2023年2月17日金曜日

いったい何がそんなに革命的だったのか?


音楽に合わせてリーディングをするとき、僕はかなり几帳面に言葉を配置していくタイプです。曲の長さよりもむしろBPMに言葉数を規定されているところがあります。五七調では全然ないし厳密でもないけれど、このテンポなら文字数はこれくらい、とざっくり決まっている点では短歌や俳句にも近いかもしれません。水を流すように読むのではなく、石を置くように読む感じ、と言ったらいいだろうか。小節単位という意味ではラップと同じですね。

きっちりと配置していく以上、自由度は実のところそんなに高くありません。その是非とかありようはさておき、それはひとつの確固たるスタイルとして定着していました。新しい「ジョシュア」と向き合うまでは。

新しく提示されたトラックは、テンポがオリジナルと全然ちがっていました。同じ発語で寄り添うにはテンポが速すぎるし、発語をトラックに合わせるには遅すぎて間伸びするのです。帯に短し襷に長しと言うほかない。

これを自然に、かつきっちりとリズムに添わせるためには、テキストにおける明確な区切りでもあった小節をスルーしなくてはなりません。要はオリジナルのリーディングを分解して、ゼロに戻す、ということです。これは自分でトラックをこしらえ、できたらそれに合わせて詩を書いてきた僕にとって、完全に想定外の状況になります。ビートに合わせて書いてたんだから、テンポが変われば小節単位が無意味になるのは当然です。

意識しないとオリジナルと同じように読んでしまうので、てにをはとか、ワンフレーズで区切りながら、どこにどう乗せるかを決めていきます。今まで経験したことのない、気の遠くなるような作業です。全部やり終えたら、今度はそれを参考にその配置のまま、自然にひと息で読むことを何度も繰り返していきます。

ぜんっぜんそんなふうには聴こえないとおもうけど、そうして出来上がったのが新しいジョシュアです。

そしてこれができたということはつまり、ビートに合わせて書くことなく、何ならビートを聴く前に書いておいたテキストであっても、あとからぴったり添わせることができることを意味します。率直に言ってこれは、今までやってきたことが根底から覆ってしまうほどの衝撃です。ぐあああああ何だよもっと早く教えてくれよ、20年費やしちゃったよ!!!!!!!10年前に気づいてたらあとアルバム4、5枚分は書けてたよ!!!!!と床をゴロゴロのたうち回るほどの衝撃です。

待って待って、本当にそうなのか…?どれだけ好きに書き散らかしても、あとから上手いこと乗せられるなんて、そんなことあるのか…?

という疑問を今さら失うものなど何もない安田タイル工業の新しいタイル製品で2つほど検証してみましたが、今のところ本当に、非の打ちどころなくできています。もはや疑う余地はありません。もうビートに合わせて書く必要は ま っ た く な い 。

20年もの長い年月を経て、いま僕のリーディングはフェーズ2へと移行しています。そのきっかけとなった濫觴こそがアグロー案内 VOL.4に収録された、「ジョシュア2023/fishing ghost revamped」です。

や、聴いてもピンと来ないだろうなとは思うんですけど。

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