2023年12月8日金曜日

小さなネジの職場放棄は何を意味していたのか


そのとき、ぽろりと眼鏡が落ちたのです。

目がいい人にはわかりづらいかもしれませんが、眼鏡はふつう、ぽろりと落ちることはありません。足首をつかまれてブンブン振り回されたとしても、頭に血がのぼるだけで眼鏡が飛んでいくことはおそらくないでしょう。ましてやただ立っているだけでぽろりと落ちることはまずありません。

それが落ちたのです。拾い上げて見るとレンズとつるが別々のパーツに分離してしまっています。そしてその両者をつなぐはずのネジがない。なぜいきなりネジが消失するのかさっぱりわかりませんが、とにかくない。損傷しているわけではないけれど、ネジがなければどのみち使えません。

そしてこれまた目がいい人にはわかりづらいと思いますが、このネジは異様にサイズが小さく、全長5ミリもありません。指でつまむにも苦労するほどの小ささです。ピンセットの方が圧倒的につまみやすい。日常生活で使われるネジとしてこれが最小なんじゃないだろうか。


それが今、床のどこかに転がっている…これはもう…見つけ出すのはムリだ…とあきらめかけたとき、タケウチカズタケが「あった」と指に乗せたネジを差し出すのです。その場にいた人々の尽力と奇跡にも似た幸運によって、眼鏡はすぐに修復されました。見つけてもまたすぐ落として失くしそうなほど小さなネジですよ!

なぜタケウチカズタケがいるかというと、そこが晴れたら空に豆まいてのステージ上であり、もう目前に迫るライブのリハ真っ最中だったからです。

なぜ貴重なリハの時間を極小のネジのために数人がかりで浪費しなくてはならないのか、見つかったからいいものの見つからなかったら十数分後にオープンが迫るライブをどうしのぐつもりだったのか、というかそもそも一体なぜこのタイミングで自然に分解などするはずもない眼鏡がいきなりぽろりと分解するのか、近々によくないことが起きる前ぶれとしか考えられません。まさかライブ中に何か…

相変わらず写真がリハのしかない

と、じつは人知れず戦々恐々としていた アグローと夜 2023@代官山 晴れたら空に豆まいてびっくりするほど何ごともなく、大盛況のうちにぶじ幕を下ろすことができました。ありがとうありがとう。

平日のわりと早い時間スタートにもかかわらず、思いのほか多くのみなさまにご来場いただいたばかりか、近年稀に見る雰囲気の良さで、終演後はまるで披露宴のようでした。ライスシャワーが降り注いでいたような気がするくらいです。

今回も一人一人お話させてもらったけど(お待たせして申し訳ない…)、いつになく初めましての人が多かったのもうれしい驚きです。思いきってやることにして本当によかった。

印象的だったのは、キッチンがてんてこまいになるほど、フードの注文がたくさんあったことです。この事実ひとつとっても、イベントそのものを丸ごと楽しんでもらえたことがすごく良くわかります。終演後に食べたいとお願いしていた僕の分が危うくなくなるところだったそうなので、尋常ではない。スタッフのみなさんもよろこんでくれて、僕とタケウチカズタケが何かこう善行を施したかのような、終始温かい空気に包まれておりました。


それもこれもすべて、本当に何もかも常に低体温のわたくしを支えてくれるみなさまと、御大タケウチカズタケのおかげです。この夜の温かさは、カズタケさんと晴れ豆スタッフが古くからの付き合いで言わずとも通じるものがあったこととも大いに関係があります。そりゃごはんも食べたくなるし、美味しいわけだし、楽しくなるというものです。とにかく大団円だったと拡声器で叫びたい。

本当にありがとう。そしておつかれKBDG。またお目にかかる機会が巡ってきますように。

唯一気になるとすれば開演直前にぽろりと落ちたあの小さなネジのことです。あいつの突然の職務放棄は何を意味していたんだろう?

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