごく良いにちがいないのはもう実感としてわかります。エディット・ピアフならなおさらそうでしょうとも!SP盤で…超聴きたい…!
レコードに限ったことではないけれど、好きなものをずっと好きでいるとときどきこうして思いもかけない機会に巡り会います。それまで好きだった時間が長ければ長いほど、その良さがより深くしみわたって体中の細胞にびりびりと電流が走るのです。
しかしこうなるともう、ほとんど歴史の勉強ですわね…。
2 件のコメント:
だいぶ前に壊れて処分してしまったのですが、またレコードプレイヤーが欲しくなってきました。
mp3に慣れて耳が退化してしまっているかもしれません。
> 三ツ星シェフさん
最近のレコードプレイヤーはUSB対応でmp3にも変換可能なんですって。どっちかじゃなくて、両方ってところがいいですよね。
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