量り売りのお店に行って「これ300グラムください」と声をかけたら、あらかじめ取り分けておいたとおもわれるパックを店員さんが手に取ってこう言うのです。「420グラムですけど、これでいいですか?」
え?
いや、あの
300…
そりゃいくら何でもどんぶり勘定すぎやしませんか、と突っ込みたいきもちが湧き上がる一方で、さも余裕で許容範囲内のように言うから、却ってじぶんがひどくけちな注文をしているようにもおもわれてきて、何だかいたたまれなくなりました。
ひょっとしてここはやっぱり「いいとも!300でも400でもいっしょだからな!派手に盛ってくれ!」と気前のいいところを見せるべきだったんだろうか?
けっきょく330グラム買ってとぼとぼと帰るわたくし。好きなものを欲しい分だけ手にしているのになぜしょんぼりと家路につくことになるのかさっぱりわからない。
*
馬の耳にエンピツさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)東京近郊だと府中とか品川とか船橋あたりでよく使われることわざのひとつですね。
Q: 町田にここ!という思い出の場所はありませんか?
なぜ町田なのかというと、僕の実家があるからです。よくご存知ですね、しかし。
ご存じない方に説明すると、町田市とは東京都のすみっこに位置する、イタリア半島みたいな形をした市です。隣接する駅が上りも下りも神奈川県内にあるので、かつては東京の一部と言っても信じてもらえないようなところがありました。実際120年くらい前までは神奈川県に属していたそうなので、もしかすると厄介払いされたのかもしれません。
小田急線
横浜線
僕が暮らしていたのはかれこれ20年くらい前のことなので、そのころに比べると町田もずいぶん様変わりしています。とくに駅前の変わりぶりと言ったら目を疑うくらいです。現在は町田駅の真正面にどーんと大きな通りが街道まで突き抜けているのですが、これが昔はありませんでした。
この道ができる前はちいさな商店がこまごまと並んでいて、昼も薄暗く、決して洗練されていたとは言えないけれども、暮らしと結びついたディープな活気がありました。僕が好きだったのはプラモデルやホビー系のツールも充実している文房具屋とか、そこらのコンビニよりよっぽど広い駄菓子屋(これは町田の名物のひとつでした)とか、そもそもご飯が大盛りなのにさらにラーメンがまるまるひとつ付いてくる焼肉定食(焼肉定食です)を700円かそこらで食べさせてくれるくたびれた定食屋とか、そんなのです。残念ながらどれも今はありません。年配の人に聞くと僕が通っていたころでさえずいぶん変わったと言っていたから、さかのぼればさらにディープな町だったんでしょうね。
当時ときどき足を運んで、今も変わらずある店といえば、カフェ・グレという喫茶店です。水出しコーヒーをお店で初めて目にしたのはたしかここだったとおもいますが、それよりもむしろコーヒーのおかわりが半額になるという理由で通ってました。すごく雰囲気のよいお店です。今考えるとよく十代のころにひとりでこんな店入ったな、と首をかしげないでもありません。たぶん背伸びをしてたんだとおもう。
他にもバイト代のほとんどをつぎこんでいたパチンコ屋とか、夜中に床掃除をした東急ハンズとか、セールになると朝6時半(!)に開店してた20年前のユニクロとか、保険証をムニャムニャしてまでAVを借りに行ったレンタルビデオ店とか、十数年の長きに渡る争いにとうとう終止符が打たれた今川焼戦争の跡地とか、初めてネルドリップのコーヒーを飲んだマリポーザという喫茶店(今はレストランです)とか、月に一度コーヒー豆が半額になる日があってそのために学校を早退していた卸のお店とか(100グラム150円以下になるのでお小遣いでも買えたのです)、てっきりあやしい化学薬品の工場か何かだとおもっていた会社の意外な正体とか、挙げていけばキリがありません。
あとはえーと、そうですね。すこしエリアを拡大すると、鶴間公園がものすごく好きな場所でした。今で言うと、グランベリーモールのすぐそばです。昔から行くたびに「ここ好き!」と心から感じていて、そういう刷り込みがあるものだから大人になって行ってみたけど、記憶よりもずっとちいさな公園だったことにびっくりしたくらいで、尋常ならざる贔屓目が何によるものなのかはちっとも思い出せませんでした。よい公園なのはたしかです。「ものすごく好きだったときのきもち」だけが、今はふわっと胸をよぎります。
A: (あえてひとつに絞るなら)鶴間公園です。
甘酸っぱいようなほろ苦いようなこのきもち、何かに似てるな…なんだっけな…としばらく考えてふと気づきました。
初恋だ…。
公園なのに…
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質問はいまも24時間無責任に受け付けています。
dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)
その150につづく!
6 件のコメント:
分量から推するに生豆のことではないんでしょうね。
430gのくだりを読んで、真っ先にこのようにコメントしようと企んだのに、全部を通してずいぶんと珈琲の話をしているじゃないですか?
これじゃ、記事のどこに触れたのかわからない。
説明口調につき、かさの増えた文章から、130gの贅肉感が拭えません。
> f.kさん
ハハハ!言われてみればたしかにコーヒーのことばかり話してますね。
ちなみに330グラムは、キムチです。
めちゃ好きなお店があるんです。
さて言行録のまとめ読みでもしようかしら
と思ってずいずい読み進めていたらここで見覚えのある質問を見つけました。
とりあえず飲みかけのビール缶を置いてカフェグレに行ってきます。クロックムッシュを食べよう・・・
その前にまずは引き続きログのまとめ読みをば。
すごく嬉しいものですね。ものですよ。ハッピーです。
> 馬の耳にエンピツさん
クロックムッシュ!わかってらっしゃる!
涙腺がゆるむなあ…僕もよく注文したものです。
まだあの通りがアーケードだったころに!
>月に一度コーヒー豆が半額になる日があってそのために学校を早退していた卸のお店とか
あのあたりで半額になるのはロッセでしょうか。卸かは分かりませんが…カフェグレに行くとチーズケーキをリピートしてしまいます。
> friskyさん
そういえばロッセも昔からある喫茶店のひとつですね。
僕が通っていたお店は町田の繁華なエリアから
ずーっと離れたところにポツンとありました。
店舗というより倉庫みたいでしたが
残念ながら今はもうありません。
そういえば僕もカフェグレではチーズケーキを頼んでいたような。
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