2025年10月31日金曜日

アグロー案内 VOL.10 リリースのお知らせ

どこからきてどこへ行くのか、今もってさっぱりわからない暗中模索のアグロー案内、今回もぶじ新作がリリースの運びと相成りました。おかげさまでなんとVOL.10です。すごい!


しみじみと感無量です。何と言っても今回は配信までまだゆったりと間があります。前回の慌てっぷりを踏まえて、今回も告知から配信まで何と3日しかありませんとかやれたらよかったのかもしれないけど、何も狙ってそうしていたわけでもないし、そもそもそんなことでおもしろがる年でもありません。ここはむしろ大人としての余裕を見せつけておくべきでしょう。

VOL.10の配信日は11月19日(水)です。

それだってめちゃめちゃ短いというか、わりとすぐな印象ですが、何しろ前回が前回だったので、ものすごく余裕があるように感じられます。人生、いつでもこれくらいの大らかさでありたいものですね。

今回もまた新作、リメイク、そしてもちろん、山本和男も健在です。とりわけ山本和男の名曲感と脱力感のギャップは過去イチかもしれません。こういうのを真剣に作れるよろこびはほんと、何物にも代えがたいものがあります。助手である加藤くんの叫び声を聞くだけで腹を抱えてしまう。

リメイクについては、元々自作のトラックではあったので実際そうなのだけれど、僕としてはむしろ正規リリースという印象の一編です。むしろこうして仕上げてもらえる日を待ち続けていたと言っても過言ではありません。カズタケさんもすごく楽しんでくれたので、その甲斐はまちがいなくあります。いい曲です。ご存じない方もふつうにおられるという気がするので、ここはもう、あえて新曲として推していきたい。

新作はSNSでもすこしふれたけれど、これまでにない工程だったので、お話ししたいことがたくさんあります。僕としても思い入れの強い、大好きな一編です。毎回こんなかんじでできたらいいのにな、と思うのだけれど、なかなかそうもいかないのがもどかしくもあります。でもこれはもう本当に心の底から、できてよかったと噛みしめずにはいられません。

かつてリリースした4枚のアルバムのプロデューサーでもある古川耕さん(今これを言うと驚かれるほどすっかり著名な方になってしまいました)が、「最高」と太鼓判を押してくださったことも、しれっとここでアピールしておきましょう。僕のことを知り尽くした古川さんが太鼓判を押してくれるということは、過去と同じではなく今に至っても尚アップデートできていることの証でもあるので、胸を張ってお届けできるものになっている、と断言していいはずです。

そして最後にこのVOL.10、これがあるのとないのとでは、配信の10日後に控えた「アグローと夜」の印象がおそらくかなり変わります。どうかどうか、楽しんでもらえますように!!

2025年10月24日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その467


トリックオアトリートメントさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)キューティクルを整えてくれないならいたずらするぞという、西洋の風習のひとつですね。


Q. 子供の頃に学習塾の問題文で読んだ短篇小説が忘れられません。少年2人が夜の海岸で話していて、1人がクラゲを漢字で書くと海月だと言います。もう1人が水母だと言います。主人公はそれを聞いていて、後日両方正しいと知るというだけの話です。誰の何という短篇かは調べても全くわかりません。なんとなく印象的で、忘れられない短篇小説は何ですか?


質問そのものより前段のほうが圧倒的に気になるやつですね。ひょっとして今ならAIが探してくれるのでは…と3種くらいのAIに尋ねてみましたが、やっぱり全然わかりませんでした。なんとも言えない静謐な味わいがあってめちゃ良さそうな短篇ぽいので、ご存知の方がいらしたらぜひご一報ください。

どういう話で何が起きてどんな教訓があるのか、みたいなのよりもこういう、なんだかわからないけどいつまでも忘れられない話は、いいですよね。ぐいぐい引きつけられる超絶ストーリーテリングも大好きなんだけど、しずかに沈殿して血肉になるのはむしろこういう作品なのかもしれないな、としみじみおもいます。

そうだなあ、今パッと思い浮かんだのは、芥川龍之介の「煙草と悪魔」です。先に書いたような静謐な味わいとか余韻は別にありません。共通点を挙げるとすれば、これといって特に教訓はないところです。

ストーリーはシンプルです。キリスト教の伝来に伴って、悪魔が日本にやってきます。もちろん、神を信じる人を誘惑したり唆したりするためです。

ところがまだキリスト教の伝来間もないので、信者がほとんどいません。信者がいないということは、悪魔としても誘惑したり唆す相手がいないということです。

することもなくて暇を持て余した悪魔は、園芸でもするかと畑を耕し、渡来の際に持ち込んだタバコを栽培し始めます。そういう話です。神とか悪魔とか信仰の話ではなくて、タバコの伝来についての話なんですね。悪魔がせっせと畑耕してんじゃないよ。

