2008年12月14日日曜日

危険と謀略うずまくジャングルの薬売り




ピンポーン


「はい、どちらさま?」
「富山の置き薬です」


えー!


ひと昔前ならともかく、危険と謀略うずまくコンクリートジャングルのどまんなかで今どき富山の置き薬を売りこみにくるのんきな薬売りがいるものか!

あやしい匂いがぷんぷんしすぎて、話にならない。薬売りだなんてまったく、信じてはいけません。振り込め詐欺だってもうすこしマシな嘘をつくだろうに、いかに僕がガンビー並みのバカとはいえ、よりにもよって21世紀に富山の薬売りとは人をあなどるにもほどがある。たとえそうだとしても似て非なるものにちがいない。うっかり手を出したらエイミ・ワインハウスみたいになっちゃうんじゃないだろうか?なにを企んでいるかしらないが、だまそうとしたってそうはいくもんか。そこにはオオカミが幼気な赤ずきんを食らうべく口をひらいて待ちかまえているかもしれないのだ。




決してドアを開けてはいけない。




何しろドアを開けたが最後…






置き薬を置くことになるのです。



うぉウ、そのへんの薬局には置いてない、富山産のレアな漢方がいっぱいあるじゃないか。こいつァ「赤玉はら薬」だ!すごい味方がウチにきた!





お向かいの部屋は「置き薬です」と言ったとたんにものすごい音を立ててインターホンを切ったそうだけど、疑心暗鬼にみちあふれた都市にあってそれはむしろ確かで基本的な自衛策なのだろうし、場合によっては僕のほうこそ逆にうかつな対応を責められてしかるべきなのかもしれないのです。

でも置き薬ってコレ、いいシステムだとおもうんだよな。数ヶ月後に使った分だけ集金にくるから、ひとつでも開封するまでは買ったことにならないんだけれど(モノがモノだけに服用を勧められることもない)、かかるコストとリスクを考えたら、短期的な利益に重きが置かれるこの時代でスタートできる商売では全然ない。古くからの実績とたしかな信頼あってこその商いです。でもすくなくとも僕よりも下の世代は「置き薬」の存在を知らない人もあるだろうし、都市部に住まっているならなおさら怪訝な顔をするとおもう。僕らはそういう時代に生きている。

「よろしければこの先30年、50年と末永くおつきあいくださいませ」という薬屋さんの口上をあとから思い出して、きっと昔からそういうものだったんだろうと気づいたらなんだか泣けてきた。ドアをあけてよかった。

がんばれジャングルの薬売り!

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