2007年10月5日金曜日
アン・ピーブルスとカルティエ=ブレッソンの共通点
すくなくとも僕にとっては、レコードもまた印刷物のひとつです。30センチ四方のジャケットって、よく考えたらこれほとんどポスターじゃないか。洗濯物みたいに、青空の下でずらずら並べて干せたらどんなに見映えがするだろうとおもう。ごらん、あのひときわ目立つむさくるしいおっさんがアレン・トゥーサンだよ、とか指さしたりしてね。べつに干さなくたっていいけど。
そんなにいっぱい持っているわけではないし、嗜好もそうとう偏っているのだけれど、それでもその美を誰かと共有したくなる、印刷物として眺めてたのしいじつにキュートなLPが、ウチにもいくつかあります。写真がいいとかそういうことにかぎらず、ビジュアルとしてしみじみすてきなデザイン性に優れたジャケット、たとえば、これです。
Ann Peebles / Straight From The Heart
いい写真ですね…(ためいき)。ロゴも可愛い!でもこのLPの真骨頂はそこではなくて、じつはジャケットの紙質にあるのです。写真そのものならCDでも見ることができるけれど、LPは光を吸いこむ上品なマット感があって、写真のおだやかでやわらかな階調がより映えるよう、じつに丁寧につくられています。このアルバムはそもそも名盤としてよく知られているのだけれど、それもうなずける熱の入れようが、ジャケットからも女王様のムチのようにぴしぴしと伝わってきます。
20世紀を代表する偉大な写真家のひとりカルティエ=ブレッソンは、写真の軟調な仕上がりに大きなこだわりを抱いていたそうです。だから当時焼かれたヴィンテージプリントと、現代の専門家が焼いたモダンプリントでは、グレーの階調におどろくほどの落差があって、実際見るとかなり驚かされるのだけれど、それはホントに手漉き和紙とコピー用紙くらいちがうし、この際思いきって長嶋茂雄とプリティ長嶋くらいちがうと言い換えてもいい。それと似たようなことをこのジャケットにも言える気がするのです。階調までコントロールしていたかどうかはともかくとして(それはあやしい)、すくなくともカルティエ=ブレッソンの写真にも言えるまろやかな質感と視覚的な余韻がここにはたっぷりと含まれていると言い切ってしまいたい。眺めてなんだかうっとりしてしまう。
でもここでだいじなのは、これが「写真作品として有名なのではない」ということ。多くのアノニマスな仕事にうもれながら、いろんな理由で結果として残る美が、好きです。そういうものにはたいてい詩情が、ラストノートみたくほのかに漂っている。
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関係ないけどアンジー・ストーン(Angie Stone)、新譜でるんですね。あやうく乗りおくれるところだった!ゆったりとして切れることのない、こういう息の長さはすてきだ。彼女がアイドルグループの一員として30年くらい前のレコードではつらつとラップしているのを聴いたときはさすがにびっくりしたものだけれど(Vertical Holdが最初だとおもってた)、彼女いったい、今いくつなんだろう。円熟した味わいがあるのもむべなるかなというか、ディアンジェロはどうした。
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