何がいいって、めちゃポップなところです。上に書いたあらすじだけでもわかるとおもうけど、内容的にはぜんぜん古さを感じません。感じるとすれば文体だけです。加えて、狡猾なつもりでいる悪魔がちょっとこう、バカなのがいいんですよね。

さらに言うと個人的にものすごく印象深い一文があります。「西洋の善が輸入されると同時に、西洋の悪が輸入されると云う事は、至極、当然な事だからである。」という部分です。これを初めて読んだ当時は善悪に西洋も東洋もないと思いこんでいたので、困惑した記憶があります。

話としてはどうでもいっちゃどうでもいい感じなのに、結果としてじぶんの人生哲学に大きく寄与したという点で、忘れられない一遍です。

こうしてみると全然、なんとなくの印象じゃないな。面目ないです。


A. 芥川龍之介の「煙草と悪魔」です。




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その468につづく!


2025年10月17日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その466


みつばち婆やさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. ワンルームなのですが、部屋のレイアウトがしっくりきません。模様替えをしては元に戻しの繰り返しです。これで良いと自分を納得させる考え方はないでしょうか。


模様替え、いいですね。僕も初めて一人暮らしをしたアパートがワンルームでしたが、ベッドとテレビとローテーブルを一度置いたらその先はもう何ひとつ移動のしようがない狭さだったので、言われてみれば模様替えという発想すらありませんでした。物もろくに増やせないし、いま考えると出入り自由の刑務所みたいなもんだったな、としみじみおもいます。模様替えができるということはそれだけで服役囚ではないことの証でもある、と言っても過言ではないのです。

過言な気もしますけど。

一方でオヤと目を留めたのは「元に戻し」という一言です。その「元」がしっくりきていないからこそ模様替えをするのだと思いますが、それがしっくりこない場合、選択肢は2つあります。そこから(1)さらに新たなレイアウトを模索するか、(2)元に戻すかです。そしてそこで元に戻すことを選択しているのだとすれば、元のレイアウトが相対的にまだましである、ということになるでしょう。

少なくとも、元に比べたら新しいレイアウトのほうがましだけどまだしっくりこないな、とはなっていないところがポイントです。

それはまた結果的に、「元」がその部屋で最も長い時間を過ごしているレイアウトである、ということになります。

とすればこれはただ自覚していないだけで、実は他のどれよりも満足度が高いレイアウトなのだ、と考えることもできるでしょう。

そんなことない!満足してたら模様替えなんかしない!と仰るきもちはよくわかります。ただ人が模様替えを望むとき、その理由は「しっくりこない」だけではありません。「飽きた」もあります。つまりときどき窓を開けて空気を入れ替えるように、日々に新鮮な印象を取り入れたいと感じている可能性もまた、大いにあるのです。

したがって、しっくりくるレイアウトよりも、むしろ模様替えそれ自体こそ重要で、かつ大きな意味があるのではあるまいか、と僕なんかは考えます。

そうなのだと決めつけるわけではもちろんありません。

どのみち正解があるかどうかなんて知る由もないのだし、それなら時たまの模様替えそれ自体を一時的に楽しんでもよさそうだな、とは言える気がするのです。ひょっとしたらいつの日か、めちゃめちゃしっくりくるレイアウトに巡り合ってワー!と狂喜乱舞する日が来ないともかぎらないですからね。


A. 模様替えそれ自体を心から楽しむのが吉です。




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その467につづく!

2025年10月10日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その465


めぞんいっこく堂さんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 尊敬する道具はなんですか?私は圧力鍋と食洗機です!圧力鍋なんて四桁の安物なのに、いつもすばらしい仕事ぶりにどれだけ助けられていることか…。


そういえば僕、圧力鍋って使ったことないですね…。煮豆とかあっという間にできるんだろうな、と夢想しつつ、いまだに2時間くらいかけてコトコト煮ています。食洗機もいずれは迎えることになるんだろうか…?

ひとり暮らしを始めた30年前から、今も現役のものがいくつかあって、それはもう、ただそれだけで畏敬の念を抱かないわけにはいきません。具体的には、えーとアイロン、フライパン、煎り網、文化鍋です。

アイロンはデザインが統一された一人暮らし用の家電セットで、たしか洗濯機、冷蔵庫、掃除機なんかが一緒になってました。いまも残っているのはアイロンだけです。たぶん今はもっと軽かったり、予熱が早かったり、いろんな機能がついてたりするんだろうけど、ちょいちょい使うわりにぜんぜん壊れる気配がないので、今もふつうに使ってます。毎回通電するしいつ使えなくなってもおかしくないので、労いの気持ちがいちばん大きいのはこいつです。

