2021年7月16日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その335



超10ギガさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 時間指定の荷物が届かない時、何して時間潰しますか?


時間指定の荷物が届かないときにどう時間をつぶすか……いわゆる時間指定の荷物が届かないときにどう時間をつぶすか問題ですが、これもまた現代人が抱える、もしくはなぜこんなものを抱えなくてはいけないのかさっぱりわからない大きな悩みのひとつです。

僕の場合はどう過ごすかよりもむしろ、どう過ごしてはいけないかのほうがはっきりしています。具体的に言うと、うんこをしてはいけません。去年の質問箱でも触れましたが、僕の排便は宅配を磁石のように引きつける性質を持っているので、トイレにこもれば必ずそのタイミングでピンポンが鳴り、配達する人と受け取る僕の双方にとって不幸な事態が発生します。実際には手を伸ばせば届くほどの至近距離にいるにもかかわらずです。

それはもちろん、裏を返せばいつまでたってもやってこない時間指定の荷物を瞬時に引き寄せる能力でもあります。思いのままに利用できるならこんなに便利な能力はありません。読んで字のごとく、便によって利する力と言えましょう。

しかし実際にはこれほどままならない特殊能力もありません。何しろどうあがいても身動きのとれないその状況こそがお届けのトリガーになっているのだから、触れるものすべてを黄金に変えるミダス王の手と同じレベルのジレンマです。

とはいえうんこをせずに待っていれば受け取れる話なので、それはまあどうでもいいといえばどうでもよろしい。問題はうんこをせずに何をするかということですね。

マンガを読んだりゲームに興じたり腕立て伏せをしながら時計をちらちらと気にしつつそわそわ待つのも、単なる荷物なのに好きな人が初めて部屋に来るみたいで業腹です。できれば待ちわびたことなどおくびにも出さずに「ああ、来たのね」と大人っぽくクールに迎えたいし、そうでなくてもせめて「あ、いらっしゃい」と笑顔で余裕こいて迎えたい。なんかもう完全に好きな人を初めて部屋に迎える前提の頭になっていますが、ほぼ同じといえばほぼ同じなのでしかたがありません。初めて部屋に来るならむしろこっちから駅まで迎えにいけよとか言われそうな気もしますが、これは宅配される荷物の話です。

個人的にオススメしたいのは、ゴルフボールを雪だるまのようにひとつずつ上に積んでいくことです。僕自身は3つまで積んだことがありますが、いやでも時間を忘れて集中せざるを得ないし、そのうち世界がまっ白になって自分とゴルフボールだけになります。今にしておもうとあのときの僕は宇宙の真理の一端に触れるとこまで行ってたんじゃないかとおもう。ただ本当に無我の境地に達してしまうと肝心の呼び鈴も聞こえなくなるので注意が必要です。

無為な時間をスリリングに楽しむなら、思いきって最寄りのコンビニまで出かけてくるのもアリです。もしかしたらその数分の間にすれ違ってしまうかもしれないし、帰宅時のタイミングで鉢合わせもあったりして、ギャンブル性に富んでいます。ミスって受け取れないダメージがリスクとしてある分、うまく受け取れたときの射幸感はただ待つよりも莫大です。

しかしまあ、料理あたりが結局そこそこ時間も使うし、いちばん無難かなという気がしますよね。常備菜だったら翌日以降の食卓がちょっと豊かになるし、もしやってくるのが荷物でなく好きな人だったら「カレーつくったんだけど……」とかかなりポイント高そうな気もするし、もうそういう妄想はいいからという人だって、荷物を届けてくれた人に「あの、ちょっと作りすぎちゃったんで、よかったら……」とか言ってそこから始まる別の時間指定がまったくないとも言い切れないわけですから。


A. 手料理で明るい未来を勝ち取ります。




質問はいつでも24時間無責任に受け付けています。

dr.moule*gmail.com(*の部分を@に替えてね)


その336につづく! 

 

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