家電ほどではないけれど、木と金属の組み合わせなのでそれなりに老朽するはずだったのが、煎り網です。本来は大豆を煎るためのものだけれど、昔からもっぱらコーヒー豆を焙煎するのに使い続けています。使用頻度もかなり高いのに、思いのほか頑丈で、もう真っ黒です。構造としてはシンプルなので、いずれ朽ちても自分で補修しながら一生使い続ける気がしないでもありません。

一方、放置するか意図的に破壊しようとしないかぎり半永久的に朽ちないのがフライパンと文化鍋です。前者が鉄、後者がアルミ合金なので、朽ちようがありません。たしか一度だけフッ素加工のフライパンを誰かにもらって、わ〜くっつかない〜!とよろこんで使っていたものの、強火力に向かないばかりかだんだん傷がついたり食材がくっつくようになったりして、また鉄のフライパンに戻りました。シンプルな道具には、人生における教訓とか哲学にも通じるものがあります。

そしてとりわけ、これまでもくりかえし話してきた気がするけれど、文化鍋にはほんとうに頭が上がりません。炊飯のために生まれた鍋でありながら、野菜やパスタを茹でるにも重宝するし、煮たり炒めたりの常備菜も大抵これひとつで済みます。そしてアルミ合金なので、鉄のフライパンよりも圧倒的に長寿です。実際、手元にあるのはもともと実家で使っていたものなので、おそらく50年以上使われていることになるでしょう。うちにはもうひとつ、亡き祖母の家にあって引き取った未使用の文化鍋があるのだけれど、よく考えたら交換する機会もこの先ありそうにないので、ついこないだ妹に譲ると伝えたくらいです。

便利という視点でいえば、はるかに便利な道具はもちろん数えきれないほどあります。しかし尊敬という視点からすると、長い長い年月をへても変わらずここにあって微動だにしない強度と一貫性は、80代90代の大先輩に学ぶのにも似た、すごく大事なことを教えてくれている気がするのです。

ただ人に勧めるとしたら、文化鍋よりも鉄のフライパンを選びます。保温ができない、もしくは専用の保温機を必要とする直火の炊飯に比べると、フライパンのほうが圧倒的にハードルは低いし、持ち手があるぶん、フルスイングで侵入者を撃退する鈍器としても有用だからです。


A. 鉄のフライパンです。




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その466につづく!

2025年10月3日金曜日

ムール貝博士のパンドラ的質問箱 その464


レターパックで「ペンギン送れ」はすべて鷺ですさんからの質問です。(ペンネームはムール貝博士がてきとうにつけています)


Q. 私は最近唐突に英単語の意味を調べたくなり、まるで金斗雲を呼ぶ様に辞書を手元に召還したくなる事があるのですが、大吾さんの呼んだら飛んできて欲しいものはなんですか?


うーむ、ググってもいいのにそうしないところに気概を感じますね。

たまには単刀直入にお答えすると、「やる気」です。すべきことがあって、そのための環境もばっちり整っていて、時間もしっかり確保していて、やる気だけがないという、致命的な状況がちょいちょいあります。それほど頭を使うことがなく、とにかく手を動かしさえすればそれなりに進捗することであっても、やる気がないというただそれだけで岩のように硬直して動けません。

やろうとやるまいと、砂時計の砂は無慈悲に流れて、みるみる減っていきます。完全に浪費です。なんなら時間が足りなくなることまで含めて、じぶんでもぜんぶよーくわかっているのに、肝心のやる気だけがなくて、どうにもならない。

きもちの問題じゃん!とお思いでしょうが、違います。ぜんぜん違います。それは便秘時の便意みたいなものであって、うまいことやれば引き出せるときもあるけれど、引き出せないときはどうやっても引き出せないものなのです。

そんなときに便意が、じゃなかったやる気が、いやまあ便意もそうなんだけど、ピューンと筋斗雲のように飛んできてくれたら、こんなに助かることはありません。やる気がほしいときに便意が駆けつけたり、便意がほしいときにやる気だけ大群でこられてもそれはそれで困るんだけど。

もしくはレシピです。本にしてもじぶんのメモにしても、えーとあれどこに書いてあったっけ…と探すのがものすごくめんどくさい。なるべく1箇所にまとめるようにはしてるんだけど、数が多いとやっぱりえーとどこだっけ…ってなります。

そこにピューンと必要なレシピだけが飛んできてくれたらいいですね。コリアンダー小さじ1/2みたいなこともあるので、いっそのこと調味料とかスパイスごと飛んできてほしい。よし、あとはまかせろ!とかそんなかんじで調理に向き合いたい。

しかしまあ、実際のところ、いちばん飛んできてほしいのは…ムール貝博士かな…何と言ってもぜんぶなかったことにしてくれそうだし…。


A. レシピです。




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その465につづく!